カーゴ・リカバリー(貨物損害回収)

カーゴ・リカバリーとは、貨物の滅失・損傷・遅延が発生した場合に、運送人その他の関係者に対して損害賠償請求や保全措置を行い、回収を図る実務をいいます。

実務上は、海上運送・陸上運送・航空運送で責任原則、通知期間、出訴期間、責任限度額が異なるため、まず「どの運送区間で事故が起きたのか」を切り分けることが重要です。

1. 海上運送のカーゴ・リカバリー

海上運送では、日本の国際海上物品運送法に基づく整理が重要です。損害額は原則として、貨物が本来揚げ渡されるべき場所・時点の価額を基準に考えます。

責任制限は、1包または1単位当たり666.67SDR、または損傷貨物の総重量1キログラム当たり2SDRのいずれか高い方です。コンテナ貨物では、船荷証券に内品明細として包数や単位数が記載されているかが実務上の重要ポイントです。

通知は、損害が外見上明らかな場合は受領時、隠れた損害は引渡し後3日以内が目安です。出訴期間は原則1年です。

なお、故意または結果発生を認識しながらの無謀行為が立証できれば責任制限を破れる余地はありますが、実務上はハードルが高いと考えられます。

2. 日本での保全と船舶差押え

海上事故では、賠償請求だけでなく、どこで担保を取るかも重要です。日本では、一定の場合に船舶に対する保全・差押えの圧力を使って担保を確保しやすい場面があります。

B/Lの準拠法条項や管轄条項が外国法・外国裁判所を定めていても、日本寄港船に対する保全が交渉材料になることがあります。

実務では、請求の成否だけでなく、相手方に早期に保証状を差し入れさせられるかが回収の成否に大きく影響します。

3. 陸上運送のカーゴ・リカバリー

陸上運送では、運送人は原則として過失責任を負い、受取・保管・引渡し・運送の各段階を通じて無過失を立証できない限り、責任を免れにくい整理です。

損害額は、原則として到達すべき場所・時点の貨物価格を基準に考えます。海上運送のような一律の法定責任限度額が常にあるわけではなく、契約上の責任制限条項が争点になることがあります。

また、現金、有価証券、貴金属、宝石類などの高価品を申告せずに運送した場合、運送人の免責が問題になりやすくなります。

外見上明らかでない損害の通知期間は2週間、出訴期間は原則1年です。

4. 航空運送のカーゴ・リカバリー

航空運送では、モントリオール条約が重要です。貨物の滅失・損傷については条約上のルールで整理され、貨物固有の性質、荷造不良、戦争行為、公権力行為などの抗弁が問題になります。

責任限度額は、現在は1キログラム当たり26SDRです。これは、もともとの17SDR/kgから、2019年改定の22SDR/kgを経て、2024年改定により引き上げられたものです。

損傷の通知期間は受領後14日以内、遅延は21日以内、出訴期間は2年です。

なお、AWBで一貫輸送のように見えても、実際に損害が発生したのが内陸区間である場合には、条約の適用範囲がそのまま及ばないことがあるため、運送書類の文言確認が必要です。

5. 区間ごとの主な違い

区分 主な責任原則 主な責任限度 通知 出訴期間
海上運送 過失責任ベース 666.67SDR/包 または 2SDR/kg 3日 1年
陸上運送 過失責任 原則は到達地価格基準 2週間 1年
航空運送 条約上の責任 26SDR/kg 14日(遅延は21日) 2年

6. 実務で先に確認すべきこと

  1. 事故発生区間が海上・内陸・航空のどこか
  2. 運送書類がB/L、Sea Waybill、AWB、運送契約書のどれか
  3. 通知期限を過ぎていないか
  4. 責任限度額がどのルールで決まるか
  5. 契約運送人・実運送人・フォワーダーのどこまで相手方に入れるか
  6. 日本で担保取得や交渉圧力を使えるか

7. まとめ

カーゴ・リカバリーは、単に「損害が出たから請求する」という話ではありません。

実務では、事故区間の特定、通知期限の管理、責任限度額の把握、担保確保の可否が勝負を分けます。特に海上運送では責任制限と日本での保全、陸上運送では過失立証と高価品申告、航空運送ではモントリオール条約の適用と責任限度額の改定確認が重要です。

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