CIF条件で貨物を輸入すると、
「Insurance込みの価格なのだから、日本の自社倉庫へ届くまで保険が付いている」
と考えてしまうことがあります。
しかし、CIF輸入で最も注意しなければならないのは、
貨物の危険を負担する者と、貨物保険を手配する者が異なる
ことです。
Incoterms® 2020のCIFでは、
sellerは指定仕向港までの主運送と貨物保険を手配します。
一方、貨物の滅失・損傷の危険は、
積地港で貨物が本船上に置かれた時点でbuyerへ移転します。
つまり日本のimporterは、
海上輸送中の貨物リスクを自ら負担しているにもかかわらず、
そのリスクを補償する保険については、
海外sellerが選択した保険会社、保険条件、保険金額、
保険期間およびclaims handlingへ依存することになります。
「CIFだから保険がある」という事実だけでは、
日本国内の最終配送先まで十分な補償があることを意味しません。
実際のInsurance Certificate、Insurance Policy、
insured destination、適用約款およびTransit Clauseを確認する必要があります。
特に問題になりやすいのが、
日本港へ到着した後のCY・CFS・保税倉庫・devanning、
そして日本国内のトラック配送中に発生する事故です。
本記事では、
CIF輸入における海外seller手配保険の確認方法、
日本到着後の保険期間、国内配送事故、
海外保険会社への保険金請求、
Back-up Insuranceその他の輸入者側保険対策
を実務的に解説します。
1.CIFでは「保険を手配する者」と「危険を負担する者」が異なる
CIFを理解するうえで最初に整理しなければならないのは、
Cost、Freight、Insuranceの負担と、
貨物の危険移転は同じ地点ではないという点です。
| 項目 | seller | buyer・importer | 実務上の意味 |
|---|---|---|---|
| 本船積込み前の危険 | 原則として負担 | 原則としてまだ負担しない | 積地側で発生した事故はseller側の危険となります。 |
| 本船積込み後の危険 | buyerへ移転済み | 負担 | 航海中の貨物損害はbuyerの経済的損失になります。 |
| 指定仕向港までの主運送 | 手配・費用負担 | 売価を通じて負担 | sellerが運送契約を締結します。 |
| 貨物保険 | buyerの利益のために手配 | 危険移転後の被保険利益を有する | seller手配の保険をbuyerが利用する構造です。 |
| 輸入通関 | 原則としてbuyer側の手続ではない | 手配・費用負担 | 日本側の輸入実務となります。 |
| 仕向港後の国内配送 | CIF上の主運送義務の範囲外 | 通常buyerが手配 | 保険が継続しているかbuyer自身が確認する必要があります。 |
sellerが保険料を負担していることと、
sellerが航海中の貨物損失を負担することは同じではありません。
CIFでは、危険移転後のbuyerの貨物リスクについてsellerが保険を手配します。
2.CIFで要求される保険は「最低限の保険」である
Incoterms® 2020のCIFでは、
sellerは指定仕向港までの貨物保険を手配しなければなりません。
しかし、当事者間でより広い条件を合意していない場合、
sellerに要求される標準的な最低補償水準は、
Institute Cargo Clauses (C)又はこれに類する条件です。
ICC(C)は、ICC(A)と比較すると補償危険が限定されています。
そのため、
高額機械、精密機器、電子機器、完成品その他、
荷役中の衝撃、落下、接触、部分破損等を重視する貨物については、
「CIFだから保険条件も十分」とは限りません。
buyerがより広い補償を必要とする場合は、
売買契約でsellerへICC(A)等を要求するか、
buyer側で不足部分を補う保険設計を検討します。
3.「CIFだからPort-to-Port」と「実際の保険期間」は分けて考える
CIFは海上又は内陸水路輸送を対象とするIncoterms®条件であり、
sellerの運送・保険手配義務は指定仕向港までを基本とします。
しかし、実際にsellerが取得する外航貨物海上保険そのものが、
必ず指定仕向港で終了するとは限りません。
sellerがWarehouse-to-Warehouse型の保険を手配し、
Insurance Certificate又はPolicyにbuyerの工場・倉庫等が
最終仕向地として設定されていれば、
日本国内の輸送についても補償が継続する場合があります。
したがって、
「CIFだから国内配送は必ず無保険」
と考えることも、
「CIFだからbuyer倉庫まで必ず保険がある」
と考えることも、どちらも正確ではありません。
判断基準は、
実際に発行された保険書類と適用約款です。
4.Insurance Certificateで最初に確認する事項
CIF輸入を行うbuyerは、
Insurance Certificateを単なる船積書類の一つとして処理するのではなく、
自社の貨物リスクを補償する保険契約の重要資料として確認する必要があります。
| 確認事項 | 確認する内容 | 不十分な場合の問題 | buyer側の対応 |
|---|---|---|---|
| Insurer | 保険会社名・所在地 | 事故時の連絡先や請求先が分からない | 船積前に保険会社を確認します。 |
| Insurance Certificate | 正式な保険証明書が発行されるか | 保険内容・請求権を確認しにくい | 船積書類として取得します。 |
| Insured / Assured | 誰が保険を利用できるか | 事故時の保険金請求権が不明確 | 名義・裏書等を確認します。 |
| Insured Destination | Tokyo Port等かbuyer warehouseまでか | 国内配送区間に空白が生じる | 不足区間をbuyer側で付保します。 |
| Insurance Conditions | ICC(A)、ICC(B)、ICC(C)等 | 想定事故が補償されない | 必要条件との差を確認します。 |
| Insured Amount | 保険金額 | 損害額に対して補償額が不足する | 必要に応じ追加保険を検討します。 |
| Deductible | 免責金額・免責割合 | 小額事故が実質的に自己負担となる | 許容可能な自己負担額か確認します。 |
| War / Strikes | 戦争・ストライキ危険の付帯 | 特定危険が補償されない | 必要に応じ追加条件を要求します。 |
| Claims Agent | 日本で事故受付・survey等が可能か | 事故初動が遅れる | 日本国内の連絡先を事前に保存します。 |
| Applicable Law | 保険契約の準拠法・紛争解決 | 重大事故時の交渉が複雑になる | 高額貨物ではPolicy全文を確認します。 |
5.Port-to-PortとWarehouse-to-Warehouseの違い
| 輸送段階 | 港までの保険の場合 | Warehouse-to-Warehouseの場合 | 確認事項 |
|---|---|---|---|
| 海上輸送 | 原則対象 | 原則対象 | ICC条件・航路 |
| 本船からの荷卸し | 終期との関係を確認 | 通常輸送過程中なら継続する場合があります。 | Transit Clause |
| CY・CFS | 対象外となる可能性があります。 | 通常輸送過程なら継続する場合があります。 | 保管目的・事故日時 |
| 保税倉庫 | 原則として別保険が必要となる可能性 | 通常輸送過程かどうかを確認 | 搬入目的・保管期間 |
| Devanning | 保険終了後となる可能性 | 仕向地・通常輸送過程との関係で判断 | Policy、作業場所 |
| 国内Drayage | buyer側で別途付保が必要となる可能性 | 指定最終仕向地まで継続する場合があります。 | Insurance Certificate |
| buyer工場・倉庫 | 通常対象外 | 契約上の最終倉庫で終了する設計が可能 | 最終荷卸し地点 |
なお、Insurance Certificate表面に港名だけが記載されていても、
それだけで保険終期を完全に判断できるとは限りません。
Certificate、Policy、適用約款、
Transit Clauseその他の特約を一体として確認することが重要です。
6.日本港へ到着しただけで保険が終了するとは限らない
海外sellerの貨物保険がWarehouse-to-Warehouse型で設定されている場合、
外航本船から貨物が荷卸しされた後も、
通常の輸送過程にある限り保険が継続する場合があります。
日本で一般的に使用される外航貨物海上保険では、
仕向地の最終倉庫等において輸送用具から貨物の荷卸しが完了した時まで
保険を継続する設計があります。
一方、例えば次のような場合には、
最終倉庫へ到着する前でも保険が終了することがあります。
- 外航本船からの荷卸し後、約款所定の日数を経過した場合
- 通常の輸送過程ではない保管のため倉庫へ搬入した場合
- 通常の輸送過程ではない仕分け・加工等のため輸送を中断した場合
- 保険契約上指定された最終倉庫で荷卸しが完了した場合
- その他、適用約款上の終了事由に該当した場合
日本の一般的な外航貨物海上保険では、
外航本船からの荷卸し後60日経過で終了する場合があります。
通常の輸送過程から外れた保管等が行われれば、
60日より前に保険が終了する場合があります。
また、海外sellerが手配した保険については、
実際のPolicy wordingを確認する必要があります。
7.CY・CFS・保税倉庫での事故
CIF輸入では、日本へ到着した後のターミナル事故が
保険金請求上の争点となることがあります。
例えば次のような事故です。
- CY内でcontainerを移動中に落下した
- Reach Stacker等による取扱中にcontainerが損傷した
- CFSでdevanning中に貨物を落下させた
- forkliftの爪が貨物へ接触した
- 保税倉庫内で荷崩れした
- container doorを開けたところ海水濡れが発見された
このような事故で、
「本船から荷卸しされたから海外保険は終わった」
と即断してはいけません。
次の順序で確認します。
- Insurance Certificateのinsured destinationを確認する。
- PolicyとTransit Clauseを確認する。
- 本船からの荷卸し日時を確認する。
- 事故時点で貨物が通常の輸送過程にあったか確認する。
- CY・CFS・倉庫への搬入目的を確認する。
- 事故原因が適用されるICC条件で担保されるか確認する。
- terminal、warehouse、Actual Carrier等への損害賠償請求権を保全する。
8.保険期間内でもICC(C)では支払われない事故がある
CIF事故では、
「保険期間内か」だけでは判断できません。
次に、
事故原因が適用保険条件で担保されているか
を確認します。
sellerのInsurance Certificateがbuyer warehouseまで継続しており、
事故時点では保険期間内だったとします。
しかしsellerが手配した保険がICC(C)相当の限定条件であれば、
単純なforklift接触による貨物破損が
保険条件上の担保危険に該当しない可能性があります。
つまり、
「保険期間中の事故」と
「保険金が支払われる事故」は別です。
9.日本国内配送で最も多い問題―「CIF保険があると思っていた」
CIF貨物が日本港へ到着し、
importerが輸入通関を行った後、
自社が手配したトラックで工場・倉庫へ配送するケースがあります。
この区間で車両事故、横転、container落下、
荷崩れ、雨濡れ、盗難等が発生した場合、
初めてInsurance Certificateを詳しく確認し、
seller保険が港で終了していたことに気付くことがあります。
この場合、
事故発生後に国内配送区間へ保険を遡って追加することはできません。
CIF輸入では船積前又は遅くとも国内配送開始前に、
seller保険の終期を確認する必要があります。
10.国内運送人へ請求できるから貨物保険は不要、とはならない
日本国内配送中に運送人の過失で貨物が破損した場合、
Actual Carrierその他の責任者へ損害賠償請求できる場合があります。
しかし、運送人への賠償請求と貨物保険は別の制度です。
運送人側では、
- 事故原因についての責任争い
- 荷造り・梱包不良の主張
- 貨物固有の性質による損害の主張
- 運送契約上の免責
- 責任制限
- 事故発生時点の立証問題
等が問題となることがあります。
高額貨物について、
「事故が起きればトラック会社へ請求すればよい」
という考えだけで輸送するのは適切なリスク管理ではありません。
buyer自身の物的損失を直接リスク移転するための保険です。
保険金支払後は、保険会社が運送人等へ代位求償する場合があります。
11.CIF輸入の保険問題は二種類に分ける
CIF輸入のbuyer側保険を検討するときには、
次の二つを混同しないことが重要です。
①そもそも補償区間が存在しない問題
seller保険がYokohama Portまでで終了し、
横浜港からbuyer warehouseまでの国内配送に保険が存在しないケースです。
この問題は、
無保険区間そのものを直接付保する
ことで解決します。
②seller保険はあるが十分に機能しない問題
こちらは、
- 補償条件が狭い
- 保険金額が不足している
- 海外保険者との保険金支払争いがある
- claims handlingに問題がある
- seller側保険から十分な補償を得られない
といった問題です。
この第二の問題について、
Back-up Insuranceその他の補完保険を検討します。
12.国内配送保険とBack-up Insuranceは同じではない
| 保険・補完方法 | 主な目的 | 対象となる問題 | 重要な注意点 |
|---|---|---|---|
| seller手配CIF保険 | CIF上sellerがbuyerのために手配 | 指定仕向港までの最低必要保険 | 標準的な最低条件はICC(C)相当です。 |
| buyer側国内配送保険 | 日本港以降の輸送区間を直接補償 | 港からbuyer倉庫までの無保険区間 | seller保険との接続地点を確認します。 |
| Back-up Insurance | seller手配保険が十分機能しない場合の補完 | 海外原保険からの不十分な回収等 | 商品固有の支払条件・免責があります。 |
| DIC型の補完 | seller保険との補償条件差を埋める | seller ICC(C)に対しbuyerがより広い補償を必要とする場合等 | 実際の商品名称・補償方法は保険会社ごとに異なります。 |
| DIL・Increased Value型の補完 | 保険金額・評価額の不足を補う | seller保険の限度額では不足する場合 | 二重保険・保険価額との関係を確認します。 |
日本港以降がseller保険の保険期間外である場合は、
その国内区間自体をbuyer側で直接付保する必要がある場合があります。
13.日本の保険実務にもCIF輸入向けBack-up Insuranceがある
日本国内の貨物保険商品には、
CIF等のseller側付保条件で輸入する貨物について、
sellerが手配した海外保険から十分な補償を受けられない場合に備える
Back-up Insuranceの仕組みがあります。
例えば国内保険会社の現行商品には、
本来支払われるべきseller手配保険から保険金の支払いが行われない場合等に、
Back up Insurance Clauseに基づいて
importer側の損害を補償する仕組みがあります。
ただし、Back-up Insuranceは、
seller手配保険から回収できなかった損害を
無条件にすべて補償するものではありません。
現行商品の一例では、
ICC(C)で補償される損害、
Institute War Clauses (Cargo)又は
Institute Strikes Clauses (Cargo)で補償される損害、
共同海損犠牲損害・共同海損費用、
原保険者の経済的破綻・破産・解散・事業停止による不払い等は、
Back-up Insuranceの補償対象外とされています。
このため、
「Back-up Insuranceに加入していれば、
海外seller手配保険で回収できない損害はすべて日本側保険で補償される」
と考えることはできません。
Back-up Insuranceは商品ごとに補償対象、免責、
原保険との関係および支払条件が異なります。
実際に導入する場合は、対象となる輸入貨物、
seller手配保険の条件および想定する事故を示したうえで、
保険会社又は取扱保険代理店へ具体的な補償範囲を確認してください。
14.多数のCIF輸入を行う企業では年間包括管理を検討する
一社のsupplierから年数回だけ輸入する場合と、
数十社・数百社の海外supplierから年間数百shipmentを
CIFで輸入する企業では、必要な保険管理方法が異なります。
supplierごとに、
- 海外保険会社
- ICC条件
- 保険金額
- deductible
- insured destination
- claims agent
が異なる場合、
shipmentごとに事故発生後初めて確認する運用では
リスク管理が安定しません。
CIF輸入を大量に行う企業では、
buyer側で年間包括的な貨物保険を準備し、
CIF輸入について必要なBack-up機能、
補償条件差、保険金額差、国内配送区間等を
一定のルールで管理する方法を検討できます。
15.CIF契約締結時にbuyerが指定すべき保険条件
CIFではsellerが保険を手配しますが、
buyerがsellerへ最低条件以上の保険を要求することを妨げるものではありません。
特に高額・損傷しやすい貨物では、
売買契約締結時に必要な保険条件を具体的に合意する方法があります。
| 契約事項 | 確認・指定例 | 目的 |
|---|---|---|
| 保険条件 | ICC(A)等 | 最低ICC(C)以上の補償を確保 |
| 保険金額 | CIF価額の110%等、当事者合意額 | 回収不足を防止 |
| 保険区間 | seller warehouseからbuyer warehouseまで等 | 日本国内配送まで連続補償 |
| War / Strikes | 必要な追加危険 | 航路・地域固有のリスクへ対応 |
| Deductible | 許容可能な免責水準 | 小損害の自己負担を管理 |
| Claims Agent | 日本国内で利用可能な損害代理店 | 事故初動を迅速化 |
| Insurance Certificate | 船積後速やかにbuyerへ交付 | 事故時の保険請求を可能にする |
16.事故発見地点と事故発生地点は同じとは限らない
CIF輸入貨物の損害は、
buyer warehouseで初めて発見されることがあります。
しかし、
buyer warehouseで損傷を発見したからといって、
国内配送中に事故が発生したとは限りません。
損傷は、
- 積地での荷役
- 本船積込み
- 海上輸送
- 揚港荷役
- CY・CFS
- devanning
- 国内配送
- buyer warehouseでの荷卸し
のいずれかで発生している可能性があります。
したがって事故対応では、
最後に正常だった時点と最初に異常を確認した時点
を特定し、事故区間を絞り込みます。
17.事故区間を特定するための証拠
| 輸送段階 | 主な証拠 | 保険上の確認 | 責任上の確認 |
|---|---|---|---|
| 積地 | 積込写真、B/L、tally等 | seller保険始期・貨物状態 | seller、積地作業者 |
| 海上輸送 | B/L、船舶事故情報、container record | ICC条件・航海事故 | shipping line等 |
| 揚港荷役 | EIR、terminal record、写真 | discharge後の保険継続 | carrier、terminal |
| CY・CFS | Gate Record、CCTV、受渡記録 | 通常輸送過程か | terminal、warehouse |
| Devanning | Devanning Report、写真、作業記録 | 事故時点の保険期間 | CFS、warehouse等 |
| 国内配送 | POD、GPS、運行記録、ドラレコ | seller保険又はbuyer保険 | Actual Carrier |
| buyer倉庫 | 受入記録、荷卸し写真、開梱記録 | 保険終期・concealed damage | 事故区間の特定 |
18.CIF輸入事故の初動対応
CIF事故では、
海外sellerへ連絡して返事を待っている間に
surveyや運送人への事故通知が遅れることを避けなければなりません。
- 損傷貨物、梱包、container等を写真・動画で記録する。
- container number、seal numberを確認する。
- B/L、Invoice、Packing Listを確保する。
- Insurance Certificate又はPolicyを取得する。
- insured destination、ICC条件、保険期間を確認する。
- 海外sellerへ事故を直ちに通知する。
- Insurance Certificate記載のclaims agent等へ事故通知する。
- buyer側保険がある場合は、日本側保険会社・代理店にも同時通知する。
- surveyの要否を確認する。
- shipping line、terminal、warehouse、国内運送人等へClaim Noticeを提出する。
- 損傷貨物・梱包を可能な限り現状保存する。
- 損害拡大防止が必要な場合は、作業前後を記録したうえで必要措置を行う。
- 修理・廃棄・転売前に保険会社へ確認する。
- 責任関係が確定する前に事故責任者を免責する示談を行わない。
保険金請求では通常、
Insurance Policy又はCertificate、Invoice、Packing List、
B/L又はAir Waybill、損傷写真、
Devanning Report・入庫報告書等、
Claim Noticeその他の事故資料が重要となります。
19.海外保険会社への請求で問題になりやすい事項
| 争点 | 典型的な状況 | 確認する資料 | buyer側の対応 |
|---|---|---|---|
| 保険期間外 | 日本国内配送中に事故 | Certificate、Policy、Transit Clause | buyer側国内保険も確認します。 |
| ICC(C)対象外 | 部分的な荷役破損・接触事故 | 適用約款、事故原因 | buyer側補完保険を確認します。 |
| 事故時点不明 | buyer warehouseで初めて損傷発見 | 受渡記録、写真、EIR、Devanning Report | 事故区間を証拠から絞り込みます。 |
| 通知遅延 | seller経由で数週間経過 | 通知履歴 | 事故発見後早期に直接連絡します。 |
| 梱包不良 | 内部破損・荷崩れ | 梱包仕様、写真、survey | 外的事故との因果関係を確認します。 |
| 数量不足 | piece shortage等 | Packing List、tally、B/L | 船積不足か輸送中不足かを確認します。 |
| Deductible | 小額損害 | Certificate、Policy | buyer側自己負担を確認します。 |
| 保険金額不足 | 高額損害でlimit不足 | insured amount、Invoice | 追加保険設計を次回以降見直します。 |
20.保険会社への請求と運送人へのClaim Noticeは並行して行う
CIF事故では、
「保険会社から支払われるか確認してから運送人へ請求する」
という順番にする必要はありません。
運送人、terminal、warehouseその他に責任がある可能性がある場合は、
損害賠償請求権を保全するため、
Claim Noticeを速やかに提出します。
これはbuyer側保険から保険金が支払われた場合にも重要です。
保険会社が運送人等へ代位求償する際、
Claim Notice、B/L、EIR、Devanning Report、
写真その他の証拠が必要となるためです。
運送人への通知期限や請求期限を失わないよう注意する必要があります。
21.具体例―Tokyo Portまでのseller保険で国内配送中に横転
日本のimporterがCIF Tokyoで大型機械を購入しました。
貨物は東京港へ正常に到着し、
輸入許可後、importerが手配したトラックで
国内工場へ配送されました。
途中でトレーラーが横転し、
機械が大きく損傷しました。
この時点で初めてsellerのInsurance Certificateを確認したところ、
保険区間が国内最終工場まで継続していることを
明確に確認できませんでした。
この場合、
「CIFで購入した」というだけで海外seller保険から
支払われるとは判断できません。
Policy、Certificate、Transit Clauseを確認し、
seller保険が国内輸送まで継続していなければ、
buyer側で国内配送保険を準備していたかが重要になります。
22.具体例―CY内事故で「本船から降ろしたから終了」と言われた場合
CIF輸入containerが日本港でdischargeされた後、
CY内の荷役中に大きく傾き、
内部の機械が損傷しました。
海外保険側から、
「本船から荷卸しされた後の事故である」
との説明を受けたとします。
しかし、本船から荷卸しされた事実だけで
保険終了と決まるとは限りません。
insured destination、
Transit Clause、
discharge日時、
事故時の貨物の保管目的、
通常の輸送過程であったかを確認します。
同時にterminal等へClaim Noticeを行い、
EIR、CCTV、荷役記録、写真等を保全します。
23.具体例―ICC(C)ではforklift事故が補償されない場合
CIFで輸入したパレット貨物をCFSでdevanning中、
forkliftの爪が貨物へ接触して内容品が破損しました。
seller保険の保険期間内ではありましたが、
適用条件はICC(C)相当でした。
この事故原因がICC(C)で列挙される担保危険に該当しなければ、
保険期間内であってもseller保険から支払われない可能性があります。
高額機械・完成品等でこのような事故を重視するbuyerは、
契約時にsellerへICC(A)等を要求するか、
buyer側で補償条件差を埋める保険を検討します。
24.具体例―海外保険会社との請求が長期化した場合
輸送中に水濡れ事故が発生し、
seller手配の海外保険へ請求しました。
しかし、seller、海外broker、claims agent、
insurerの間で連絡が滞り、
長期間支払判断が出ないケースがあります。
buyer側にBack-up Insurance等がある場合は、
海外原保険への請求結果が確定してから初めて連絡するのではなく、
事故発生時点から国内保険会社へも通知し、
海外原保険への請求経緯と事故証拠を保存します。
ただし、単に支払処理が遅いというだけで
Back-up Insuranceから直ちに保険金が支払われるとは限りません。
実際の支払要件を確認する必要があります。
25.よくある誤解
| 誤解 | 実際の考え方 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| CIFならbuyer倉庫まで保険がある | CIF上のsellerの最低保険義務は指定仕向港までです。 | 実際のPolicyとinsured destinationを確認します。 |
| CIFなら輸送中の危険はsellerが負う | 危険は積地港で本船積込み時にbuyerへ移転します。 | 危険移転と保険手配を区別します。 |
| 海外付保は必ずPort-to-Port | より広いWarehouse-to-Warehouse保険もあります。 | 海外保険だからという理由だけで判断しません。 |
| 本船から降ろしたら必ず保険終了 | 通常輸送過程中は保険が継続する場合があります。 | Transit Clauseを確認します。 |
| 荷卸し後60日以内なら必ず補償される | 通常輸送過程外の保管等でそれ以前に終了する場合があります。 | 事故時の保管目的・輸送状態を確認します。 |
| 保険期間中ならどんな事故でも支払われる | 事故原因が担保危険に該当する必要があります。 | ICC(A)/(B)/(C)等を確認します。 |
| 国内事故なら運送会社が全額払う | 責任争い・免責・責任制限等があります。 | 貨物保険も別途確保します。 |
| Back-up Insuranceで国内無保険区間も全部埋まる | 原保険の不十分な回収と、無保険区間の直接付保は別です。 | 保険期間とbackup機能を分けて確認します。 |
| seller保険がICC(C)なら十分 | CIFの最低水準であって、貨物に最適とは限りません。 | 貨物特性から必要補償を決めます。 |
| buyer倉庫で発見したから国内配送事故 | 発見地点と事故発生地点は同じとは限りません。 | 輸送全体の証拠を確認します。 |
| 海外保険だからsellerへ任せればよい | 実際の貨物損失を負うbuyer自身の事故管理が重要です。 | survey・証拠・Claim Noticeを早期に管理します。 |
26.CIF輸入開始前の確認チェック
| 確認場面 | 確認する相手 | 確認事項 | 問題がある場合の対応 |
|---|---|---|---|
| 売買契約締結時 | seller | 保険条件・保険区間 | 必要な条件を契約へ追加します。 |
| 船積前 | seller | Insurer、Insurance Certificate | 書類発行条件を確認します。 |
| 保険条件確認 | seller・保険会社 | ICC(A)/(B)/(C)、deductible | 補完保険を検討します。 |
| 保険区間確認 | seller・保険会社 | buyer warehouseまで継続するか | 不足する国内区間を直接付保します。 |
| 保険金額確認 | seller・buyer側保険会社 | insured amount | 必要に応じ限度額差を補完します。 |
| 日本到着前 | forwarder・保険会社 | 国内配送開始時の保険状態 | 国内配送保険を開始します。 |
| 事故発見時 | seller・海外保険会社・国内保険会社 | 事故地点・保険期間・損害状態 | 責任確定前に同時通知します。 |
| Survey前 | surveyor・保険会社 | 保存すべき貨物・梱包 | 無断廃棄・修理を避けます。 |
| 運送人への通知 | shipping line・terminal・Actual Carrier等 | Claim Notice | 代位求償権を保全します。 |
| 海外原保険で問題発生 | 海外保険会社・buyer側保険会社 | 不払い理由・Policy条項 | Back-up等の適用を確認します。 |
27.保険会社・保険代理店・海事弁護士等へ相談すべき場面
| 場面 | 主な相談先 | 確認事項 | 早期相談が必要な理由 |
|---|---|---|---|
| seller保険が日本港までしかない | 保険会社・取扱保険代理店 | 国内配送区間の付保方法 | 港搬出後に無保険となる可能性があります。 |
| seller保険がICC(C)のみ | 保険会社・取扱保険代理店 | 必要補償との差 | 事故後に補償条件を広げることはできません。 |
| Back-up Insuranceを検討 | 保険会社・取扱保険代理店 | 対象事故・免責・原保険との関係 | 商品ごとに補償構造が異なります。 |
| 高額なCY・CFS事故 | 保険会社・取扱保険代理店 | survey、保険期間、求償 | 現場証拠が短期間で失われます。 |
| 海外保険会社が保険期間外と拒絶 | 保険会社・必要に応じ海事保険に詳しい弁護士 | Policy、Transit Clause、事故時系列 | 保険契約解釈が争点になります。 |
| 海外保険と国内保険の双方が関係 | 両保険会社・取扱保険代理店 | 補償順位、他保険、必要書類 | 一方への対応が他方へ影響する場合があります。 |
| 海外保険会社との重大な契約紛争 | 海事・保険に詳しい弁護士 | 準拠法、管轄、Policy、被保険利益 | 外国法・外国管轄が関係する可能性があります。 |
| 運送人から示談を求められた | 保険会社・必要に応じ弁護士 | 代位求償権・責任制限・示談内容 | 不用意な免責が保険者の求償権へ影響する可能性があります。 |
28.CIF輸入企業の保険管理をどう設計するか
CIF輸入が少数で、
sellerが信頼できる保険会社による十分なWarehouse-to-Warehouse保険を
毎回手配しているのであれば、
buyer側で大規模な補完保険を用意する必要性は低い場合があります。
一方、次のような企業ではbuyer側保険の再検討価値が高くなります。
- 多数の海外supplierからCIF輸入している
- supplierごとに保険会社・保険条件が異なる
- 高額機械・精密機器を輸入している
- ICC(C)では補償不足となる貨物が多い
- 日本国内配送区間が長い
- 港・保税倉庫で一定期間滞留することがある
- 海外保険会社とのclaims handlingに不安がある
- 一事故の最大損失額が大きい
この場合は、
seller保険を単に信用するか否かという二者択一ではなく、
第1層:sellerが手配するCIF保険
+
第2層:buyer自身が管理する国内配送・条件差・限度額差・Back-up等の補完保険
という二層構造でリスクを管理する方法があります。
29.まとめ
CIF輸入ではsellerが貨物保険を手配します。
しかし、貨物の滅失・損傷の危険そのものは、
積地港で貨物が本船上に置かれた時点でbuyerへ移転します。
したがって日本のimporterは、
自分自身が貨物リスクを負っているにもかかわらず、
その保険を海外sellerと海外保険会社へ依存する
という構造になります。
CIFでsellerに要求される標準的な最低保険水準は
ICC(C)相当であり、
保険手配義務は指定仕向港までを基本とします。
実際にはsellerがより広いWarehouse-to-Warehouse保険を
手配している場合もあります。
したがって、
CIFという建値だけで保険内容を推測してはいけません。
buyerが確認すべきなのは、
- Insurance Certificate
- Insurance Policy
- Insurer
- Insured / Assured
- Insured Destination
- ICC(A)/(B)/(C)
- Insured Amount
- Deductible
- Transit Clause
- Claims Agent
です。
特に日本港到着後のCY、CFS、保税倉庫、
devanning、国内drayageで事故が発生した場合には、
「本船から降ろしたから保険終了」
「60日以内だから保険対象」
と機械的に判断してはいけません。
実際の保険期間と事故時の輸送状態を確認します。
また、
seller保険が終了しているため国内配送区間そのものが無保険である問題
と、
seller保険は存在するが十分な補償・回収を得られない問題
は区別する必要があります。
前者にはbuyer自身による国内配送区間の直接付保、
後者には契約内容に応じてBack-up Insuranceや
その他の補完保険を検討します。
CIF輸入で重要なのは、
「Insurance込みで買ったからsellerに任せる」ことではありません。
貨物の危険を負っているbuyer自身が保険内容を確認し、
不足する区間・条件・金額・claims handlingを
自社側で補完することが基本です。