ICC(1963)約款とS.G.保険証券
1.保険条件(担保危険)
旧協会約款ICC(1963)
事故内容 |
基本条件 |
|||
A/R |
WA |
FPA |
||
沈没・座礁 |
◎ |
◎ |
◎ |
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火災・爆発 |
◎ |
◎ |
◎ |
|
船舶・輸送用具の衝突・接触 |
◎ |
◎ |
◎ |
|
避難港における貨物の荷卸し危険 |
◎ |
◎ |
◎ |
|
積込、積替、荷卸し中の危険 |
◎ |
○ |
○ |
|
荒天遭遇による潮濡 |
本船、艀が座礁、沈没、大火災を起こした場合 |
◎ |
◎ |
◎ |
本船、艀が座礁、沈没、大火災を起こさなかった場合 |
◎ |
◎* |
● |
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雨淡水濡れ・汗濡れ |
◎ |
特約で担保可 |
特約で担保可 |
|
擦損・かぎ損 |
◎ |
特約で担保可 |
特約で担保可 |
|
虫食い・ねずみ食い |
◎ |
特約で担保可 |
特約で担保可 |
|
盗難、不着、投荷 |
◎ |
特約で担保可 |
特約で担保可 |
|
破曲損・へこみ |
◎ |
特約で担保可 |
特約で担保可 |
|
漏損・不足 |
◎ |
特約で担保可 |
特約で担保可 |
|
共同海損 |
◎ |
◎ |
◎ |
|
被保険者の故意による損害又は費用 |
免責 |
免責 |
免責 |
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貨物の固有の瑕疵又は性質に起因する損害又は費用 |
免責 |
免責 |
免責 |
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輸送の遅延に起因する損害又は費用 |
免責 |
免責 |
免責 |
|
貨物の通常の損害又は自然の消耗 |
免責 |
免責 |
免責 |
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貨物の梱包不備による損害又は費用 |
免責 |
免責 |
免責 |
|
原子力兵器による損害 |
免責 |
免責 |
免責 |
|
戦争 |
(別約款にて補償) |
|||
ストライキ |
(別約款にて補償) |
◎:全損・分損とも補償。但し、*印は小損害免責
○:梱包1個毎の全損のみ補償
●:全損のみ補償
2.協会貨物約款各条件の概要
(1)オールリスク担保(All Risks) ⇒ ICC(A)に対応する約款
(担保内容)
全損、分損の程度を問わずに担保致します。
(主な免責)
・被保険者の故意による損害又は費用
・貨物の固有の瑕疵又は性質に起因する損害又は費用
・輸送の遅延に起因する損害又は費用
・貨物の通常の損害又は自然の消耗
・貨物の梱包不備による損害又は費用
・船舶所有者、管理者、傭船者等の倒産による損害又は費用
・原子力兵器による損害
(2)分損不担保(F.P.A.) ⇒ ICC(C)に対応する約款
・全損/共同海損を担保致します。
・単独海損(分損)については、船舶等輸送用具の座礁(Stranded)、沈没(Sunk)、大火災(Burnt)が発生した場合、事故との因果関係が無くとも填補されます。
・火災、爆発、船舶・輸送用具の衝突、接触による損害が填補されます。
・積込、積替え、または荷役中の1梱包ごとの全損を填補します。
(3)分損担保(W.A) ⇒ ICC(B)に対応する約款
・全損/共同海損及び免責歩合に達した分損(証券本文列挙危険)を填補します。
【ポイント】
WAとFPAの主な相違点は、荒天による潮濡れ損をWAは担保しますが、FPAは担保しません。
(4) 追加危険
分損担保及び分損不担保条件では基本的に損害の発生原因が証券本文に列挙した危険のうちのマリン・リスク(海固有の危険)であることを必要としているため、その他のリスクを特約により追加危険の担保ができます。
主な追加危険
@雨淡水濡れ損(Rain & Fresh Water Damage : RFWD)
輸送中の貨物の雨濡れ、淡水濡れの危険を担保します。
A盗難不着危険担保(Theft, Pilferage and Non−Delivery : TPND)
輸送中の貨物の荷抜き、梱包ごとの不着を担保します。
B不足または漏損(Shortage or Leakage)
輸送中の貨物の破袋等による不足や漏損を担保します。
参考適用貨物・・・粉状・粒状貨物・液状貨物
C破損、曲損、へこみ損(Breakage & Bending &/or Denting)
輸送中に曲がったり、へこんだり、破損したりした場合に担保します。
参考適用貨物・・・機械類・鋼材
D汗濡れ、むれ損(Sweat & Heating)
運送中の急激な温度変化による損害を担保します。
参考適用貨物・・・米・大豆等穀物、皮革
E投荷波ざらい(Jettison &/or Washing Overboard : JWOB)
甲板積み貨物に対しての危険を担保します。
参考適用貨物・・・木材、強酸類、大型車両・建機
F汚染担保(Contamination)
液状のバラ積み貨物が他の物質等と接触して、汚染、変色、不純化した場合を担保します。
G自然発火担保(Spontaneous Combustion)
貨物自体の性質で発熱したり、自然発火を起こすような危険を有する貨物に対しての特約です。
H漏損(Leakage)
容器入りの液状貨物の漏出損害を担保します。
自然の蒸発や漏出は、免責となります。
I虫食い、ねずみ食い担保(Rats & Vermn)
船艙や倉庫等での喰い荒らしによる損害を担保しますが、貨物自体に害虫が寄生していたり、卵が付着していて輸送中に孵化した場合の損害は免責となります。 など
3. S.G.フォーム保険証券とICC(1963)
(i) S.G.フォーム保険証券の構成
証券の優先順位
DE → C → @B → A となります。
*別途添付約款(F)と個別の契約による規定(G)がある場合の優先順位
G → F → DE → C → @B → A となります。
証券表面に記載されている約款のうち、右側が「証券本文(Policy Body)」で、この文言に追加規定をしているのが左側の
「イタリック書体約款・欄外約款」です。そして裏面に記載されている協会約款で、補足、修正をしています。
証券本文
約300年前の古い英語で表記されており、約款は、19条項から成り立っています。
担保する危険は、海固有の危険、軍艦、火災、外敵、海賊、漂盗、強盗、投荷、捕獲免許状、報復捕獲免許状、襲撃、海上における占有奪取、あらゆる国王・君主および人民の強留・抑止および抑留、船長および海員の悪行、およびその他一切の危険となっています。
これに対して欄外約款で担保を打消して不担保とされた条項を除くと、「海固有の危険」、「火災」、「強盗」、「投荷」、「船長および船員の悪行」、「その他一切の危険」を担保しています。
イタリック書体約款・欄外約款
保険証券本文の約款の規定を制限または、補足する目的の約款として、イタリック書体約款には、捕獲・拿捕不担保約款、ストライキ・暴動・騒乱不担保約款が規定されており、欄外約款には乗揚約款、他保険約款、損害通知約款が規定されています。
証券の裏面
協会貨物約款(All Risks / W.A(With Average / F.P.A.(Free from Particular Average))、協会戦争約款、協会同盟罷業暴動騒乱約款(現在のストライキ約款)があり、こちらで基本条件が規定されます。
4.免責歩合約款 (Memorandum) について
証券表面の証券本文(Policy Body)に下記3条項の免責規定があります。
(1)Corn, Fish, Salt, Flour and Seed are warranted free from Average, unless general, or the ship be stranded, sunk or burnt.
(2)Sugar, Tobacco, Hemp, Flax, Hides, and Skins are warranted free from Average under Five per cent, unless general, or the ship be stranded, sunk or burnt.
(3)All other Goods are warranted free from Average under Three per cent, unless general, or the ship be stranded, sunk or burnt.
この規定により、少損害免責(Franchise)が適用される場合もあります。
【 協会貨物約款All Risks 】
5条に「Claims recoverable hereunder shall be payable irrespective of percentage.」と記載されており、免責歩合不適用の規定があります。
【 協会約款 FPA(分損不担保約款) 】
船舶もしくは艀が座礁したか, 沈没したか,または大火災にかかった場合を除き,単独海損を担保しない。
上記免責約款にかかわらず,
@積込, 積替または荷卸の際に全損になった貨物1個ごとの保険価額をてん補する。
A火災・爆発・船舶および/もしくは艀および/もしくは輸送用具の水以外の他物(氷を含む)との衝突もしくは接触,または遭難港における荷卸,に原因を合理的に帰し得る被保険貨物の滅失または損傷に対しててん補する。
B中間の寄航港もしくは避難港において陸揚,倉入れおよび継搬のために特別費用を支出した場合には,それらの費用が協会貨物約款(分損担保)を添付したイギリス海上保険証券標準様式によるならば,保険者がてん補すべきものであればこれをてん補する。
【ポイント】
分損不担保にも関わらず、特定分損(船舶の座礁・沈没・大火災・)を因果関係を問わずに担保し、Aに起因する分損も担保して、いずれも少損害免責(Franchise)の適用はありません。また、Bの「中間の寄航港もしくは避難港において陸揚,倉入れおよび継搬のために保険会社が認める特別費用」も分損担保(W.A.)条件で支払われる場合に補償されます。
【 協会約款 WA(分損担保約款)】
分損は,それが共同海損であるか,または船舶もしくは艀が座礁したか,沈没したかまたは大火災にかかった場合を除き,保険証券に記載されたパーセンテージ未満ならばこれをてん補しない。
上記免責歩合にかかわらず,
@積込,積替もしくは荷卸の際に全損になった貨物1個ごとの保険価額をてん補する。
A火災・爆発・船舶および/もしくは艀および/もしくは輸送用具の水以外の他物(氷を含む)との衝突もしくは接触,または遭難港における荷卸,に原因を合理的に帰し得る被保険貨物の滅失または損傷に対しててん補する。
【ポイント】
WA(分損担保約款)においては、免責歩合約款が適用される可能性がありますので、免責歩合約款を適用しない旨の約定が保険会社との間で、必要となります。条件は、「average payable irrespective of percentage(i.o.p.)」となります。