固有欠陥(Inherent Vice)

Inherent Vice

概要

固有欠陥(Inherent Vice)とは、貨物自体が持つ性質、状態、成分、構造、劣化傾向により、外部からの偶然な事故がなくても損傷や変質が生じる性質をいいます。

貨物の腐敗、自然発熱、自然発火、錆、カビ、変色、液漏れ、成分分離、結晶化、品質劣化などが問題になることがあります。

貨物保険や運送人責任では、固有欠陥による損害は免責とされやすい論点です。

貨物が損傷していても、その原因が外部事故ではなく貨物自体の性質にあると判断されると、保険金請求や運送人への損害賠償請求が認められにくくなります。

実務上重要なのは、損害が本当に固有欠陥によるものなのか、それとも海水濡れ、雨濡れ、コンテナスウェット、温度管理ミス、梱包不良、荷扱い事故などの外部原因によるものなのかを切り分けることです。

固有欠陥は、保険会社や運送人が免責を主張する場面でよく問題になります。

この記事で扱う範囲

この記事では、貨物保険と運送人責任における固有欠陥の意味、免責となりやすい理由、外部事故との切り分け、実務上必要となる資料を解説します。

特に、次の論点を扱います。

  • 固有欠陥とは何か
  • 貨物保険で免責となりやすい理由
  • 英国海上保険法1906や近因判断との関係
  • 梱包不良、コンテナスウェット、水濡れ損害、運送人責任との役割分担
  • 錆、腐敗、変質、液漏れ、カビなどの損害類型別の切り分け
  • 固有欠陥免責を主張された場合の対応
  • 固有欠陥に対抗するための資料整理
  • フォワーダーやNVOCCが確認すべき実務ポイント
  • 実務で問題になりやすいケース

本記事の中心は、固有欠陥を単なる「貨物が弱かった」という説明で終わらせるのではなく、外部事故、梱包不良、輸送環境、貨物固有の性質を資料に基づいて切り分けることです。

関連論点との役割分担

固有欠陥は、梱包不良、コンテナスウェット、水濡れ損害、運送人責任と混同されやすい論点です。

論点 中心となる問題 固有欠陥との関係
固有欠陥 貨物自体の性質や状態により自然に損傷・変質するか 外部事故がなくても損害が生じる場合に免責論点となる
梱包不良 通常の輸送に耐えられる梱包がされていたか 貨物の性質に対して適切な防水、防湿、防錆、温度対策がされていたかが問題になる
コンテナスウェット コンテナ内部の結露により貨物が濡れたか 外部水侵入ではなく、貨物・梱包・輸送環境の影響として固有欠陥や梱包不良と結びつくことがある
水濡れ損害 海水、雨水、淡水など外部水が侵入したか 外部水侵入が証明できれば、単なる固有欠陥とは異なる判断になることがある
運送人責任 運送人の管理下で事故が発生したか 貨物固有の性質による損害であれば、運送人が免責を主張することがある
温度管理ミス 設定温度、冷凍・冷蔵管理、温度逸脱が適切に管理されたか 貨物が劣化しやすい性質を持っていても、異常な温度逸脱があれば外部原因として問題になる

固有欠陥かどうかは、貨物の性質だけでなく、梱包、輸送環境、事故発見時の状態、外部事故の有無を総合して判断します。

固有欠陥とは何か

固有欠陥は、貨物の外から加わった事故ではなく、貨物自身の内側にある性質や状態から損害が発生するという考え方です。

たとえば、時間の経過により腐敗しやすい食品、湿気に反応して錆びやすい金属、温度変化で変質しやすい化学品、自然発熱の可能性がある貨物などが問題になります。

この概念は、「貨物が損傷している」という結果だけでは判断できません。

同じ錆であっても、海水が入ったために発生した錆なのか、貨物自体が輸送前から錆びやすい状態だったのか、梱包内の湿気や温度差によるものなのかで、責任や保険の扱いが変わります。

固有欠陥は、単に「貨物が弱かった」という曖昧な説明では足りません。

貨物の性質、出荷前の状態、梱包、輸送環境、事故発見時の状況を総合的に見て、外部事故によらず自然に発生した損害かどうかを確認する必要があります。

貨物保険で免責となりやすい理由

貨物海上保険は、輸送中に発生する偶然な事故による貨物の滅失・損傷を補償することを基本としています。

一方、貨物自体の性質によって自然に発生する損害は、偶然な外部事故とは異なるため、保険の対象外とされやすくなります。

協会貨物約款(ICC)でも、貨物の固有欠陥や性質に起因する損害は免責として扱われます。

これは、保険が貨物そのものの品質保証や耐久性保証をするものではないためです。

貨物が本来持っている劣化傾向や変質しやすさまで保険で引き受けると、保険事故と商品の品質問題の区別ができなくなります。

したがって、貨物が損傷していても、原因が外部事故ではなく貨物自体の性質にあると判断されると、保険金の支払いは難しくなります。

保険請求では、損害の存在だけでなく、損害原因が保険で担保される事故に該当するかが重要になります。

英国海上保険法1906との関係

英国海上保険法1906(Marine Insurance Act 1906)でも、固有欠陥や貨物固有の性質に起因する損害は、海上保険における重要な免責論点として扱われます。

英国法系の海上保険実務では、損害の近因が何かを確認し、その近因が担保危険なのか免責危険なのかを判断します。

固有欠陥が近因と判断される場合、たとえ輸送中に損害が発見されたとしても、保険で補償されにくくなります。

反対に、貨物がもともと損傷しやすい性質を持っていたとしても、実際の損害原因が海水侵入、事故的な温度逸脱、コンテナ破損などの外部事故であれば、固有欠陥だけで免責と判断できない場合があります。

実務では、「貨物に弱点があったか」だけでなく、「その損害を直接引き起こした原因は何か」を確認します。

この近因判断が、保険金請求や運送人責任の判断で重要になります。

よくある誤解

固有欠陥は、保険金請求や運送人責任で誤解が生じやすい論点です。

よくある誤解 正しい理解 実務上の注意点
損傷があれば保険で補償される 貨物が損傷していても、原因が固有欠陥や自然劣化であれば免責となることがある 損害の存在だけでなく、外部事故の有無を確認する
固有欠陥なら全件免責である 貨物に劣化しやすい性質があっても、実際の近因が外部事故なら補償対象となる可能性がある 海水濡れ、温度逸脱、コンテナ破損などの外部原因を確認する
輸送中に発生した損害は運送人責任である 輸送中に発見されても、貨物固有の性質や梱包不良が原因であれば運送人責任とは限らない 事故発見時点と事故原因を分けて考える
錆やカビはすべて固有欠陥である 錆やカビでも、外部水侵入、異常結露、温度管理ミスが原因なら外部事故として検討される 濡れ跡、塩分反応、温湿度記録、サーベイ結果を確認する
保険会社が固有欠陥と言えば反論できない 出荷前状態、梱包仕様、輸送中の外部異常を示せれば、固有欠陥だけでは説明できない場合がある 対抗資料を整理し、近因を確認する
梱包不良と固有欠陥は同じである 固有欠陥は貨物自体の性質、梱包不良は輸送に耐える包装・防護の不足である 貨物特性と梱包設計を分けて確認する
コンテナスウェットは必ず運送人責任である 内部結露は、貨物特性、防湿梱包不足、輸送環境の組合せとして扱われることがある 外部水侵入か内部結露かを資料で切り分ける

運送人責任との関係

運送人も、貨物固有の性質による損害については免責を主張することがあります。

運送人は貨物を安全に運ぶ義務を負いますが、貨物自体が通常の輸送に耐えられない性質や状態であった場合、その損害すべてを運送人の責任とすることは難しくなります。

たとえば、通常の海上輸送で予測される温度・湿度変化に耐えられない貨物、出荷前から腐敗が進んでいた食品、内部に水分を含んでいて錆やカビが発生しやすい貨物では、運送中に損害が発見されても、運送人の過失ではなく貨物固有の性質が問題とされることがあります。

ただし、運送人やフォワーダーが必要な温度管理条件、危険品情報、取扱注意、隔離積付条件を受け取っていたにもかかわらず、適切に手配しなかった場合には別です。

固有欠陥と、運送人・フォワーダーの手配ミスや管理ミスは分けて判断する必要があります。

外部事故との切り分け

固有欠陥が問題になる場合、最も重要なのは外部事故との切り分けです。

錆、カビ、腐敗、変質、液漏れなどは、貨物固有の性質による場合もあれば、輸送中の外部事故による場合もあります。

たとえば、金属製品の錆であっても、海水濡れによる錆、雨濡れによる錆、コンテナスウェットによる錆、梱包内の湿気による錆、出荷前から進行していた錆では、責任判断が異なります。

食品の腐敗も、出荷時点の品質問題なのか、冷蔵・冷凍管理の途絶なのか、輸送遅延による温度逸脱なのかを確認する必要があります。

固有欠陥と外部事故の比較

損害類型 固有欠陥として扱われやすい場合 外部事故として検討される場合 確認資料
錆・腐食 貨物自体が湿気に弱い、出荷前から錆があった、防錆処理が不十分だった場合 海水濡れ、雨濡れ、コンテナ破損、異常な水侵入が確認される場合 出荷前写真、防錆処理記録、塩分反応、コンテナ写真、サーベイレポート
腐敗 出荷前から品質劣化が進んでいた、賞味期限・有効期限に余裕がなかった場合 冷蔵・冷凍管理の途絶、温度逸脱、異常遅延が確認される場合 出荷前検査、温度記録、データロガー、到着時検査、輸送記録
変質・成分分離 貨物自体が温度変化や時間経過で分離・固化しやすい場合 異常な高温、低温、振動、誤積付、保管条件違反が確認される場合 SDS、品質規格、温度記録、メーカー見解、サーベイ資料
液漏れ 容器自体の劣化、密閉不良、内圧変化に弱い構造だった場合 落下、衝撃、他貨物との接触、荷扱い事故で容器が破損した場合 容器写真、梱包状態、衝撃記録、荷役記録、事故写真
カビ 貨物や梱包材に水分が多い、防湿対策が不足していた場合 外部水侵入、異常結露、保管場所の浸水、雨濡れが確認される場合 梱包材含水状況、濡れ跡、温湿度記録、コンテナ内写真
自然発熱・自然発火 貨物の成分や状態により自然発熱する性質があった場合 異常な外部加熱、誤積付、換気不良、温度管理ミスが確認される場合 SDS、積付条件、温度記録、事故報告、専門家所見
結晶化・固化 温度低下や時間経過で自然に結晶化しやすい貨物だった場合 指定温度を外れた輸送、保管条件違反、異常な長期遅延が確認される場合 品質仕様、温度条件、データロガー、保管記録、メーカー報告書

損害類型だけで固有欠陥か外部事故かを決めることはできません。出荷時の状態、輸送条件、発見時の状況、外部異常の有無を組み合わせて判断します。

証明責任の問題

固有欠陥の争いでは、誰が何を立証するかが問題になります。

荷主や被保険者は、貨物に損害が発生したことだけでなく、保険で担保される事故によって損害が発生したことを説明する必要があります。

一方、保険会社や運送人は、免責を主張する場合、その根拠として貨物固有の性質や梱包・品質上の問題を指摘することがあります。

実務では、書面上の証明責任だけでなく、証拠の有無が結果を左右します。

出荷前検品記録がない、梱包写真がない、温度記録がない、受領時リマークがない、事故発見時の写真が不足している場合、外部事故による損害であることを説明しにくくなります。

固有欠陥を理由に免責を主張された場合、単に「輸送中に損害が発生した」と述べるだけでは不十分です。

出荷時に貨物が正常であったこと、輸送中に外部事故または異常な環境があったこと、損害の発生状況が貨物固有の自然劣化だけでは説明できないことを、資料で示す必要があります。

固有欠陥に対抗するための資料整理

固有欠陥の免責主張に対抗するには、外部事故の存在、出荷時の正常性、適切な梱包、輸送環境の異常を示す資料が重要になります。

損害類型 主な対抗資料 説明したい内容 注意点
錆・腐食 出荷前写真、防錆処理記録、梱包写真、塩分反応、コンテナ外観写真 出荷時に正常であり、輸送中に外部水や塩分が関与した可能性 錆の範囲、深さ、発生位置を写真で残す
腐敗・品質劣化 出荷前検査、品質証明、温度記録、データロガー、到着時検査 出荷時品質に問題がなく、輸送中の温度逸脱や異常遅延が影響した可能性 温度条件と実際の温度記録を照合する
変質・成分分離 SDS、メーカー見解、温度条件、輸送記録、サーベイレポート 通常輸送では発生しにくく、異常環境が原因となった可能性 貨物特性と輸送条件の両方を説明する
液漏れ 容器写真、梱包状態、衝撃記録、荷役記録、開梱時写真 容器自体の劣化ではなく、輸送中の外力で破損した可能性 容器の破損位置と外力痕を確認する
カビ 出荷前写真、梱包材状態、防湿対策、温湿度記録、濡れ跡写真 出荷前からのカビではなく、輸送中の水濡れや異常結露が原因となった可能性 カビの範囲と水濡れ範囲を照合する
自然発熱・自然発火 SDS、積付条件、温度記録、換気条件、事故報告、専門家所見 貨物固有の自然発熱だけでなく、輸送環境や管理不備が影響した可能性 危険品情報や取扱条件の伝達状況を確認する
結晶化・固化 温度条件、データロガー、メーカー報告書、輸送期間、保管記録 指定温度を外れたことや異常遅延により固化した可能性 通常の自然変化か異常環境かを分けて説明する

錆損害と固有欠陥

錆損害は、固有欠陥と外部事故の切り分けが特に問題になりやすい損害です。

金属製品は湿気や塩分に反応して錆びる性質を持っているため、保険会社や運送人から「貨物固有の性質」「梱包不良」「防錆処理不足」と指摘されることがあります。

一方で、輸送中に海水が侵入した、コンテナに穴があった、雨濡れがあった、コンテナ内で異常な結露が発生したといった外部原因が確認できれば、単なる固有欠陥とは異なる判断になります。

錆損害では、錆の範囲、錆の深さ、梱包の濡れ、コンテナ内の水跡、塩分反応、出荷前写真、防錆処理の有無、デバンニング時の状況が重要です。

錆があるという結果だけで、直ちに固有欠陥か輸送事故かを判断することはできません。

腐敗・変質・品質劣化

食品、化学品、医薬品、化粧品、液体貨物、粉体貨物などでは、腐敗、変質、成分分離、固化、沈殿、変色、臭気変化が問題になることがあります。

これらは貨物自体の性質に起因する場合もあれば、温度管理ミスや輸送環境の異常による場合もあります。

保険会社や運送人から見ると、貨物が本来劣化しやすい性質を持っている場合、固有欠陥や貨物固有の性質による損害として免責を主張しやすくなります。

特に、輸送に必要な温度条件や取扱条件が明確でなかった場合、荷主側の情報提供や梱包設計が問題になることがあります。

このような貨物では、出荷前の品質検査、ロット情報、賞味期限・有効期限、SDS、温度条件、データロガー、輸送中の温度記録、到着時検査結果を確認します。

品質劣化が起きた場合、貨物固有の自然変化なのか、輸送中の異常な環境によるものなのかを資料で切り分ける必要があります。

固有欠陥免責を主張された場合の段階別フロー

固有欠陥を理由に免責を主張された場合は、損害類型、出荷前状態、梱包、輸送環境、外部事故の有無を順番に確認します。

段階 主な対応 確認するポイント 注意点
免責主張の確認 保険会社や運送人の主張内容を確認する 固有欠陥、梱包不良、自然劣化、貨物固有の性質のどれを指摘しているか 主張内容を曖昧なまま受け取らない
損害類型の整理 錆、腐敗、変質、液漏れ、カビなど損害内容を分類する 損害の範囲、発見時点、進行状況 結果だけで原因を決めない
出荷前状態の確認 出荷時に貨物が正常だったか確認する 検品記録、出荷前写真、品質証明、稼働確認 出荷前資料がないと反論が難しくなる
梱包・取扱条件の確認 貨物特性に合った梱包や条件が設定されていたか確認する 梱包仕様、防湿、防錆、温度条件、SDS、取扱指示 梱包不良と固有欠陥を分けて整理する
輸送中の外部異常確認 外部事故や異常な環境がなかったか確認する 海水濡れ、雨濡れ、温度逸脱、遅延、コンテナ破損、荷扱い事故 外部原因を示す資料を集める
サーベイ・分析結果の確認 サーベイレポートや検査結果を確認する 近因、損害発生メカニズム、外部事故との関係 必要に応じてメーカーや専門機関の見解を取得する
対抗資料の提出 外部原因や出荷時正常性を示す資料を整理して提出する 写真、記録、温度データ、塩分反応、受領リマーク 事実と推測を分けて説明する
支払可否・求償可否の整理 保険金請求や運送人請求の見込みを確認する 保険条件、免責、運送人責任、Claim Letter 保険請求と運送人求償を分けて管理する
再発防止の整理 次回輸送に向けて梱包・条件・資料を見直す 梱包仕様、温度管理、出荷前検品、保険条件 固有欠陥リスクは事前対策が重要になる

事前対策としてできること

固有欠陥を巡る争いを防ぐには、出荷前の準備が重要です。

貨物の性質、必要な温度・湿度条件、防錆処理、梱包仕様、積付条件、輸送可能期間、保険条件を事前に確認します。

錆びやすい貨物では、防錆処理、乾燥剤、バリア梱包、コンテナ選定、結露対策を検討します。

温度管理貨物では、設定温度、許容温度帯、予冷、データロガー、温度逸脱時の対応を決めておく必要があります。

食品や化学品では、出荷時品質、期限、SDS、輸送中の環境条件を確認します。

保険手配時には、貨物の性質を正確に申告し、通常の保険条件で十分かどうかを確認します。

特殊貨物や品質劣化リスクの高い貨物では、保険会社や専門業者に事前相談し、必要な条件や証拠資料を整えておくことが重要です。

実務で問題になりやすいケース

固有欠陥では、錆、腐敗、変質、液漏れ、カビ、温度管理、梱包不良との境界が問題になりやすくなります。

ケース 問題の内容 確認すべき点 実務上の対応
金属部品に錆が発生したケース 固有欠陥、防錆不足、海水濡れのどれかが争点になる 出荷前写真、防錆処理、塩分反応、コンテナ水跡 錆の原因を外部水濡れと貨物特性に分けて整理する
食品が腐敗したケース 出荷時品質、輸送遅延、温度管理ミス、自然劣化が争点になる 出荷前検査、賞味期限、温度記録、データロガー 自然劣化か輸送中の異常環境かを確認する
化学品が成分分離したケース 貨物固有の性質か、温度逸脱・振動・保管条件違反かが問題になる SDS、メーカー見解、輸送温度、保管条件 貨物特性と輸送条件を照合する
液体貨物が漏れたケース 容器劣化か、輸送中衝撃・荷扱い事故かが争点になる 容器破損位置、梱包状態、衝撃痕、開梱時写真 容器の固有問題と外部衝撃を分ける
コンテナスウェットでカビが発生したケース 外部水侵入ではなく、内部結露や防湿不足と見られる可能性がある 温湿度記録、防湿梱包、乾燥剤、濡れ方 結露の原因と梱包仕様を確認する
冷蔵貨物で温度逸脱があったケース 貨物固有の劣化か、リーファー管理ミスかが争点になる 設定温度、実温度記録、予冷、電源記録、品質検査 温度逸脱と品質劣化の因果関係を整理する
自然発熱貨物で損害が出たケース 貨物固有の発熱性か、積付・換気・申告不備かが問題になる SDS、危険品申告、積付条件、温度記録 貨物情報の提供状況と手配内容を確認する
保険会社から固有欠陥免責を主張されたケース 外部事故による損害であることを資料で説明する必要がある 出荷前状態、梱包、輸送中異常、サーベイ、写真 免責主張の根拠を確認し、対抗資料を整理して提出する

確認チェックリスト

固有欠陥が問題になる場合は、貨物の性質、出荷前状態、梱包、輸送環境、外部事故、保険条件を分けて確認します。

確認場面 確認する相手 確認事項 問題がある場合の対応
事故発見時 荷主・荷受人・倉庫・納品先 損害発見日時、発見場所、貨物状態、写真の有無 現物を動かす前に写真を撮影し、状態を保全する
貨物特性確認時 荷主・メーカー・輸出者 腐敗性、吸湿性、発熱性、温度条件、防錆要否、SDS 貨物固有の性質を資料で確認する
出荷前状態確認時 荷主・輸出者・検品業者 出荷前写真、検品記録、品質証明、稼働確認 出荷時に正常だったことを示す資料を集める
梱包確認時 荷主・梱包業者・フォワーダー 梱包仕様、防水、防湿、防錆、固定、乾燥剤の有無 貨物特性に合った梱包だったか確認する
輸送環境確認時 フォワーダー・船会社・倉庫・配送会社 温度、湿度、遅延、保管場所、積付条件、コンテナ状態 通常輸送を超える異常環境があったか整理する
外部事故確認時 サーベイヤー・保険会社・運送人 海水濡れ、雨濡れ、コンテナ破損、荷扱い事故、温度逸脱 外部原因を示す資料を収集する
保険条件確認時 保険会社・保険代理店 ICC条件、固有欠陥免責、梱包不良免責、特約の有無 免責主張の根拠を確認する
Claim Letter確認時 運送人・NVOCC・倉庫会社・配送会社 提出要否、提出期限、送付記録、責任原因の可能性 原因未確定でも権利保全を検討する
分析・サーベイ確認時 サーベイヤー・分析機関・メーカー 損害原因、近因、外部事故との関係、自然劣化の可能性 必要に応じて専門家所見を取得する
免責主張対応時 保険会社・保険代理店・荷主 固有欠陥とされた理由、反論資料、追加資料の要否 事実関係と資料を整理し、補足説明を提出する

フォワーダー実務での注意点

フォワーダーやNVOCCが固有欠陥の論点に関与する場合、貨物の性質、梱包、輸送条件、事故発見時の状態を分けて整理する必要があります。

事故発見時に、すぐに「運送中事故です」「貨物の性質です」と断定することは避けるべきです。

特に、錆、カビ、腐敗、変質、液漏れ、温度管理不良では、外部事故、梱包不良、貨物固有の性質、運送人の管理ミスが複合する場合があります。

フォワーダーは、B/L、AWB、受領書、搬入搬出記録、温度記録、コンテナ番号、シール番号、Claim Letter控えなど、自社が保有する輸送資料を整理し、荷主や保険会社の確認に協力します。

また、貨物特性や温度条件、危険品情報、取扱注意が事前に共有されていたかも確認します。

具体例

金属部品を海上コンテナで輸送したところ、輸入地で開梱時に錆が確認されたケースを考えます。

保険会社は、貨物が金属製品であり、湿気により錆びやすい性質を持つことから、固有欠陥または防錆梱包不十分の可能性を指摘しました。

一方、荷主側は、出荷前写真、防錆処理記録、梱包写真、コンテナ内の濡れ跡、デバンニング時の写真、サーベイレポートを提出しました。

その結果、コンテナ内に外部からの水濡れを示す痕跡があり、錆の発生が通常の自然劣化だけでは説明しにくいことが確認されました。

このようなケースでは、単に「錆びた」という結果だけではなく、出荷時の状態と輸送中の外部原因をどこまで資料で示せるかが重要です。

固有欠陥の主張に対抗するには、損害発見後の写真だけでなく、出荷前からの証拠保全が大きな意味を持ちます。

実務上のポイント

固有欠陥とは、貨物自体の性質や状態により、外部事故がなくても自然に損傷・劣化が発生する性質をいいます。

貨物保険や運送人責任では免責となりやすく、錆、腐敗、変質、自然発熱、液漏れ、カビなどの損害で問題になります。

実務上は、固有欠陥か外部事故かの切り分けが最も重要です。

海水濡れ、雨濡れ、コンテナ破損、温度逸脱、荷扱い事故、他貨物からの汚染などがあれば、単なる固有欠陥とは異なる判断になることがあります。

固有欠陥の免責主張に対抗するには、出荷前状態、梱包仕様、輸送環境、事故発見時の状況を資料で示す必要があります。

貨物の性質を理解し、梱包・温度管理・保険条件・証拠保全を事前に整えることが、固有欠陥リスクへの最も現実的な対策です。

まとめ

固有欠陥(Inherent Vice)とは、貨物自体が持つ性質、状態、成分、構造、劣化傾向により、外部事故がなくても損傷や変質が生じる性質をいいます。

貨物保険や運送人責任では、固有欠陥による損害は免責とされやすく、保険金請求や運送人への損害賠償請求が認められにくくなることがあります。

ただし、貨物が劣化しやすい性質を持っているからといって、すべてが固有欠陥として免責になるわけではありません。

実際の損害原因が、海水濡れ、雨濡れ、コンテナ破損、温度逸脱、荷扱い事故、他貨物からの汚染などの外部事故であれば、固有欠陥だけで処理できない場合があります。

固有欠陥の争いでは、出荷前状態、梱包仕様、貨物特性、輸送環境、事故発見時の写真、サーベイレポート、温度記録、分析結果などの資料が重要になります。

フォワーダーやNVOCCは、原因を早期に断定せず、貨物固有の性質、梱包不良、コンテナスウェット、水濡れ損害、運送人責任を分けて整理することが重要です。

同義語・別表記

  • 固有欠陥
  • Inherent Vice
  • 貨物固有の性質
  • 自然劣化
  • 自然変質
  • 内在的欠陥
  • inherent nature of the cargo

公式情報