大量破壊兵器キャッチオール規制の該当判断|用途要件・需要者要件・懸念情報の確認

Determining Applicability of WMD Catch-All Controls|End-Use, End-User and Red-Flag Assessment

大量破壊兵器キャッチオール規制の該当判断|用途要件・需要者要件・懸念情報の確認

大量破壊兵器キャッチオール規制は、輸出しようとする貨物又は提供しようとする技術が、リスト規制品に該当しないから自由に輸出・提供できる、という考え方を補完するための安全保障貿易管理制度です。

実務では、貨物又は技術についてリスト規制の該非判定を行った後、輸出令別表第1又は外為令別表の第16項、仕向地その他の適用条件を確認し、そのうえで大量破壊兵器等の開発等に用いられるおそれがないかを確認します。

この判断では、単に「軍用品か民生品か」を見るのではありません。契約書、注文書、仕様書、用途説明、需要者情報、Webサイト、取引経緯、外国ユーザーリストその他の入手情報を総合し、何に使われるのかという用途要件と、誰が使うのかという需要者要件を分けて確認することが重要です。

また、客観要件に該当しないと考えている場合でも、経済産業大臣から許可申請をすべき旨の通知を受けた場合には、インフォーム要件として別途対応が必要になります。

大量破壊兵器キャッチオール規制の実務上の中心は、「相手が怪しそうか」という印象判断ではありません。対象貨物・技術、仕向地、用途、需要者、入手情報及び経済産業省からの通知を、決められた順序で確認し、許可要否を記録可能な形で判断することです。

この記事で扱う範囲

項目 この記事で扱う内容 他記事で扱う内容
大量破壊兵器キャッチオール規制 制度の目的、対象確認、用途要件需要者要件・インフォーム要件による該当判断 キャッチオール規制―輸出管理における用途・需要者確認の実務
第16項 キャッチオール規制判断へ進む前提としての第16項確認 輸出令別表第1第16項の品目確認
用途要件 大量破壊兵器等の開発等に用いられるおそれを用途から確認する方法 用途確認とキャッチオール規制
需要者要件 需要者の事業、研究、過去の活動及び懸念情報から確認する方法 輸出の需要者確認
外国ユーザーリスト 需要者確認での位置付け、掲載時の確認方法、禁輸リストとの違い 外国ユーザーリストの詳細
明らかなとき 需要者要件に関する懸念情報が存在する場合に用途との関係を確認する考え方 明らかガイドラインの詳細確認
インフォーム要件 経済産業大臣から許可申請を求める通知を受けた場合の位置付け インフォーム通知の詳細
通常兵器キャッチオール規制 大量破壊兵器キャッチオールとの基本的な違い 通常兵器キャッチオール規制
該非判定 キャッチオール規制確認へ進む前段階としての位置付け 該非判定の実務
許可申請 許可が必要となる可能性を認識した後の判断・社内停止 個別許可申請書類・申請手続の詳細

制度の目的と背景

安全保障貿易管理には、特定の品目・仕様を対象とするリスト規制と、それだけでは捕捉できない取引を補完するキャッチオール規制があります。

民生用途で広く流通する貨物や技術であっても、性能、数量、用途、需要者又は取引状況によっては、大量破壊兵器等の開発等に利用される可能性があります。

そのため、リスト規制品に該当するかという製品スペックだけではなく、実際の用途と需要者まで確認するのがキャッチオール規制の重要な特徴です。

大量破壊兵器キャッチオール規制では、核兵器、軍用の化学製剤・細菌製剤、それらの散布装置、一定の長距離ロケット又は無人航空機等に関係する開発等への転用可能性を確認します。

ここでいう「開発等」は、開発だけを意味するものではなく、製造、使用又は貯蔵まで含めて確認します。

大量破壊兵器等として確認する対象

区分 主な対象 輸出者が確認する観点 注意点
核兵器 核兵器及びその関連する開発等 核関連機関、研究内容、設備、最終用途 民生用原子力研究との区別を用途・需要者から確認します。
化学兵器 軍用の化学製剤及び関連する開発等 化学物質、製造設備、研究施設、使用目的 一般化学産業でも転用可能性の確認が必要な場合があります。
生物兵器 軍用の細菌製剤及び関連する開発等 微生物、培養、研究施設、用途説明 医療・研究目的という名称だけで判断しません。
散布装置 軍用化学製剤又は細菌製剤の散布に用いる装置等 装置の仕様、搭載先、使用環境 部品・関連装置を含め実際の使用方法を確認します。
ロケット 一定の長距離運搬能力を持つロケット及び関連する部分品等 飛翔性能、搭載先、研究・試験目的 宇宙・研究用途との区別も最終用途から確認します。
無人航空機 一定の長距離運搬能力を持つ無人航空機及び関連する部分品等 飛行性能、搭載物、運用主体、使用場所 民生用無人機という名称だけで除外判断しません。

大量破壊兵器キャッチオール規制を確認する場面

場面 確認する理由 主な確認資料 判断上のポイント
リスト規制非該当品を輸出する 非該当でもキャッチオール規制の確認が残るため 該非判定書、仕様書、輸出令別表第1 非該当と許可不要を同義にしません。
第16項に関係する貨物を輸出する キャッチオール規制対象確認が必要になるため HSコード、品目資料、第16項対象品目資料 品名だけでなく現行法令・対象表を確認します。
技術を海外へ提供する 貨物だけでなく技術提供にも確認が必要なため 技術資料、提供方法、利用者情報 メール、クラウド、会議等の提供形態も実態で確認します。
用途説明が抽象的である 実際の最終用途を確認できないため End-Use Statement、契約書、仕様書 「研究用」「民生用」だけで判断しません。
需要者に大量破壊兵器関連の懸念情報がある 需要者要件の確認が必要となるため 外国ユーザーリスト、公開情報、取引資料 名称一致だけでなく法人同一性も確認します。
最終需要者が不明である 仲介業者だけでは実際の使用者を確認できないため 商流図、Consignee情報、End User情報 Buyer、Consignee、End Userを区別します。
通常と異なる仕様・数量を要求された 用途との整合性に疑問が生じるため Quotation、注文書、過去取引 用途説明と仕様・数量が一致するか確認します。
経済産業省から通知を受けた インフォーム要件による確認が必要となるため 通知文書、対象取引資料 社内判断だけで輸出を継続しません。

該非判定とキャッチオール規制は別の確認である

比較項目 リスト規制 大量破壊兵器キャッチオール規制 実務上の注意点
主な判断対象 貨物・技術の品目と仕様 対象確認に加えて用途・需要者等 スペック判定だけで終了しません。
中心資料 仕様書、パラメータシート、該非判定書 契約書、用途説明、需要者情報、取引情報 技術資料と取引資料の両方が必要です。
非該当時 リスト規制上の該当ではない 別途キャッチオール規制確認が残る場合がある 「非該当=自由輸出」としません。
判断担当 技術・輸出管理部門が中心 営業、技術、輸出管理、法務等の情報を統合 営業が持つ需要者情報も重要です。
判断記録 該非判定根拠 用途・需要者・懸念情報等の確認記録 別々の記録として保存します。

客観要件は用途要件と需要者要件を分けて確認する

大量破壊兵器キャッチオール規制の客観要件では、用途と需要者を別々の観点から確認します。

要件 中心となる質問 主な情報源 判断上の注意
用途要件 この貨物・技術は何のために使用されるのか 契約書、用途説明、仕様書、注文書、技術打合せ 商品名ではなく実際の用途を確認します。
需要者要件 誰が使用し、その者はどのような活動をしているか 需要者情報、外国ユーザーリスト、Webサイト、公開情報 販売先と最終需要者を混同しません。
インフォーム要件 経済産業大臣から許可申請を求める通知があるか 経済産業省からの通知 客観要件とは別系統で確認します。

用途要件の確認

用途確認では、輸出する貨物又は提供する技術が、大量破壊兵器等の開発等に用いられるおそれがあるかを確認します。

ここで重要なのは、取引先が提出した用途欄に「民生用」「研究用」「試験用」と書いてあることだけで確認を終えないことです。

例えば、高精度機器を購入する需要者が、その機器を必要とする設備を保有しているのか、研究内容と仕様が一致しているのか、数量が合理的なのか、納入場所と使用場所が一致しているのかなど、取引全体との整合性を確認します。

確認項目 通常確認 追加確認が必要となる例 対応
用途の具体性 具体的な製造・研究・検査工程が説明されている 「研究用」の一語だけ 使用工程・対象物・成果物を確認します。
貨物との整合 用途に対して仕様が合理的 必要以上の性能を要求 高性能仕様が必要な理由を確認します。
数量との整合 設備規模・生産量と一致 通常を大幅に超える数量 設置先・予備品・再販売等を確認します。
納入場所 需要者の施設へ納入 用途と無関係な第三国又は別施設へ配送 最終納入先と使用場所を確認します。
仕様変更 通常仕様 軍事・研究用途に有利な特殊変更 変更理由と使用目的を確認します。
技術支援 通常の設置・保守 高度な加工・制御・研究ノウハウを追加要求 貨物と技術提供を別々に確認します。

需要者要件の確認

需要者要件では、実際に貨物又は技術を使用する者について、大量破壊兵器等の開発等との関係を確認します。

販売契約上のBuyer、B/L上のConsignee、代金支払者、輸入者及び最終需要者が同じとは限りません。

したがって、「契約相手の商社は問題がない」という確認だけで終了せず、可能な範囲で最終需要者と最終用途を確認します。

確認対象 確認内容 懸念例 対応
法人同一性 正式名称、所在地、法人情報 類似社名、別表記、所在地不一致 法人を特定してから照合します。
事業内容 製品、研究、顧客、主要設備 申告用途と事業内容が一致しない 具体的な使用部門を確認します。
研究活動 研究分野、研究施設、共同研究先 大量破壊兵器等に関係し得る研究 個別の研究内容と輸出貨物の関係を確認します。
過去の活動 需要者が過去に行った活動 懸念活動に関する情報がある 現取引との関係を追加確認します。
外国ユーザーリスト 名称・所在地・別名等 需要者が掲載されている 用途との関係を含めて追加確認します。
最終需要者 実際の使用者 商社から先の需要者を開示しない 商流・最終用途確認を強化します。

外国ユーザーリストは禁輸リストではない

外国ユーザーリストは、経済産業省がキャッチオール規制の実効性向上のために提供する、懸念が払拭されない外国・地域の企業・組織等に関する参照情報です。

需要者が外国ユーザーリストに掲載されているからといって、その名称だけを理由に「輸出禁止」と結論づけるものではありません。

一方で、「リストに掲載されているだけだから無視してよい」というものでもありません。

掲載された需要者との取引では、貨物・技術が大量破壊兵器等の開発等に用いられないことが明らかかどうかを含め、用途と需要者をより慎重に確認します。

なお、大量破壊兵器キャッチオール規制に関する許可要否の確認は、フォワーダーの契約上の関与範囲を整理する「標準五分類」とは別の問題です。輸出者又は技術提供者自身が、外為法令に基づいて対象貨物・技術、仕向地、用途、需要者その他の要件を確認する必要があります。フォワーダーが輸送又は書類手続に関与していても、その関与だけによって輸出者の安全保障貿易管理上の確認義務が置き換わるものではありません。

状況 誤った判断 適切な考え方 実務対応
リスト掲載あり 自動的に輸出禁止とする 許可要否を制度要件に従って確認する 用途・需要者・明らかなとき等を確認します。
リスト掲載なし 安全な需要者と断定する 掲載外の需要者にも懸念情報が存在し得る 入手情報を別途確認します。
類似名称あり 名称だけで同一法人と判断する 所在地・別名・法人情報を照合する 法人同一性を確認します。
商社は非掲載 最終需要者も問題なしと判断する 商社とEnd Userは別に確認する 最終需要者を特定します。
大学・研究機関 教育機関だから対象外とする 組織名ではなく研究・用途を確認する 研究室・研究テーマまで確認します。
継続顧客 過去に輸出できたので今回も確認不要とする リスト・用途・取引状況は変化し得る 取引時点の情報で再確認します。

「明らかなとき」の考え方

需要者に大量破壊兵器等の開発等に関係する情報がある場合でも、当該貨物又は技術がそのような用途に用いられないことが明らかな場合が制度上問題となります。

ただし、「営業担当者が大丈夫だと思う」「相手が民生用途と言っている」という主観だけで明らかと判断するものではありません。

需要者の事業内容、貨物の仕様、数量、設置場所、用途説明、取引経緯、製造工程、研究内容その他の客観的な情報を組み合わせて判断し、その判断根拠を記録します。

判断に疑義がある場合は、社内輸出管理部門だけで無理に結論を出さず、経済産業省への相談又は専門家への確認を検討します。

インフォーム要件は客観要件と別に確認する

大量破壊兵器キャッチオール規制では、用途要件・需要者要件による客観要件とは別に、経済産業大臣から許可申請をすべき旨の通知を受ける場合があります。

このような通知を受けた場合は、自社の通常の用途・需要者確認で問題がないと判断していたことだけを理由に輸出又は技術提供を進めません。

対象取引を特定し、通知内容に従って輸出・提供を停止又は保留し、必要な許可申請その他の対応を行います。

通常兵器キャッチオール規制との比較

比較項目 大量破壊兵器キャッチオール規制 通常兵器キャッチオール規制 実務上の注意点
主な懸念用途 大量破壊兵器等の開発等 通常兵器の開発・製造・使用等 確認する兵器用途を区別します。
対象確認 第16項等の現行要件を確認 第16項の区分・仕向地等の現行要件を確認 制度改正後の現行ルールを使用します。
用途確認 大量破壊兵器等への転用可能性 通常兵器への転用可能性 同じ貨物でも両方を確認する場合があります。
需要者確認 大量破壊兵器等に関する活動・懸念 通常兵器に関する活動・懸念 外国ユーザーリストの情報区分も確認します。
インフォーム 経済産業大臣からの通知 経済産業大臣からの通知 客観要件とは別に管理します。

制度適用の判断フロー

段階 確認事項 主な資料 判断
1. 貨物・技術特定 何を輸出又は提供するのか 仕様書、図面、技術資料 対象を特定します。
2. リスト規制確認 輸出令別表第1又は外為令別表の1~15項等への該当 該非判定書、法令、貨物等省令 リスト規制許可要否を先に確認します。
3. 第16項等確認 キャッチオール規制の対象確認 第16項、品目表、HSコード等 キャッチオール確認へ進むか判断します。
4. 仕向地確認 輸出先・提供先と現行規制区分 契約、Shipping Instruction、法令 適用されるキャッチオール要件を確認します。
5. 用途確認 何のために使用されるか End-Use Statement、契約書、仕様説明 用途要件を確認します。
6. 需要者確認 誰が実際に使用するか End User情報、法人情報、公開情報 需要者要件を確認します。
7. 外国ユーザーリスト確認 需要者又は関係組織が掲載されているか 最新外国ユーザーリスト 掲載時は追加確認します。
8. 懸念情報・明らかなとき確認 入手情報と用途との関係 チェックシート、公開情報、社内記録 許可要否を判断できる根拠を整理します。
9. インフォーム確認 経済産業大臣から通知を受けていないか 通知・社内管理記録 通知があれば所定の対応へ進みます。
10. 記録・承認 判断根拠と社内承認 審査票、添付資料、承認記録 輸出・提供の可否を確定します。

このフローでは、途中の一項目だけを取り出して判断しません。例えば外国ユーザーリストに掲載がないという事実だけで審査を終了せず、用途、需要者、仕向地、入手情報及びインフォーム要件まで確認します。

対象外又は直ちに許可必要と判断しない場面

場面 なぜ直ちに結論できないか 追加確認 注意点
リスト規制非該当 キャッチオール規制確認が別に残る場合がある 第16項、仕向地、用途・需要者 非該当証明だけで終了しません。
民生品 民生品でも転用可能性が問題となる場合がある 用途、性能、数量、需要者 商品分類だけで判断しません。
外国ユーザーリスト非掲載 リスト外にも懸念情報が存在し得る 公開情報、契約資料、需要者情報 非掲載を安全証明としません。
外国ユーザーリスト掲載 掲載だけで自動的な禁輸を意味しない 用途・需要者、明らかなとき等 制度要件に沿って判断します。
商社向け輸出 実際のEnd Userが別に存在する 最終需要者、最終用途、納入先 Buyerだけ確認して終了しません。
大学向け輸出 研究用途の内容によって判断が異なる 研究室、研究テーマ、設備 「大学だから民生」としません。
継続取引 用途・需要者・規制情報が変化し得る 今回取引の情報、最新リスト 過去承認をそのまま流用しません。

典型的に問題となるケース

ケース 主な原因 確認資料 判断のポイント 初動対応
用途が「研究用」としか書かれていない 用途説明不足 End-Use Statement、研究計画、仕様書 何を研究し、なぜ当該性能が必要か 具体的用途を追加確認します。
外国ユーザーリスト掲載先から引合い 需要者懸念 外国ユーザーリスト、会社情報、用途資料 掲載情報と今回用途との関係 出荷を急がず追加審査します。
非掲載企業だが公開情報に懸念がある リストだけに依存した審査 公開情報、契約書、需要者資料 入手した情報を無視してよいか 輸出管理部門へエスカレーションします。
商社がEnd Userを開示しない 商流不透明 契約書、商流図、Consignee情報 最終需要者・最終用途を確認できるか 必要情報取得まで出荷判断を保留します。
通常より高性能仕様を要求された 用途と仕様の不整合 Quotation、仕様変更履歴、用途説明 高性能化の合理的理由があるか 変更理由を文書で取得します。
大量数量を短期間で発注された 需要規模との不整合 注文書、設備規模、過去取引 数量が用途・生産能力に整合するか 設置場所・使用計画を確認します。
納入先とEnd User所在地が違う 第三国・中継取引 Shipping Instruction、商流図、End User Statement 最終仕向地と実際の使用者 再輸出・転売予定を確認します。
出荷直前に経済産業省から通知 インフォーム要件 通知文書、対象取引資料 通知対象と今回貨物の一致 出荷を停止し所定の対応を確認します。

制度適用シナリオ1:民生用工作機器を研究機関へ輸出する場合

日本の輸出者が、リスト規制非該当と判定した民生用の加工・検査関連機器を海外研究機関へ輸出するとします。

まず、非該当判定だけで審査を終了せず、第16項等の対象と仕向地に応じたキャッチオール規制確認へ進みます。

研究機関から提出された用途説明が「材料研究用」とだけ記載されている場合、用途要件を判断するには情報が不足しています。

研究対象、必要な加工精度、使用研究室、設置場所、研究成果の利用目的などを確認し、輸出貨物の性能と用途が合理的に一致しているかを確認します。

さらに需要者について、研究内容、外国ユーザーリスト、公開情報等を確認します。

このシナリオの判断軸は、「研究機関だから許可が必要」又は「民生研究だから許可不要」ではありません。貨物、用途、需要者、仕向地及び入手情報を具体的に当てはめて判断します。

制度適用シナリオ2:外国ユーザーリスト掲載企業の民生部門から注文を受けた場合

需要者が外国ユーザーリストに掲載されているものの、今回の注文は民生製品を製造する部門からのものであると説明されたとします。

この場合、リスト掲載だけを理由に機械的に「輸出禁止」とするのではなく、同時に「民生部門だから問題ない」とも判断しません。

まず、掲載法人と注文者の法人同一性、部門、所在地、最終使用場所、貨物の用途、必要性能、数量等を確認します。

さらに、当該貨物が大量破壊兵器等の開発等に用いられないことが明らかと判断できるかについて、客観的な資料を確認します。

十分な根拠を得られない場合、営業上の納期を優先して出荷するのではなく、社内輸出管理部門で許可要否を再検討し、必要に応じて経済産業省への相談を行います。

制度適用シナリオ3:商社経由で最終需要者が開示されない場合

海外商社から一般産業用機器の注文を受け、商社自身には明らかな懸念情報がないものの、「顧客情報は秘密である」として最終需要者を開示しないとします。

この場合、商社が外国ユーザーリストに掲載されていないことだけでは、需要者確認を十分に行ったとはいえません。

誰が実際に貨物を使用するのか、どの国・施設へ納入されるのか、最終用途は何かを確認できないためです。

情報が取得できないこと自体を直ちに違法又は許可必要と断定するのではなく、確認できない事項が許可要否判断にどの程度影響するかを評価します。

最終需要者・用途を確認できず、懸念を払拭できない場合には、取引保留、追加資料取得、経済産業省への相談等を検討します。

よくある誤解

誤解 実際の考え方 実務上の注意点
該非判定が非該当なら自由に輸出できる キャッチオール規制確認が別途必要となる場合があります。 非該当判定後の確認フローを設けます。
民生品は大量破壊兵器キャッチオール規制の対象にならない 民生品でも用途・需要者等によって確認が必要です。 商品名ではなく実際の用途を確認します。
外国ユーザーリストは禁輸リストである 許可要否判断で参照する懸念情報です。 掲載時は制度要件に従って追加確認します。
外国ユーザーリストに載っていなければ安全である 掲載外の需要者でも懸念情報が存在する場合があります。 入手した情報を総合して確認します。
「研究用」と書いてあれば民生用途である 研究内容によっては追加確認が必要です。 研究テーマと貨物性能を照合します。
商社へ売るので最終需要者は確認しなくてよい 実際の使用者が別に存在する場合があります。 End UserとEnd Useを確認します。
過去に輸出した相手なら毎回確認する必要はない 用途、需要者、規制情報、リストは変化し得ます。 今回取引時点の情報で確認します。
営業担当者が問題ないと判断すれば十分である 客観的な資料に基づく確認と社内承認が必要です。 判断根拠を記録します。
用途要件に問題がなければインフォーム通知は無視できる インフォーム要件は客観要件とは別に確認します。 通知を受けた取引は所定の対応へ移します。
需要者に懸念情報があれば必ず輸出禁止になる 禁止と許可要否判断は同じではありません。 現行制度の要件に従って判断します。
BuyerとEnd Userは同じである 商流上、販売先と実際の使用者が異なる場合があります。 契約相手・輸入者・最終需要者を分けます。
キャッチオール確認は輸出管理部門だけで完結できる 営業、技術等が持つ用途・需要者情報が重要です。 部門間で情報を統合します。

大量破壊兵器キャッチオール規制の判断チェックリスト

確認場面 確認する相手 確認事項 問題がある場合の対応
引合い受付時 営業担当・Buyer 貨物、数量、仕向地、用途、最終需要者 不足情報を注文確定前に取得します。
該非判定時 技術部門・輸出管理部門 1~15項等のリスト規制該当性 該当する場合はリスト規制の許可確認へ進みます。
第16項確認時 輸出管理部門 貨物・技術の第16項等への該当 現行法令・対象品目表を再確認します。
仕向地確認時 営業・物流担当 契約上の輸出先、実際の納入国・地域 第三国経由・再輸出の有無を確認します。
用途確認時 Buyer・End User・技術部門 具体的用途、工程、必要性能、数量 抽象的説明の場合は追加資料を取得します。
需要者確認時 Buyer・End User・輸出管理部門 法人、事業、研究、最終使用者 法人同一性と最終需要者を確認します。
外国ユーザーリスト確認時 輸出管理部門 最新リストへの掲載、別名、所在地 掲載時は用途との関係を追加確認します。
懸念情報発見時 営業・法務・輸出管理部門 情報の出所、信頼性、今回取引との関係 出荷を保留し追加審査します。
インフォーム確認時 輸出管理責任者 経済産業省からの通知の有無 通知があれば対象取引を停止・保留します。
出荷承認時 輸出管理責任者・物流担当 判断記録、許可要否、条件変更の有無 未確認事項が残る場合は出荷しません。

専門家・経済産業省への確認を検討すべき場面

大量破壊兵器キャッチオール規制は、単なる検索リスト照合ではなく、法令上の要件を個別取引の事実へ当てはめる必要があります。

特に次の場合は、輸出管理に詳しい専門家又は経済産業省への確認を検討します。

  • 外国ユーザーリスト掲載需要者との取引で、明らかなときの判断が難しい場合
  • 需要者が大量破壊兵器等に関連し得る研究・開発を行っている場合
  • Buyer、Consignee、Importer、End Userが複数国にまたがる場合
  • 最終需要者又は最終用途を十分に確認できない場合
  • 用途説明と貨物の性能・数量が合理的に一致しない場合
  • 第三国経由、再輸出、転売等を予定している場合
  • 貨物だけでなく技術提供も同時に含まれる場合
  • 大量破壊兵器キャッチオールと通常兵器キャッチオールの双方が問題となる場合
  • 制度改正前の社内基準を使用しており、現行制度との整合が不明な場合
  • 経済産業省からインフォーム通知を受けた場合

まとめ

大量破壊兵器キャッチオール規制は、リスト規制非該当品を一律に自由輸出とするのではなく、実際の用途と需要者等から大量破壊兵器等への転用のおそれを確認する補完的な輸出規制です。

実務では、貨物・技術の特定、リスト規制の該非判定、第16項等の対象確認、仕向地確認を行ったうえで、用途要件と需要者要件を分けて確認します。

用途要件では、単に「民生用」「研究用」という名称を見るのではなく、具体的な使用工程、必要性能、数量、設置場所等と貨物・技術との整合性を確認します。

需要者要件では、契約上のBuyerだけでなく、実際のEnd User、事業内容、研究内容、過去の活動、外国ユーザーリストその他の入手情報を確認します。

外国ユーザーリストは禁輸リストではありません。一方、非掲載だから安全であることを保証するリストでもありません。掲載・非掲載だけで判断せず、今回取引の用途と需要者に当てはめます。

また、客観要件とは別にインフォーム要件が存在するため、経済産業省から許可申請を求める通知を受けた場合は、通常の社内審査結果だけを理由に輸出・提供を進めません。

大量破壊兵器キャッチオール規制で最も重要なのは、「問題がありそうな相手を探す」ことではありません。対象貨物・技術、仕向地、用途、需要者、懸念情報及びインフォーム通知を順序立てて確認し、なぜ輸出できるのか、又はなぜ許可確認が必要なのかを後から説明できる形で記録することです。

同義語・別表記

  • 大量破壊兵器等キャッチオール規制
  • WMD Catch-All Controls
  • WMD Catch-All Regulation
  • 核兵器等キャッチオール規制

関連用語

公式情報