Assignment of Policy|MIA 1906 Section 50–51
Marine Insurance Act 1906(MIA 1906)のSection 50およびSection 51は、
Marine Policy(海上保険証券)のAssignment(譲渡)について規定しています。
Marine Policyをいつ譲渡できるか、どのような方法で譲渡できるか、
Policy上のbeneficial interestが譲渡された場合に譲受人がどのような権利を取得するか、
さらに被保険者が被保険目的物に対するinterestを既に失った後の譲渡について規定しています。
Section 15は、被保険目的物に対するinterestそのものの移転と
保険契約上の権利との関係を扱います。
Section 50・51は、
Marine PolicyそのもののAssignmentを扱います。
貨物の所有権、売買契約上の危険負担、被保険利益、Marine Policy上の権利は、
それぞれ関連しますが同一の概念ではありません。
Section 50|When and how policy is assignable
現行
(1) A marine policy is assignable unless it contains terms expressly prohibiting assignment. It may be assigned either before or after loss.
(2) Where a marine policy has been assigned so as to pass the beneficial interest in such policy, the assignee of the policy is entitled to sue thereon in his own name; and the defendant is entitled to make any defence arising out of the contract which he would have been entitled to make if the action had been brought in the name of the person by or on behalf of whom the policy was effected.
(3) A marine policy may be assigned by indorsement thereon or in other customary manner.
概要
Section 50は、Marine PolicyにAssignmentを明示的に禁止する条項がない限り、
原則としてPolicyを譲渡できることを規定しています。
その譲渡は、損害発生前だけでなく損害発生後にも行うことができます。
また、Policy上のbeneficial interestが有効に譲渡された場合、
譲受人は自己の名義でPolicyに基づく請求を行うことができます。
原則|Marine Policyは譲渡可能
Section 50(1)の出発点は、
Marine Policyが原則としてassignableであるということです。
ただし、Policy自体にAssignmentを明示的に禁止する条件が存在する場合には、
その契約条件を確認する必要があります。
Section 50(1)自身が、
PolicyにAssignmentをexpressly prohibitingする条項がある場合を除外しています。
したがって、実際のPolicy wordingを最初に確認します。
損害発生前でも損害発生後でも譲渡できる
Section 50(1)は、
Marine Policyについて
before or after loss
のいずれでもAssignmentが可能であることを明示しています。
これは海上保険特有の重要な実務的意味を持ちます。
国際売買では、貨物や船積書類が取引途中で譲渡される場合があり、
さらに損害発生後に保険金請求権を含むPolicy上の利益の帰属が問題となる場合もあります。
譲受人は自己名義で請求できる
Section 50(2)では、
Marine PolicyがPolicy上のbeneficial interestを移転するよう有効にAssignmentされた場合、
assignee(譲受人)は自己名義でPolicyに基づく訴えを提起できるとしています。
ただし、譲渡によってPolicy上の権利だけが切り離され、
保険者側の抗弁が消滅するわけではありません。
保険者は、
元のPolicy holderに対して主張できた契約上のdefenceを、
原則として譲受人に対しても主張することができます。
Assignmentによって譲受人が元の契約より強い権利を当然に取得するわけではありません。
譲受人はPolicy上の利益を承継しますが、
同時にそのPolicyに内在する契約上の制約・抗弁も問題となります。
Assignmentの方法
Section 50(3)は、
Marine Policyを
indorsement(裏書)
またはその他のcustomary manner(慣行的方法)によって譲渡できると規定しています。
貨物海上保険実務では、
Insurance PolicyまたはInsurance Certificate上のendorsementが問題になることがあります。
MIA Section 50がMarine PolicyのAssignmentを認めていることと、
個々のInsurance Certificate、Open Cover、電子書類等が
どの方法で譲渡可能かは別途確認が必要です。
実際の証券文言、発行方式、契約条件を確認します。
国際売買との関係
国際売買では、
売主が貨物保険を手配した後、
買主その他の利害関係者へ保険上の利益を移転する必要が生じる場合があります。
特にCIFやCIPなど、
売主側が貨物保険を手配する取引では、
保険書類を買主へ提供し、
買主が事故発生時に保険者へ請求できる状態にすることが重要です。
ただし、
Incoterms®上売主に保険手配義務があることと、
MIA Section 50上どのようにMarine Policyの権利がAssignmentされるかは、
同一の法律問題ではありません。
B/Lの裏書と保険証券の裏書は別
| 書類 | 主な機能 | Assignmentとの関係 |
|---|---|---|
| Bill of Lading | 運送契約・貨物受領・場合によっては権利証券としての機能 | B/L上の権利移転の問題 |
| Marine Policy | 海上保険契約を具体化する保険証券 | Section 50・51によるAssignmentの問題 |
| Insurance Certificate | 包括契約等に基づく個別輸送の保険書類として用いられる場合がある | 実際のCertificate wording・契約構造を確認 |
「B/Lを裏書したから保険上の権利も当然に全部移った」
とは限りません。
貨物の権利移転とMarine PolicyのAssignmentを別々に確認します。
Section 15との関係
Section 15は、
被保険者がsubject-matter insuredに対するinterestを譲渡または手放しても、
それだけでMarine Insurance Contract上の権利が譲受人へ当然に移転するわけではないことを規定しています。
一方、Section 50はMarine PolicyそのものをAssignmentする制度を規定します。
| Section | 対象 | 基本的な意味 |
|---|---|---|
| Section 15 | Interest in subject-matter | 貨物等に対するinterestの移転だけでは保険契約上の権利は当然移転しない |
| Section 50 | Marine Policy | PolicyそのもののAssignmentを規定 |
| Section 51 | Interest喪失後のAssignment | 事後的なPolicy譲渡を一定の場合に制限 |
関連Section
現行法上の注意
実際の譲渡では、Section 50だけでなく、Policyに譲渡禁止・譲渡方法その他の条件がないかを確認する必要があります。
Section 51|Assured who has no interest cannot assign
現行
Where the assured has parted with or lost his interest in the subject-matter insured, and has not, before or at the time of so doing, expressly or impliedly agreed to assign the policy, any subsequent assignment of the policy is inoperative:
Provided that nothing in this section affects the assignment of a policy after loss.
概要
Section 51は、
被保険者が被保険目的物に対するinterestを既に譲渡または喪失した後になってから、
Marine Policyだけを事後的に譲渡することを一定の場合に制限する規定です。
被保険者がinterestを手放す前またはその時点で、
Policyを譲渡することについて明示または黙示の合意をしていなかった場合、
その後に行うPolicyのAssignmentは原則としてinoperativeとなります。
なぜこの制限があるのか
Section 50だけを見ると、
Marine Policyは原則として自由に譲渡できるように見えます。
しかし海上保険は、
被保険目的物に対するInsurable Interestとの関係を基礎とする契約です。
そのため、貨物等に対するinterestを完全に失った者が、
その後になって無関係な第三者へPolicyだけを自由に譲渡し、
新たな保険上の権利を作り出すことには制限が必要です。
① Interestを持っている
② Policyを譲渡する合意をする
③ Interestが移転する
という関係と、
① Interestを完全に失う
② その時点ではPolicy譲渡の合意なし
③ 後からPolicyだけ譲渡する
という関係では、Section 51上の扱いが異なります。
売買による貨物の移転
国際売買では、
貨物についてのinterestが売主から買主へ移る場面があります。
その際、
貨物に関する権利だけを移転し、
保険契約について何の取扱いも定めないまま、
売主が後になって保険証券を買主へ譲渡しようとすると、
Section 51が問題となる可能性があります。
したがって、
Marine Policyを買主へ移転することが予定されている場合には、
貨物に対するinterestの移転とPolicyのAssignmentを
一連の取引として適切に処理することが重要です。
損害発生後のAssignmentは別扱い
Section 51の末尾には重要な但書があります。
つまりSection 51の制限は、
損害発生後のMarine PolicyのAssignmentには影響しないと明示されています。
損害が既に発生した後には、
Policyに基づく保険金請求権が具体化している場合があります。
そのため、損害発生前にinterestを失った者が後からPolicyを譲渡する問題と、
既に発生した損害に関するPolicy上の権利を譲渡する問題は区別されています。
事故発生前と事故発生後
| 場面 | Section 51 | 確認事項 |
|---|---|---|
| Interest移転前にPolicy譲渡を合意 | Assignment成立の可能性 | 明示・黙示の合意内容を確認 |
| Interest移転と同時にPolicy譲渡を合意 | Assignment成立の可能性 | 取引書類・Endorsement等を確認 |
| Interestを失った後で初めてPolicy譲渡 | 原則としてinoperative | Section 51の制限を確認 |
| Loss発生後のPolicy譲渡 | Section 51の制限対象外 | Section 50および契約条件を確認 |
CIF取引との関係
CIF取引では、
売主が海上保険を手配し、
契約条件に従った保険書類を買主へ提供します。
この場面では、
「売主が保険契約を締結した」という事実だけでなく、
最終的に買主が保険事故について保険者へ請求できる状態にあるかが重要です。
Marine PolicyまたはInsurance Certificateの譲渡可能性、
Endorsement、
Assuredの表示、
契約上のbeneficial interest等を確認する必要があります。
CIFやCIPが保険手配義務を定めていても、
実際のMarine Policy上の権利移転はPolicy wording、MIAその他の法律関係によって確認します。
貨物事故での実務確認手順
| 確認順序 | 確認事項 | 主な資料 | 判断目的 |
|---|---|---|---|
| 1 | 誰が保険を手配したか | Policy、Certificate | 元のAssuredを確認 |
| 2 | 誰が事故時にInterestを持つか | 売買契約、Invoice、Incoterms® | Section 5・6を確認 |
| 3 | Interestの移転時期 | 売買契約、取引記録 | Section 15・51との関係を確認 |
| 4 | Policy譲渡の合意時期 | 契約書、メール、Endorsement | Interest喪失前・同時・後を判定 |
| 5 | Assignment方法 | Policy、裏書 | Section 50(3)を確認 |
| 6 | 譲渡禁止条項 | Policy wording | Section 50(1)の例外を確認 |
| 7 | Loss発生時期 | Survey Report、事故通知 | Section 51但書との関係を確認 |
| 8 | 保険者のDefence | Policy、事故資料 | 譲受人に対しても主張可能な抗弁を確認 |
実務例1|CIF売主から買主への保険書類移転
CIF条件で売主がMarine Cargo Insuranceを手配し、
貨物に対するinterestの移転とともに、
保険書類についても買主が利用できるよう適切なAssignmentを行った場合を考えます。
この場合、
Section 50によるMarine Policyの譲渡可能性と、
実際のPolicyまたはCertificate上の譲渡方法を確認します。
買主がPolicy上のbeneficial interestを有効に取得すれば、
Section 50(2)による自己名義での請求が問題となります。
実務例2|貨物を売却した後でPolicyだけ譲渡
売主が貨物に対するinterestを完全に買主へ移転した際には、
Marine Policyを譲渡する合意を一切していなかったとします。
その後になって売主が
「保険も買主へ移しておこう」とPolicyをAssignmentしようとした場合には、
Section 51によってその事後的なAssignmentがinoperativeとなる可能性があります。
実務例3|事故発生後の譲渡
貨物事故が既に発生し、
Policyに基づく保険金請求権が問題となっている状態で、
Policy上の権利をAssignmentする場合には、
Section 51末尾の但書が重要になります。
Section 51は、
Policy after lossのAssignmentを妨げないと明示しています。
ただし、実際の譲渡の有効性・範囲についてはSection 50とPolicy wordingその他の法律関係を確認します。
よくある誤解
| 誤解 | 実際の考え方 | 実務上の注意 |
|---|---|---|
| 貨物を譲渡すれば保険も自動的に移る | Section 15はこれを否定する | PolicyのAssignmentを別途確認 |
| Marine Policyは絶対に譲渡できる | 明示的な譲渡禁止条項があれば別 | Section 50(1)とPolicyを確認 |
| Policyは事故前しか譲渡できない | Section 50はbefore or after lossを認める | Section 51但書も確認 |
| 譲受人は元の被保険者より強い権利を得る | 保険者の契約上のDefenceは残り得る | Section 50(2)を確認 |
| B/Lを裏書すれば保険証券も自動的に譲渡される | 別の権利関係 | B/LとMarine Policyを分けて処理 |
| Interestを失った後でもいつでもPolicyを譲渡できる | Section 51の制限がある | 譲渡合意の時期を確認 |
| CIFなら買主は必ず自動的に保険契約者になる | 売主の保険手配義務とPolicy上の権利帰属は別問題 | 実際の保険書類を確認 |
Section 15・50・51の整理
| Section | テーマ | 核心 | 貨物保険実務 |
|---|---|---|---|
| 15 | Assignment of Interest | Interest移転だけでは保険上の権利は当然移転しない | 貨物売買と保険を分けて確認 |
| 50 | Assignment of Policy | Marine Policyは原則譲渡可能 | Endorsement・Policy wordingを確認 |
| 51 | Loss of Interest | Interest喪失後の事後的Assignmentを制限 | 譲渡合意の時期が重要 |
現行法上の注意
Marine Policyの譲渡を実際に判断する場合には、
MIA 1906だけでなく、Policyの譲渡制限・譲渡方法、被保険利益の帰属、
売買契約その他の個別事情を確認する必要があります。
Section 50~51のまとめ
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| Marine Policy | 明示的な禁止条項がない限り原則としてAssignment可能 |
| Assignment時期 | Lossの前でも後でも可能 |
| Assignee | Beneficial Interestを取得した場合、自己名義で請求可能 |
| Insurer's Defence | 元の契約に基づく抗弁は譲受人に対しても問題となる |
| 方法 | Indorsementまたはその他のCustomary Manner |
| Interest喪失後 | 事前・同時の譲渡合意がなければ後のAssignmentは原則inoperative |
| After Loss | Section 51はLoss後のPolicy Assignmentを妨げない |
公式法令
Section 50~51で最も重要なのは、
貨物に対するInterestの移転とMarine Policy上の権利の移転を別々に考えることです。
これはCIF・CIP等の国際売買だけでなく、
輸送中の転売、Insurance PolicyのEndorsement、
事故後の保険金請求権の帰属を整理する際にも重要です。
次の「The Premium」では、
Section 52からSection 54まで、
保険料の支払時期、Brokerを介した保険料支払、
保険者・Broker間の責任について解説します。