Drive Away Clause(自動車等の貨物保険取扱い)
Drive Away Clause(ドライブアウェイ約款)とは
Drive Away Clause(ドライブアウェイ約款)とは、自動車、トラック、シャーシ、トラクター、建設機械などの輸送用具が、貨物として船積み・陸揚げされた後、揚げ地から最終倉庫、保管場所又は納入先まで自走又は牽引される間について、貨物保険上の取扱いを明確にするための特別約款です。
自動車等は、通常の貨物と異なり、陸揚げ後にキャリアカーや低床トレーラーへ積載して輸送されるだけでなく、自らの動力によって走行したり、他の車両に牽引されたりすることがあります。
この場合、対象物は引き続き貨物として輸送されている一方、道路上では車両又は機械として動作しています。
そのため、通常の貨物輸送が継続しているのか、車両としての使用、試運転、営業運転又は納車へ移行したのかが問題になります。
Drive Away Clauseの中心的な役割は、貨物として輸送された自動車等について、指定された揚げ地から最終倉庫等までの自走・牽引中に生じた被保険貨物自体の物的損害を、正式約款で定める条件の範囲内で貨物保険の対象として整理することです。
一方、第三者への人身傷害、他人の車両・建物・道路設備等の損害、運転者又は牽引者の賠償責任は、通常、貨物保険ではなく、自動車保険、対人・対物賠償保険、運送人賠償責任保険等で別途整理します。
Drive Away Clauseが付されていることだけで、自走・牽引中のあらゆる事故が補償されるわけではありません。正式な約款文言、基礎となるICC条件、保険期間、移動目的、対象区間、事故原因及び第三者損害の有無を分けて確認する必要があります。
この記事で扱う範囲
| 項目 | この記事で扱う内容 | 他記事又は別保険で扱う内容 |
|---|---|---|
| Drive Away Clause | 自力走行又は牽引による最終倉庫等までの移動と貨物保険の関係を整理します。 | 各保険会社が使用する正式約款の文言は、個別の証券・特別約款で確認します。 |
| ICC 2009 Clause 8 | 通常の輸送過程、最終倉庫への荷卸し、保管又は分配への転用と保険終期を整理します。 | 貨物保険の保険期間全般は、倉庫間条件及び輸入貨物の保険終期に関する記事で扱います。 |
| 自走 | 被保険貨物自体の動力で走行する場合の移動目的、経路、運転者及び車両状態を整理します。 | 登録、ナンバープレート、走行許可等の現地法令は各国の法令確認が必要です。 |
| 牽引 | 他の車両による牽引、連結方法、牽引区間及び被保険貨物の損害を整理します。 | 牽引車自体の損害及び牽引者の賠償責任は別保険を確認します。 |
| 積載輸送 | キャリアカー、低床車、トレーラー等へ積載して運ぶ場合との違いを整理します。 | 積付け、固縛及びラッシングの不備は専用記事で扱います。 |
| 被保険貨物自体の損害 | 衝突、接触、転倒、転落等による車体、フレーム、足回り等の物的損害を整理します。 | 補償可否は基礎条件、特別約款及び事故原因により個別に判断します。 |
| 第三者賠償 | 貨物保険で扱う損害と第三者への人身・財物損害を切り分けます。 | 自動車保険、対人・対物賠償保険及び運送人賠償責任保険で確認します。 |
| 既存不具合・摩耗 | 事故前からの故障、整備不良、通常の摩耗及び貨物固有の性質との関係を整理します。 | 整備契約上の責任及び製造物責任は別途確認します。 |
| 事故時の証拠保全 | 走行経路、移動目的、事故前後の状態、警察資料及び修理資料を整理します。 | 具体的な損害査定及び訴訟対応はサーベイヤー、保険会社又は弁護士へ相談します。 |
| フォワーダーの関与 | 自走区間の事前確認、保険手配、事故通知及び関係者間の情報整理を扱います。 | 最終的な賠償責任は、契約、約款、指示内容、事故原因及び責任制限により判断します。 |
なぜDrive Away Clauseが必要になるのか
ICC 2009 Clause 8.1は、被保険貨物が出発地の倉庫又は保管場所で、輸送開始のため運送車両その他の輸送用具へ直ちに積み込む目的で最初に動かされた時点から保険が開始し、通常の輸送過程中は継続するという基本構造を定めています。
同時に、最終倉庫又は最終保管場所で運送車両等からの荷卸しが完了した場合などに、保険が終了することを定めています。
通常貨物であれば、トラック、鉄道、船舶その他の輸送用具によって運ばれ、最終倉庫で荷卸しされるという構造が比較的明確です。
しかし、自動車や建設機械を自走させる場合、被保険貨物自体が移動手段として作動するため、「運送車両へ積載される貨物」という通常の構造にそのまま当てはめにくくなります。
また、最終倉庫へ到着しても、車両自体を他の輸送用具から荷卸しする行為が存在しない場合があります。
このため、ICCの通常の輸送期間規定だけでは、自走又は牽引による移動が通常の輸送過程に含まれるのか、どの地点で補償が終了するのかについて解釈上の不明確さが残ることがあります。
Drive Away Clauseは、この不明確な区間を正式に補足し、所定の自走・牽引区間を貨物保険の対象として扱うために付加されます。
Drive Away Clauseの正式文言を確認する必要性
Drive Away Clauseは、ICC(A)、ICC(B)又はICC(C)の標準本文に、同一名称・同一内容で組み込まれている条項ではありません。
保険会社、保険契約又は貨物の種類に応じて、特別約款、追加条件又はEndorsementとして付加されます。
実務で用いられる文言の一例では、自動車、トラック又はトラクター等が、自力走行又は牽引によって仕向地の最終倉庫へ移動する間について、基礎となる保険契約の条件に従って補償を継続する構造が採られています。
その一方で、人の死亡・傷害及び被保険貨物以外の財物に対する損害は、明示的に対象外とされています。
ただし、すべての契約が同一文言とは限りません。
| 確認項目 | 確認する内容 | 文言が不明確な場合の問題 | 実務対応 |
|---|---|---|---|
| 対象貨物 | Automobiles、Trucks、Tractors、Trailers、Construction Machinery等の範囲 | 対象車種又は機械が約款に含まれない可能性があります。 | 貨物明細と正式約款の対象物を照合します。 |
| 移動方法 | 自力走行、牽引、押送、積載輸送のどこまで含むか | 牽引だけ、又は自走だけが対象となる場合があります。 | 予定する全移動方法を申告します。 |
| 開始地点 | 船側、港湾ヤード、CY、保税地域又は指定場所のいずれか | 陸揚げ後から自走開始地点までに補償の空白が生じる可能性があります。 | 工程表に基づき開始地点を確認します。 |
| 終了地点 | Final Warehouse、Place of Storage、Named Destination等の意味 | 整備工場、検査場又は販売拠点が最終地点に含まれるか不明確になります。 | 証券上の仕向地と実際の搬入先を一致させます。 |
| 対象危険 | 基礎となるICC条件に従うのか、自走中の衝突等を独自に追加するのか | Drive Away Clauseが区間だけを延長し、危険範囲を拡張しない場合があります。 | 基礎条件と特別約款を一体として確認します。 |
| 第三者損害 | 人身傷害、他人の車両、建物及び道路設備等が除外されているか | 貨物保険だけで第三者事故へ対応できると誤認する可能性があります。 | 自動車保険及び賠償責任保険を別途手配します。 |
| 運転条件 | 運転者資格、許可、距離、経路、速度又は時間帯等の条件 | 約款又はWarranty違反が問題になる可能性があります。 | 予定条件を保険会社へ事前申告します。 |
「Drive Away Clauseあり」という名称だけで判断せず、実際に証券へ組み込まれた全文を確認する必要があります。
関連するICC 2009条項
| 条項 | 主な内容 | Drive Awayとの関係 | 確認事項 |
|---|---|---|---|
| Clause 1 | 適用されるICC(A)、ICC(B)又はICC(C)の担保危険を定めます。 | Drive Away Clauseが区間のみを明確化し、担保危険は基礎条件に従う場合があります。 | 自走中の衝突、転倒又は接触が基礎条件上どのように扱われるかを確認します。 |
| Clause 4.1 | 被保険者の故意による損害を免責とします。 | 故意の危険運転又は故意に損害を生じさせた場合との関係を確認します。 | 単なる過失と故意を混同しないようにします。 |
| Clause 4.2 | 通常の漏損、通常の重量・容積減少及び通常の摩耗を免責とします。 | タイヤ、ブレーキ、バッテリー等の通常消耗との切り分けに関係します。 | 事故による損傷か通常摩耗かを確認します。 |
| Clause 4.4 | 被保険貨物の固有の瑕疵又は性質による損害を免責とします。 | 事故前からの機械的欠陥、腐食、劣化又は構造的弱点との関係を確認します。 | 事故前点検、整備記録及び既存損傷を確認します。 |
| Clause 4.5 | 遅延によって生じた損害を免責とします。 | 自走不能による納入遅延、営業損失又は販売機会損失との関係を確認します。 | 車両自体の物的損害と遅延損害を分けます。 |
| Clause 8.1 | 通常の輸送過程と基本的な保険開始・終了を定めます。 | 自走・牽引が通常の輸送過程に含まれるかを検討する基礎になります。 | 移動目的、最終倉庫及び保管・分配への転用を確認します。 |
| Clause 8.2 | 陸揚げ後、当初と異なる仕向地へ転送する場合の保険終期を定めます。 | 予定外の別倉庫又は別販売先への自走に関係します。 | 仕向地変更と保険会社への通知を確認します。 |
| Clause 8.3 | 被保険者の支配を超える遅延、航路変更、強制荷卸し、再積載又は積替え中の継続を定めます。 | 港湾事情等による合理的な変更と、被保険者が任意に行う目的外移動を区別します。 | 変更理由、指示者及び保険会社への通知を確認します。 |
| Clause 16.1 | 損害の防止又は軽減のため合理的な措置を求めます。 | 事故車両の移動、二次事故防止、路上からの撤去等に関係します。 | 措置の必要性、費用及び保険会社への通知を確認します。 |
| Clause 16.2 | 運送人、保管者その他の第三者への権利保全を求めます。 | 運転者、陸送業者、牽引業者又は倉庫業者への事故通知に関係します。 | 通知期限、責任留保及び証拠資料を管理します。 |
対象になりやすい貨物
| 貨物 | 主な移動方法 | Drive Awayが問題になる場面 | 事前確認事項 |
|---|---|---|---|
| 新車・中古車・輸入車 | 自走、キャリアカー積載 | 港湾ヤードから保管ヤード、検査場又は指定倉庫へ移動する場合 | 登録、仮ナンバー、運転者、走行経路、既存損傷 |
| トラック・バス・商用車 | 自走、牽引、積載 | 陸揚げ後に車両置場又は架装工場へ移動する場合 | 車両重量、寸法、運転資格、ブレーキ及びタイヤ |
| シャーシ・トレーラー | 牽引 | 港から最終ヤードまでトラクターヘッドで牽引する場合 | 連結装置、キングピン、脚部、灯火類、牽引者 |
| トラクター・農業機械 | 自走、牽引、低床車積載 | 港又は倉庫から農場、整備場所又は保管場所へ移動する場合 | 道路走行の可否、速度、幅員、タイヤ及び操作担当者 |
| フォークリフト | 自走、積載 | 港湾又は倉庫構内を自走して指定保管場所へ移動する場合 | 構内走行範囲、路面、傾斜、荷役装置及び運転資格 |
| 建設機械・重機 | 自走、牽引、低床車積載 | 港湾ヤードから隣接保管場所等へ短距離移動する場合 | 公道走行可否、クローラー、足回り、作業装置及び重量 |
| 特殊車両・作業車 | 自走、牽引 | 検査場、改造工場又は最終納入先へ移動する場合 | 特殊車両通行許可、寸法、重量、誘導車及び経路 |
| 自走可能な機械設備 | 自走、遠隔操作、牽引 | 船側又はヤードから据付前保管場所へ移動する場合 | 操作方法、走行速度、路面耐力及びメーカー指示 |
重要なのは、これらが道路交通上の車両として保険に加入しているという理由ではなく、まず貨物として国際輸送されている点です。
Drive Away Clauseは、その貨物輸送過程の一部として行われる限定的な自走・牽引を整理するための約款です。
自走・牽引・積載輸送の違い
| 区分 | 内容 | 典型例 | 保険上の中心論点 | 主な確認資料 |
|---|---|---|---|---|
| 自走 | 被保険貨物が自らのエンジン又は駆動装置で走行します。 | 輸入中古トラックが港湾ヤードから指定倉庫まで走行する場合 | 貨物輸送の一部か、車両使用か、Drive Away対象区間か | 走行指示、経路、運転者、車両状態、事故場所 |
| 牽引 | 被保険貨物が他の車両に引かれて移動します。 | シャーシ、トレーラー又は故障車両を牽引車で移動する場合 | 牽引方法、連結部、牽引者、対象区間及び事故原因 | 牽引指示、連結写真、点検記録、牽引契約 |
| 積載輸送 | 被保険貨物をキャリアカー、低床車又はトレーラーへ積載します。 | 輸入車をキャリアカーへ積み、倉庫まで運ぶ場合 | 通常の国内貨物輸送か、積付け・固縛に問題がないか | 運送状、積載写真、固縛記録、陸送契約 |
| 構内移動 | 港湾、CY、倉庫又は保税地域内で短距離移動します。 | 陸揚げ場所から同一ヤード内の保管区画へ自走する場合 | 通常の荷役過程か、保管又は使用へ移行したか | 構内指示、ヤード図、作業記録、移動目的 |
| 試運転 | 性能、整備状態又は販売前状態を確認するため走行します。 | 整備後に公道又は構内で走行試験を行う場合 | 貨物輸送から車両使用へ移行していないか | 試運転指示、整備記録、走行距離、到着記録 |
貨物輸送の一部か、車両使用かの切り分け
| 区分 | 移動目的 | 移動区間 | 保険上の見方 | 確認資料 |
|---|---|---|---|---|
| 貨物輸送の一部として整理されやすい移動 | 陸揚げ後、証券上の最終倉庫、保管場所又は指定納入先へ搬入するための移動 | 港湾ヤード、保税地域、CY等から合理的な最終目的地まで | Drive Away Clauseの条件に合致すれば、貨物輸送の延長として検討されます。 | 輸送指示、証券、搬入先、予定経路、事故場所 |
| 通常の積載輸送 | キャリアカー又は低床車へ積載して保管場所へ運ぶ移動 | 港から国内倉庫、整備工場又は販売拠点まで | Drive Awayではなく、通常の陸上貨物輸送として整理される場合があります。 | 陸送手配書、運送状、積載写真、配送記録 |
| 検査場への移動 | 通関、法定検査又は輸入手続に必要な検査を受けるための移動 | 港から指定検査場を経由し最終倉庫へ向かう合理的区間 | 通常の輸送過程に必要な工程か、約款で予定されているかを確認します。 | 検査予約、輸送計画、保険会社への申告 |
| 試運転・性能確認 | 走行性能、修理状態又は販売可能性を確認するための移動 | 倉庫到着後の試走、販売店周辺、試験コース等 | 貨物輸送の通常過程を離れ、車両使用と扱われる可能性があります。 | 走行目的、整備記録、到着記録、走行距離 |
| 営業運転・業務使用 | 運送、建設、農作業その他の本来用途に使用するための走行 | 営業路線、工事現場、農場等 | 貨物保険ではなく車両の運行・使用リスクとして整理します。 | 業務開始記録、使用者、稼働記録、別保険 |
| 販売先への納車 | 販売契約の履行として購入者へ引き渡すための走行 | 保管場所又は販売店から最終購入者まで | 証券上の最終仕向地と一致するか、既に保険が終了していないかを確認します。 | 売買契約、納車指示、証券、引渡記録 |
| 経路逸脱・目的外移動 | 私用、予定外の寄り道又は別目的の移動 | 指定経路外、予定外倉庫、観光又は私的利用等 | 約款上の対象区間及び通常の輸送過程から外れる可能性があります。 | GPS、運転者証言、走行指示、事故場所 |
| 保険期間終了後の再移動 | 最終倉庫到着後、整備、販売又は別保管のため再び移動 | 到着後の別倉庫、整備工場又は販売先への移動 | 既にICC Clause 8又はDrive Away Clause上の終期を迎えている可能性があります。 | 到着記録、荷卸し・受領記録、再移動指示 |
港から倉庫までの距離が短いという事実だけでは、貨物保険上の補償は確定しません。移動目的、正式約款、証券上の仕向地、通常の経路及び保険終期を確認します。
ICC 2009 Clause 8と保険期間
ICC 2009 Clause 8では、保険は通常の輸送過程中に継続し、次のいずれか最も早い時点で終了します。
| 条項 | 保険終了事由 | Drive Awayでの確認 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| Clause 8.1.1 | 証券上の仕向地にある最終倉庫又は最終保管場所で、運送車両等からの荷卸しが完了した時 | 自走の場合、最終倉庫への到着又は正式約款が定める終点を確認します。 | 自走では通常の意味での荷卸しがないため、Drive Away Clauseの文言が重要です。 |
| Clause 8.1.2 | 通常の輸送過程以外の保管、仕分け又は分配に使用する別倉庫等で荷卸しが完了した時 | 一時保管又は販売分配用ヤードへの搬入かを確認します。 | 名称上「一時倉庫」でも、実態が分配又は通常輸送外の保管であれば終期となる可能性があります。 |
| Clause 8.1.3 | 運送車両、輸送用具又はコンテナを通常の輸送過程外の保管に使用すると被保険者側が決定した時 | 自動車自体を長時間保管又は待機させる場合との関係を確認します。 | 合理的な輸送待機と保管目的への転用を区別します。 |
| Clause 8.1.4 | 最終荷揚港で本船からの荷卸し完了後60日が経過した時 | 港からの自走が遅延している場合の上限として確認します。 | 60日間が常に保証されるわけではなく、他の終了事由が先に発生すればその時点で終了します。 |
| Clause 8.2 | 当初の仕向地と異なる場所へ転送するため、貨物が最初に動かされた時 | 別の倉庫、販売先又は工場へ目的地を変更する場合に確認します。 | 当初契約と異なる目的地への移動を無断で開始しないようにします。 |
| Clause 8.3 | 被保険者の支配を超える遅延、航路変更、強制荷卸し等の間は、所定の終期まで継続 | 港湾閉鎖、通行止め、強制移動等と任意の目的外移動を区別します。 | 状況変更時は保険会社へ速やかに通知します。 |
Drive Away Clauseによって自走・牽引区間が明示されていても、最終倉庫への到着後に試運転や再移動を行えば、既に保険期間が終了している可能性があります。
また、本船からの荷卸し後60日以内であることだけを理由に、自走中のすべての損害が補償されるわけではありません。
補償対象として検討される損害
Drive Away Clauseで中心となるのは、被保険貨物である車両又は機械そのものに生じた物的損害です。
| 事故類型 | 被保険貨物に生じる損害 | 主な確認事項 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 自走中の衝突・接触 | 車体、バンパー、キャビン、灯火類、フレーム等の損傷 | 対象区間、事故原因、運転者、経路及び基礎条件 | 相手車両の損害は第三者賠償として分けます。 |
| 自走中の転倒・転落 | 車体、キャビン、作業装置、足回り等の損傷 | 路面、速度、車両状態、積載物、操作方法 | 既存不具合又は操作ミスとの因果関係を確認します。 |
| 牽引中の脱落 | フレーム、車軸、連結部、外装及び底部の損傷 | 牽引方法、連結装置、牽引者及び事前点検 | 牽引車の損害とは分けます。 |
| 港湾・ヤード内の接触 | 側面、屋根、ミラー、作業装置等の損傷 | 構内経路、誘導、作業指示及び監視映像 | 荷役事故か自走事故かを確認します。 |
| 牽引中の横転 | シャーシ、トレーラー、機械設備等の広範な損傷 | 速度、カーブ、重心、連結状態及び路面 | 牽引方法の適切性と運送人責任を確認します。 |
| 事故後の二次損害 | 路上放置、雨水、盗難、追加接触等による損傷 | 損害軽減措置、撤去方法、保管場所 | Clause 16に基づく合理的な措置を確認します。 |
実際の補償範囲は、Drive Away Clauseだけでなく、ICC(A)、ICC(B)、ICC(C)、車両専用条件、免責、Deductible及びWarrantyにより決まります。
被保険貨物の損害と第三者賠償の切り分け
| 損害の種類 | 典型例 | 主に確認する保険 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|---|
| 被保険貨物自体の物的損害 | 輸入車、トラック又は建設機械自体が衝突・転倒して損傷 | 貨物保険、Drive Away Clause | 対象区間、移動目的、事故原因及び保険期間を確認します。 |
| 第三者の車両損害 | 自走中に他の自動車へ衝突 | 自動車保険、対物賠償保険 | 貨物保険では当然に補償されません。 |
| 第三者の施設・設備損害 | フェンス、建物、ガードレール又は港湾設備を損傷 | 対物賠償保険、賠償責任保険 | 施設管理者への事故通知と証拠保全が必要です。 |
| 第三者の人身傷害 | 歩行者、他車両の運転者又は作業員を負傷させた場合 | 自動車保険、対人賠償保険 | 現地法令上必要な強制保険等を確認します。 |
| 運転者・作業者の負傷 | 自走・牽引作業中に運転者又は誘導員が負傷 | 労災保険、傷害保険、使用者賠償責任保険 | 被保険貨物自体の損害とは別に整理します。 |
| 納期遅延・営業損失 | 事故車両が納期に間に合わず、営業開始が遅れた場合 | 遅延利益保険、利益保険等の有無を確認 | 通常の貨物保険では、遅延自体による損害は別途確認が必要です。 |
Drive Away Clauseは、通常、自動車賠償責任保険の代替にはなりません。
慎重な確認が必要な損害
| 損害類型 | 慎重な確認が必要な理由 | 関連する条件 | 主な資料 |
|---|---|---|---|
| 通常の摩耗・消耗 | タイヤ、ブレーキ、バッテリー等の通常消耗は偶然な物的事故と異なります。 | ICC 2009 Clause 4.2 | 整備記録、走行距離、事故前写真、部品状態 |
| 既存不具合による故障 | エンジン、ステアリング、ブレーキ又は連結部の事故前からの不具合が原因となる場合があります。 | ICC 2009 Clause 4.4、車両専用条件 | 輸出前点検、輸入時点検、整備記録、サーベイ |
| 機械的・電気的故障だけの損害 | 外部事故を伴わない内部故障が、特別な免責又は車両専用条件の対象となる場合があります。 | 証券上の機械的・電気的故障条件 | 診断記録、故障コード、分解報告、事故状況 |
| 試運転・営業運転 | 貨物輸送ではなく車両使用へ移行している可能性があります。 | Drive Away Clause、ICC 2009 Clause 8 | 走行目的、到着記録、試運転指示、稼働記録 |
| 目的外・経路外移動 | 約款が予定する合理的な輸送区間を外れている可能性があります。 | Drive Away Clause、証券上の仕向地 | GPS、予定ルート、運転者証言、事故場所 |
| 保険終期後の再移動 | 最終倉庫への到着又は保管・分配への転用によって保険が終了している可能性があります。 | ICC 2009 Clause 8.1.1から8.1.3 | 受領書、到着時刻、再移動指示、保管記録 |
| 故意による危険行為 | 被保険者の故意に起因する損害は免責となります。 | ICC 2009 Clause 4.1 | 警察記録、運転指示、映像、事故調査 |
| 無免許・無許可等がある事故 | 現地法令、第三者責任、別保険及び特別条件に重大な影響があります。 | 適用法令、Warranty、特別条件 | 免許、登録、走行許可、警察記録 |
無免許運転、無登録車両の走行又は通行許可違反があったという事実だけから、貨物保険の結論を一律に断定することはできません。
違反の内容、事故との因果関係、故意の有無、正式約款、Warranty及び適用法令を確認します。
自走前・牽引前に確認すべき車両状態
| 確認箇所 | 主な確認内容 | 事故との関係 | 保存資料 |
|---|---|---|---|
| 車体外観 | 凹み、擦り傷、錆、亀裂、既存変形 | 既存損傷と新規損傷を区別します。 | 四方向写真、損傷拡大写真、Condition Report |
| エンジン・駆動系 | 始動、異音、警告灯、油漏れ、走行可否 | 内部故障又は既存不具合との関係を確認します。 | 始動動画、診断記録、点検表 |
| ブレーキ | 制動、警告灯、エア圧、パーキングブレーキ | 衝突又は逸走事故の原因確認に重要です。 | 点検記録、試験結果、整備履歴 |
| タイヤ・足回り | 空気圧、摩耗、亀裂、ホイール、サスペンション | バースト、転倒又は操向不能との関係を確認します。 | タイヤ写真、製造年、測定記録 |
| ステアリング | 操舵、遊び、油漏れ、警告表示 | 経路逸脱又は衝突原因との関係を確認します。 | 点検記録、運転者報告 |
| 灯火・警報装置 | 前照灯、制動灯、方向指示器、警音器 | 公道走行の安全性及び第三者事故に関係します。 | 作動写真、点検表 |
| 連結装置 | キングピン、カプラー、チェーン、ブレーキホース | 牽引中の脱落又は横転原因に関係します。 | 連結前後写真、締結確認表 |
| 燃料・液体 | 燃料量、油脂、冷却水、漏れ | 火災、故障及び路面汚染との関係を確認します。 | 点検表、漏出箇所写真 |
自走できるという事実と、安全かつ適法に目的地まで走行できる状態であることは同じではありません。
フォワーダー関与範囲の標準五分類
本記事の五分類は、法令上又は業界全体で確立された分類ではなく、本シリーズにおいてフォワーダーの関与範囲を整理するために使用する分析上の枠組みです。
| 標準五分類 | Drive Away区間での主な関与 | 責任判断の中心 | 主な確認資料 |
|---|---|---|---|
| Simple Intermediary(単純取次) | 荷主と陸送業者、牽引業者、保険会社等の連絡を取り次ぎます。 | 単なる取次を超えて、補償、車両状態又は走行安全性を保証したか | 見積書、メール、案内文、取次記録 |
| Cargo Transportation Service Provider(貨物利用運送事業者) | 自走・牽引区間を含む貨物輸送サービスを提供します。 | 契約区間、陸送手配、運転者選定、事故区間及び通知義務 | 運送契約、輸送指示、Booking、作業記録 |
| NVOCC / House B/L Issuer | House B/Lを発行し、国際輸送の契約主体として関与します。 | House B/L上の仕向地、責任区間、責任制限及び通知期限 | House B/L、Master B/L、搬入指示、事故通知 |
| Door-to-Door Single Contractor | 船積み、陸揚げ、自走・牽引、保管及び最終搬入を一括して引き受けます。 | 一括契約の範囲、下請管理、工程間の引継ぎ及び保険手配 | 包括見積書、仕様書、下請契約、工程表 |
| Agent/Coordinator for Specific Operations(特定業務の代理・調整者) | 運転者、走行許可、サーベイ、修理又は事故連絡等の特定業務を調整します。 | 委任範囲、確認義務、指示権限及び最終決定者 | 委任記録、確認依頼、点検報告、事故報告 |
Contracting Carrier及びActual Carrierは、法的又は契約上の地位を示す概念であり、本記事の標準五分類を置き換える代替分類ではありません。
運転、牽引、整備、点検、積載、固縛又はサーベイといった実作業は、それ自体で第六の分類を構成しません。
具体例1:輸入中古トラックの自走中に接触事故が発生した場合
輸入中古トラックが本船から陸揚げされ、港湾ヤードから証券上の指定倉庫まで自走していた途中、道路上で他の車両と接触し、トラックの前部が損傷したとします。
まず、自走区間がDrive Away Clauseで指定された区間に含まれるか、指定倉庫への合理的な経路であったか、保険期間が終了していなかったかを確認します。
次に、トラック自体の損傷と相手車両の損傷を分けます。
被保険貨物であるトラック自体の物的損害は、Drive Away Clause及び基礎条件に基づいて検討します。
相手車両の修理費、相手運転者の負傷等は、貨物保険ではなく自動車保険又は賠償責任保険で整理します。
また、事故前からブレーキ不良又はタイヤ摩耗が存在していた可能性がある場合は、事故前点検、整備記録及びサーベイ結果を確認します。
同一事故でも、被保険貨物自体の損害と第三者賠償は、別の保険関係として処理します。
具体例2:建設機械の牽引中に連結が外れた場合
輸入された建設機械を港湾ヤードから近隣の保管場所まで牽引していた途中、連結装置が外れて機械が道路脇へ転落し、フレーム、足回り及び作業装置が損傷したとします。
この場合、牽引区間がDrive Away Clauseの対象に含まれるか、牽引方法が正式約款及び輸送計画に適合していたかを確認します。
連結装置の事故前状態、牽引前点検、牽引業者の作業記録及び事故現場の路面状況も重要です。
連結部に事故前から亀裂又は著しい摩耗があった場合は、偶然な外部事故と既存不具合のいずれが主要な原因かを調査します。
道路設備等にも損害が生じた場合は、建設機械自体の貨物損害と第三者財物損害を分けます。
牽引中の事故では、対象区間だけでなく、連結方法、牽引者及び事故前状態が損害判断の中心になります。
具体例3:最終倉庫到着後の試運転中に事故が発生した場合
輸入車が港から指定倉庫まで無事に自走して到着し、受領記録も作成された後、販売前の性能確認を目的として倉庫周辺を試走し、その途中で衝突事故が発生したとします。
この場合、港から指定倉庫までの自走は貨物輸送の一部としてDrive Away Clauseの対象となる可能性があります。
しかし、指定倉庫への到着及び引渡しによって保険が終了していた場合、その後の試運転は貨物輸送ではなく、車両の使用又は販売前試験として整理される可能性があります。
確認すべき資料は、倉庫到着時刻、受領書、鍵の引渡し、試運転の指示者、試運転の目的、走行距離及び保険証券上の最終目的地です。
Drive Away Clauseが存在していても、最終倉庫到着後の試運転まで自動的に補償するとは限りません。
自走という行為が同じでも、最終倉庫への搬入と到着後の試運転では、移動目的と保険期間が異なります。
実務で問題になりやすいケース
| ケース | 主な原因・争点 | 確認資料 | 判断のポイント | 初動対応 |
|---|---|---|---|---|
| 港から倉庫への自走中に衝突 | 対象区間、指定経路、運転者過失 | 証券、走行指示、GPS、警察記録 | 貨物輸送の一部か、第三者損害を含むか | 現場写真と車両損傷を記録します。 |
| 牽引中にシャーシが横転 | 連結、速度、重心、路面状況 | 牽引記録、連結写真、事故報告 | 牽引方法と既存不具合を確認します。 | 連結部品を保存します。 |
| 港湾構内で壁へ接触 | 誘導不足、死角、構内経路 | 構内映像、作業指示、運転者証言 | 荷役過程か自走区間かを確認します。 | 監視映像を早期に確保します。 |
| 自走中にタイヤが破裂 | 事故衝撃、摩耗、劣化、空気圧 | タイヤ写真、製造年、点検記録 | 偶然な事故か通常摩耗・既存劣化か | 破損タイヤを保存します。 |
| ブレーキ不良により衝突 | 既存不具合、整備不足、事故前点検 | 整備記録、診断、警告灯記録 | Clause 4.4等との関係を確認します。 | 修理前にサーベイを行います。 |
| 指定経路を外れて事故 | 目的外移動、私用、指示変更 | GPS、指示書、通話記録 | 通常の輸送過程から外れたか | 経路変更の理由を記録します。 |
| 倉庫到着後の試運転で事故 | 保険終期、車両使用への移行 | 受領書、到着記録、試運転指示 | Drive Away対象区間が終了していたか | 到着と試運転開始時刻を確定します。 |
| 事故後の撤去中に追加損傷 | 損害軽減、撤去方法、保管方法 | 撤去指示、写真、業者報告 | 合理的な損害軽減措置であったか | 保険会社へ速やかに通知します。 |
Drive Away Clause適用判断フロー
- 事故の発生日時、発生場所、自走又は牽引の開始地点及び予定されていた最終目的地を特定します。
- 事故時の移動目的が、最終倉庫、保管場所、検査場又は指定納入先への搬入であったのか、試運転、営業運転、販売先への納車又は目的外移動であったのかを確認します。
- 貨物保険証券及び証券へ組み込まれたDrive Away Clauseの正式文言を確認し、対象車種、対象区間、自走・牽引の範囲、運転条件及び除外事項を事故内容と照合します。
- 基礎となるICC(A)、ICC(B)又はICC(C)を確認し、事故原因が適用条件上の担保危険に該当するか、Clause 4その他の免責に該当する可能性があるかを整理します。
- ICC 2009 Clause 8及びDrive Away Clause上の保険終期を確認し、最終倉庫への到着、引渡し、保管又は分配への転用によって事故前に保険が終了していなかったかを確認します。
- 被保険貨物である車両又は機械自体の物的損害と、第三者の人身傷害、他車両、建物、道路設備等の損害を分離し、それぞれに対応する保険を確認します。
- 事故前写真、Condition Report、整備記録及び自走・牽引前点検記録を確認し、事故による新規損傷と通常摩耗、既存不具合、機械的故障又は貨物固有の性質を切り分けます。
- 運転者又は牽引者の資格、所属、作業指示、走行経路、GPS記録、警察記録及び事故現場資料を確認し、事故原因と関係者の役割を整理します。
- 事故車両の路上撤去、二次事故防止、雨水・盗難対策及び安全な保管など、ICC 2009 Clause 16.1に関係する合理的な損害防止・軽減措置を実施します。
- 陸送業者、牽引業者、Actual Carrier、倉庫業者その他の関係者に対する通知期限を確認し、ICC 2009 Clause 16.2に従って事故通知及び権利留保を行います。
- 車両損傷写真、修理見積書、サーベイレポート、残存価値、第三者損害資料及び到着・引渡し記録を整理します。
- Drive Away Clauseの対象区間、保険期間、事故原因、被保険貨物の損害額及び第三者損害の切り分け結果をまとめ、保険会社又は保険代理店へ提出します。
事故時に確認すべき資料
| 資料区分 | 主な資料 | 確認目的 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|---|
| 保険資料 | 貨物保険証券、Drive Away Clause、ICC、特別約款、Warranty | 対象貨物、区間、危険、免責及び保険終期を確認します。 | 約款名だけでなく全文を確認します。 |
| 移動目的 | 輸送指示書、搬入指示、検査予約、納入先情報 | 貨物輸送か試運転・営業使用かを確認します。 | 口頭指示は書面化します。 |
| 走行経路 | 予定ルート、GPS、地図、通行許可、事故位置 | 指定区間及び合理的経路内かを確認します。 | 予定外変更の理由を記録します。 |
| 車両状態 | 事故前後写真、点検表、整備記録、Condition Report | 新規損傷と既存不具合を区別します。 | 修理前に現物を保存します。 |
| 運転者・牽引者 | 氏名、所属、免許、資格、作業指示 | 作業主体、資格及び指示関係を確認します。 | 第三者賠償保険も確認します。 |
| 事故状況 | 警察記録、事故報告、現場写真、映像、証言 | 事故原因及び第三者損害を確認します。 | 監視映像の保存期限に注意します。 |
| 損害資料 | 修理見積り、部品明細、サーベイレポート、残存価値 | 損害範囲と合理的修理費を確認します。 | 既存修理や改良費を分けます。 |
| 第三者損害 | 相手車両、人身、施設損害、請求書、事故通知 | 貨物損害と賠償責任を分けます。 | 貨物保険請求へ混在させないようにします。 |
| 到着・引渡し | 受領書、入庫記録、鍵の引渡し、保管開始記録 | ICC Clause 8及びDrive Away Clause上の終期を確認します。 | 到着時刻と再移動時刻を明確にします。 |
| 第三者への通知 | 事故通知、責任留保、期限管理表 | Clause 16.2に基づく権利保全を確認します。 | 通知先ごとに期限を管理します。 |
フォワーダー実務での判断チェックリスト
| 確認場面 | 確認する相手 | 確認事項 | 問題がある場合の対応 |
|---|---|---|---|
| 受託時 | 荷主、輸入者、輸出者 | 自走・牽引可能な自動車、シャーシ、建設機械等か | 通常貨物として処理せず、移動方法と区間を確認します。 |
| 保険手配時 | 荷主、保険会社、保険代理店 | Drive Away Clauseの正式文言、対象貨物、区間、危険及び免責 | 予定する自走・牽引内容を事前申告します。 |
| 保険期間確認時 | 保険会社、保険代理店 | ICC 2009 Clause 8、最終倉庫、到着・荷卸し・引渡しの扱い | 自走の場合の保険終期を書面で確認します。 |
| 移動計画時 | 荷主、陸送業者、倉庫業者、現地代理店 | 最終目的地、経路、距離、移動目的、運転者又は牽引者 | 輸送指示書、経路及び搬入先を記録します。 |
| 法令確認時 | 現地代理店、陸送業者、専門家 | 登録、免許、通行許可、仮ナンバー、強制保険 | 適法な走行条件が整うまで移動を開始しません。 |
| 自走・牽引前 | 荷主、作業業者、運転者、整備担当者 | 外観、エンジン、ブレーキ、タイヤ、灯火、連結部、足回り | 写真、動画及び点検記録を残します。 |
| 第三者賠償確認時 | 荷主、陸送業者、運転者、保険会社 | 自動車保険、対人・対物賠償保険、運送人賠償責任保険 | 貨物保険とは別に必要な保険を手配します。 |
| 事故発生時 | 運転者、陸送業者、警察、倉庫業者、現地代理店 | 場所、時刻、経路、原因、車両損害、第三者損害 | 現場写真、警察記録、事故報告及びGPSを確保します。 |
| 損害軽減時 | 保険会社、サーベイヤー、撤去業者 | 路上撤去、保管、二次事故防止及び追加損傷 | Clause 16.1との関係を確認します。 |
| 保険請求時 | 保険会社、保険代理店、サーベイヤー | 被保険貨物自体の損害、対象区間、保険期間及び事故原因 | Drive Away Clauseと事故資料を照合します。 |
| 第三者請求時 | 陸送業者、牽引業者、Actual Carrier、倉庫業者 | 事故原因、責任主体、通知期限、責任制限 | Clause 16.2に従って権利を保全します。 |
| 責任整理時 | 荷主、保険会社、陸送業者、海事弁護士 | 貨物保険、自動車保険、賠償責任保険及び運送人責任 | 被保険貨物の損害と第三者賠償を分けて整理します。 |
よくある誤解
| 誤解 | 実際の考え方 | 確認すべきこと |
|---|---|---|
| 港から倉庫まで短距離なら、自動的に貨物保険の対象になる。 | 距離ではなく、Drive Away Clause、移動目的、対象区間及び保険期間を確認します。 | 正式約款、指定経路、最終目的地を確認します。 |
| Drive Away Clauseがあれば、自走中のすべての事故が補償される。 | 基礎となるICC条件、免責、Warranty及び正式約款が適用されます。 | 対象危険、運転条件及び除外事項を確認します。 |
| 第三者事故も貨物保険で補償される。 | 貨物保険は原則として被保険貨物自体の物的損害を対象とします。 | 自動車保険、対人・対物賠償保険を確認します。 |
| 自走できれば、安全に走行できる状態である。 | 自走可能でも、ブレーキ、タイヤ、灯火又は連結部に不具合がある場合があります。 | 自走前点検、整備記録及び写真を確認します。 |
| Drive Away Clauseがあれば、試運転も対象になる。 | 試運転は貨物輸送ではなく、車両使用と整理される可能性があります。 | 到着時刻、走行目的、保険終期を確認します。 |
| 本船荷卸し後60日以内なら、どの移動でも補償される。 | ICC Clause 8.1.4は他の終了事由と比較して最も早い時点が終期となります。 | 最終倉庫到着、保管・分配への転用を確認します。 |
| 無免許等の法令違反があれば、貨物保険は必ず一律免責になる。 | 正式約款、故意、因果関係、Warranty及び適用法令を個別に確認します。 | 免許、許可、事故原因及び保険条件を確認します。 |
| 自走中の故障は、すべて輸送事故になる。 | 通常摩耗、既存不具合、固有の瑕疵又は内部故障との切り分けが必要です。 | Clause 4.2、Clause 4.4、車両専用条件を確認します。 |
| 最終倉庫に到着しても、しばらく貨物保険は続く。 | 到着・荷卸し・引渡し又は保管への転用で保険が終了する場合があります。 | Clause 8、受領記録、Drive Away Clauseを確認します。 |
| 運転者の過失はすべて貨物保険で処理できる。 | 被保険貨物の損害と運転者の第三者賠償責任を分けます。 | 事故内容、自動車保険及び賠償責任保険を確認します。 |
| フォワーダーが事故対応をすれば、責任を認めたことになる。 | 証拠保全、保険通知及びサーベイ手配と、法的責任の承認は別です。 | 手配目的と責任留保を明確にします。 |
| Drive Away Clauseという名称が同じなら、補償内容も同じである。 | 保険会社や契約によって対象車両、区間、危険及び除外内容が異なる場合があります。 | 証券へ組み込まれた正式文言を確認します。 |
海事弁護士・専門家を利用すべき場面
- 自走・牽引が通常の輸送過程か車両使用かについて争いがある場合
- ICC 2009 Clause 8による保険終期が争われる場合
- Drive Away Clauseの対象区間又は対象車種が不明確な場合
- 試運転、納車又は目的外移動との境界が問題になる場合
- 事故前からの整備不良又は機械的故障が事故原因として争われる場合
- 被保険貨物の損害と第三者への人身・財物損害が競合する場合
- 高額な輸入車、商用車又は建設機械の全損・重大損害が発生した場合
- 陸送業者、牽引業者又はフォワーダーへ高額な請求が行われている場合
- 現地の登録、走行許可、強制保険又は道路交通法令が問題になる場合
- 事故通知期限、クレーム期限又は出訴期限が近い場合
実務上のポイント
- Drive Away Clauseは、貨物として輸送された自動車等の自走・牽引区間を明確にする特別約款です。
- Drive Away Clauseは、通常、ICC(A)、ICC(B)又はICC(C)の標準本文とは別に付加されます。
- 同じ名称でも契約ごとに文言が異なる可能性があるため、正式約款全文を確認します。
- ICC 2009 Clause 8は通常の輸送過程と保険終期を判断する基礎になります。
- 自走・牽引が最終倉庫への搬入なのか、試運転、営業運転又は納車なのかを区別します。
- 港から倉庫までの短距離移動であっても、自動的に補償されるとは限りません。
- 貨物保険で中心となるのは、被保険貨物である車両等そのものの物的損害です。
- 第三者への人身傷害・財物損害は、自動車保険又は賠償責任保険で別途確認します。
- 通常摩耗、既存不具合及び固有の瑕疵は、ICC 2009 Clause 4.2及びClause 4.4との関係を確認します。
- 自走可能であることと、安全・適法に走行できる状態であることは同じではありません。
- 事故前の写真、点検記録、走行指示、GPS及び到着記録を保存します。
- 事故後は、Clause 16に基づく損害軽減及び第三者への権利保全を行います。
- フォワーダーは保険金支払又は責任を断定せず、保険条件と事実関係を分けて確認します。
まとめ
Drive Away Clauseは、自動車、トラック、シャーシ、トラクター、建設機械などが貨物として輸送された後、揚げ地から最終倉庫、保管場所又は指定納入先まで自走又は牽引される間について、貨物保険上の補償区間を明確にする特別約款です。
通常の貨物は運送車両等へ積載されて運ばれますが、自動車等を自走させる場合は、被保険貨物自体が移動手段として作動します。
このため、ICC 2009 Clause 8が定める通常の輸送過程及び最終倉庫への荷卸しという構造だけでは、自走区間と保険終期が明確にならない場合があります。
Drive Away Clauseは、この区間を補足する役割を持ちますが、同一名称の約款がすべて同一内容であるとは限りません。
対象車両、自走・牽引の範囲、開始地点、最終地点、対象危険、第三者損害の除外、運転条件及び基礎となるICC条件を確認する必要があります。
最終倉庫への搬入を目的とする合理的な自走又は牽引であれば、貨物輸送の延長として検討される可能性があります。
一方、最終倉庫到着後の試運転、営業運転、目的外移動、販売後の納車又は保険終期後の再移動は、貨物輸送から車両使用へ移行したものとして整理される可能性があります。
被保険貨物である車両自体の損傷と、第三者への人身傷害・財物損害は分けて扱います。
貨物保険は、自動車保険又は対人・対物賠償保険の代替にはなりません。
自走・牽引前には、車体、エンジン、ブレーキ、タイヤ、ステアリング、灯火類、連結部及び足回りを確認し、事故前の写真と点検記録を保存します。
事故後は、走行目的、経路、事故場所、運転者、事故前状態、第三者損害、到着・引渡し記録、正式約款及び保険終期を早期に確認します。
最終的な保険金支払及び賠償責任は、Drive Away Clause、適用されるICC、車両専用条件、特別約款、保険証券、事故原因、移動目的、対象区間、保険期間及び証拠資料に基づいて個別に判断されます。
自動車等の自走・牽引を予定している場合又は事故が発生した場合は、貨物保険証券、Drive Away Clauseの正式文言、走行計画、車両点検記録及び第三者賠償保険の内容を準備し、保険会社又は外航貨物海上保険を扱う専門の保険代理店へ相談してください。
本記事は一般的な情報を提供するものであり、個別の保険適用、保険金支払、法的責任、道路走行の適法性又は第三者賠償の有無を確定するものではありません。
同義語・別表記
関連用語
公式情報
- 公式ホームページ: https://marineinsurance.jp/
