該非判定
該非判定とは、輸出する貨物や提供する技術が、外為法に基づくリスト規制に該当するか、非該当か、または対象外かを確認する手続です。安全保障貿易管理では、輸出や海外への技術提供を行う前に、対象となる貨物・技術が規制対象かどうかを確認する必要があります。
該非判定では、品名やHSコードだけで判断するのではなく、型式、仕様、性能、材質、機能、用途、技術内容などを確認します。貨物の場合は輸出令別表第1、技術の場合は外為令別表を確認し、貨物等省令、運用通達、役務通達、貨物・技術のマトリクス表を照合して判断します。
該非判定の結果、リスト規制に該当する場合には、原則として経済産業大臣の輸出許可または役務取引許可が必要になります。非該当または対象外の場合でも、キャッチオール規制、用途確認、需要者確認の確認は別途必要です。
該非判定の位置づけ
該非判定は、安全保障貿易管理における最初の重要な確認手続です。輸出しようとする貨物や、海外へ提供しようとする技術が、リスト規制の対象に該当するかどうかを整理します。
リスト規制では、貨物と技術を分けて確認します。貨物は「物」の輸出、技術は設計図、仕様書、製造方法、プログラム、技術指導などの提供を指します。
- 貨物の該非判定:輸出令別表第1を確認する
- 技術の該非判定:外為令別表を確認する
- 詳細要件:貨物等省令で仕様・性能・技術要件を確認する
- 解釈補足:運用通達・役務通達を確認する
- 実務照合:貨物・技術のマトリクス表を確認する
該非判定は、単に「規制対象かどうか」を見るだけではありません。どの項番に関係するか、どの仕様要件を満たすか、除外規定や特例の対象になるか、判定根拠を説明できるかまで確認する必要があります。
判定結果の三つの区分
該非判定の結果は、主に「該当」「非該当」「対象外」の三つに整理されます。この三つは似ていますが、実務上の意味が異なります。
該当
該当とは、輸出する貨物または提供する技術が、輸出令別表第1または外為令別表の項番に関係し、貨物等省令で定める仕様・性能・技術要件に合致する状態をいいます。
該当の場合、原則として経済産業大臣の輸出許可または役務取引許可が必要になります。許可が不要となる特例に該当するかどうかも確認しますが、単に「通常の商取引だから」「民生用途だから」という理由で許可不要になるわけではありません。
非該当
非該当とは、輸出令別表第1または外為令別表の確認対象にはなるものの、貨物等省令で定める仕様・性能・技術要件には合致しない状態をいいます。
非該当の場合、リスト規制上の許可は不要となるのが基本です。ただし、非該当であっても、キャッチオール規制、用途確認、需要者確認、インフォーム通知の有無を確認する必要があります。
対象外
対象外とは、そもそも輸出令別表第1や外為令別表の規制対象として確認する範囲に入らないと整理される状態をいいます。たとえば、輸出令別表第1の1項から15項のいずれにも性質上関係しない貨物や、規制対象技術に該当しない一般的な情報などが考えられます。
ただし、対象外の判断は慎重に行う必要があります。対象外と整理した場合でも、なぜ対象外と判断したのかを記録し、キャッチオール規制や他法令の確認を別途行う必要があります。
該非判定書とは
該非判定書とは、貨物や技術について、該当・非該当・対象外の判断結果と、その根拠を整理した書類です。メーカーが発行する判定書、輸出者が自社で作成する判定書、非該当証明書など、実務上はいくつかの形で使われます。
該非判定書で重要なのは、結論だけではありません。判定対象となる貨物や技術が、実際に輸出または提供しようとしているものと一致しているかを確認することです。
該非判定書では、通常、次のような項目を確認します。
- 品名、型式、モデル番号、仕様
- 判定対象が貨物か技術か
- 判定結果が該当・非該当・対象外のいずれか
- 輸出令別表第1または外為令別表の関係項番
- 貨物等省令の該当箇所
- 運用通達・役務通達の確認有無
- 判定日
- 判定者または発行者
- 対象仕様、性能、機能、構成部品
- 備考、除外規定、特例の確認内容
「非該当」とだけ書かれた書類では、判定根拠が十分とはいえない場合があります。根拠項番、仕様確認、判定対象、判定日が確認できるかを確認することが重要です。
メーカー判定と自社判定の関係
輸出者は、メーカーから該非判定書や非該当証明書を取得することがあります。メーカーは製品仕様や性能を把握しているため、メーカー判定書は重要な資料になります。
ただし、メーカー判定書を取得しただけで、輸出者の確認責任がなくなるわけではありません。輸出者は、自社が輸出しようとする貨物や提供しようとする技術が、判定書の対象と一致しているかを確認する必要があります。
特に、次のような点に注意します。
- 型式、モデル番号、仕様が一致しているか
- オプション、改造、特注仕様が含まれていないか
- 判定日が古すぎないか
- 法令改正後も同じ判定でよいか
- 貨物本体だけでなく、ソフトウェアや技術資料が含まれていないか
- 判定書の根拠項番が明示されているか
- 輸出先、用途、需要者に関係なく使える判定か
メーカー判定書は、輸出者の判断を補助する資料です。最終的には、輸出者自身が輸出貨物・提供技術・取引内容を確認し、必要に応じて社内の輸出管理担当や専門部署で確認する必要があります。
貨物の該非判定
貨物の該非判定では、輸出令別表第1を起点に確認します。輸出令別表第1は、リスト規制の貨物を項番ごとに整理した表です。
実務では、まず貨物の品名、型式、仕様、性能、材質、用途、構成部品を確認し、関係しそうな項番を探します。そのうえで、貨物等省令の詳細な仕様要件や数値基準に合致するかを確認します。
たとえば、工作機械、電子部品、通信機器、測定機器、センサー、化学品、材料、航空・海洋関連機器などは、一般的な民生用途であっても、性能や仕様によってリスト規制の確認が必要になることがあります。
貨物の該非判定では、貨物等省令、運用通達、貨物のマトリクス表、メーカー仕様書、カタログ、技術資料を照合します。
技術の該非判定
技術の該非判定では、外為令別表を起点に確認します。物の輸出がない場合でも、設計図、仕様書、製造方法、プログラム、制御ソフト、技術マニュアル、技術指導などを海外へ提供する場合には、技術提供規制の確認が必要になります。
技術提供は、メール送信、クラウド共有、オンライン会議、海外出張、研修、共同研究、保守指導など、さまざまな形で行われます。提供方法ではなく、提供される技術の内容が規制対象かどうかを確認します。
技術の該非判定では、外為令別表、貨物等省令、役務通達、技術のマトリクス表を確認します。貨物が非該当であっても、関連する技術が規制対象となる場合があります。
一方で、公開済みの情報、一般的なカタログ情報、基礎科学分野の研究活動などは、規制対象技術から除外される場合があります。ただし、公開情報であっても、詳細な設計情報、製造ノウハウ、制御条件、非公開の試験データなど、規制対象技術を含む場合には除外に該当しない可能性があります。除外に該当するかどうかも、役務通達や最新の経済産業省資料に基づいて確認する必要があります。
該非判定の基本フロー
該非判定は、見積、受注、契約、出荷準備、技術提供の前段階で行うべき確認です。輸出申告直前に初めて確認すると、許可申請や追加資料取得により出荷が止まることがあります。
- 輸出する貨物または提供する技術を特定する
- 貨物か技術か、または両方に該当するかを確認する
- 品名、型式、仕様、性能、技術内容を整理する
- 輸出令別表第1または外為令別表で関係しそうな項番を確認する
- 貨物等省令で詳細な仕様・性能・技術要件を確認する
- 運用通達または役務通達で用語、適用範囲、除外規定を確認する
- 貨物・技術のマトリクス表で項番、省令、通達の対応関係を確認する
- メーカー判定書、仕様書、技術資料と照合する
- 該当・非該当・対象外の判断を記録する
- 非該当または対象外の場合でも、キャッチオール規制、用途確認、需要者確認を行う
該非判定では、結論だけでなく、どの資料に基づいて判断したかを残すことが重要です。後日、社内監査、税関確認、当局照会、取引先確認があった場合に説明できるようにしておく必要があります。
HSコードとの違い
該非判定とHSコードの確認は、目的が異なります。HSコードは、関税分類、貿易統計、輸出入申告上の商品分類に使われるものです。一方、該非判定は、安全保障貿易管理上、貨物や技術がリスト規制に該当するかを確認するものです。
同じHSコードに分類される貨物であっても、仕様や性能によって該当・非該当が分かれることがあります。逆に、異なるHSコードの貨物であっても、規制要件に合致すれば同じ項番で確認が必要になることがあります。
通関実務ではHSコードが重要ですが、該非判定をHSコードだけで行うことはできません。
非該当の場合の注意点
該非判定で非該当となった場合でも、輸出管理上の確認が終わるわけではありません。非該当とは、リスト規制の仕様要件に合致しないという意味であり、キャッチオール規制の確認まで不要になるという意味ではありません。
非該当の場合でも、最終用途、最終需要者、仕向地、取引経路、外国ユーザーリスト、インフォーム通知の有無を確認します。用途や需要者に懸念がある場合には、キャッチオール規制により許可申請が必要となることがあります。
「非該当証明書があるから出荷できる」と考えるのは危険です。非該当判定とキャッチオール確認は、別の確認手続として整理する必要があります。
フォワーダー・通関実務での見方
フォワーダーや通関業者は、該非判定の最終判断を行う立場ではありません。最終的な該非判定と許可要否の確認は、原則として輸出者が行うべきものです。
ただし、輸出申告や船積手配の実務では、該非判定書、非該当証明書、輸出許可証、包括許可の適用可否が問題になることがあります。フォワーダーや通関業者は、荷主から受け取った書類に不自然な点がないかを確認する必要があります。
たとえば、品名だけで非該当とされている、型式が一致しない、判定日が古い、根拠項番がない、技術提供の有無が確認されていない、キャッチオール規制の確認が不明確といった場合には、荷主に追加確認を促すことが重要です。
記録保存の重要性
該非判定では、判定結果と判断根拠を記録として保存することが重要です。輸出関連書類等は、貨物の輸出時または技術の提供時から少なくとも7年間保存することが基本です。ただし、品目や取引の種別によって保存期間の扱いが異なる場合があるため、社内規程や経済産業省の最新資料に基づいて管理します。
保存しておくべき資料には、次のようなものがあります。
- 該非判定書、非該当証明書
- メーカー判定書
- 仕様書、カタログ、技術資料
- 輸出令別表第1、外為令別表、貨物等省令、通達、マトリクス表の確認記録
- 判定対象の型式、仕様、構成部品の確認記録
- 社内審査記録
- 用途確認書、需要者確認資料
- インボイス、契約書、注文書、パッキングリスト
- 許可申請書類、許可証、包括許可の適用判断記録
記録を残す目的は、形式を整えることではありません。どの資料に基づき、誰が、いつ、どのように該当・非該当・対象外を判断したのかを説明できるようにすることです。
まとめ
該非判定は、輸出する貨物や提供する技術が、リスト規制に該当するか、非該当か、または対象外かを確認する安全保障貿易管理上の基本手続です。
貨物は輸出令別表第1、技術は外為令別表を確認し、貨物等省令、運用通達、役務通達、貨物・技術のマトリクス表を照合して判断します。メーカー判定書や非該当証明書を取得した場合でも、輸出者自身が型式、仕様、判定日、根拠項番、技術提供の有無を確認する必要があります。
該非判定は、輸出管理の入口です。非該当または対象外であっても、キャッチオール規制、用途確認、需要者確認、インフォーム通知の有無を確認し、判断根拠を記録として保存することが重要です。
