特恵関税適用指示の失念による誤申告
事例の概要
本事例は、特恵関税の適用について顧客から指示を受けていたにもかかわらず、その指示を失念し、通常税率で通関申告を行った結果、余分な関税が発生した事例です。
賠償請求額は約30万円、応訴額も約30万円でした。消費税ではなく、特恵関税を適用できなかったことによる関税差額が問題となった通関賠償・E&O事例です。
事故の経緯
輸入通関にあたり、顧客から特恵関税の適用指示がありました。本来であれば、EPA・FTAなどの特恵関税制度や原産地証明書の内容を確認し、適用可能であれば低い関税率で申告する必要がありました。
しかし、通関担当側でその指示を失念し、通常税率で輸入申告を行いました。その結果、本来よりも高い関税を支払うことになり、顧客から余分に発生した関税差額について賠償請求が行われました。
問題になった点
- 顧客から特恵関税適用の指示があったにもかかわらず、申告に反映されなかったこと
- 通常税率で申告した結果、余分な関税が発生したこと
- 原産地証明書やEPA適用可否の確認が十分でなかったこと
- 通関業務上の指示失念として、E&O対応が必要になったこと
フォワーダー・通関側の対応
通関側では、まず顧客からの特恵関税適用指示がいつ、どのような形で行われていたかを確認しました。また、原産地証明書や関連書類が申告時点で揃っていたか、適用条件を満たしていたかを整理しました。
そのうえで、特恵関税を適用していた場合の関税額と、実際に通常税率で申告した関税額との差額を算定しました。
本件では、その差額である約30万円について賠償対応が行われました。
特恵関税適用漏れが問題になる理由
EPA・FTAなどの特恵関税制度を利用できる場合、通常税率よりも低い関税率で輸入申告できることがあります。適用できるにもかかわらず通常税率で申告すると、顧客は本来不要だった関税を負担することになります。
特恵関税の適用には、原産地証明書、品目別原産地規則、直接積送要件、書類保存、申告時の意思表示など、確認すべき事項があります。そのため、顧客からの指示を受けた場合は、通関担当者が通常申告とは別に管理する必要があります。
実務上のポイント
- 特恵関税適用の指示は、通常の通関依頼と分けて明確に管理する必要があります。
- 原産地証明書やEPA関連書類が揃っているか、申告前に確認します。
- 適用可否に迷う場合は、顧客や関係先に確認し、記録を残すことが重要です。
- 特恵関税を適用しなかった場合の関税差額は、賠償請求の対象となることがあります。
注意点
- 顧客からの指示がメール本文や添付資料に埋もれていると、見落としが発生しやすくなります。
- 原産地証明書があるだけで自動的に特恵関税が適用されるわけではありません。
- 申告後に更正請求等で修正できる場合もありますが、常に容易に回復できるとは限りません。
- 特恵関税の適用漏れは、関税額が大きい品目では高額賠償につながる可能性があります。
実務上の教訓
特恵関税の適用漏れは、通関業務における典型的なE&O事故です。顧客から指示があったにもかかわらず通常税率で申告してしまうと、顧客は本来不要だった関税を負担することになります。
再発防止には、特恵関税案件を通常案件と区別し、申告前チェックリスト、原産地証明書確認、担当者間の引継ぎ記録を残すことが重要です。特にEPA・FTAを利用する案件では、適用指示を見落とさない仕組みが必要です。
まとめ
本事例は、特恵関税適用の顧客指示を失念し、通常税率で申告した結果、余分な関税が発生した通関賠償・E&O事例です。特恵関税の適用漏れは、確認手順を整えれば防止しやすい一方、発生すると関税差額として賠償問題になり得ます。
