カビや変色は「原因」ではなく「損害の結果」である
外航貨物の輸送では、到着した貨物にカビ、変色、腐敗、異臭、成分変化、硬化、軟化、腐食その他の品質異常が発見されることがあります。
食品、農産物、衣類、皮革製品、紙製品、木材、家具、化学品、医薬品、化粧品、樹脂製品、金属部品、精密機器などでは、外装に大きな破損がなくても、品質の変化によって本来の用途に使用できなくなったり、通常の商品として販売できなくなったりすることがあります。
しかし、貨物保険では、カビや変色が発生したという結果だけで補償可否を判断することはできません。
カビ、変色、腐敗、臭気、腐食などは損害の状態を表す言葉であり、その損害を発生させた原因を表す言葉ではないからです。
同じカビ損害であっても、コンテナの破孔から雨水が侵入した場合、貨物自身の高い含水率によって内部結露が発生した場合、出荷前から菌が付着していた場合、防湿梱包が不足していた場合では、貨物保険上の判断が大きく異なります。
したがって、品質変化事故では、損害の外観だけを見るのではなく、事故原因、発生時期、保険条件、除外条項、損害額および第三者責任を順番に切り分ける必要があります。
補償判断では五つの事項を分けて確認する
カビ・変色・品質変化損害について貨物保険の補償可否を検討するときは、少なくとも五つの事項を区別して確認します。
第一は、貨物に物理的な損傷または客観的な品質低下が実際に発生しているかという点です。単に買主が受取りを拒否した、販売予定がなくなった、予定価格で販売できなくなったという事情だけでは、貨物自体に物的損害が発生しているとは限りません。
第二は、その損害が保険期間中に発生したかという点です。到着後に発見された損害であっても、出荷前から存在していた品質不良、製造不良、乾燥不足、菌の付着などが原因であれば、輸送中事故とは評価されない可能性があります。
第三は、偶然な外部事故が存在するかという点です。コンテナ破孔、倉庫漏水、冷却設備の故障、予期しない水濡れ、外部からの油分や薬品の混入などが確認できる場合は、輸送中の偶然な事故として検討する余地があります。
第四は、貨物固有の性質、通常損耗、梱包不備、遅延などの除外事項に該当しないかという点です。
第五は、品質低下によって実際にどの程度の経済的損失が発生したかという点です。品質に異常があったとしても、選別、再加工、洗浄、再梱包、用途変更または値引販売が可能であれば、必ずしも全損や全量廃棄になるわけではありません。
ICC(A)でもすべての品質損害が補償されるわけではない
ICC(A)は、一般に除外事項を除くAll Risks型の保険条件です。
しかし、All Risksとは、輸送中に発見されたあらゆる損失や商品価値の低下を無条件で補償するという意味ではありません。
被保険者は、少なくとも保険期間中に偶然な物的損害が発生したことを示す必要があります。事故原因を完全に特定できない場合であっても、通常の経年変化、自然な品質低下、貨物固有の性質または出荷前からの不良ではなく、偶然に発生した損害であることを判断できる資料が必要になります。
特にカビ、腐敗、変色、酸化、臭気、成分変化などは、外部事故がなくても貨物の性質や時間経過によって発生する可能性があります。そのため、ICC(A)であっても、損害状態だけではなく、出荷前品質、梱包、温湿度、輸送環境および損害分布を確認することが重要です。
ICC(B)およびICC(C)は、約款に列挙された危険によって生じた損害を補償する列挙危険方式です。
したがって、ICC(B)またはICC(C)では、単にカビや変色が発生しただけでは足りず、その直接原因が、それぞれの保険条件で担保されている危険に該当するかを確認する必要があります。
通常損耗・通常減量と異常な品質損害の違い
ICC 2009 Clause 4.2は、通常の漏出、重量または容積の通常の減少および通常損耗を除外しています。
液体貨物の通常の揮発、農産物の通常の乾燥による重量減少、通常の取扱いによる軽微な擦れなど、輸送上通常避けられない程度の減耗や消耗は、偶然な事故損害とは区別されます。
一方、容器の破損による大量漏出、異常な加熱による急激な乾燥、浸水による腐敗、コンテナ破孔による広範な水濡れなどは、通常の減耗とは性質が異なります。
実務上は、その貨物について一般的に認められる通常減耗率、過去の輸送実績、積地と揚地の数量記録、含水率、保管期間および事故記録などを比較します。
通常の変化と異常な事故損害の境界は、貨物の種類、輸送期間、季節、航路、梱包方法および商慣習によって異なるため、単純な数値だけで判断できないことがあります。
梱包・防湿・輸送準備の不備
ICC 2009 Clause 4.3は、通常の保険輸送に伴う出来事に耐えるための梱包または輸送準備が不十分または不適切であったことによる損害を除外しています。
ここでいう梱包は、外装箱や木箱だけを意味するものではありません。防湿材、乾燥剤、内装材、パレット、コンテナライナー、防錆処理、遮光、通風、予冷、固縛およびコンテナ内への積付けも判断対象になります。
たとえば、吸湿性の高い貨物を長期間輸送するにもかかわらず、防湿材が使用されていなかった場合や、貨物の含水率、航路、季節および輸送期間に対して乾燥剤の量が明らかに不足していた場合は、梱包・準備不備が問題になります。
乾燥剤が入っていたという事実だけで、適切な防湿梱包であったことにはなりません。乾燥剤の種類、数量、配置、吸湿能力、輸送期間、貨物自身から放出される水分量まで確認する必要があります。
Clause 4.3では、誰が梱包したかだけでなく、いつ梱包したかも重要です。
被保険者またはその従業員が行った梱包のほか、保険開始前に行われた梱包についても、条項の適用が問題となります。また、約款上、独立した請負業者は被保険者の従業員には含まれません。
もっとも、独立した梱包業者が作業したという理由だけで、必ず保険金が支払われるわけではありません。梱包時期、保険開始時期、基本保険条件、他の除外事項、事故との因果関係および梱包業者への求償可能性を確認する必要があります。
貨物固有の性質による品質変化
ICC 2009 Clause 4.4は、被保険貨物の固有の瑕疵または性質によって生じた損害や費用を除外しています。
貨物固有の性質とは、その貨物が本来的に持つ吸湿性、腐敗性、発酵性、酸化性、揮発性、変色性、乾燥性、自己発熱性などをいいます。
たとえば、高い含水率を持つ木材や農産物が密閉されたコンテナ内で水分を放出し、その水分によって貨物全体にカビが発生した場合、外部から水が侵入していなくても品質変化が進行することがあります。
食品、動植物、皮革、木材、ゴム、化学品その他の品質変化しやすい貨物について、通常の輸送時間と通常の輸送環境だけで腐敗、発酵、酸化または変色が進行した場合は、貨物固有の性質が中心的な論点になります。
ただし、貨物が劣化しやすい性質を持っているというだけで、すべての損害が自動的に除外されるわけではありません。
コンテナ破孔、倉庫漏水、冷却機器故障、外部汚染などの偶然な事故が品質変化を発生させ、または通常の変化を著しく悪化させた場合は、その外部事故と損害との因果関係を検討します。
品質変化事故では複数の原因が重なることが多いため、貨物の性質が一因であったというだけで判断を終えるのではなく、損害を実質的に発生させた原因を調査することが必要です。
輸送遅延による品質低下
輸送遅延によって、賞味期限、使用期限、販売時期または製造工程への投入時期が迫り、商品価値が低下することがあります。
ICC 2009 Clause 4.5は、遅延が担保危険によって発生した場合であっても、遅延によって生じた損害または費用を原則として除外しています。
そのため、船舶の遅延によって販売期間が短くなった、季節商品を販売できなくなった、買主の生産計画に間に合わなくなったという損失は、貨物自体に物理的損傷が発生している場合とは分けて考える必要があります。
一方、リーファーコンテナの冷却機器が故障し、設定温度から大きく逸脱した結果、食品や医薬品に物理的な品質変化が発生した場合は、単なる遅延損害とは異なる可能性があります。
この場合は、機器故障の時期、温度逸脱の程度と継続時間、貨物の許容温度、安定性試験、保険条件および温度変化に関する特別条件を確認します。
コンテナ内結露と水の侵入は分けて考える
カビ、変色、腐食および包装材の軟化が発生した場合、しばしば「コンテナ内に水分があった」という説明が行われます。
しかし、その水分がどこから発生したのかによって、貨物保険上の判断は変わります。
コンテナの側壁や屋根の破孔、扉の密閉不良、倉庫の漏水などによって外部から水が侵入した場合は、偶然な外部事故として検討できる可能性があります。
これに対し、貨物、木製パレット、梱包材などが持ち込んだ水分が、航路上の温度差によってコンテナ内壁に結露した場合は、貨物の含水率、乾燥状態、防湿梱包および輸送準備が中心的な論点になります。
いわゆるコンテナレインが発生していたとしても、その事実だけで外部事故による水濡れと判断することはできません。
損害分布、コンテナの破孔や変形、水跡の位置、扉周辺の状態、貨物とパレットの含水率、気象記録、航路、積地と揚地の温度差などを総合して、水分の発生源を確認します。
コンテナ自体が輸送に適していなかった場合
貨物側の梱包不備と、コンテナまたは輸送用具自体の不適合は別の問題です。
コンテナに破孔があった、扉が正常に閉鎖できなかった、床面に油や薬品が残留していた、リーファー機器が安全な輸送に必要な性能を備えていなかったという場合は、ICC 2009 Clause 5.1.2との関係を確認します。
Clause 5.1.2では、コンテナまたは輸送用具が貨物の安全な運送に適していなかったことに加え、積込みの時期、積込みを行った者および被保険者側がその不適合を知っていたかという事情が重要になります。
したがって、コンテナが不適合であったという結果だけで直ちに免責となるわけではなく、EIR、積込み前点検、バンニング写真、コンテナ受渡し記録、破損の発生時期および被保険者の認識を確認する必要があります。
外部汚染と臭気移り
油分、燃料、薬品、前貨物の残留物、隣接貨物その他の外部物質が貨物へ付着または移行し、変色、異臭、成分異常または品質規格外となることがあります。
衣類、食品、医薬品、化粧品、紙製品などでは、外観上の変化が小さくても、臭気や化学成分の残留によって本来の用途に使用できなくなる場合があります。
この場合は、異臭があるという担当者の感覚だけではなく、臭気源、移行経路、残留成分、正常品との比較および使用・販売への影響を客観的に確認します。
コンテナ床面の残留物、過去に積載されていた貨物、隣接貨物、倉庫内の薬品、荷役設備、配管、ホースなどが汚染源となる可能性があります。
責任追及が見込まれる事故では、損害貨物だけでなく、正常品、梱包材、床面付着物、液体、粉体その他の試料を適切に採取し、採取日時、採取場所、採取者、封印状態および保管経路を記録することが重要です。
出荷前品質が不明な場合は請求が難しくなる
品質変化事故では、到着時の状態だけでなく、出荷前に貨物が正常であったことを示す資料が重要です。
特に、食品、農産物、木材、皮革、化学品、医薬品、化粧品などでは、製造日、ロット番号、含水率、乾燥状態、微生物検査、成分検査、品質証明、予冷記録および船積前写真を確認します。
出荷前検査が行われておらず、製造時の品質記録も存在しない場合、事故後に発見された異常が輸送中に発生したのか、出荷前から存在したのかを判断しにくくなります。
同じロットの別貨物や別コンテナでも同様の異常が発生している場合は、輸送中の個別事故ではなく、製造、原料、乾燥、保管または梱包に共通する問題が疑われます。
反対に、事故対象となったコンテナだけに損害が集中し、破孔や漏水などの異常も確認されている場合は、輸送中事故との因果関係を説明しやすくなります。
事故発見後の初動対応
カビ、変色、臭気または品質異常を発見した場合は、貨物を直ちに廃棄したり、洗浄、再加工、再梱包したりする前に、保険会社または保険代理店へ連絡します。
損害額が大きい場合、原因が不明な場合、コンテナや倉庫の状態に異常がある場合は、サーベイヤーによる現物調査を検討します。
初動段階では、次の証拠を保存することが重要です。
- 貨物全体と損害部分の写真・動画
- 外装、内装、パレット、防湿材および乾燥剤
- コンテナの側壁、屋根、扉、床面およびコンテナ番号
- EIR、搬入記録、開梱記録および納品記録
- 温度・湿度データ、リーファー記録およびアラーム履歴
- 出荷前写真、品質証明、含水率および検査記録
- 正常品との比較用サンプル
- 損害貨物、梱包材および汚染物質の検査用サンプル
コンテナ、梱包材、監視映像、温度データなどは、返却、清掃、上書きまたは廃棄によって短期間で失われる可能性があります。
保険金請求だけでなく、船会社、倉庫業者、トラック業者、梱包業者その他の関係者への求償を行う可能性があるため、早期に書面で事故通知を行い、証拠の保存を要請することが重要です。
品質検査では何を確認するのか
品質変化は写真だけで判断できないことが多いため、貨物の種類と損害状態に応じて専門的な検査を行います。
カビ損害では、菌の種類、菌数、発生範囲、衛生上の問題および再発可能性を確認します。木材、紙、繊維製品などでは、貨物、パレットおよび梱包材の含水率も重要です。
異臭やコンタミネーションでは、臭気検査、成分分析、油分検査、塩分検査および正常品との比較を行います。
化学品、医薬品、化粧品などでは、色調だけでなく、純度、粘度、濃度、安定性、微生物、効能その他の品質規格を確認します。
精密機器や電子部品では、湿気や腐食が外観だけでなく、絶縁性能、基板、接点、センサーおよび長期的な信頼性に与える影響を確認することがあります。
検査結果を保険金請求や求償の証拠として使用する場合は、誰が、いつ、どこから、どのように試料を採取したかを明確にし、試料の同一性と保管経路を確保する必要があります。
販売不能と全損は同じではない
買主が貨物の受取りを拒否した場合や、荷主が通常販売できないと判断した場合でも、直ちに貨物保険上の全損になるわけではありません。
販売不能性を判断するためには、法令上の基準、衛生基準、製品規格、事故前から合意されていた買主基準、第三者検査結果および貨物の本来の用途を確認します。
事故後に買主が独自に厳しい条件を追加した場合や、単に商業上の理由から受取りを拒否した場合は、貨物自体の物理的損害とは区別されることがあります。
品質低下が認められる場合でも、健全部と損害部の選別、洗浄、乾燥、再加工、再梱包、部品交換、用途変更、値引販売などが可能かを検討します。
損害額は、正常な状態での価値と損害後の実際の価値との差額、合理的な修復費用、選別費用、再加工費用、残存価値などを基礎として検討されます。
全量廃棄を行う場合は、法令、衛生、安全性、品質検査その他の客観的な理由を明確にし、保険会社やサーベイヤーの確認を受けることが重要です。
独自の判断で損害貨物を処分すると、損害原因、損害範囲、残存価値および第三者責任を確認できなくなり、保険金請求や求償に影響する可能性があります。
実務例1 コンテナ破孔後に衣類へカビが発生した場合
衣類を積載したコンテナの側壁に衝突による破孔があり、破孔周辺の外装箱に水濡れが確認され、その周辺の衣類ほど含水率とカビ発生率が高かった場合を考えます。
出荷前写真や品質記録に異常がなく、コンテナの破孔、水跡、損害分布およびカビの発生範囲が整合していれば、外部からの水の侵入と品質変化との因果関係を検討できます。
この場合でも、保険条件、水の侵入時期、梱包状態、損害範囲および使用・販売可能性を確認します。
運送人やコンテナ提供者への求償に備え、コンテナ返却前に破孔、内壁、床面、水跡、貨物配置および損害貨物を記録することが重要です。
実務例2 木材製品全体に均一なカビが発生した場合
木材製品が密閉コンテナで輸送され、到着時に貨物全体へほぼ均一なカビが発生していたものの、コンテナに破孔、漏水または扉の異常が確認されなかった場合を考えます。
船積前の木材含水率が高く、十分な乾燥処理の記録がなく、同じロットの別貨物でも同様のカビが確認された場合は、貨物固有の性質または出荷前品質が中心的な論点になります。
さらに、貨物から放出される水分量に対して、防湿材や乾燥剤が不足していた場合は、梱包・輸送準備不備も検討します。
このような事故では、一つの原因だけを選ぶのではなく、貨物の含水率、乾燥状態、梱包設計、航路、季節および輸送期間を総合して判断します。
実務例3 化粧品が温度逸脱によって変色した場合
化粧品を温度管理輸送していたところ、到着後に一部製品の色調変化が発見された場合を考えます。
温度記録に長時間の設定温度逸脱があり、その時間帯にリーファー機器のアラームまたは電源停止が確認され、安定性試験から同程度の温度逸脱によって同じ変色が生じることが示されている場合は、事故との因果関係を検討できます。
一方、温度記録に異常がなく、同じ製造ロットの別輸送品にも同様の変色が発生している場合は、製造、原料、保管または貨物固有の性質が疑われます。
単に色が変わったという外観だけでなく、成分、効能、安全性、規格適合性および使用可能性を検査する必要があります。
貨物保険とフォワーダーの賠償責任は別に判断する
品質変化損害では、貨物保険の補償可否と、フォワーダー、運送人、倉庫業者または梱包業者の賠償責任が混同されることがあります。
貨物保険は、保険条件、保険期間、事故原因および除外条項に基づいて、被保険貨物の損害を判断します。
これに対し、フォワーダーの賠償責任は、フォワーダーが引き受けた業務、契約上の義務、過失、損害との因果関係、責任制限および約款上の免責などに基づいて判断します。
貨物保険で免責となったからといって、当然にフォワーダーが責任を負うわけではありません。反対に、貨物保険から保険金が支払われたからといって、フォワーダーや運送人に責任がないことになるわけでもありません。
フォワーダーが温度、湿度、換気、防湿、遮光その他の特別な輸送条件を知らされていた場合は、その条件を運送人、倉庫業者、梱包業者などへ正確に伝達したかを確認します。
フォワーダーが梱包、バンニング、温度設定、倉庫選定または品質検査を引き受けていた場合は、それぞれの業務内容と作業記録を確認します。
事故発生後は、貨物保険の事故通知と並行して、責任を負う可能性のある運送人、倉庫業者、梱包業者その他の関係者へ期限内に通知し、保険者の代位求償権を保全することが重要です。
保険手配前に確認すべき事項
カビ、腐敗、変色、温度変化または品質劣化が起こりやすい貨物では、事故後の保険金請求よりも、保険手配前の情報整理が重要です。
保険会社または保険代理店へ、貨物の種類、品質特性、製造日、使用期限、含水率、保存温度、許容湿度、輸送期間、梱包方法、リーファー設定、換気条件、乾燥剤、防湿材および過去の事故歴を正確に伝えます。
通常のICC条件だけでは十分でない可能性がある貨物については、温度変化、冷却機器故障、品質劣化、汚染、Rejection、Ship Backその他の特別条件が必要かを事前に確認します。
事故が発生した後に、通常の保険条件では対象にならない品質変化を追加して補償することはできません。
特に食品、医薬品、化粧品、化学品、農産物、木材その他の品質変化しやすい貨物では、貨物の性質に適した梱包と保険条件を、輸送開始前に設計することが重要です。
保険金請求で確認される主な資料
カビ・変色・品質変化損害の保険金請求では、事故内容に応じて次のような資料を準備します。
- 保険証券、保険明細および適用約款
- インボイス、パッキングリスト、B/LまたはAWB
- 製造日、ロット番号、品質証明および出荷前検査記録
- 梱包仕様、作業写真、乾燥剤・防湿材の仕様
- バンニング写真、コンテナ番号、EIRおよび搬入記録
- 温度・湿度記録、リーファー生データおよびアラーム履歴
- 損害写真、開梱記録およびサーベイレポート
- 含水率、菌、臭気、成分、塩分、油分または機能の検査結果
- 正常品、同一ロットまたは別コンテナとの比較資料
- 再加工、選別、再梱包、値引販売または廃棄の見積資料
- 買主の品質基準、受取り拒否理由および第三者検査資料
- 運送人、倉庫業者、梱包業者などへの事故通知
すべての事故で同じ資料が必要になるわけではありません。
重要なのは、出荷前の正常な状態、輸送中の異常、到着時の損害状態、品質変化の原因および実際の経済的損失を、一連の資料によって説明できるようにすることです。
まとめ
カビ、変色、腐敗、臭気、腐食および成分変化は、損害の結果を示すものであり、それ自体が貨物保険上の担保危険になるわけではありません。
補償可否を判断するためには、偶然な外部事故、貨物固有の性質、出荷前品質、梱包・輸送準備、通常損耗、遅延およびコンテナの適合性を分けて確認する必要があります。
ICC(A)は除外事項を除くAll Risks型ですが、貨物固有の性質、梱包不備、通常損耗、遅延などは除外の対象となり得ます。ICC(B)およびICC(C)では、品質変化の原因が列挙された担保危険に該当するかを確認します。
カビや変色が輸送中に発見されたという事実だけでは、輸送中事故であることは確定しません。出荷前品質、損害分布、含水率、温湿度、コンテナ状態、梱包仕様、検査結果および同一ロットとの比較が重要です。
品質低下が認められた場合でも、直ちに全損や全量廃棄になるわけではありません。選別、再加工、再梱包、用途変更、値引販売および残存価値を確認し、合理的な損害額を算定します。
事故発見後は、貨物、梱包材、コンテナ、温度データおよび検査用サンプルを保存し、保険会社、サーベイヤーおよび責任関係者へ速やかに通知することが重要です。
具体的な補償可否は、実際の保険証券、適用約款、特別条件、事故原因、梱包時期、貨物の性質、検査結果および個別の事実関係によって異なります。