英国海上保険法における重複保険

英国海上保険法における重複保険とは

英国海上保険法における重複保険とは、同一の航海事業および同一の被保険利益について、被保険者またはそのために複数の保険証券が手配されている状態をいいます。

外航貨物海上保険では、売主、買主、商社、荷受人、金融機関、包括予定保険の利用者など、複数の関係者が同じ貨物について保険を手配している場合があります。

その結果、複数の保険契約による保険金額の合計が、実際に填補されるべき損害額を超えることがあります。このような場合に問題となるのが、重複保険と超過保険の考え方です。

重複保険と超過保険の関係

MIA1906第32条では、同一の航海事業および同一の利益について複数の保険が付けられ、その保険金額の合計が法律上認められる填補額を超える場合、被保険者は重複保険によって超過保険の状態にあると整理されています。

ここで重要なのは、複数の保険が存在すること自体が直ちに問題なのではなく、保険金額の合計が損害填補の限度を超える場合に、過剰な回収を防ぐ必要があるという点です。

海上保険は、損害を填補するための保険であり、事故によって利益を得るための制度ではありません。そのため、複数の保険があっても、被保険者が実際の損害を超えて保険金を受け取ることはできません。

被保険者は請求する保険者を選べる

MIA1906第32条では、別段の定めがない限り、被保険者は、自ら適当と考える順序で保険者に対して保険金請求を行うことができるとされています。

つまり、複数の保険契約が存在する場合でも、被保険者は必ずしも全保険者に同時に請求しなければならないわけではありません。

ただし、被保険者が受け取ることができる金額は、法律上認められる填補限度額を超えることはできません。ここでも、海上保険が損害填補を目的とする制度であることが基本になります。

評価済保険証券の場合

評価済保険証券とは、保険証券上に保険の目的物の協定価額が記載されている証券です。

重複保険において、被保険者が評価済保険証券に基づいて請求する場合、他の保険契約から受け取った金額は、その評価額との関係で控除されることになります。

この場合、実際の貨物価額とは別に、保険証券上の評価額が基準になります。そのため、複数の保険契約がある場合には、それぞれの保険証券が評価済か評価未済かを確認する必要があります。

評価未済保険証券の場合

評価未済保険証券とは、保険証券上に保険の目的物の価額を記載せず、後日、保険価額を確定する証券です。

重複保険において、被保険者が評価未済保険証券に基づいて請求する場合、他の保険契約から受け取った金額は、確定される保険価額全体との関係で控除されることになります。

実務上は、インボイス価格、運賃、保険料、付随費用、保険金額、損害額などを確認し、実際に填補されるべき金額を整理する必要があります。

超過して受け取った保険金の扱い

MIA1906第32条では、被保険者が法律上認められる填補額を超えて保険金を受け取った場合、その超過額は保険者間の分担権に従って、保険者のために保持されるものと整理されています。

これは、被保険者が重複保険によって損害額を超える利益を得ることを防ぐための考え方です。

複数の保険者が関与している場合、最終的には保険者間でどのように負担を分けるかが問題になります。被保険者にとって重要なのは、二重取りが認められないという点です。

外航貨物海上保険で重複保険が起きる場面

外航貨物海上保険では、重複保険は意外に起こり得ます。

例えば、CIF条件で売主が貨物保険を手配しているにもかかわらず、買主側も自社の包括予定保険で同じ貨物を付保している場合があります。

また、商社が手配した保険と最終需要家が手配した保険、フォワーダー経由で手配された保険と荷主自身の保険、金融機関のために付けられた保険と貨物所有者の保険が重なる場合もあります。

このような場合、事故発生後に複数の保険証券が存在していることが判明し、どの保険に請求するのか、他の保険から受け取った金額をどう控除するのかが問題になります。

CIF取引と重複保険

CIF条件では、売主が海上保険を手配することが一般的です。

しかし、買主が自社の包括予定保険を持っている場合、同じ貨物について売主側の保険と買主側の保険が重なることがあります。

この場合、買主が売主から受け取った保険証券に基づいて請求するのか、自社の包括予定保険に請求するのか、また他方の保険からの回収額をどのように扱うのかを確認する必要があります。

特に、保険証券の被保険者、保険金額、保険価額、適用約款、譲渡の有無、事故発生時の被保険利益を整理することが重要です。

包括予定保険と通知漏れの問題

包括予定保険では、一定の取引範囲に属する貨物を継続的に保険の対象とし、後日、船積ごとに通知する運用があります。

この場合、別途個別保険が手配されている貨物まで包括予定保険の通知対象になっていると、重複保険が発生することがあります。

また、通知漏れを避けるために広く通知している場合でも、結果として他の保険契約と重なる可能性があります。そのため、包括予定保険を利用する場合には、どの貨物を対象とし、どの貨物を除外するのかを明確にしておくことが重要です。

実務上の注意点

貨物事故が発生した場合には、まず、その貨物について複数の保険契約が存在しないかを確認する必要があります。

確認すべき事項は、保険証券の有無、包括予定保険の対象範囲、CIF保険の有無、売主・買主・商社・荷受人の保険手配状況、保険金額、保険価額、被保険利益、保険証券の譲渡の有無などです。

重複保険がある場合でも、被保険者は損害額を超えて保険金を受け取ることはできません。複数の保険があるときは、どの保険に請求するか、他の保険からの回収額をどう控除するか、保険会社間でどのように分担されるかを整理する必要があります。

MIA1906第32条は、重複保険による超過回収を防ぎ、海上保険が損害填補の制度であることを確認するための重要な条文です。

同義語・別表記

  • 重複保険
  • Double Insurance
  • MIA1906第32条
  • 超過保険
  • Over-insurance
  • 複数保険契約
  • 保険金額超過
  • Contribution

関連用語