英国海上保険法における単独海損不担保・連続損害・損害防止義務
単独海損不担保・連続損害・損害防止義務とは
英国海上保険法における単独海損不担保、連続損害、損害防止義務とは、分損や複数事故が発生した場合に、どの範囲まで保険者が責任を負い、被保険者がどのような損害防止措置を取るべきかを整理する考え方です。
外航貨物海上保険では、貨物が一部損傷した場合、複数回の事故が発生した場合、全損前に分損が発生していた場合、または損害拡大を防ぐために費用を支出した場合に、これらの規定が関係します。
単独海損不担保とは
MIA1906第76条では、保険対象が単独海損不担保とされている場合の扱いを定めています。
単独海損不担保とは、一定の分損について保険者が責任を負わないとする条件です。伝統的には、Free from Particular Average、FPAなどの考え方と関係します。
この条件がある場合、被保険者は、共同海損犠牲による損害などを除き、通常の部分損害について回収できないことがあります。
按分可能な契約の場合
単独海損不担保であっても、保険契約が按分可能な場合には、按分可能な一部について全損が発生したとき、その部分について回収できることがあります。
例えば、複数ロット、複数明細、複数種類の貨物が一つの保険証券で付保されている場合に、どの部分が独立して評価できるかが問題になることがあります。
実務では、インボイス、パッキングリスト、保険証券、貨物明細、ロット単位、梱包単位などを確認する必要があります。
単独海損不担保でも回収できる費用
MIA1906第76条では、保険対象が単独海損不担保とされている場合でも、保険者は救助料、Particular Charges、損害防止約款に基づいて正当に支出された費用について責任を負うことがあります。
つまり、通常の分損が担保されない場合でも、損害を防止または軽減するために適切に支出された費用が別途問題になることがあります。
貨物事故では、再梱包、乾燥、検品、仕分け、残存物保全、転送などの費用が発生することがあります。これらが保険上どの費用に該当するかを整理する必要があります。
一定割合未満不担保の場合
MIA1906第76条では、一定割合未満の単独海損を不担保とする条件がある場合、共同海損損害を単独海損に加算して、その割合に到達させることはできないとされています。
また、その割合に達しているかどうかを判断する際には、保険対象そのものに発生した実損害だけを考慮します。
Particular Chargesや損害調査・証明に付随する費用は、その割合判定から除外されます。
連続損害とは
MIA1906第77条では、保険証券に別段の定めがない限り、保険者は連続して発生した損害について責任を負うとされています。
この場合、複数の損害の合計が保険金額を超えることがあっても、保険者が責任を負う可能性があります。
例えば、同一航海中に、最初に一部濡損が発生し、その後別の事故によりさらに損害が拡大した場合など、複数の損害が連続して発生することがあります。
分損後に全損が発生した場合
同一保険証券のもとで、修理または補修されていない分損が発生し、その後に全損が発生した場合、被保険者は原則として全損についてのみ回収できます。
これは、未修理の分損を別途回収し、さらに全損も回収することで、重複的な回収が生じることを防ぐためです。
ただし、この規定は損害防止約款に基づく保険者の責任には影響しないとされています。
損害防止約款とは
MIA1906第78条では、保険証券に損害防止約款がある場合、その約款に基づく約束は、保険契約を補足するものとされています。
被保険者は、損害を防止または軽減するために正当に支出した費用を、保険者から回収できることがあります。
重要なのは、保険者が全損保険金を支払った場合でも、また保険対象が単独海損不担保とされている場合でも、損害防止約款に基づく正当な費用は別枠で回収できることがあるという点です。
損害防止費用に含まれないもの
MIA1906第78条では、共同海損損害、共同海損分担金、救助料は、損害防止約款によって回収されるものではないとされています。
また、保険証券で担保されていない損害を防止または軽減するための費用も、損害防止約款では回収できません。
したがって、費用が発生した場合には、それが損害防止費用なのか、共同海損費用なのか、救助料なのか、担保外損害に関する費用なのかを分けて整理する必要があります。
被保険者の損害防止・軽減義務
MIA1906第78条では、被保険者およびその代理人は、すべての場合において、損害を防止または最小化するために合理的な措置を取る義務があるとされています。
外航貨物海上保険では、貨物事故が発生した場合、被保険者は損害を放置するのではなく、合理的な範囲で損害拡大を防ぐ必要があります。
例えば、濡損貨物の乾燥、再梱包、検品、仕分け、保管環境の改善、残存物の保全、運送人への通知、サーベイ手配などが問題になります。
外航貨物海上保険での実務上の注意点
貨物事故が発生した場合、被保険者は、まず損害拡大を防ぐ行動を取る必要があります。
ただし、発生した費用がすべて保険で回収できるわけではありません。その費用が担保危険に関係しているか、合理的か、必要性があるか、証拠資料が残っているかを確認する必要があります。
実務では、検品費用、再梱包費用、乾燥費用、保管料、転送費用、廃棄費用、売却処分費用などについて、発生理由と金額の根拠を整理しておくことが重要です。
まとめ
MIA1906第76条から第78条は、単独海損不担保、連続損害、損害防止約款、損害防止・軽減義務を整理する重要な条文です。
外航貨物海上保険では、貨物の分損が常に補償されるとは限らず、保険条件によっては単独海損不担保や一定割合未満不担保が問題になることがあります。
また、複数の損害が連続して発生した場合や、分損後に全損が発生した場合には、二重回収を避けながら損害を整理する必要があります。
さらに、被保険者には、損害を防止・軽減するための合理的な措置を取る義務があります。貨物事故対応では、損害額だけでなく、損害防止費用の性質と証拠資料を整理することが重要です。
