荷受人倒産による長期保管費用と船会社請求
匿名化・掲載目的
本記事は、輸出コンテナ貨物が現地で長期間引き取られず、約1年後に船会社からフォワーダーへ長期滞留費用の請求が行われた実例を、関係者を特定できない形に加工して共有するものです。
会社名、個人名、船名、港名、国名、貨物名、コンテナ番号、B/L番号、船会社名、荷送人名、荷受人名、保険会社名、保険証券番号、請求金額その他の特定につながる情報は掲載しません。
本記事では、荷受人を「Consignee」、荷送人を「Shipper」と表記する場合があります。
Consigneeについて正式な破産手続又は倒産公告まで確認されたわけではありません。しかし、現地で貨物を引き取らず、連絡も取れず、営業実態も確認できない状態であったため、実務上は事実上の倒産又は事業停止状態として対応しました。
Shipperとは一度連絡が取れましたが、その後は連絡不能となりました。
船会社から請求された費用については、フォワーダー賠償責任保険の特約に設定されたサブリミットまで保険金が支払われました。その金額が本件の請求額に換算すると結果的におおむね60日分に相当したのであり、保険の補償期間が60日間に限定されていたわけではありません。
サブリミットを超えた部分については、フォワーダーがShipperにも一部負担を求めて交渉し、一定額を回収しました。保険金及びShipperからの回収額を控除しても残った部分は、フォワーダーの負担となりました。
事例の概要
本件は、輸出コンテナ貨物が現地到着後もConsigneeによって引き取られず、長期間にわたって港湾又は船会社の管理下に滞留した事例です。
貨物が引き取られない状態が続きましたが、フォワーダー側で問題の全容を把握したのは、輸出から約1年後に船会社から長期滞留に伴う費用請求を受けた時点でした。
確認を進めたところ、Consigneeは連絡不能で、現地での事業実態も確認できない状態でした。正式な倒産手続までは確認できませんでしたが、貨物を引き取れる状況ではなく、事実上の倒産又は事業停止状態と考えられました。
Shipperとは一度連絡が取れましたが、その後は連絡がつかなくなり、貨物の引取り、返送、転売又は処分について有効な指示を得ることができませんでした。
船会社は、長期間占有されたコンテナ及び保管スペースに関する費用として、保管料その他のコンテナ関連費用をフォワーダーへ請求しました。
フォワーダーは船会社との取引関係、ブッキング及び貨物手配への関与、現地での貨物引取りに関する名義又は立場等から、請求への対応を避けることができず、一定額を支払いました。
その後、フォワーダー賠償責任保険の特約が適用され、特約に定められたサブリミットまで保険金が支払われました。
さらに、フォワーダーはShipperにも一部負担を求めて交渉し、一定額を回収しました。しかし、保険金及びShipperからの回収額を超える残額は、フォワーダーの負担として残りました。
貨物が最終的に現地で廃棄、売却、返送又は放棄貨物として処理されたかについては、フォワーダーによる費用処理後の最終結果までは把握していません。
本記事の固有担当範囲
本記事が扱うのは、Consigneeが貨物を引き取らず、Shipperとも連絡が取れなくなった結果、輸出コンテナが現地で長期間滞留し、船会社からフォワーダーへ保管料その他のコンテナ関連費用が請求された事例です。
貨物そのものの破損、濡損、汚損又は数量不足を扱うものではありません。本件の中心は、貨物の受取人が実質的に消失したことによって、貨物価値とは別に滞留費用が増加した点にあります。
また、本件は「実運送人倒産による継搬費用と保管費用」とは異なります。
| 比較項目 | 本件 | 実運送人倒産による事例 |
|---|---|---|
| 倒産又は事業停止状態となった主体 | 貨物を受け取るConsignee | 輸送を履行するActual Carrier |
| 主要な問題 | 貨物の引取先及び費用回収先の消失 | 輸送を継続する運送人の消失 |
| 主な追加費用 | 保管料、デマレージ、ディテンションその他のコンテナ関連費用 | 継搬費用、詰替え費用、代替運送費及び保管費用 |
| 必要となる対応 | 引取り、返送、売却、廃棄又は放棄貨物処理の検討 | 代替運送人による輸送継続 |
| 請求の方向 | 船会社からフォワーダー側へ請求 | 現地業者等から元請フォワーダーへ請求 |
| 保険処理の中心 | 特約サブリミット内の長期滞留費用 | 実運送人倒産時の継搬・保管費用 |
本記事では、船会社からの請求がB/L上の単一の名義だけで決まるとは整理しません。
House B/L発行案件では、Ocean B/L上のConsignee又はNotifyにフォワーダー側の法人が記載され、現地での貨物引取りに関与することがあります。そのため、貨物が引き取られない場合、船会社又は現地代理店からフォワーダー側へ請求が向けられることがあります。
また近年は、House B/Lを発行しない取次事業者であっても、船会社へのブッキング、貨物情報の提供、荷主との連絡、現地対応又は継続取引への関与を理由として、船会社から費用請求を受ける場合があります。
匿名化した事故条件
| 項目 | 本件の条件 | 実務上の確認事項 |
|---|---|---|
| 対象貨物 | 輸出コンテナ貨物 | 品名、数量、価額及びコンテナ番号は非公開です。 |
| 輸送後の状態 | 現地でConsigneeによる引取りが行われず | 到着通知及び引取催促の履歴を確認します。 |
| 滞留期間 | 約1年間 | 船会社の請求開始日及び費用計算期間を確認します。 |
| Consigneeの状態 | 連絡不能で、営業実態も確認できず | 正式な倒産確認はないものの、事実上の倒産又は事業停止状態と判断しました。 |
| Shipperの状態 | 一度連絡が取れた後に連絡不能 | 貨物処理及び費用負担に関する有効な指示を得られませんでした。 |
| 船会社の請求先 | フォワーダー | ブッキング、貨物手配、現地名義及び取引関係等を背景に請求されました。 |
| 請求費用 | 長期滞留に伴う保管料その他のコンテナ関連費用 | デマレージ、ディテンション等の項目を分けて確認します。 |
| 請求時期 | 輸出から約1年後 | 通知が遅れた原因及び過去の請求履歴を確認します。 |
| フォワーダーの対応 | 船会社へ一定額を支払い | 請求内容及び減額交渉の結果を確認します。 |
| 賠償責任保険 | 特約サブリミットまで保険金支払い | 日数限度ではなく金額限度です。 |
| 60日との関係 | 保険金額が結果的におおむね60日分の費用に相当 | 「60日間だけ補償される保険」ではありません。 |
| Shipperへの請求 | 一部負担を求めて交渉 | 実際に一定額を回収しました。 |
| 残額 | フォワーダー負担 | 保険金及びShipperからの回収後の残額です。 |
| 貨物の最終処理 | 最終結果までは把握せず | 廃棄、売却、返送又は放棄貨物処理のいずれかは確定していません。 |
事故発生から解決までの時系列
| 段階 | 発生した事実 | 実務上の確認事項 |
|---|---|---|
| 1 | Shipperから輸出コンテナ貨物の輸送手配を受けました。 | Shipper及びConsigneeの名称、所在地、連絡先を確認します。 |
| 2 | フォワーダーが船会社へ輸送を手配しました。 | ブッキング名義、B/L上の記載及び現地側の関係者を確認します。 |
| 3 | 貨物が現地へ到着しました。 | 到着通知及びフリータイムの開始日を確認します。 |
| 4 | Consigneeが貨物を引き取りませんでした。 | 引取拒否、連絡不能又は書類不備の理由を確認します。 |
| 5 | コンテナ貨物が現地で滞留しました。 | 保管料、デマレージ及びディテンションの発生日を確認します。 |
| 6 | Consigneeとの連絡が取れない状態となりました。 | 現地代理店、登記情報、事務所所在地等を調査します。 |
| 7 | Shipperとは一度連絡が取れました。 | 引取り、返送、売却又は廃棄に関する指示を求めます。 |
| 8 | その後、Shipperとも連絡が取れなくなりました。 | 費用負担及び貨物処理の指図者が不在となりました。 |
| 9 | 貨物の滞留が約1年間継続しました。 | 日々増加する費用と貨物価値を比較します。 |
| 10 | 船会社からフォワーダーへ長期滞留費用が請求されました。 | 請求項目、対象期間及び単価を確認します。 |
| 11 | フォワーダーが船会社と費用について交渉しました。 | 減額、免除、処分後の打切り等を交渉します。 |
| 12 | フォワーダーが船会社へ一定額を支払いました。 | 支払額及び請求終結の条件を記録します。 |
| 13 | フォワーダー賠償責任保険へ事故を報告しました。 | 適用特約及びサブリミットを確認します。 |
| 14 | 特約サブリミットまで保険金が支払われました。 | 本件では結果的におおむね60日分の費用に相当しました。 |
| 15 | フォワーダーがShipperにも一部負担を求めました。 | 輸送依頼、未引取及び費用発生との関係を説明します。 |
| 16 | Shipperから一定額を回収しました。 | 保険金との重複回収を避けて精算します。 |
| 17 | 残額をフォワーダーが負担しました。 | 保険金及びShipper回収額を控除した純負担を整理します。 |
| 18 | 貨物の最終処分については、その後の結果まで把握していません。 | 費用処理の終了と貨物処理の完了を区別します。 |
問題となった争点
| 争点 | 本件での整理 | 判断上の注意点 |
|---|---|---|
| Consigneeの倒産 | 正式な倒産確認はなく、連絡不能・営業実態不明 | 法的倒産と事実上の事業停止を区別します。 |
| 貨物の引取責任 | Consigneeが引き取らず、Shipperからも有効な指示なし | 売買契約、B/L及び現地法上の権限を確認します。 |
| 船会社からの請求先 | フォワーダーへ直接請求 | B/L名義だけでなく、ブッキング及び手配実態も確認します。 |
| 長期滞留費用 | 約1年にわたり増加 | 費目、単価、フリータイム及び請求期間を確認します。 |
| 船会社からの通知時期 | フォワーダーが本格的に把握したのは約1年後 | 早期通知が行われていれば費用を縮小できたかを検証します。 |
| 減額交渉 | 船会社との交渉を実施 | 近年は従来より減額が認められにくくなっています。 |
| 保険の補償限度 | 特約のサブリミット | 日数限度ではなく、金額による支払限度です。 |
| 約60日分という表現 | サブリミット額を費用日額に換算した結果 | 60日を超えると補償が終了する制度ではありません。 |
| Shipperの負担 | 交渉により一部回収 | Shipperの指示、未対応及び契約関係を根拠に交渉します。 |
| フォワーダーの残存負担 | 保険及び回収で埋まらない部分 | 船会社支払額から各回収額を控除して算定します。 |
| 貨物の最終処分 | 最終結果を把握せず | 費用精算と処分手続の完了は別に確認します。 |
| よくある誤解 | 本件での正しい整理 |
|---|---|
| Consigneeが倒産したので船会社費用もすべてConsignee負担になる | Consigneeから回収できなければ、船会社はブッキング及び貨物手配に関与したフォワーダー等へ請求することがあります。 |
| House B/Lを発行していない取次事業者には請求が来ない | 近年はブッキング、情報提供、現地対応及び取引関係等の実態から請求を受ける場合があります。 |
| 保険では60日分まで補償される | 本件では特約の金額サブリミットまでが対象で、その金額が結果としておおむね60日分に相当しただけです。 |
| 船会社へ交渉すれば大幅に減額してもらえる | 以前よりも船会社の回収姿勢が厳しく、近年は大幅な減額を得にくくなっています。 |
| 貨物価値が低ければ費用も小さい | 長期滞留では貨物価値を超える保管料及びコンテナ関連費用が発生することがあります。 |
| 保険金が支払われればフォワーダー負担は残らない | サブリミットを超える部分や対象外費用は、他から回収できなければフォワーダー負担として残ります。 |
関係者ごとの立場・契約関係
| 関係者 | 本件における立場 | 責任・費用判断上の注意点 |
|---|---|---|
| Shipper | 輸出貨物の荷送人 | 一度連絡が取れましたが、その後は連絡不能となりました。 |
| Consignee | 現地で貨物を引き取る予定だった荷受人 | 正式な倒産確認はないものの、事実上の事業停止状態と判断されました。 |
| フォワーダー | 船会社へのブッキング及び輸出手配に関与した事業者 | 船会社から長期滞留費用を直接請求されました。 |
| 船会社 | 海上輸送及びコンテナ提供を行った実運送人 | 長期占有されたコンテナ及び保管スペースに関する費用を請求しました。 |
| 現地代理店・現地フォワーダー | 到着通知、引取確認及び現地対応に関与した者 | 初期通知、引取催促及び貨物状態の確認が重要です。 |
| ターミナル・保管施設 | 貨物又はコンテナの保管に関与した者 | 保管期間、料金体系及び処分手続を確認します。 |
| 税関・港湾当局 | 未引取貨物の処分又は移動を規制する機関 | 売却、廃棄、返送又は放棄手続には現地法令が関係します。 |
| 保険会社代理店 | フォワーダー賠償責任保険の事故受付及び確認窓口 | 適用特約、サブリミット及び必要資料を確認します。 |
| フォワーダー賠償責任保険会社 | 特約サブリミットまで保険金を支払った保険者 | サブリミットは補償日数ではなく金額限度です。 |
確認した証拠・資料
本件では、単に貨物が長期間残っていたという事実だけでなく、船会社がどの期間について何の費用を請求したのか、誰にどの時点で通知したのか、Shipper及びConsigneeへどのような連絡を行ったのかを整理する必要がありました。
| 資料 | 主な確認内容 | 責任・費用判断との関係 |
|---|---|---|
| 輸送依頼書・見積書 | Shipperの依頼内容及びフォワーダーの受託範囲 | 輸送手配及び費用負担関係を確認します。 |
| House B/L | Shipper、Consignee及びフォワーダーの契約関係 | 発行されている場合、荷主との運送契約関係を確認します。 |
| Ocean B/L | 海上輸送上のShipper、Consignee及びNotify | 現地での貨物引取り名義及び船会社との関係を確認します。 |
| ブッキング記録 | 船会社への申込み及び手配者 | 船会社がフォワーダーへ請求した背景を確認します。 |
| 到着通知 | 到着日及びConsigneeへの通知 | 引取可能となった日及びフリータイムの起算を確認します。 |
| 引取催促記録 | Consigneeへの連絡日時及び回答 | 連絡不能となった時期を確認します。 |
| 現地調査報告 | 事務所閉鎖、電話不通及び営業実態 | 事実上の倒産又は事業停止状態を判断します。 |
| Shipperとの連絡記録 | 一度連絡が取れた時の説明及びその後の不通 | 指示依頼及び費用負担交渉の経緯を確認します。 |
| 船会社からの請求書 | 対象期間、費目、日額又は単価及び合計額 | 保管料等を項目ごとに検証します。 |
| 費用計算表 | フリータイム、請求開始日及び累積費用 | 請求額の妥当性を確認します。 |
| 船会社との交渉記録 | 減額、免除及び支払条件 | 最終的に支払うべき額を確認します。 |
| 船会社への支払記録 | フォワーダーが実際に負担した額 | 保険請求及び最終精算の基礎となります。 |
| 保険証券・特約 | 補償対象及びサブリミット | 金額限度を確認します。 |
| 保険会社代理店への事故報告 | 事故経緯、請求内容及び連絡不能状況 | 保険適用の判断資料となります。 |
| 保険金支払通知 | 認定額及び特約サブリミット | 保険による回収額を確認します。 |
| Shipperへの請求・交渉記録 | 一部負担を求めた理由及び金額 | Shipperからの回収額を確認します。 |
| 入金記録 | Shipperから実際に回収した額 | フォワーダーの最終純負担を算定します。 |
原因・因果関係・責任範囲の検証
本件で長期滞留費用が発生した直接の原因は、Consigneeが現地で貨物を引き取らなかったことです。
Consigneeは連絡不能となり、営業実態も確認できませんでした。正式な破産手続までは確認できませんでしたが、通常の引取交渉によって解決できる状態ではありませんでした。
さらに、Shipperとも一度連絡が取れた後に連絡不能となり、返送、転売、廃棄その他の処理について有効な指示を得られませんでした。
その結果、貨物及びコンテナの滞留が解消されず、船会社の費用が継続して増加しました。
| 原因要素 | 本件での状況 | 費用との関係 |
|---|---|---|
| Consigneeによる未引取 | 連絡不能で貨物を引き取らず | 滞留開始の直接原因となりました。 |
| Consigneeの事業停止状態 | 営業実態を確認できず | 通常の引取催促による解決を困難にしました。 |
| Shipperの連絡不能 | 一度連絡後に不通 | 返送、売却又は廃棄の指示を得られませんでした。 |
| 長期間の放置 | 約1年間 | 保管料及びコンテナ関連費用を増加させました。 |
| 船会社からの遅い請求又は把握 | 本格的な請求は約1年後 | 早期対応の機会を失わせた可能性があります。 |
| フォワーダーの手配関係 | ブッキング及び貨物手配に関与 | 船会社から請求を受ける実務上の根拠となりました。 |
船会社からフォワーダーへの請求は、Ocean B/L上の単一の記載だけで判断されるものではありません。
フォワーダーが船会社へのブッキング、貨物情報の提供、現地側の名義、荷主との連絡又は貨物処理に関与していた場合、船会社はその関与を踏まえてフォワーダーへ請求することがあります。
特にHouse B/Lを発行する取引では、フォワーダー側が荷主との間で運送契約上の窓口となり、現地でもフォワーダー側法人がOcean B/L上のConsignee又はNotifyとして関与することがあります。
近年は、取次事業者であっても、船会社との取引実態を理由として請求を受ける場合があるため、「自社は運送人ではない」という説明だけで請求を回避できるとは限りません。
損害額・請求額の検証
本件では具体的な請求総額及び保険金額を公開していません。
重要なのは、船会社への支払額、保険特約による回収額、Shipperからの回収額及びフォワーダーの残存負担を分けて整理することです。
| 費目・金額区分 | 本件での処理 | 確認事項 |
|---|---|---|
| 保管料 | 長期滞留費用の中心となる費目 | 保管場所、対象期間及び単価を確認します。 |
| デマレージ | 請求に含まれる場合があります。 | コンテナがターミナル内に滞留した期間を確認します。 |
| ディテンション | 請求に含まれる場合があります。 | コンテナがターミナル外で返却されない場合の費用と区別します。 |
| その他のコンテナ関連費用 | 船会社の請求体系に応じて発生 | 管理費、移動費その他の内訳を確認します。 |
| 処分費用 | 最終処分結果を把握していないため確定せず | 実際に請求された場合のみ分けて確認します。 |
| 船会社への支払額 | フォワーダーが一定額を負担 | 減額交渉後の最終額を基礎とします。 |
| 保険金 | 特約サブリミットまで支払い | 日数ではなく金額限度です。 |
| 約60日分相当額 | 保険金を本件の日額費用へ換算した結果 | 保険期間又は補償日数を意味しません。 |
| Shipperからの回収 | 交渉により一部回収 | 保険金との重複を避けます。 |
| フォワーダーの残存負担 | 船会社支払額から保険金及びShipper回収額を控除した額 | 最終的な純負担として管理します。 |
従来は、長期滞留に伴う保管料等について、船会社へ事情を説明し、一定の減額を受けられる場合がありました。
しかし、近年は船会社側の費用回収姿勢が厳しくなり、長期間発生した費用について大幅な減額又は免除を得ることが難しくなっています。
そのため、船会社との減額交渉だけに依存せず、保険のサブリミット、Shipperへの負担請求及びフォワーダーに残る可能性のある金額を早期に把握する必要があります。
保険通知・弁護士対応・再求償
| 項目 | 本件での対応 | 同種事故での注意点 |
|---|---|---|
| 保険事故通知 | 船会社請求を受けた後、賠償責任保険へ報告 | 未引取又は長期滞留を把握した時点で早期通知することが望まれます。 |
| 適用特約 | 長期滞留費用に関係する特約 | 正式な特約名及び補償対象費用を確認します。 |
| 補償限度 | 特約のサブリミット | 日数制限ではなく金額による限度です。 |
| 保険金 | サブリミットまで支払い | 船会社への支払額全額が補償されたわけではありません。 |
| Shipperへの再請求 | 一部負担を求めて交渉 | 輸送依頼及び未対応との関係を説明します。 |
| Shipperからの回収 | 一定額を回収 | 保険会社との精算及び代位関係を確認します。 |
| Consigneeへの請求 | 連絡不能のため実効的な回収は困難 | 正式な倒産手続があれば債権届出を検討します。 |
| 船会社との交渉 | 費用の減額又は調整を交渉 | 近年は減額交渉が厳しくなっています。 |
| 弁護士対応 | 本件での具体的関与は記事上扱いません。 | 処分権限、現地法又は高額請求に争いがある場合は検討します。 |
| 求償権の保全 | Shipperへの一部請求を実施 | 保険金支払い後の権利関係を保険会社と確認します。 |
本件の保険では「60日分まで補償する」という期間条件が適用されたわけではありません。
特約に金額サブリミットが設定されており、その限度額まで保険金が支払われました。本件の費用水準で換算すると、支払保険金がおおむね60日分に相当したという関係です。
したがって、同種事故で保険対応を検討する際は、日数だけで判断せず、特約の対象費用、サブリミット、免責金額及び他からの回収額を確認する必要があります。
実際の解決結果
本件では、輸出コンテナ貨物が現地で約1年間引き取られず、船会社からフォワーダーへ長期滞留に伴う費用が請求されました。
Consigneeは連絡不能で、現地での営業実態も確認できない状態でした。正式な倒産確認まではできませんでしたが、事実上の倒産又は事業停止状態として対応しました。
Shipperとは一度連絡が取れましたが、その後は連絡不能となり、貨物の引取り、返送又は処分について有効な指示を得ることができませんでした。
フォワーダーは船会社と請求額について交渉しましたが、最終的に一定額の支払いを余儀なくされました。
フォワーダー賠償責任保険では、適用特約に設定されたサブリミットまで保険金が支払われました。
その保険金額は、本件で発生していた費用に換算すると結果的におおむね60日分に相当しました。しかし、これは補償期間が60日間であったことを意味しません。
サブリミットを超えた部分について、フォワーダーはShipperにも一部負担を求めて交渉し、実際に一定額を回収しました。
船会社への支払額から保険金及びShipperからの回収額を控除しても残った部分は、フォワーダーの負担となりました。
貨物が最終的に現地で廃棄、売却、返送又は放棄貨物として処理されたかについては、その後の最終結果までは把握していません。
したがって、本件では費用負担と保険精算は収束しましたが、貨物そのものの最終処理まで確認して終結した案件ではありません。
事故を回避するための事前対策
| 実施時点 | 担当者 | 本件に即した対策 |
|---|---|---|
| 新規取引開始時 | Shipper・フォワーダー | Consigneeの会社実態、所在地及び連絡先を確認します。 |
| ブッキング前 | フォワーダー | Shipper及びConsigneeの信用状態に不自然な点がないか確認します。 |
| B/L作成時 | フォワーダー | Consignee、Notify及び現地フォワーダーの役割を確認します。 |
| 輸送条件確認時 | Shipper・フォワーダー | 未引取時の返送、売却、廃棄及び費用負担を定めます。 |
| 到着前 | 現地代理店・フォワーダー | Consigneeへ到着予定及び必要書類を確認します。 |
| 到着直後 | 現地代理店 | 貨物引取り予定日を確認します。 |
| フリータイム終了前 | フォワーダー | 未引取の場合はShipperへ即時通知します。 |
| 連絡不能発生時 | フォワーダー | 現地事務所、登記、ウェブサイト及び取引先情報を確認します。 |
| 保険契約時 | フォワーダー・保険会社代理店 | 未引取貨物費用に関する特約及びサブリミットを確認します。 |
| 社内管理設計時 | フォワーダー | 未引取貨物を日数別に警告する管理表又はシステムを設けます。 |
事故発生直後の初動対応
| 順序 | 誰が行うか | 具体的な対応 |
|---|---|---|
| 1 | 現地代理店・フォワーダー | 貨物の所在、到着日、コンテナ番号及び引取状況を確認します。 |
| 2 | フォワーダー | フリータイム終了日及び費用発生日を確認します。 |
| 3 | 現地代理店 | Consigneeへ電話、メール及び所在地確認を行います。 |
| 4 | フォワーダー | Shipperへ未引取及び費用発生見込みを通知します。 |
| 5 | フォワーダー | Shipperへ引取り、返送、転売又は廃棄の指示期限を設定します。 |
| 6 | フォワーダー | 船会社へ費用の一時停止、減額又は早期処分を相談します。 |
| 7 | フォワーダー | 現地法令上の処分手続及び必要期間を確認します。 |
| 8 | フォワーダー | 貨物価値と今後発生する保管費用を比較します。 |
| 9 | フォワーダー | 賠償責任保険の代理店へ早期に事故通知します。 |
| 10 | フォワーダー | 特約サブリミット及び対象費用を確認します。 |
| 11 | フォワーダー | 連絡記録、請求書、費用計算及び船会社との交渉記録を保存します。 |
| 12 | フォワーダー | 原因及び負担関係が確定する前に、無条件で全額負担を認めません。 |
事故を解決・収束させるための対応
| 検討項目 | 実施内容 | 収束条件 |
|---|---|---|
| Consigneeの状態 | 連絡先、所在地及び営業実態を調査します。 | 引取可能性又は事実上の事業停止を判断します。 |
| Shipperの指示 | 返送、売却、廃棄又は放棄に関する回答を求めます。 | 期限を設定して書面で記録します。 |
| 貨物の所在 | コンテナ及び保管場所を確認します。 | 費用発生の対象を特定します。 |
| 船会社請求 | 費目、期間及び単価を精査します。 | 合理的な請求額を確定します。 |
| 減額交渉 | 未引取事情及び回収困難性を説明します。 | 可能な範囲で請求額を縮小します。 |
| 貨物処理 | 返送、売却、廃棄又は放棄手続を比較します。 | 費用増加を停止できる方法を選択します。 |
| 保険対応 | 特約及びサブリミットを確認します。 | 保険金認定額を確定します。 |
| Shipperへの請求 | 契約関係及び未対応を根拠に一部負担を求めます。 | 可能な範囲で回収します。 |
| 重複回収防止 | 保険金及びShipper回収額を整理します。 | 同一費用を重複して回収しません。 |
| フォワーダー負担 | 船会社支払額から各回収額を控除します。 | 最終純負担を確定します。 |
| 貨物最終処理 | 現地代理店又は船会社から結果報告を受けます。 | 費用精算だけでなく貨物処理の完了も確認します。 |
| 再発防止 | 未引取監視及び早期警告手順を見直します。 | 同種案件の長期放置を防止します。 |
実務上の教訓
- Consigneeが貨物を引き取らない場合、貨物価値とは別に保管料及びコンテナ関連費用が日々増加します。
- 正式な倒産確認がなくても、連絡不能、事務所閉鎖及び営業実態不明であれば、事実上の事業停止案件として早期対応する必要があります。
- Shipperと一度連絡が取れたとしても、その後に連絡不能となる可能性があるため、指示及び費用負担を速やかに書面化します。
- 船会社からの請求先は、B/L上の形式的な名義だけでなく、ブッキング、貨物手配、現地対応及び取引関係等の実態によって決まる場合があります。
- House B/Lを発行しない取次事業者であっても、船会社から費用請求を受ける可能性があります。
- 少し前までは船会社との交渉により保管料等の減額を得られることがありましたが、近年は費用回収が厳しく、大幅な減額は得にくくなっています。
- 船会社との減額交渉だけに依存せず、Shipperへの負担請求及び保険対応を並行して進める必要があります。
- 本件の保険対応は60日間の補償ではなく、特約に設定された金額サブリミットによるものでした。
- 保険金額が結果的におおむね60日分の費用に相当しても、それを補償日数と誤認してはいけません。
- サブリミットを超える費用は、Shipper等から回収できなければフォワーダー負担として残ります。
- 費用精算が完了しても、貨物の廃棄、売却又は返送が完了したとは限りません。
- 未引取貨物は、到着後数日又はフリータイム終了前から管理し、約1年間放置される状態を防ぐ必要があります。
まとめ
本件は、輸出コンテナ貨物が現地で約1年間引き取られず、船会社からフォワーダーへ長期滞留に伴う費用が請求された事例です。
Consigneeは連絡不能で、営業実態も確認できない状態でした。正式な倒産確認まではできませんでしたが、事実上の倒産又は事業停止状態として対応しました。
Shipperとは一度連絡が取れましたが、その後は連絡不能となり、貨物の引取り、返送、売却又は廃棄について有効な指示を得ることができませんでした。
船会社は、保管料その他のコンテナ関連費用をフォワーダーへ請求し、フォワーダーは一定額の支払いを余儀なくされました。
フォワーダー賠償責任保険では、適用特約のサブリミットまで保険金が支払われました。その金額は本件の費用水準に換算すると結果的におおむね60日分に相当しましたが、補償期間が60日間であったわけではありません。
サブリミットを超えた部分については、フォワーダーがShipperにも一部負担を求め、実際に一定額を回収しました。
保険金及びShipperからの回収額を控除しても残った部分は、フォワーダーの負担となりました。
貨物が最終的に廃棄、売却、返送又は放棄貨物として処理されたかについては、その後の最終結果までは把握していません。
同種案件では、Consigneeの未引取を早期に検知し、Shipperへの指示要求、船会社との費用交渉、現地での貨物処理及び保険会社代理店への通知を同時に進めることが重要です。
