食品衛生法とは
食品衛生法とは、食品の安全性を確保し、飲食に起因する衛生上の危害を防止するための法律です。日本国内で販売・使用される食品等について、規格基準、添加物規制、輸入規制、営業規制、衛生管理などを定めています。
輸入実務では、販売または営業目的で食品等を輸入する場合に、食品衛生法に基づく届出や検査が必要となる点が重要です。輸入者、通関業者、フォワーダーにとって、食品衛生法は通関前に確認すべき代表的な他法令の一つです。
食品衛生法は、単に「食品を輸入するときの届出ルール」ではありません。食品等の規格基準、添加物規制、器具・容器包装の安全性、輸入食品の監視、違反時の行政措置、営業者の衛生管理などを含む、食品安全の基本的な法体系です。
食品衛生法の目的
食品衛生法の目的は、飲食に起因する衛生上の危害を防止し、国民の健康保護を図ることです。食品による健康被害、食中毒、有害物質、基準不適合の添加物、衛生上問題のある器具・容器包装などを規制するための法律です。
この法律は、国内で製造される食品だけでなく、海外から輸入される食品等にも適用されます。日本国内で販売または営業上使用される食品等は、国内品・輸入品を問わず、食品衛生法に適合している必要があります。
そのため、輸入食品実務では、海外で合法的に流通している商品であっても、日本の食品衛生法上の基準に適合するかを別途確認する必要があります。
食品衛生法の主な規制の柱
食品衛生法は、食品等の安全性を確保するため、複数の規制を組み合わせています。輸入実務では、次のような柱を押さえておくと全体像を理解しやすくなります。
食品・添加物の規格基準
食品や食品添加物については、成分規格、製造基準、保存基準、使用基準などが定められることがあります。残留農薬、動物用医薬品、微生物、有害物質、添加物の使用基準などが問題になります。
輸入食品では、原産国では一般的に販売されている商品でも、日本の規格基準に適合しない場合があります。特に、食品添加物、残留農薬、動物用医薬品、微生物基準、成分規格は確認頻度が高い論点です。
食品添加物の指定・使用規制
食品添加物については、日本で使用が認められている添加物か、対象食品に使用できるか、使用量が基準内かを確認する必要があります。
海外では使用可能な添加物であっても、日本では未指定であったり、使用できる食品や使用量が制限されていたりする場合があります。輸入食品では、複合原材料中の添加物、加工助剤、キャリーオーバーも確認対象になることがあります。
器具・容器包装の規格基準
食品に接触する食器、調理器具、容器、包装材なども、食品衛生法上の確認対象になることがあります。食品そのものではなくても、食品に接触する用途がある場合は、食品衛生法の規格基準を確認する必要があります。
特に合成樹脂を使用する食品用器具・容器包装では、ポジティブリスト制度への適合性が重要です。陶磁器、ガラス、金属、紙などでも、材質別の規格基準や溶出基準が問題になることがあります。
輸入食品等の届出・検査
販売または営業目的で食品等を輸入する場合、輸入者は検疫所へ食品等輸入届出を行います。検疫所では、食品衛生監視員が届出内容を審査し、食品衛生法への適合性や検査要否を確認します。
必要に応じて、検査命令、モニタリング検査、指導検査などが行われます。食品衛生法に適合しない食品等は、国内で販売または営業上使用することができません。
営業規制・衛生管理
食品衛生法は、食品営業者の営業許可、営業届出、施設基準、衛生管理にも関係します。平成30年改正以降、HACCPに沿った衛生管理が制度化され、食品等事業者の衛生管理体制が重視されています。
輸入者であっても、国内で保管、加工、販売、飲食提供などを行う場合には、輸入時の届出だけでなく、国内営業上の衛生管理や営業許可・届出が問題になることがあります。
平成30年改正の主なポイント
食品衛生法は平成30年に大きく改正されました。この改正は、食品衛生法の現代化という意味で重要であり、輸入実務にも影響があります。
主な改正ポイントは、次のとおりです。
- 広域的な食中毒事案への対応強化
- HACCPに沿った衛生管理の制度化
- 特別の注意を必要とする成分等を含む食品に関する健康被害情報の届出制度
- 食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度の導入
- 営業許可制度の見直しと営業届出制度の創設
- 食品リコール情報の報告制度
- 輸入食品の安全性確保の強化
輸入実務で特に重要なのは、食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度、輸入食品の監視強化、衛生証明書が必要となる食品の拡大、リコール情報の報告制度です。食品そのものだけでなく、容器包装、器具、販売後対応まで食品衛生法の管理範囲が広がっています。
所管官庁と役割分担
食品衛生法に関する行政は、厚生労働省、消費者庁、検疫所、都道府県等がそれぞれの役割を持って関与します。近年、食品衛生基準行政の一部は消費者庁へ移管されており、基準行政と現場対応を分けて理解することが重要です。
輸入食品実務では、検疫所が食品等輸入届出の受付、届出審査、検査要否判断、輸入相談を行います。食品衛生監視員は、届出書や添付資料をもとに、食品衛生法への適合性を確認します。
一方で、食品表示については食品表示法や消費者庁の所管が関係し、輸入後の販売表示、栄養成分表示、アレルゲン表示、原料原産地表示などは別途確認が必要になります。
対象となる主なもの
食品衛生法の対象は、食品そのものに限られません。食品に接触する器具や容器包装、乳幼児用のおもちゃなども対象となる場合があります。
- 食品
- 食品添加物
- 食器・調理器具
- 食品用容器
- 食品包装材
- 乳幼児用のおもちゃ
- 食品製造に使用される原材料
実務では、商品名だけで判断せず、その商品が食品に該当するか、食品に接触する用途があるか、販売または営業使用されるかを確認する必要があります。雑貨、キッチン用品、ノベルティ、包装材、食品製造機械の部品でも、食品衛生法が関係することがあります。
輸入規制としての特徴
食品衛生法は、輸入食品の通関に大きく関係します。販売または営業上使用する目的で食品等を輸入する場合、輸入者は検疫所に食品等輸入届出を行います。
輸入規制として特に重要なのは、次の三点です。
輸入者が届出義務者であること
食品等輸入届出の責任主体は、原則として輸入者です。通関業者やフォワーダーが届出書の作成や提出を補助する場合でも、食品衛生法に適合する食品等を輸入する責任は輸入者にあります。
国内品と輸入品で同じ基準が適用されること
輸入食品であっても、日本国内で販売または営業上使用される以上、国内品と同じ食品衛生上の基準に適合する必要があります。海外で合法的に販売されていることは、日本での適法性を保証するものではありません。
違反品は国内流通できないこと
食品衛生法に適合しない食品等は、日本国内で販売または営業上使用することができません。違反が確認された場合、通関が止まるだけでなく、廃棄、積戻し、用途変更、販売停止、回収などの対応が必要になることがあります。
食品等輸入届出、検査、届出済証の取得などの具体的な手続は、個別の記事で確認する必要があります。この法律記事では、輸入者責任、国内基準への適合、違反品の流通禁止という基本構造を押さえることが重要です。
違反時の行政措置
食品衛生法に適合しない食品等は、国内で販売または営業上使用することができません。輸入食品の場合、検査や審査の結果、違反が確認されると、廃棄、積戻し、用途変更、販売停止、回収などの対応が必要になることがあります。
違反の典型例としては、指定外添加物の使用、使用基準違反、成分規格不適合、残留農薬基準違反、動物用医薬品基準違反、微生物基準違反、器具・容器包装の溶出基準不適合などがあります。
輸入者にとって重要なのは、通関できないことだけではありません。違反が判明すると、保管料、検査費用、積戻し費用、廃棄費用、販売先との調整、契約上の責任、貨物保険上の扱いまで問題になることがあります。
食品衛生法と他法令の違い
食品衛生法は、主に食品等の衛生上の安全性を確認する法律です。一方で、輸入後の販売表示、広告表現、医薬品的な効能表現、植物・動物由来品の検疫などは、別の法律が関係する場合があります。
- 食品衛生法:食品等の安全性、規格基準、添加物、器具・容器包装、輸入届出を扱う
- 食品表示法:原材料名、栄養成分表示、アレルゲン表示、原料原産地表示などを扱う
- 景品表示法:誇大広告、不当表示、優良誤認表示などを扱う
- 薬機法:医薬品的な効能効果、化粧品、医薬部外品、医療機器との境界を扱う
- 植物防疫法:植物、果実、穀物、種子などの植物検疫を扱う
- 家畜伝染病予防法:肉類、乳製品、動物由来品などの動物検疫を扱う
食品衛生法の届出を終えたとしても、販売表示や広告表現まで自動的に適法になるわけではありません。食品衛生法は「食品等として安全か」を見る法律であり、食品表示法は「消費者にどう表示するか」、薬機法は「医薬品的な効能効果や身体への作用をうたっていないか」を見る法律です。
たとえば、健康食品は食品衛生法上の確認に加え、販売表示や広告表現では食品表示法、景品表示法、薬機法が問題になります。食品用容器は食品衛生法上の確認に加え、販売時の品質表示や安全性表示が問題になることがあります。
フォワーダー・通関実務での見方
フォワーダーや通関業者にとって、食品衛生法は輸入通関の可否と納期管理に直結する法律です。食品衛生法の確認が遅れると、港や空港で貨物が止まり、荷主とのトラブルにつながることがあります。
食品、飲料、菓子、健康食品、調味料、食器、調理器具、食品包装材、乳幼児用おもちゃなどを扱う場合は、船積前または航空便手配前に、食品衛生法の対象かどうかを確認しておくことが望まれます。
フォワーダーや通関業者が行うべきことは、食品衛生法上の適合性を最終判断することではありません。荷主に対し、食品等輸入届出の要否、必要資料、検疫所確認、他法令の有無を早めに確認することです。
まとめ
食品衛生法は、食品の安全性を確保し、飲食に起因する衛生上の危害を防止するための基本法です。食品、添加物、器具、容器包装、乳幼児用おもちゃなどについて、規格基準、添加物規制、輸入規制、営業規制、衛生管理を定めています。
輸入実務では、輸入者が食品等輸入届出の義務を負い、国内品と同じ食品衛生上の基準に適合することが求められます。違反品は国内流通できず、廃棄、積戻し、販売停止、回収などにつながる可能性があります。
食品衛生法は、輸入食品・食品添加物・器具容器包装・乳幼児用おもちゃを扱う際の入口となる法律です。ただし、表示は食品表示法、広告は景品表示法、医薬品的効能効果は薬機法、植物・動物由来品は植物検疫・動物検疫が別途関係するため、食品衛生法だけで完結しない点にも注意が必要です。
