FOB条件で輸出している企業から、
「輸出者側でも貨物保険をしっかり管理したいが、
CIFへ変更するとFreightまで負担しなければならず、
海外buyerとの価格交渉が難しい」
という相談を受けることがあります。
この問題に対する一つの実務的な考え方が、
C&I(Cost and Insurance)です。
C&Iでは、商品代金にsellerが手配する貨物保険の費用を加える一方、
主運送の手配とFreightについてはbuyer側へ残すよう設計することができます。
つまり、FOBからCIFへ全面的に変更するのではなく、
「Freightはbuyerのまま、Insuranceだけをseller自身の管理へ戻す」
という方法です。
C&Iは、国際商業会議所(ICC)が定める
Incoterms® 2020の正式な11条件には含まれていません。
したがって、「C&I Singapore」などと売買契約に記載しただけでは、
危険移転、引渡し、運送義務、保険義務等が
Incoterms®によって自動的に決まるわけではありません。
C&Iを利用する場合には、売買当事者間で内容を明確に定める必要があります。
1.C&Iとは何か
C&Iは一般に「Cost and Insurance」の略称として使用され、
商品代金と保険料をseller側の価格に含めながら、
Freightについてはbuyer側が手配・負担する形を意味して
実務上使用されることがあります。
価格構造だけを見ると、概念的には次のようになります。
= 商品代金(Cost)
+ sellerが負担する貨物保険費用(Insurance)
主運送のFreightは、buyerが負担する設計であれば
C&I価格には含めません。
ただし、これはIncoterms®上の公式な価格算式ではありません。
C&Iという名称自体に国際的な統一ルールがあるわけではないため、
実際の売買契約では価格、運送、危険移転、保険を分けて定義する必要があります。
2.C&Iの最大の目的は「保険だけをsellerへ戻す」こと
FOB輸出では、Incoterms®上、貨物が指定船積港で本船上に置かれるまで、
sellerが危険を負担します。
その後の主運送と貨物保険についてはbuyer側が手配することが一般的です。
しかし、この構造には輸出者から見て大きな弱点があります。
自社製品について最も詳しいseller自身が、
船積後については、
- どの保険会社が引き受けているのか
- どの保険条件が付いているのか
- 保険金額はいくらなのか
- 免責金額はいくらなのか
- 事故発生時に誰がサーベイを手配するのか
- 保険金請求を誰が行うのか
といった重要事項を十分に把握できないことがあります。
C&Iとしてsellerが外航貨物海上保険を手配すれば、
buyerの物流契約を維持しながら、
貨物保険だけをseller側で管理することができます。
3.なぜFOBからCIFへ変更するだけでは解決しないのか
保険だけを考えれば、
sellerが貨物海上保険を手配するCIFへ変更する方法があります。
しかしCIFでは、Insuranceだけでなく、
sellerが主運送契約を手配し、
Freightも負担して仕向港までの運送契約を締結しなければなりません。
ここで問題になるのが、
buyerとsellerのFreight購買力の差です。
大量の輸入貨物を世界規模で取り扱うbuyerは、
shipping lineやglobal forwarderとの年間契約、
global tender、volume commitment等によって、
日本のsellerが単独で取得できない有利なFreightを持っている場合があります。
sellerがFOBからCIFへ変更すると、
buyerが現在使用しているFreight contractを使えなくなり、
sellerが取得した高いFreightを商品価格へ加える結果となることがあります。
これはbuyerから見れば、
商品そのものとは無関係な物流費による値上げです。
C&Iではbuyerが現在使用しているshipping line、
forwarder、年間Freight contract等を原則として維持しながら、
Insuranceだけをseller側へ移すことができます。
したがって、CIF化より価格への影響を小さくできる場合があります。
4.FOB・C&I・CIFの違い
| 項目 | FOB | C&Iとして設計した場合 | CIF |
|---|---|---|---|
| 正式なIncoterms®条件 | ○ | × | ○ |
| 主運送の手配 | buyer | buyerに残す設計が可能 | seller |
| 主運賃 | buyer | buyer | seller |
| 貨物保険 | Incoterms®上sellerに手配義務なし | sellerが手配するよう個別合意 | sellerに手配義務 |
| 保険会社の選択 | buyer側保険に依存する場合が多い | sellerが選択 | sellerが選択 |
| seller船積前区間 | 別途保険設計が必要 | 外航貨物海上保険へ一体化可能 | 保険設計により一体化可能 |
| Freight競争力 | buyerの契約を利用 | buyerの契約を維持可能 | sellerの調達力に依存 |
| 危険移転 | FOB規則による | 契約で別途明確化が必要 | CIF規則による |
5.sellerが保険を仕向地まで手配しても、sellerが全区間の危険を負うわけではない
C&Iを検討する際に、
最も誤解されやすい点です。
売買契約上の危険移転地点と、
貨物海上保険の保険終期は別の概念です。
例えばCIFでも、sellerは仕向港までのFreightとInsuranceを手配しますが、
危険そのものは指定船積港で貨物が本船上に置かれた時点で
buyerへ移転します。
つまり、sellerが仕向地まで保険を用意しているからといって、
sellerが仕向地まで売買上の危険を負担しているわけではありません。
C&Iでも同様に、
危険移転後はbuyerその他の被保険利益を持つ者のために
保険が機能するよう設計することができます。
そのためには、
Insurance PolicyやInsurance Certificateの名義、
被保険者の範囲、保険金請求権、譲渡・裏書等を
実際の売買契約に合わせて設計する必要があります。
6.C&Iの大きな利点―船積前から仕向地まで一つの保険で管理できる
外航貨物海上保険は、契約内容によりますが、
仕出地の倉庫・工場等で国際輸送開始のため
貨物が最初に動かされた時から、
通常の輸送過程を経て、
指定された仕向地まで補償する設計が可能です。
この特徴を利用すれば、
seller warehouseから国内運送、
CFS・CY、船積み、外航輸送、
仕向港、buyer側内陸輸送まで、
一つの外航貨物海上保険で連続的に管理できる場合があります。
| 輸送段階 | FOBで問題になりやすい点 | C&I型保険での設計 |
|---|---|---|
| seller工場・倉庫 | buyer側保険の開始前となる可能性 | seller側保険をここから開始 |
| 国内集荷 | sellerの危険区間 | 外航貨物海上保険へ組込み |
| CFS・CY | 本船積込み前の火災・地震・荷役事故等 | 通常の輸送過程として適切な範囲を補償 |
| 本船積込み後 | 危険はbuyerへ移転 | buyerの被保険利益のため保険を継続 |
| 海上輸送 | buyer側保険の内容をsellerが把握できない場合 | sellerが選定した保険条件を継続 |
| 仕向港 | 海外保険会社の事故対応に依存 | seller側保険者の海外ネットワークを利用 |
| buyer側内陸輸送 | buyer保険の終期次第 | 合意した最終仕向地まで設計 |
7.輸出FOB保険とC&I型外航貨物海上保険
FOB輸出では、本船積込みまでのsellerの危険を補うため、
輸出FOB保険が利用されることがあります。
輸出FOB保険は、輸出本船積込み前の国内輸送や
港頭での保管等を対象とする重要な保険です。
一方で、輸出FOB保険と外航貨物海上保険では、
適用される保険条件や補償される危険が同一とは限りません。
特に地震については注意が必要です。
JETROの現行案内では、
輸出FOB保険は内航貨物海上保険の一種として扱われ、
All Risks条件であっても、
貨物が陸上・湖川上にある間の地震・噴火、
それらに関連する津波・火災による損害は
支払対象外と説明されています。
したがって、
「All Risksと書いてあるから地震も必ず補償される」
と名称だけで判断することはできません。
C&Iとして外航貨物海上保険へ統合する場合にも、
ICC(A)、ICC(B)、ICC(C)その他の約款、
特別約款および保険証券を確認し、
地震、噴火、津波等の必要な危険が
実際に補償されていることを確認します。
8.阪神・淡路大震災から考える船積前リスク
巨大地震、津波、高潮、台風、倉庫火災等は、
貨物が本船へ積み込まれた後だけに発生するものではありません。
seller warehouseから港までの国内輸送中、
CFS、CY、港頭倉庫等で本船積込みを待っている間にも、
一事故で多数の輸出貨物が同時に損傷する可能性があります。
阪神・淡路大震災は、
輸出貨物についても船積前の巨大災害リスクを
具体的に考える契機となりました。
この問題から得るべき教訓は、
「FOBが危険でCIFなら安全」という単純なものではありません。
実際に必要な危険を補償する保険が存在しているかという点です。
C&I型の保険設計では、
sellerが外航貨物海上保険を自ら手配し、
seller warehouseから仕向地まで連続した補償を設定することによって、
船積前と船積後の保険管理を一体化できる可能性があります。
9.輸出FOB保険をなくせるとは限らない
C&Iへ変更したからといって、
自動的に既存の輸出FOB保険が不要になるわけではありません。
外航貨物海上保険へ統合する前に、
少なくとも次の事項を確認します。
- seller warehouseまたは工場のどの時点から保険が開始するか
- 国内集荷区間が補償されるか
- CFS・CYでの通常の船積待ちが補償範囲に入るか
- 積替えを含む実際の輸送経路が保険契約に適合するか
- buyer側最終仕向地まで保険が継続するか
- 地震、噴火、津波等の必要な危険が担保されるか
- 危険移転後のbuyerの被保険利益を保険で保護できるか
- 既存のbuyer側保険との二重保険が生じないか
この確認を行った結果、
船積前から船積後まで必要な補償が一つの外航貨物海上保険へ
適切に統合されているのであれば、
従来の輸出FOB保険を別建てにする必要性を
見直すことができます。
10.保険料とFreightを同じ「コスト」で考えてはいけない
C&Iを提案すると、
「sellerが保険料を負担すると商品価格が高くなる」
という反応が出ることがあります。
もちろん保険料は追加コストです。
しかし、CIF化によってFreight全体をsellerへ移す場合と、
Insuranceだけをsellerへ移す場合では、
売価への影響が大きく異なることがあります。
保険料の価格影響を計算する例
FOB価額5,000万円、
仮の保険金額を5,500万円とした場合を考えます。
| FOB価額 | 仮定保険金額 | 仮定保険料率 | 保険料 | FOB価額に対する比率 |
|---|---|---|---|---|
| 50,000,000円 | 55,000,000円 | 0.10% | 55,000円 | 0.11% |
| 50,000,000円 | 55,000,000円 | 0.20% | 110,000円 | 0.22% |
| 50,000,000円 | 55,000,000円 | 0.50% | 275,000円 | 0.55% |
| 50,000,000円 | 55,000,000円 | 0.80% | 440,000円 | 0.88% |
※上記はC&Iの価格影響を説明するための仮定例です。
実際の保険料率は、貨物、包装、航路、輸送方法、仕向地、
保険条件、年間輸送額、事故率その他の引受条件によって異なります。
※C&Iには「必ず110%を付保する」というIncoterms®上の規定はありません。
比較すべきなのは、
「sellerが取得するFreightとの差額」と
「sellerが負担する保険料」
です。
buyerが大量輸送によって非常に安いFreightを持っている場合には、
CIF化による物流コスト増より、
Insuranceだけをsellerへ移すC&I型の方が
経済合理性を持つ可能性があります。
11.経営判断では保険料より最大損失額を見る
さらに重要なのは、
保険料を単なる物流コストとして評価しないことです。
比較すべき対象は、
年間保険料と一事故最大損失額です。
一回の輸出貨物が5,000万円であれば、
一事故で5,000万円規模の資産が危険にさらされます。
同じCYに複数の高額貨物を搬入している場合には、
地震、火災、高潮等の一事故による集積損害は
さらに大きくなる可能性があります。
年間数十万円・数百万円の保険料だけを見て
「高い」と判断するのではなく、
無保険または補償不足の場合の最大自己負担額と比較する必要があります。
12.C&Iで必要になるInsurance設計
| 確認項目 | 確認内容 | 不十分な場合の問題 | 実務対応 |
|---|---|---|---|
| 仕出地 | どこから保険を開始するか | 国内集荷区間が無保険になる | 実際のseller工場・倉庫を指定 |
| 仕向地 | どこまで保険するか | buyerへの配送途中で補償終了 | 実際の最終配送先と合わせる |
| 保険条件 | ICC(A)、ICC(B)、ICC(C)等 | 想定事故が補償されない | 貨物特性に合わせる |
| 地震 | 使用約款上の地震担保 | 巨大災害時の回収不能 | 約款・特約を具体的に確認 |
| 戦争・ストライキ | 必要特約の付帯 | 標準条件だけでは不足する場合 | 航路・地域に応じ確認 |
| 保険金額 | Invoice価額の何%を付保するか | 損害時の回収不足 | 契約で設定 |
| 通貨 | JPY、USD、EUR等 | 売買代金との不整合 | Invoice・L/C等と調整 |
| buyerの被保険利益 | 危険移転後にbuyerが保険を利用できるか | buyer側事故で保険請求が困難 | Policy・Certificateを設計 |
| 二重保険 | buyer側保険が継続していないか | 事故後の調整が複雑になる | buyerへ契約変更を通知 |
| Open Policy | 継続輸出を包括契約化するか | 個別付保漏れ | 年間包括契約を検討 |
13.buyerがFreightを手配するため、輸送情報の共有が不可欠
C&Iには一つ特有の弱点があります。
Freightを手配する者とInsuranceを手配する者が異なること
です。
buyerがBookingし、sellerが保険を手配する場合、
buyerからsellerへ輸送情報が届かなければ
適切な保険申告ができません。
最低限、次の情報を共有する仕組みが必要です。
- shipping lineまたはairline
- prime freight forwarder
- Booking number
- 本船名・便名
- 積地
- 揚地
- 最終仕向地
- 予定出港日・出発日
- transshipmentの有無
- 航路変更
- Booking変更
- 最終仕向地変更
seller側保険の申告内容と実際の輸送が異なるという事故を避けるため、
輸送情報の提供義務と変更通知義務を売買契約または運用ルールに定めます。
14.継続輸出ではOpen Policyを検討する
年間を通じて継続的に輸出する企業では、
一輸送ごとに保険加入を判断する運用は
付保漏れの原因になります。
C&I対象貨物については、
Open Policy等の包括予定保険契約を利用し、
出荷情報から保険申告へつなげる運用を検討します。
特に重要なのは、
「今回は高額だから保険を付ける」
「今回は少額だから保険を付けない」
と営業担当者個人の判断にしないことです。
対象輸出を社内システム上で識別し、
保険申告または包括契約の対象へ
漏れなく反映させる方がリスク管理上安定します。
15.コンテナ輸出ではFOBよりFCAを検討する
コンテナ輸送では、
sellerが貨物を本船へ直接引き渡すのではなく、
本船積込み前にCYやCFS等でcarrierへ引き渡すことが一般的です。
このためICCも、
コンテナ貨物ではFOBよりFCAが適切となる場合があることを説明しています。
C&Iの経済的な目的が、
「Freightはbuyer、Insuranceはseller」
という役割分担にあるのであれば、
必ずしもC&Iという非標準の名称を使用する必要はありません。
例えば、
FCA Incoterms® 2020
+ sellerによる独自Insurance Clause
という契約構造にする方法があります。
これであれば、危険移転については正式なIncoterms®ルールを利用し、
保険だけをseller側で手配することができます。
16.CIFの保険条件をそのままC&Iへコピーする必要はない
Incoterms® 2020では、
CIFについて原則としてInstitute Cargo Clauses (C)相当の
最低水準の保険が想定されています。
一方、CIPでは原則としてInstitute Cargo Clauses (A)相当の
より広い保険が要求されます。
しかし、C&IはIncoterms®ではありません。
したがって、
「CIFに似た条件だからICC(C)でなければならない」
というルールはありません。
C&Iをsellerのリスク管理強化のために採用するのであれば、
貨物の種類、包装、航路、輸送方法および想定事故に応じて、
ICC(A)その他の適切な補償条件を検討します。
17.C&Iを契約書に書くだけでは不十分
C&Iは非標準条件なので、
次のような記載だけでは不十分です。
これだけでは、
「Singapore」が価格基準地点なのか、
保険終期なのか、
危険移転地点なのか明確ではありません。
少なくとも、次の事項を別々に定めます。
| 契約事項 | 定める内容 | 目的 |
|---|---|---|
| 価格 | Cost+seller手配Insurance | C&I価格の内容を明確にする |
| 主運送 | buyerが手配・負担 | CIFとの違いを明確にする |
| 危険移転 | FOB、FCAその他の具体的地点・時点 | C&I最大の曖昧さをなくす |
| 保険手配 | sellerが行う | 保険手配主体を確定する |
| 保険区間 | seller warehouseからbuyer warehouse等 | 無保険区間をなくす |
| 保険条件 | ICC(A)等 | 補償水準を確定する |
| 保険金額 | Invoice valueの110%等 | 付保額を確定する |
| Booking情報 | buyerがsellerへ提供 | sellerによる保険申告を可能にする |
| 変更通知 | 船便・航路・仕向地変更時の通知 | 実輸送と保険申告の不一致を防ぐ |
| 保険書類 | Insurance Certificate等をbuyerへ交付 | 危険移転後の保険利用を可能にする |
18.事故が発生した場合のC&I実務
C&Iで事故が発生した場合には、
売買上の危険移転と保険事故対応を分けて考えます。
「事故地点がrisk transferの前か後か」を確定するまで
保険会社への事故通知を待つ必要はありません。
事故を発見したら、
sellerまたはbuyerから契約上定められた保険会社・保険代理店へ
速やかに事故通知を行います。
そのうえで、次の事項を確認します。
- 事故発生地点
- 事故発生時点の危険負担者
- 保険期間内か
- 適用される保険条件
- 事故原因が担保危険か
- sellerとbuyerのどちらが被保険利益を有するか
- サーベイの要否
- 運送人等へのClaim Notice
- 保険金の支払先
- 保険会社による代位求償
C&Iを適切に設計する利点は、
sellerが事故発生後に海外buyerへ
「どの保険会社へ連絡したのか」
「保険が本当にあるのか」
と確認するところから始めなくてよい点にあります。
19.C&I導入が特に有効となる可能性がある企業
| 企業・取引の状況 | C&Iを検討する理由 | 重点確認事項 |
|---|---|---|
| FOB輸出比率が高い | 船積前リスクをseller自身で管理したい | 国内輸送、CY・CFSの補償 |
| 高額機械・精密機器 | 一事故損害額が大きい | ICC(A)、梱包、サーベイ条件 |
| buyerのFreightが非常に安い | CIF化すると価格競争力を失う | buyer Freight維持 |
| buyerの保険内容が分からない | 自社製品の補償をsellerが管理したい | 二重保険、buyer側Policy |
| 巨大災害リスクを重視 | 船積前の地震等を含め保険を管理したい | 地震担保、保険始期 |
| 年間継続輸出が多い | Open Policyで標準化しやすい | 申告漏れ防止 |
| 海外事故対応に不安 | 日本側保険会社・代理店を窓口にできる | 海外サーベイ・損害サービス網 |
20.C&Iを使わない方がよい場合
C&Iはすべての取引に適するわけではありません。
- buyerが非標準条件を受け入れない場合
- L/Cが正式なIncoterms®条件を前提としている場合
- ERP等でC&Iを登録できない場合
- 危険移転について非標準条項を使用したくない場合
- コンテナ輸送でFCAを使用した方が契約構造が明確な場合
- buyerが既に適切な包括保険を有している場合
- seller保険を追加すると二重保険管理が複雑になる場合
- 相手国の保険規制・強制付保規制等の確認が必要な場合
このような場合には、
正式なIncoterms®条件を維持したうえで、
Insurance Clauseだけを追加する方法を検討します。
21.具体例―FOBをCIFへ変更できない機械輸出
日本の機械メーカーがFOB条件で、
年間100本のcontainerを海外buyerへ輸出しているとします。
buyerは世界各地から年間数千本のcontainerを輸入しており、
global forwarderとの契約によって
非常に有利なOcean Freightを持っています。
日本のsellerは船積前リスクを問題視し、
CIFへの変更を検討しました。
しかしsellerが日本で取得できるFreightをCIF価格へ加えると、
buyerの総調達価格が上昇します。
buyerにとっては、
自社が持つ安い物流契約を捨てる理由がありません。
そこで主運送とFreightは従来どおりbuyerへ残し、
sellerがseller warehouseからbuyer側仕向地まで
外航貨物海上保険を手配する形へ変更します。
buyerのFreightメリットを維持しながら、
sellerはInsuranceだけを自社管理へ移すことができます。
22.具体例―CYで巨大地震が発生した場合
高額機械をFOB条件で輸出するため、
seller工場からCYへ搬入した後、
本船積込みを待っている間に巨大地震が発生し、
containerと貨物が損傷したとします。
FOBで本船積込み前であれば、
売買上の危険がseller側に残っている可能性があります。
sellerが適切な船積前保険を持っていなければ、
buyerの貨物保険へ請求できるとは限りません。
一方、C&I型としてseller warehouseから
buyer側仕向地まで適切な外航貨物海上保険を手配し、
地震が担保される条件であれば、
「船積前だから外航貨物保険が存在しない」
という保険の分断を避けることができます。
ここで重要なのはC&Iという名称ではなく、
事故発生前からseller自身が適切な貨物保険を持っていたか
という点です。
23.具体例―buyerがBookingを変更した場合
buyerがFreightを負担してBookingし、
sellerがInsuranceを手配していました。
sellerは最初のBooking情報を基に保険申告を行いましたが、
その後buyerが別のshipping lineへ変更し、
sellerへ連絡しませんでした。
この場合、
実輸送とsellerの保険申告内容に不一致が生じます。
C&Iでは、
buyerへBooking情報の提供義務と
船便・航路・仕向地等の変更通知義務を設定することが重要です。
24.よくある誤解
| 誤解 | 実際の考え方 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| C&IはIncoterms®である | 正式な11条件には含まれません。 | 契約内容を独自に定義します。 |
| CIFからFreightを取ればC&Iになる | CIFの危険移転等は自動的に残りません。 | 危険移転を別途設定します。 |
| sellerが保険を持つにはCIFしかない | Freightをbuyerへ残して保険だけsellerが持つことも可能です。 | C&IまたはInsurance Clauseを検討します。 |
| sellerが仕向地まで保険するなら危険もsellerが負う | 危険移転と保険期間は別です。 | 売買契約と保険契約を分けて確認します。 |
| All Risksなら地震も必ず補償される | 保険種類・約款によって異なります。 | 約款・特約を確認します。 |
| C&Iなら輸出FOB保険は自動的に不要 | 外航保険が船積前から開始している必要があります。 | 空白・重複を確認します。 |
| buyerが保険を持っていればseller保険は不要 | 危険移転前はsellerの被保険利益が問題になります。 | buyer保険の始期・被保険者を確認します。 |
| 事故時は運送人へ請求すればよい | 運送人には免責、責任制限、挙証問題があります。 | 貨物保険と運送人責任を代替関係と考えません。 |
25.C&I導入の実務手順
- 現在のFOB輸出額、輸送件数、一輸送当たり最大貨物価額を確認する。
- FOBの危険移転前にsellerが負う輸送区間を確認する。
- 現在その区間を補償している保険を確認する。
- 地震、津波、火災、荷役事故等の補償内容を確認する。
- buyer側保険の保険始期、保険条件、被保険者等を可能な範囲で確認する。
- seller warehouseから仕向地までの外航貨物海上保険の見積りを取得する。
- 年間保険料を年間FOB売上で割り、売価への影響を算定する。
- FOBからCIFへ変更した場合のseller側Freightも取得する。
- CIF化とC&I型のコストを比較する。
- buyerへ「Freightは変更せず、Insuranceだけ変更する」案を提示する。
- 危険移転、保険区間、保険条件、保険金額、輸送情報提供義務を契約化する。
- Open Policy等を利用し、付保漏れのない社内運用を構築する。
26.まとめ
C&I(Cost and Insurance)は、
Incoterms® 2020の正式な貿易条件ではありません。
しかし外航貨物海上保険の実務では、
FOB輸出企業が抱える
「buyerのFreightは維持したいが、
貨物保険はseller自身で管理したい」
という問題を解決する方法として、
検討価値があります。
FOBからCIFへ変更すると、
InsuranceだけでなくFreightまでseller側へ移ります。
buyerが大量輸送によって有利なFreightを持っている場合には、
このFreight差が商品価格の競争力を損なうことがあります。
C&I型の考え方では、
buyerのFreightを維持しながら、
Insuranceだけをsellerの管理へ戻す
ことができます。
さらにseller warehouseから仕向地まで
外航貨物海上保険を連続して設計できれば、
国内集荷、CFS、CY、本船輸送、仕向港、
buyer側内陸輸送までを一つの保険体系として
管理できる可能性があります。
この方法の最大の価値は、
単に保険料が安いことではありません。
自社製品の貨物リスクをseller自身が把握し、
補償条件、保険会社、保険期間、事故対応、
サーベイ、保険金請求、代位求償までを
自社のリスク管理体系の中へ取り戻せること
にあります。
一方、C&Iは非標準条件です。
そのため、単にInvoiceへ「C&I」と記載するだけでは不十分です。
危険移転、主運送、Freight、
Insurance、保険区間、保険条件、保険金額、
Insurance Certificate、
Booking情報の提供義務および変更通知義務を
sellerとbuyerの間で明確にする必要があります。
コンテナ輸出等では、
C&Iという名称を使わず、
FCAその他の正式なIncoterms®条件に
seller手配のInsurance Clauseを追加する方法も有力です。
FOB輸出企業が検討すべき問いは、
「FOBをCIFへ変更できるか」だけではありません。
「buyerのFreightはそのまま残して、
Insuranceだけをseller自身の管理へ戻せないか」
という視点が重要です。