GHS表示―危険品輸送判定とSDS照合の実務

GHS Labeling — Dangerous Goods Transport Classification and SDS Cross-Checking

GHS表示とは

GHS表示とは、化学品の危険有害性を、絵表示、注意喚起語、危険有害性情報、注意書きなどにより、容器や包装に表示する仕組みです。

GHSは、Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals の略で、化学品の分類および表示に関する世界調和システムを意味します。

フォワーダー実務では、GHS表示は、貨物が危険性を持つ化学品かどうかを確認する入口になります。ただし、GHS表示があることと、国際輸送上の危険品に該当することは必ずしも同じではありません。

GHS表示を見た場合は、SDS、UN番号、危険物クラス、容器等級、危険物申告書、船会社・航空会社・CFS・倉庫の受託条件とあわせて確認する必要があります。

この記事で扱う範囲

項目 本記事で扱う内容 他記事に委ねる内容
GHS表示の基本 化学品の危険有害性をラベルやSDSで伝える表示制度として説明します。 GHS制度そのものの詳細な法令解説は、化学品管理制度の記事で扱います。
フォワーダー実務での読み方 現物ラベルやSDSにGHS表示がある場合に、輸送危険品確認へどうつなげるかを扱います。 製造者・輸入者側のGHS分類作業やラベル作成実務は、化学品メーカー向けの記事で扱います。
GHS表示と危険品輸送ラベルの違い 化学品の危険有害性表示と、海上・航空輸送上の危険品表示の違いを整理します。 危険品輸送ラベルの貼付方法や包装要件は、危険品ラベルや危険物申告書の記事で扱います。
GHS絵表示9種 フォワーダーが輸送判定に接続しやすい順に、絵表示と確認事項を整理します。 各GHS分類の詳細な判定基準は、GHS分類やSDSの記事で扱います。
SDSとの照合 GHS表示、SDS輸送情報欄、UN番号、危険物クラスの照合実務を扱います。 SDSの作成方法や各項目の詳細解説は、SDSの記事で扱います。
非危険品説明との矛盾 荷主説明、非危険品証明書、現物ラベル、SDSが食い違う場合の確認を扱います。 非危険品証明書の書式や発行実務は、非危険品証明書の記事で扱います。
輸送モード別の注意点 海上輸送、航空輸送、CFS搬入、倉庫搬入で判断が異なる場合を扱います。 IMDG Code、IATA危険物規則、CFS危険品搬入の詳細は、それぞれの個別記事で扱います。
実務トラブル対応 GHS表示を見落とした場合、輸送情報と矛盾する場合、搬入・搭載が止まる場合の対応を扱います。 事故後の費用負担、損害賠償、契約責任の判断は、貨物事故・費用負担の記事で扱います。

GHSの概要

GHSは、化学品の危険有害性を国際的に分かりやすく伝えるための仕組みです。

爆発性、引火性、酸化性、高圧ガス、腐食性、急性毒性、健康有害性、環境有害性などの危険有害性を分類し、ラベルやSDSによって関係者へ情報を伝達します。

GHS表示は、製造、輸入、販売、保管、取扱い、輸送に関わる事業者が、化学品の危険性を把握するための重要な情報です。

ただし、GHSは化学品の危険有害性を伝えるための仕組みであり、そのまま海上輸送や航空輸送の危険品分類を意味するものではありません。輸送上の危険品該非は、SDSの輸送情報欄、UN番号、危険物クラス、包装等級、IMDG Code、IATA危険物規則などを確認して判断します。

国内法令・輸送規則との関係

日本では、GHSに対応したSDSやラベル表示に関連して、複数の法令が関係します。また、実際の国際輸送では、海上輸送・航空輸送の危険品規則もあわせて確認する必要があります。

区分 主な役割 フォワーダー実務での見方 注意点
化管法 対象化学物質について、事業者間でのSDS提供やラベルによる情報伝達に関係します。 化学品としての危険有害性情報や成分情報を確認する入口になります。 輸送上の危険品該非とは別に整理します。
労働安全衛生法 職場で取り扱う化学物質について、ラベル表示、SDS、リスクアセスメントなどの管理に関係します。 荷役、倉庫、CFS、作業現場での安全確認につながります。 作業安全上の表示と輸送危険品ラベルを混同しないようにします。
毒物及び劇物取締法 毒物・劇物としての表示、取扱い、保管、譲渡などの規制に関係します。 毒劇物に該当する化学品では、輸送手配だけでなく保管・取扱い条件にも注意します。 毒劇物該当性と国際輸送上の危険物クラスは一致しない場合があります。
IMDG Code 海上輸送における危険品の分類、包装、表示、申告、隔離、積付けに関係します。 船積み、CFS搬入、混載可否、船会社受託可否の判断基準になります。 GHS表示だけでなく、SDS輸送情報欄とUN番号を確認します。
IATA危険物規則 航空輸送における危険品の分類、包装、ラベル、申告、搭載可否に関係します。 航空搭載できるか、旅客機・貨物機で扱いが変わるかを確認します。 海上では受けられても航空では受託不可となる場合があります。
倉庫・CFSの受入基準 保管設備、荷役体制、混載条件、現場安全に基づく受入判断に関係します。 GHS表示がある貨物では、倉庫・CFSが追加資料を求める場合があります。 法令上輸送危険品でなくても、現場運用上の確認が必要になることがあります。

GHS表示に関係する国内法令は、主に化学品の危険有害性情報を伝えるための制度です。一方、国際輸送では、輸送中の危険性に基づくUN番号、危険物クラス、包装、ラベル、申告の確認が必要になります。

GHSラベルの主な表示項目

GHSラベルには、化学品の危険有害性を伝えるための複数の要素があります。

表示項目 意味 フォワーダー実務での確認 不一致がある場合の対応
化学品の名称 製品名、化学品名、混合物名などです。 インボイス、SDS、危険物申告書、現物ラベルの名称が一致しているか確認します。 荷主またはメーカーへ対象製品の特定を依頼します。
絵表示 危険有害性を示す赤いひし形のマークです。 危険品輸送確認の入口として、SDSの輸送情報欄を確認します。 絵表示だけで輸送危険品と断定しないようにします。
注意喚起語 危険、有害性の程度を示す語句です。 危険性が高い可能性があるため、SDSと照合します。 SDSが古い、または別製品の可能性を確認します。
危険有害性情報 どのような危険や健康・環境影響があるかを示す文言です。 輸送上の危険品に該当する可能性があるか確認します。 SDS輸送情報欄と矛盾する場合はメーカー確認を求めます。
注意書き 取扱い、保管、応急措置、廃棄などの注意事項です。 倉庫、CFS、荷役、保管時の注意点を確認します。 倉庫・CFSへ受入条件を確認します。
供給者情報 製造者、輸入者、供給者などの情報です。 SDSや追加資料を取得する連絡先として確認します。 不明な場合は荷主へ正式な供給者資料を求めます。

GHS表示と危険品輸送ラベルの違い

GHS表示と危険品輸送ラベルは、見た目が似ている場合がありますが、目的と確認すべき内容が異なります。

比較項目 GHS表示 危険品輸送ラベル フォワーダー実務上の注意点
目的 化学品の危険有害性を取扱者へ伝えます。 輸送中の危険性を運送人、倉庫、CFS、航空会社、船会社へ伝えます。 表示目的が異なるため、GHS表示だけで輸送可否を判断しません。
主な基準 GHS、国内法令、SDS・ラベル制度です。 IMDG Code、IATA危険物規則、各運送人の受託条件です。 輸送モード別に確認します。
表示される場所 製品容器、包装、SDS、化学品ラベルです。 輸送外装、危険品梱包、危険物申告書、輸送書類です。 製品容器表示と輸送外装表示を分けて確認します。
主な情報 絵表示、注意喚起語、危険有害性情報、注意書きです。 UN番号、正式輸送品名、危険物クラス、容器等級、危険品ラベルです。 UN番号と危険物クラスがあるかを確認します。
確認すべき資料 SDS、製品ラベル、メーカー資料、非危険品証明書です。 SDSの輸送情報欄、危険物申告書、船会社・航空会社の受託条件です。 SDSの輸送情報欄を必ず確認します。
実務上の注意 GHS表示があるだけで輸送上の危険品と決めつけません。 輸送ラベルやUN番号が必要な場合、通常貨物として進めません。 GHS表示を入口に、輸送規則上の確認へ進めます。

フォワーダーにとって重要なのは、GHS表示を危険品輸送判定の入口として使い、その後にSDS、UN番号、危険物クラス、輸送モード別の受託条件を確認することです。

GHS絵表示9種と輸送判定へのつながり

GHS表示では、赤いひし形の枠に入った絵表示が使われます。代表的な絵表示には、爆発物、炎、円上の炎、ガスボンベ、腐食性、どくろ、感嘆符、健康有害性、環境有害性があります。

ただし、すべてのGHS絵表示が同じ強さで輸送上の危険品判定に直結するわけではありません。フォワーダー実務では、どの絵表示が輸送上の確認につながりやすいかを分けて見ることが重要です。

以下の表では、GHSの標準的な掲載順ではなく、フォワーダーが輸送上の危険品該非を確認する際に注意しやすい順に並べています。

GHS絵表示 主な意味 輸送上の危険品判定との関連 フォワーダー実務での確認
爆発物 爆発性、自己反応性、有機過酸化物などです。 輸送危険品との関連が強い表示です。 SDS輸送情報欄、UN番号、クラス、船会社・航空会社受託可否を必ず確認します。
炎 引火性、可燃性、自己発熱性などです。 輸送危険品との関連が強い表示です。 引火点、UN番号、危険物クラス、容器等級、海上・航空の条件を確認します。
円上の炎 酸化性物質、酸化性液体、酸化性固体などです。 輸送危険品との関連が強い表示です。 混載可否、隔離要件、船会社・CFS受入条件を確認します。
ガスボンベ 高圧ガス、圧縮ガス、液化ガスなどです。 輸送危険品との関連が強い表示です。 ガスの種類、容器、UN番号、航空輸送可否、CFS受入可否を確認します。
腐食性 皮膚腐食性、眼損傷性、金属腐食性などです。 輸送危険品に該当する場合があります。 金属腐食性、容器、漏洩時の影響、クラス8該当性を確認します。
どくろ 急性毒性が強い物質です。 輸送危険品に該当する可能性が高い表示です。 毒性区分、UN番号、包装条件、受託制限を確認します。
環境有害性 水生環境有害性などです。 海洋汚染物質や環境有害性の確認につながります。 Marine Pollutant該当性、海上輸送時の表示・申告を確認します。
感嘆符 刺激性、皮膚感作性、軽度の急性毒性などです。 輸送上は危険品に該当しない場合もあります。 GHS表示だけで危険品と決めず、SDS輸送情報欄を確認します。
健康有害性 発がん性、生殖毒性、臓器障害、吸引性呼吸器有害性などです。 輸送上の危険品分類とは直接一致しない場合があります。 取扱い・保管上の注意と、輸送上の危険品該非を分けて確認します。

輸送上の確認を優先すべき絵表示は、爆発物、炎、円上の炎、ガスボンベ、腐食性、どくろ、環境有害性です。ただし、感嘆符や健康有害性であっても、SDSの輸送情報欄を確認するまでは通常貨物と決めつけないことが重要です。

GHS表示と輸送上の危険品判定がズレる場合

GHS表示と輸送上の危険品判定は、必ずしも一致しません。実務では、GHS表示があるのに輸送上は危険品に該当しない場合と、GHS表示が目立たないのに輸送上は危険品に該当する場合があります。

ズレのパターン 典型例 実務上の判断 確認する資料・相手
GHS表示あり、輸送上は非該当 感嘆符や健康有害性の表示があるが、SDS輸送情報欄ではUN番号がなく、輸送上の危険品に該当しない場合です。 GHS表示を理由に危険品と決めつけず、SDS輸送情報欄とメーカー確認を根拠に整理します。 SDS、非危険品証明書、メーカー確認書
GHS表示あり、輸送上も危険品 炎、ガスボンベ、腐食性、どくろなどの表示があり、SDS輸送情報欄にUN番号や危険物クラスがある場合です。 危険物申告書、輸送ラベル、船会社・航空会社の受託可否を確認します。 SDS、危険物申告書、船会社・航空会社回答
GHS表示が目立たないが、輸送上は危険品 製品ラベル上は分かりにくいが、リチウム電池、エアゾール、アルコール含有品などとして輸送規則上の確認が必要な場合です。 品名、成分、用途、SDS、製品仕様書から輸送上の危険品該非を確認します。 製品仕様書、SDS、メーカー確認
非危険品説明があるが、SDSと矛盾する 荷主は非危険品と説明しているが、SDSの輸送情報欄にUN番号や危険物クラスが記載されている場合です。 荷主へ再確認し、必要に応じて危険品扱いで船会社・航空会社・CFSへ確認し直します。 荷主、メーカー、SDS、非危険品証明書
海上では非危険品扱い、航空では確認が必要 海上輸送では受託可能でも、航空会社やIATA危険物規則上で制限が問題になる場合です。 輸送モード変更時には、海上輸送時の判断をそのまま使わず、航空側で確認し直します。 航空会社、航空代理店、SDS、航空危険物資料
倉庫・CFSがGHS表示を理由に追加資料を求める 輸送上は危険品非該当でも、現場安全や保管上の理由でSDS提出を求められる場合です。 輸送危険品該非と、倉庫・CFSの受入条件を分けて確認します。 CFS、倉庫、SDS、非危険品証明書

フォワーダーは、GHS表示の有無だけで判断してはいけません。GHS表示、SDS、現物ラベル、輸送情報、危険物申告書、受託条件を組み合わせて確認する必要があります。

フォワーダー実務での確認フロー

GHS表示がある貨物、または化学品の可能性がある貨物では、次の順番で確認します。

手順 確認すること 判断の方向性 止まりやすいポイント
1. 現物・外装表示を確認する GHS絵表示、危険品ラベル、UN番号、製品名、ケースマークを確認します。 化学品・危険品確認が必要か判断します。 外装写真がなく、現物表示を確認できない場合があります。
2. SDSを取得する 最新版のSDSか、製品名・メーカー名が貨物と一致するかを確認します。 古いSDSや別製品のSDSで手配しないようにします。 荷主が旧版SDSや類似品SDSを提出する場合があります。
3. SDSの危険有害性情報を確認する GHS分類、絵表示、注意喚起語、危険有害性情報を確認します。 現物ラベルとSDSが一致しているか確認します。 現物ラベルとSDSの表示が一致しない場合があります。
4. SDSの輸送情報欄を確認する UN番号、正式輸送品名、危険物クラス、容器等級、海洋汚染物質該当性を確認します。 輸送上の危険品該非を確認します。 輸送情報欄が空欄、または記載が不明確な場合があります。
5. 輸送モードごとに確認する 海上輸送、航空輸送、国内配送、倉庫搬入の条件を確認します。 海上では受託可能でも航空では不可となる場合を確認します。 海上判断を航空輸送へ流用してしまうことがあります。
6. 受託条件を確認する 船会社、航空会社、NVOCC、CFS、倉庫の受入可否を確認します。 書類上は危険品として整理できても、実際に受けてもらえるか確認します。 船会社は受けてもCFSが受けない場合があります。
7. 表示・書類を整える 危険物申告書、輸送ラベル、外装表示、非危険品証明書、メーカー確認書を確認します。 搬入拒否、受託不可、船積み・搭載遅延を防ぎます。 搬入当日にラベルや書類の不足が判明する場合があります。

SDS・現物ラベル・危険物申告書の照合

GHS表示がある貨物では、SDS、現物ラベル、危険物申告書、インボイスの内容を照合することが重要です。

照合項目 確認する内容 不一致がある場合の対応 確認する相手
製品名 インボイス、SDS、現物ラベル、危険物申告書の名称が一致しているかを確認します。 荷主またはメーカーに確認し、対象製品を特定します。 荷主、メーカー
GHS絵表示 現物ラベルの絵表示とSDSの危険有害性情報が一致しているかを確認します。 SDSが古い可能性や別製品の可能性を確認します。 荷主、メーカー
UN番号 SDS輸送情報欄と危険物申告書のUN番号が一致しているかを確認します。 危険品申告を修正し、受託可否を確認し直します。 荷主、船会社、航空会社
危険物クラス SDS、危険物申告書、輸送ラベルのクラスが一致しているかを確認します。 海上・航空で条件が異なる可能性を確認します。 荷主、船会社、航空会社、CFS
容器等級 該当する場合、包装等級や包装条件が一致しているかを確認します。 包装やラベルの再確認が必要になります。 荷主、メーカー、危険品担当者
海洋汚染物質 SDS上の該当性と海上輸送上の申告が一致しているかを確認します。 Marine Pollutant表示・申告の要否を確認します。 荷主、船会社、CFS
非危険品説明 非危険品証明書とSDS輸送情報欄が矛盾していないかを確認します。 一般貨物扱いを保留し、荷主へ再確認します。 荷主、メーカー、CFS

フォワーダーの関与範囲対比表

区分 支援しやすいこと 断定すべきでないこと 実務上の対応
現物ラベルを確認する場面 GHS絵表示、製品名、外装表示の有無を確認することです。 GHS表示だけで輸送上の危険品と断定することです。 SDS輸送情報欄へ確認を進めます。
SDSを受け取る場面 最新版か、対象製品と一致しているかを確認することです。 SDSがあるだけで輸送可否を断定することです。 輸送情報欄、UN番号、危険物クラスを確認します。
非危険品説明を受ける場面 非危険品証明書、SDS、製品仕様書の整合性を確認することです。 荷主の「危険品ではない」という説明だけで一般貨物扱いにすることです。 矛盾があれば荷主・メーカーへ再確認します。
船会社へ確認する場面 海上輸送上のUN番号、クラス、数量、包装、受託可否を確認することです。 船会社が受ければCFSや倉庫も受けると断定することです。 CFS、倉庫、混載業者の条件も確認します。
航空会社へ確認する場面 IATA危険物規則上の搭載可否、包装、数量制限を確認することです。 海上で受けられたため航空でも受けられると断定することです。 航空輸送では別途確認し直します。
CFS・倉庫へ確認する場面 保管、荷役、搬入、受入可否、必要資料を確認することです。 輸送上非危険品ならCFS・倉庫確認は不要と断定することです。 GHS表示がある場合は受入条件を確認します。
危険物申告書を確認する場面 SDS輸送情報欄とUN番号、クラス、容器等級が一致しているか確認することです。 申告書が出ていれば内容確認は不要と考えることです。 SDS、現物ラベル、外装表示と照合します。
荷主へ説明する場面 確認済み事項、未確定事項、追加資料、受託可否を整理して案内することです。 資料未確認のまま、通常貨物として進められると断定することです。 根拠資料を残し、必要に応じて再確認します。

実務で問題になりやすいケース

ケース 問題になる点 確認する資料・相手 対応の方向性
外装にGHS絵表示があるのに危険品申告がされていない 輸送上の危険品該非が確認されていない可能性があります。 SDS、現物ラベル、荷主、メーカー SDS輸送情報欄を確認し、必要に応じて危険物申告書を提出します。
SDSでは危険品非該当だが現物ラベルに危険表示がある SDSが古い、別製品のSDS、またはGHS上の危険有害性のみを示している可能性があります。 SDS、現物写真、メーカー確認 現物ラベルとSDSの整合を確認します。
品名とSDS上の製品名が一致しない 別製品のSDSで手配している可能性があります。 インボイス、SDS、製品型番、メーカー名 正しいSDSを取得し、受託可否を確認し直します。
旧版SDSに基づいて手配してしまう 危険有害性情報や輸送情報が更新されている可能性があります。 最新版SDS、メーカー確認書 最新版SDSを取得し、船会社・航空会社・CFSへ再確認します。
海上では受けられるが航空では受託不可となる 海上輸送と航空輸送では危険品規則や受託条件が異なります。 SDS、航空会社回答、IATA危険物資料 航空輸送への切替時は、搭載可否、費用、リードタイムを再調整します。
倉庫搬入時にGHS表示を理由に受入確認が必要になる 倉庫やCFSが、保管・荷役上の安全確認を求めることがあります。 SDS、非危険品証明書、倉庫回答 輸送危険品該非とは別に、倉庫受入条件を確認します。
非危険品証明書とSDS輸送情報欄が矛盾する 一般貨物として進めてよいか判断できません。 非危険品証明書、SDS、メーカー確認 荷主へ再確認し、必要に応じて危険品扱いで確認し直します。
GHS表示が目立たない化学品を通常貨物として進める アルコール含有品、エアゾール、リチウム電池関連貨物などで輸送規則上の確認が漏れる可能性があります。 品名、成分、SDS、製品仕様書 化学品・電池・スプレー製品では、GHS表示の有無にかかわらずSDSを確認します。

4列判断チェックリスト

確認場面 確認する相手 確認事項 問題がある場合の対応
GHS表示のある貨物を受け付けたとき 荷主・メーカー SDS、製品名、現物ラベル、GHS絵表示を確認します。 GHS表示だけで危険品該非を判断せず、SDS輸送情報欄を確認します。
SDSを取得したとき 荷主・メーカー 最新版か、対象貨物と一致するか、輸送情報欄が明確かを確認します。 旧版または別製品の可能性があれば、正しいSDSを再提出してもらいます。
SDS輸送情報欄にUN番号があるとき 荷主・船会社・航空会社 UN番号、正式輸送品名、危険物クラス、容器等級を確認します。 危険物申告書、輸送ラベル、受託可否を確認します。
SDS輸送情報欄が空欄または不明確なとき 荷主・メーカー 危険品判定資料、非危険品証明書、メーカー確認書を確認します。 確認未了のまま通常貨物として進めないようにします。
非危険品証明書が提出されたとき 荷主・メーカー SDS、現物ラベル、製品仕様書と矛盾していないか確認します。 矛盾があれば一般貨物扱いを保留し、再確認します。
海上輸送から航空輸送へ切り替えるとき 航空会社・航空代理店・荷主 航空危険物規則上の受託可否、包装、数量制限を確認します。 海上輸送時の判断を流用せず、航空輸送として再確認します。
CFS・倉庫へ搬入するとき CFS・倉庫・混載業者 GHS表示のある貨物の受入条件、保管条件、必要資料を確認します。 追加資料、非危険品証明書、危険品扱いでの再確認を行います。
現物ラベルと書類が一致しないとき 荷主・メーカー・配送会社 製品名、GHS表示、UN番号、危険物クラス、外装表示を確認します。 搬入・船積み・搭載を保留し、資料修正または再申告を行います。

具体例1:GHS表示はあるが輸送上は非危険品となったケース

洗浄剤の外装に感嘆符のGHS絵表示があり、荷主から海上輸送の依頼を受けたケースです。

フォワーダーがSDSを確認したところ、危険有害性情報には皮膚刺激性の記載がありましたが、輸送情報欄にはUN番号がなく、IMDG Code上は危険品非該当と整理されていました。

この場合、GHS表示があることだけを理由に危険品としてブッキングするのではなく、SDS輸送情報欄、非危険品証明書、メーカー確認を根拠に、船会社・CFSへ必要に応じて確認します。

ただし、倉庫やCFSが作業安全上の理由でSDS提出を求める場合があります。輸送危険品ではないことと、保管・取扱い上の安全確認が不要であることは別問題です。

具体例2:GHS表示とSDS輸送情報欄から危険品と判明したケース

塗料の外装に炎のGHS絵表示があり、SDSにも引火性液体としての記載があるケースです。

SDS輸送情報欄を確認したところ、UN番号、正式輸送品名、危険物クラス、容器等級が記載されていました。この場合、単なる化学品ラベルの確認ではなく、危険品輸送として手配を進める必要があります。

フォワーダーは、危険物申告書、輸送ラベル、容器・包装、船会社または航空会社の受託可否、CFS搬入可否を確認します。

特にLCL混載の場合は、船会社が受けられてもCFSや混載業者が受けられないことがあります。GHS表示を確認した段階で、危険品ブッキングとCFS受入確認を並行して進めることが重要です。

具体例3:非危険品証明書とSDSが矛盾したケース

荷主から「非危険品です」と説明され、非危険品証明書が提出された一方で、SDS輸送情報欄にはUN番号と危険物クラスが記載されていたケースです。

この場合、非危険品証明書だけを根拠に通常貨物として進めるのは危険です。フォワーダーは、荷主へ非危険品証明書とSDSの矛盾を指摘し、メーカー確認または修正版資料の提出を求めます。

確認の結果、危険品扱いが必要であれば、船会社、航空会社、CFS、倉庫へ危険品として受託可否を確認し直します。

このケースでは、GHS表示の有無だけではなく、SDSと非危険品説明の整合性を確認することが重要です。資料間の矛盾を放置すると、搬入拒否、船積み延期、追加費用につながる可能性があります。

具体例4:海上では受託可能だが航空では受託不可となったケース

化学品サンプルについて、海上輸送では船会社が受託可能と回答した後、納期短縮のため航空輸送へ切り替えたいと荷主から依頼されたケースです。

この場合、海上輸送で受けられたことを理由に、航空でも同じように受けられるとは限りません。航空輸送では、IATA危険物規則、航空会社の受託条件、旅客機・貨物機の搭載制限、数量制限、包装条件が別に問題になります。

フォワーダーは、SDS、UN番号、危険物クラス、容器等級、数量、包装形態を航空会社または航空代理店へ再確認します。

航空で受託不可となった場合は、海上輸送維持、別便、サンプル分割、梱包変更、出荷延期などの選択肢を荷主へ提示します。

荷主へ確認すべきこと

  • 最新版のSDSがあるか。
  • GHSラベルとSDSの記載が一致しているか。
  • SDSの輸送情報欄にUN番号、危険物クラス、容器等級があるか。
  • 海上輸送と航空輸送で条件が異なるか。
  • 現物ラベル、外装表示、危険物ラベルが適切か。
  • 危険品非該当の場合、その根拠資料があるか。
  • 非危険品証明書とSDSが矛盾していないか。
  • 船会社、航空会社、CFS、倉庫が受託可能か。

よくある誤解

GHS表示は危険品確認の重要なサインですが、表示だけで結論を出すと誤解が生じます。

誤解 実務上の考え方 確認すべきこと
GHS表示があれば、必ず輸送上の危険品である GHS表示は化学品の危険有害性を示すものであり、輸送危険品と必ず一致するわけではありません。 SDS輸送情報欄、UN番号、危険物クラスを確認します。
GHS表示がなければ、危険品ではない 表示が目立たなくても、輸送上の危険品に該当する場合があります。 品名、成分、用途、SDS、製品仕様書を確認します。
非危険品証明書があれば、SDSは不要である 非危険品証明書とSDSが矛盾していないか確認する必要があります。 SDSの危険有害性情報と輸送情報欄を確認します。
海上で受けられた貨物は、航空でも受けられる 海上輸送と航空輸送では危険品の受託条件が異なります。 輸送モードごとに確認します。
メーカーの製品ラベルだけ見れば判断できる 製品ラベルは重要ですが、輸送上の危険品該非はSDSや輸送規則上の情報と照合します。 ラベル、SDS、危険物申告書、受託条件を照合します。
SDSにGHS絵表示があるなら危険物申告書が必ず必要である GHS絵表示があっても、輸送上の危険品に該当しない場合があります。 SDS輸送情報欄、UN番号、危険物クラスの有無を確認します。
UN番号がなければ確認は終了でよい UN番号がない場合でも、SDSが古い、輸送情報欄が不十分、製品ラベルと不一致という場合があります。 最新版SDS、メーカー確認、非危険品証明書を確認します。
倉庫やCFSは輸送危険品でなければ無条件に受ける 輸送上は非危険品でも、GHS表示や保管安全上の理由で追加確認が必要になることがあります。 倉庫・CFSの受入条件、SDS、外装表示を確認します。

フォワーダーが注意すべき点

フォワーダーが注意すべき点は、GHS表示を「通関用の表示」や「メーカー側の安全表示」として片付けないことです。

GHS表示は、危険品該非確認のきっかけになります。特に、塗料、接着剤、洗浄剤、香料、インク、試薬、アルコール含有品、エアゾール製品、リチウム電池関連貨物などでは、GHS表示を見落とすと輸送手配に支障が出る場合があります。

  • GHS表示がある貨物は、SDSを確認します。
  • GHS表示だけで危険品該非を判断しません。
  • SDS、現物ラベル、危険物申告書、インボイスの内容を照合します。
  • 海上輸送と航空輸送の条件を分けて確認します。
  • 疑義がある場合は、荷主、メーカー、船会社、航空会社、CFS、倉庫へ事前確認します。
  • 非危険品として進める場合も、その根拠資料を残します。

まとめ

GHS表示とは、化学品の危険有害性を、絵表示、注意喚起語、危険有害性情報、注意書きなどにより、容器や包装に表示する仕組みです。

フォワーダー実務では、GHS表示は危険品確認の重要なサインになります。ただし、GHS表示があることと、国際輸送上の危険品に該当することは同じではありません。

重要なのは、GHS表示、SDS、現物ラベル、危険物申告書、UN番号、危険物クラス、海上・航空輸送の受託条件を照合することです。

GHS表示を見た場合は、危険品と決めつけるのでも、通常貨物として見過ごすのでもなく、SDSの輸送情報欄を確認し、実際の輸送モード、荷姿、受託条件に照らして安全に運べるかを確認することが基本です。

本記事の要点は、GHS表示を化学品ラベルとして読むだけでなく、SDS、UN番号、危険物クラス、危険物申告書、船会社・航空会社・CFS・倉庫の受託条件へ接続する実務上の確認起点として扱うことです。

同義語・別表記

  • GHS
  • GHS表示
  • GHSラベル
  • 化学品ラベル
  • 化学品表示
  • Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals
  • GHS Labeling

関連用語