輸出動物検疫

概要

輸出動物検疫は、日本から動物又は畜産物等を輸出する際に、輸出先国が求める家畜衛生条件その他の受入条件を確認し、必要に応じて動物検疫所の輸出検査を受け、輸出検疫証明書等の交付を受ける制度です。

制度の主要な法的根拠は家畜伝染病予防法第45条です。同条では、輸入国政府が家畜の伝染性疾病の病原体を広げるおそれの有無について輸出国の検査証明を求めている動物その他の物等について、あらかじめ家畜防疫官の検査を受け、輸出検疫証明書の交付を受けることを定めています。

したがって、「動物由来の貨物であれば、すべて同じ輸出検疫を受ける」という制度ではありません。実際に必要となる検査、処置、証明事項及び証明書様式は、動物又は畜産物の種類、加工状態、用途、輸出先国・地域、疾病発生状況その他の条件によって異なります。

犬、猫等については、家畜伝染病予防法だけでなく狂犬病予防法に基づく輸出検査が関係する場合があります。

実務上最も重要なのは、船積直前に「証明書が必要だった」と判明することを避けることです。特に生体動物では、検査、ワクチン接種、採血、隔離、施設調整等に長期間を要する場合があるため、貨物予約より先に輸出先国の受入条件と動物検疫所の手続を確認することが基本となります。

本記事の固有担当範囲

項目 本記事で扱う内容 個別確認が必要な内容
制度の法的根拠 家畜伝染病予防法第45条等と輸出検査の基本構造 個別案件についての法令適用判断
輸出先国条件 相手国条件を先に確認する考え方 国・品目ごとの最新Health Requirements
対象動物 家畜、家きん、犬、猫、うさぎ等の基本区分 個々の動物に必要な検査・係留条件
畜産物 輸出検査対象となる基本的な考え方 食肉、乳製品、皮、動物由来原料等の国別条件
申請時期 品目により大きく異なるリードタイム 個別案件の検査開始日・係留期間
輸出検疫証明書 交付までの基本手順と船積書類との整合 輸出先政府指定の証明書文言
NACCS 電子申請の位置付け 具体的な画面入力方法
フォワーダー実務 出荷保留、書類整合、スケジュール管理 獣医学的判断・証明内容の決定
他法令 CITES、食品衛生等との並行確認 各制度固有の許可・証明手続

制度の目的と法的根拠

輸出動物検疫の目的は、動物又は畜産物を介して家畜の伝染性疾病が国際的に拡散することを防止するとともに、輸出先国が定める家畜衛生条件を満たしていることを政府機関として確認することにあります。

家畜伝染病予防法第45条は、主として次のような物について輸出前の検査と輸出検疫証明書を求めています。

  • 輸入国政府が、家畜の伝染性疾病の病原体を広げるおそれの有無について、日本側の検査証明を必要としている動物その他の物
  • その他、国際動物検疫上必要として農林水産大臣が指定する物

つまり、日本側の輸出動物検疫は、日本国内だけで完結する制度ではありません。輸出先国側が何を輸入条件としているかが、検査内容や証明書の内容を決める重要な要素になります。

また、犬、猫、あらいぐま、きつね、スカンク等については、狂犬病予防法に基づく輸出検査も関係します。対象動物によって適用法令が異なるため、単に「ペットだから同じ手続」と考えないことが重要です。

輸出先国の受入条件を最初に確認する

輸出動物検疫では、日本側の手続を先に始めるのではなく、まず輸出先国・地域が当該動物又は畜産物の輸入を認めているか、どのような条件を要求しているかを確認します。

確認項目 具体的な確認内容 確認先 確認不足で起きる問題
輸入可否 日本から当該品目を輸入できるか 輸出先国当局、動物検疫所 輸出後に輸入拒否となる
対象疾病 どの疾病について証明が必要か 輸出先国条件 必要な検査が不足する
ワクチン等 接種時期、種類、回数等 輸出先国条件、獣医師、動物検疫所 出発直前では条件を満たせない
検査 採血、抗体検査、病原体検査等 動物検疫所、指定検査機関等 検査期間が船積日に間に合わない
隔離・係留 輸出前の隔離期間・場所 動物検疫所 係留場所を確保できない
施設条件 農場、食肉処理施設、加工施設等の認定要否 輸出先国条件、所管当局 製品が適合していても輸出できない
証明書様式 日本標準様式か相手国指定様式か 輸出先国当局、動物検疫所 現地で証明書不備となる
疾病発生状況 輸出停止措置等が発生していないか 動物検疫所 過去に輸出できた品目でも輸出できない

輸出検査の対象となる物

輸出動物検疫の対象は、生きた家畜だけではありません。

一方、肉、乳製品、皮、動物由来原料等がすべて一律に輸出検査対象になるわけでもありません。

区分 主な例 輸出検疫上の確認 実務上の注意
偶蹄類 牛、豚、めん羊、山羊等 輸出先条件、検査、係留等を確認 長期準備が必要になりやすい
競走馬、繁殖馬等 輸出先条件に基づく検査・ワクチン・係留等 航空予約より早い段階で調整する
家きん 鶏、うずら、七面鳥、あひる等 疾病条件、輸出停止措置等を確認 鳥インフルエンザ等の発生状況に注意
犬・猫等 犬、猫、あらいぐま、きつね、スカンク等 狂犬病予防法等の輸出検査と相手国条件 マイクロチップ、ワクチン、抗体検査等が必要になる場合がある
その他の動物 うさぎ、みつばち等 対象動物固有の条件を確認 犬・猫と同じ手続と考えない
食肉・臓器等 牛肉、豚肉、家きん肉、臓器等 輸出先国が日本の検査証明を求めるか等を確認 と畜証明等が必要になる場合がある
その他畜産物 皮、毛、乳製品、卵、動物由来原料等 加工状態、由来動物、輸出先条件で判断 品名だけで対象外と判断しない
加工品・ペットフード等 肉エキス、動物性加工原料、ペットフード等 成分、原料、加工工程、相手国要求を確認 完成品名だけでは検疫要否を判断できない場合がある

輸出畜産物が一律に検査対象になるわけではない

畜産物については、特にこの点を誤解しないことが重要です。

動物検疫所の現行手続では、輸出検査の対象となるものとして、輸入国政府が日本の検査証明書を必要としているもののほか、一定の指定検疫物のうち所定の野生動物由来製品等が示されています。

したがって、動物由来原料を含むという理由だけで、すべての商品について日本の輸出検疫証明書が必要になるとは限りません。

反対に、加工済み商品であっても、輸出先国が政府証明を要求している場合には輸出検査が必要となることがあります。

フォワーダーや通関業者は、商品名だけで判断せず、原料、由来動物、加工状態、用途及び輸入国条件を確認します。

品目によって申請リードタイムが大きく異なる

輸出動物検疫では、申請時期を一律に考えてはいけません。

対象 申請・準備の基本的な考え方 特に注意する点 実務対応
偶蹄類・馬 原則として輸出予定日の90日前までに輸出検査申請 輸入国条件上、検査期間が90日を超える場合がある 輸送予約より前に動物検疫所へ相談する
偶蹄類・馬で90日を超える検査が必要 検査開始の30日前までの申請が必要となる ワクチン・採血等から逆算する 輸出日ではなく検査開始日から逆算する
家きん・うさぎ・みつばち・その他動物 対象ごとの期限・必要日数を確認する 輸入国条件によって長期化する 早期に動物検疫所へ相談する
犬・猫 現行案内では検査希望日の14日前までの申請が案内されている 相手国条件や日本再入国準備では数か月を要する場合がある 渡航予定確定後、できるだけ早く申請する
犬・うさぎ 2027年1月1日以降は輸出14日前までの申請が義務化される予定 14日前でも検査枠を確保できるとは限らない 法定期限より十分早く申請する
畜産物 相手国条件、証明事項、工場確認等から必要日数を判断 証明内容の事実確認に時間を要する場合がある 初回輸出は特に早期相談する

特に偶蹄類及び馬では、家畜伝染病予防法施行規則に基づき、原則として輸出予定日の90日前までに申請するという長いリードタイムがあります。

「航空便のBookingが取れてから検疫を始める」という順序では遅すぎる場合があります。

犬・猫等は別の法的枠組みにも注意する

犬、猫、あらいぐま、きつね及びスカンク等では、狂犬病予防法に基づく検疫制度が関係します。

日本から犬・猫を輸出する際は、出国前に動物検疫所で輸出検査を受け、輸出検疫証明書の交付を受けます。

さらに、輸出先国が要求するマイクロチップ、狂犬病予防注射、抗体検査、その他の処置がある場合は、輸出検査以前にその条件を満たしておく必要があります。

また、日本へ再び連れて帰る予定がある犬・猫では、日本への再入国条件も出国前から準備する必要があります。短期の海外滞在であっても、「帰国してから手続をする」という考え方では間に合わない場合があります。

輸出動物検疫の制度適用フロー

  1. 輸出する動物又は畜産物を具体的に特定する。
  2. 動物種、由来動物、原料、加工状態、用途を確認する。
  3. 輸出先国・地域で当該品目の輸入が認められているか確認する。
  4. 輸出先国の最新の家畜衛生条件を確認する。
  5. 日本側の輸出検査対象となるか確認する。
  6. 犬・猫等の場合は狂犬病予防法等の適用も確認する。
  7. 必要な検査、ワクチン、採血、隔離、施設条件等を整理する。
  8. 必要日数から輸出予定日を逆算する。
  9. 所定の期限までに動物検疫所へ輸出検査を申請する。
  10. 必要に応じてNACCSを利用する。
  11. 必要な国内証明書、製造記録、検査結果等を提出する。
  12. 家畜防疫官による書類審査、現物検査その他必要な検査を受ける。
  13. 輸出先国条件を満たした場合、輸出検疫証明書等の交付を受ける。
  14. InvoicePacking List、B/L又はAir Waybill等と証明書の内容を照合する。
  15. CITES、食品衛生その他の関連法令を確認する。
  16. 必要な証明書が揃ったことを確認して輸出通関・船積へ進む。

輸出検疫証明書の役割

輸出検疫証明書は、日本の動物検疫所が輸出検査の結果に基づいて交付する公的証明書です。

畜産物の場合、動物検疫所所定の様式だけでなく、輸出先国政府が独自の証明書様式又は証明事項を要求する場合があります。

その場合、動物検疫所が実際に証明できる事項か、証明内容を裏付ける国内資料が存在するかを事前に確認する必要があります。

確認項目 主な確認内容 不一致例 対応
輸出者 会社名、住所 Invoiceと法人名が異なる 船積前に統一する
荷受人 Consignee名、所在地 CertificateとAir Waybillで異なる 相手国条件を確認して修正する
品名 商品・動物の識別 一般名と正式品名が矛盾する 証明対象を明確にする
数量・重量 頭数、Carton数、Net Weight等 Packing Listと一致しない 最終出荷数量を確認する
識別情報 個体番号、マイクロチップ等 証明書と現物が一致しない 輸出検査前に照合する
輸送情報 港、空港、便名等 Booking変更が証明書へ未反映 変更時に動物検疫所へ確認する
衛生事項 疾病、処置、施設等 相手国要求文言を満たさない 事前に様式・条件を確認する

畜産物輸出で必要となり得る資料

資料 主な用途 対象例 注意点
輸出検査申請書 動物検疫所への申請 検査対象畜産物 品目・輸出先条件を正確に記載する
と畜証明書等 適正処理の確認 牛・豚等の肉・臓器等 輸出先条件と必要事項を照合する
食鳥処理関係証明 国内での処理確認 家きん肉・家きん由来製品 対象施設・ロットを確認する
販売・生産証明 市販品等の由来確認 加工畜産物等 証明対象ロットを明確にする
輸入時の検疫証明書 海外由来原料等の輸入履歴確認 日本へ輸入後再輸出する物 原料と輸出品の関連を確認する
相手国指定条件 輸入国が求める証明事項を示す 国別Health Certificate等 最新の条件を使用する
製造工程・処理記録 証明事項の事実確認 加工品、加熱品等 動物検疫所が証明できる根拠を準備する

NACCSとの関係

NACCS(動物検疫関連業務)は、動物・畜産物に関する輸出入検査申請等を電子的に行うために利用されています。

畜産物では、輸出検査申請書を動物検疫所へ提出する方法のほか、NACCSを使用して申請することができます。

犬・猫等の輸出についても、対象手続に応じてNACCS又は動物検疫所が案内する方法で申請します。

ただし、NACCSへ申請したという事実だけで輸出条件が満たされるわけではありません。輸出先国が求める処置、検査、証明事項及び添付資料を別途確認する必要があります。

動物検疫と他制度を区別する

制度 主な対象 主な目的 動物検疫との関係
動物検疫 動物・畜産物等 家畜の伝染性疾病の国際的拡散防止 本記事の中心
狂犬病検疫 犬、猫等 狂犬病の侵入・まん延防止 ペット等で並行して確認する
CITES 条約対象野生動植物・その製品 絶滅危惧種の国際取引管理 動物検疫とは別に許可等が必要な場合がある
食品衛生関係 食品等 食品安全 相手国の食品衛生証明等が別途問題となる場合がある
植物検疫 植物・植物由来品等 植物病害虫の拡散防止 複合商品等では別途確認する
医薬品等規制 動物用医薬品その他 医薬品等の品質・安全管理 商品の性質により別途確認する
税関手続 輸出貨物 輸出申告・許可 検疫証明等の準備と輸出通関を連携させる

実務で問題になりやすいケース

ケース 主な問題 確認する資料 判断の方向 対応
初めて輸出する畜産物 相手国条件・証明様式が未確認 相手国条件、商品仕様 輸出検疫証明書の要否を確認 Booking前に動物検疫所へ相談する
偶蹄類・馬の急な輸出 90日前申請に間に合わない 輸出予定、輸入国条件 通常手続で対応可能か確認 直ちに動物検疫所へ相談する
犬・猫の海外移動 相手国条件の準備不足 ワクチン、検査、マイクロチップ記録 出国条件と入国条件を分ける 早期に準備を開始する
証明書とInvoiceが不一致 品名・数量・荷受人の相違 Certificate、Invoice、Packing List 同一貨物として説明可能か確認 船積前に訂正する
相手国が独自様式を要求 日本側が証明できない事項を含む 指定Certificate Form 証明根拠を確認 事前に動物検疫所へ相談する
疾病発生後の輸出 以前利用した条件が使えない 輸出停止情報、最新衛生条件 現在の輸出可否を確認 過去実績だけで出荷しない
加工畜産物 検疫対象か品名だけでは不明 成分、原料、製造工程 由来動物・加工状態から確認 商品仕様書を取得する
複数法令対象 動物検疫だけ取得して出荷しようとする CITES等の許可資料 必要な全制度を確認 許認可完了まで出荷保留する

具体例1:冷凍牛肉の輸出で証明書様式の確認が遅れた場合

以下は実務判断を説明するための想定例です。

日本の食肉事業者が、シンガポール向けに冷凍牛肉、Invoice価格850万円を輸出する案件を受注したとします。

営業担当者は、通常のInvoice、Packing List、原産地関係資料だけで船積準備を進め、出港10日前にフォワーダーへBookingを依頼しました。

フォワーダーが輸入者へ確認したところ、輸入手続で政府機関発行の衛生証明書を使用する予定であり、相手国側で求める証明事項を確認する必要があることが判明しました。

輸出者は「過去にも牛肉を輸出しているので同じ証明書でよい」と主張しましたが、フォワーダーは、輸出先国・品目・施設及び最新条件に基づく確認が必要であるとして、動物検疫所への事前確認を求めました。

結果として必要資料の収集と証明内容の確認に時間を要し、予定していた本船への積載を見送りました。

この事例のポイントは、検疫証明書を船積書類の一つとして最後に取得するのではなく、輸出先国条件の確認をBookingより前に行うことです。

具体例2:競走馬の輸出を45日前に決定した場合

日本の馬主が、評価額3,000万円の競走馬を香港へ輸送する計画を立て、出発45日前に航空輸送会社とフォワーダーへ輸送手配を依頼したとします。

荷主側は「航空機のスペースさえ確保できれば輸出できる」と考えていました。

しかし、偶蹄類及び馬については、原則として輸出予定日の90日前までに動物検疫所へ輸出検査申請を行う制度となっています。

フォワーダーは、通常の期限を過ぎていることを確認し、航空Bookingを確定する前に動物検疫所へ相談するよう馬主へ依頼しました。

馬主は「競走日程は45日前に決定したので90日前には申請できなかった」と説明しました。

この場合、フォワーダーが独自判断で「45日前でも大丈夫」と処理するのではなく、特別な事情を含めて動物検疫所へ相談し、検査実施の可否、必要な検査期間、係留場所及び輸出可能日を確認する必要があります。

生体動物では、Transportation ScheduleよりQuarantine Scheduleが先に確定すべき案件があることを示す例です。

具体例3:犬の輸出で相手国条件の準備が間に合わない場合

家族の海外転居に伴い、評価額120万円の犬を日本からシンガポールへ連れて行くことになり、出発3週間前にペット輸送会社へ依頼したとします。

飼主は「日本の動物検疫所で健康状態を確認してもらえば出国できる」と考えていました。

しかし、犬の輸出では日本側の輸出検査だけでなく、相手国が求めるマイクロチップ、ワクチン、検査その他の条件を確認し、必要な処置を出国前に完了させる必要があります。

さらに、日本へ再び連れて帰る可能性がある場合には、日本への再入国条件も出国前から準備しておく必要があります。

輸送会社は、航空便の変更料等が発生する可能性を説明したうえで、相手国条件及び動物検疫所の手続が完了するまで航空搭載を確定しないこととしました。

このケースでは、「14日前に申請すればすべての準備が14日で完了する」という意味ではないことが重要です。

具体例4:ペットフードの原料確認が遅れた場合

日本の食品メーカーが、動物由来原料を含むペットフード1,200ケース、Invoice価格620万円を海外へ輸出する案件を受注したとします。

Invoice上の品名は単に「Pet Food」と記載されており、フォワーダーは当初、一般加工食品としてBookingを進めました。

通関準備段階で原料を確認したところ、複数の動物由来原料が含まれていることが判明し、輸入国側がどのような政府証明を要求するか確認する必要が生じました。

輸出者は「十分に加熱加工された完成品なので動物検疫とは無関係ではないか」と主張しました。

フォワーダーは、加工品であることだけでは判断せず、原料、由来動物、加工工程及び輸入国条件を確認してから輸出検査の要否を決めるべきだと説明しました。

この例は、商品名ではなく成分と輸出先条件から検疫要否を確認する必要性を示しています。

よくある誤解

誤解 実際の考え方 実務上の注意点
動物由来品はすべて輸出検疫証明書が必要 輸入国要求や法令上の対象範囲を確認する必要がある 品名だけで一律判断しない
加工品なら動物検疫は関係しない 加工品でも輸入国が政府証明を要求する場合がある 原料・加工状態・輸出先条件を確認する
以前輸出できたので今回も同じ条件で輸出できる 疾病発生や制度変更により条件は変わり得る 案件ごとに最新条件を確認する
輸出検査は船積直前に申請すればよい 偶蹄類・馬等では長期の申請・検査期間がある 輸出日から逆算して準備する
90日前に申請すれば必ず90日で輸出できる 輸入国条件によって検査期間が90日を超える場合がある 必要処置全体からスケジュールを作る
犬・猫は健康ならそのまま輸出できる 日本の輸出検査と相手国の入国条件を満たす必要がある ワクチン・検査等を早期に確認する
NACCSで申請すれば検疫手続は完了する NACCSは申請手段であり、検査・書類条件は別途満たす必要がある 相手国条件を別に確認する
Health Certificateは輸出者が自由に作成できる 政府証明として交付できる内容には根拠が必要である 相手国様式は事前に動物検疫所へ相談する
動物検疫証明があれば他の許認可は不要 CITESその他の制度が並行適用される場合がある 他法令を別に確認する
フォワーダーが検疫対象か最終決定する フォワーダーは情報確認と手配を行い、行政上の判断は所管当局へ確認する 疑義を独断で処理しない

判断チェックリスト

確認場面 確認する相手 確認事項 問題がある場合の対応
輸出相談を受けた時 輸出者 動物種、品名、原料、加工状態、輸出先 情報が揃うまで検疫要否を断定しない
輸出先条件確認時 輸入者・動物検疫所等 輸入可否、必要証明書、最新Health Requirements 条件未確認ならBookingを確定しない
生体動物輸出時 動物検疫所 申請期限、検査期間、係留場所 輸出日を再調整する
偶蹄類・馬輸出時 動物検疫所 90日前申請、輸入国条件 期限超過なら直ちに相談する
犬・猫輸出時 動物検疫所・相手国当局 マイクロチップ、ワクチン、検査、入国条件 必要処置完了まで搭載を保留する
畜産物輸出時 輸出者・動物検疫所 原料、由来動物、加工、相手国証明要求 商品仕様書を取得する
相手国指定証明書がある時 動物検疫所 証明事項、裏付資料 証明不能事項があれば輸入者側と調整する
書類作成時 輸出者・フォワーダー Invoice、Packing List、B/LAWB、Certificateの整合 船積前に訂正する
疾病発生情報がある時 動物検疫所 輸出停止、地域条件 過去実績を使用せず最新条件を確認する
他法令対象の可能性 所管当局・輸出者 CITES、食品衛生等 必要許認可が揃うまで出荷しない
船積直前 輸出者・フォワーダー 証明書原本又は認められる電子情報、数量、便名等 不一致があれば出荷を止める
条件判断が難しい時 動物検疫所・専門家 最新法令、輸入国条件 独自判断せず事前照会する

判断過程を文章で整理する

例えば「牛由来原料を含む加工食品を輸出したい」という相談を受けた場合、最初から「動物検疫対象」「加工品だから対象外」と結論を出すべきではありません。

まず製品名、原料、由来動物、原産地、加工工程及び輸出先国を確認します。

次に、輸出先国が当該製品を受け入れているか、日本政府機関の検査証明書を要求しているかを確認します。

証明書を要求している場合には、その証明事項を日本側で確認できる資料があるかを調べます。

さらに、CITES、食品衛生その他の制度が別途関係しないか確認します。

必要な検査と証明書が船積予定日までに揃わない場合には、貨物を先に輸出して後から証明書を整えるのではなく、船積予定そのものを変更します。

この順序で判断することが、輸出先での輸入拒否、返送、廃棄又は長期保管を防ぐ基本となります。

フォワーダー・通関業者が確認すべき点

  • 品名だけでなく動物種、由来原料、加工状態、用途を確認する。
  • 輸出先国の受入条件が確認済みか輸出者へ確認する。
  • 生体動物では検疫日程を輸送Bookingより先に確認する。
  • Invoice、Packing List、B/L又はAir WaybillとCertificateを照合する。
  • 証明書交付前に便・数量等を変更した場合は影響を確認する。
  • 検疫証明書が必要な案件で未取得のまま輸出申告・船積を進めない。
  • CITESその他の許認可を動物検疫と混同しない。
  • 行政条件について不明な場合は、荷主へ確認を戻し、必要に応じて動物検疫所への照会を促す。

専門機関へ確認すべき場面

  • 初めて輸出する動物又は畜産物で、輸出先国の受入条件が明確でない場合
  • 相手国指定のHealth Certificateに、日本側で証明可能か不明な事項が含まれている場合
  • 偶蹄類・馬の輸出予定が90日前を過ぎてから決定した場合
  • 輸入国条件に基づく検査期間が90日を超える場合
  • 犬・猫等について相手国条件と日本帰国条件の双方を満たす必要がある場合
  • 疾病発生により過去の輸出条件が現在も利用可能か不明な場合
  • 加工畜産物、動物由来原料、ペットフード等について検疫対象性が判然としない場合
  • CITESその他の制度との重複適用が問題となる場合
  • 輸出検疫証明書交付後に品名、数量、便、仕向地等が変更された場合

まとめ

輸出動物検疫は、日本から動物又は畜産物等を輸出する際に、輸出先国の家畜衛生条件に適合していることを確認し、必要に応じて家畜防疫官の検査と輸出検疫証明書等の交付を受ける制度です。

家畜伝染病予防法第45条が輸出検査の主要な法的根拠となりますが、犬・猫等では狂犬病予防法も関係します。

実務上は、すべての動物由来商品が一律に輸出検査対象になるわけではなく、動物種、原料、加工状態、輸出先国の要求、疾病状況等から判断する必要があります。

また、申請リードタイムは品目によって大きく異なります。特に偶蹄類・馬では原則として輸出予定日の90日前までの申請が必要であり、犬・猫等でも相手国条件によっては長期間の準備が必要です。

したがって、輸出動物検疫では、輸送Bookingを先に決めるのではなく、輸出先国の受入条件、検疫対象性、必要検査、申請期限及び証明書様式を先に確認し、その結果から船積可能日を決めることが最も重要な実務管理となります。

同義語・別表記

  • 動物輸出検査
  • 輸出検疫
  • 輸出動物検査
  • Export Animal Quarantine
  • Export Quarantine Inspection
  • Export Veterinary Quarantine

関連用語

公式情報