商標権侵害品は輸入できる?税関差止め・認定手続・並行輸入との違い

Trademark-Infringing Goods in Japan: Customs Suspension, Determination and Parallel Imports

商標権侵害品とは

商標権侵害品とは、ブランド名、ロゴ、マーク、商品名、標章などを、商標権者の許諾なく使用した商品のことです。

輸入実務では、偽ブランド品、ロゴ入りコピー商品、ブランド名を無断表示した商品、正規品と誤認させる表示を付した商品などが典型例です。

商標は、商品やサービスの出所を示す重要な表示です。消費者は、ブランド名やロゴを見て、その商品がどの事業者の商品であるか、一定の品質があるかを判断します。

そのため、商標を無断で使用した商品は、真正品と誤認される可能性があり、税関で知的財産侵害物品として問題になることがあります。

本記事では、商標権侵害品の意味、模倣品との関係、真正品や並行輸入との違い、税関での確認、認定手続、輸入差止め、フォワーダー実務上の注意点を整理します。

この記事で扱う範囲

項目 この記事で扱う内容 他の記事で詳しく扱う内容
商標権侵害品の基本 ブランド名、ロゴ、マーク、商品名などの商標表示が無断使用されている貨物を扱います。 知的財産侵害物品全般の制度説明は、輸入差止め・認定手続関連の記事で扱います。
模倣品との関係 模倣品と商標権侵害品が重なる場合と、概念上異なる場合を整理します。 コピー商品、偽ブランド品などを広く扱う整理は「模倣品」の記事で扱います。
真正品との違い 商標権者または許諾を受けた者が製造・販売した真正品との違いを扱います。 真正品性の資料準備やブランド品全般の確認は「ブランド品輸入」の記事で扱います。
並行輸入との違い 真正商品の並行輸入と、商標権侵害品として問題になる貨物の違いを扱います。 真正商品性、内外権利者の関係、品質の実質同一性は「並行輸入」の記事で扱います。
税関確認 税関で確認されやすい商標表示、仕入経路、正規性資料、商品写真を扱います。 インボイス、パッキングリスト、B/L、AWBなど基本通関書類の確認は申告前確認の記事で扱います。
認定手続 商標権侵害品の疑いがある場合の輸入差止め、認定手続、意見・証拠提出を扱います。 意見書の作成方針や権利者との交渉は、輸入者・専門家側の判断事項です。
フォワーダー対応 資料回収、通関業者連携、期限管理、保管料・廃棄費用リスクの説明を扱います。 商標権侵害の有無の最終判断、任意放棄、廃棄、権利者同意取得は輸入者側で扱います。
修正対応の限界 商標部分の切除、包装変更、修正対応で常に輸入できるわけではない点を扱います。 具体的な修正可否や権利者対応は、税関・権利者・専門家確認が必要です。

ブランド品輸入・並行輸入・模倣品との役割分担

商標権侵害品は、ブランド品輸入、並行輸入、模倣品と密接に関係します。ただし、それぞれの記事で扱う中心論点は異なります。

記事 中心テーマ 確認する主な内容 実務上の使い分け
ブランド品輸入 海外ブランド品を輸入する際の真正品性、仕入経路、通関資料、認定手続、輸入差止めリスク ブランド名、型番、仕入先、購入証明、正規販売証明、商品写真 ブランド品輸入全般を確認する入口記事として使います。
並行輸入 海外で流通している真正品を、日本の正規代理店ルートとは異なる経路で輸入する場合の判断軸 真正商品性、内外権利者の関係、品質の実質同一性、仕入経路 真正品だが正規代理店ルートではない場合に参照します。
模倣品 権利者の許諾なく作られた偽物、コピー商品、類似商品全般 偽物、コピー品、外観模倣、ロゴ模倣、無断表示 知的財産侵害物品を広く整理したい場合に参照します。
商標権侵害品 ブランド名、ロゴ、マークなどの商標表示が問題になる貨物 商標表示、真正品性、仕入経路、許諾資料、税関照会、認定手続 商標表示そのものが問題になっている場合に参照します。

模倣品との関係

商標権侵害品と模倣品は重なることがありますが、完全に同じ意味ではありません。

模倣品は、他人の商品やブランドに似せて作られた偽物、コピー商品、類似商品を広く指す言葉として使われます。

一方、商標権侵害品は、商標権者の許諾なく、ブランド名、ロゴ、マークなどの商標を使用している点に着目した概念です。

区分 主な意味 典型例 実務上の注意点
模倣品 他人の商品やブランドに似せて作られた偽物やコピー商品を広く指します。 偽ブランドバッグ、コピー時計、類似デザイン商品 商標だけでなく、意匠、著作権、外観模倣なども問題になることがあります。
商標権侵害品 商標権者の許諾なく、ブランド名、ロゴ、マークなどを使用した商品を指します。 無断ロゴ入り衣類、ブランド名を付したスマートフォンケース、偽ブランド品 商標表示が商品本体以外のタグや包装にある場合も確認対象になります。
真正品 商標権者または許諾を受けた者により製造・販売された本物の商品です。 正規販売店から購入したブランド品、権利者許諾品 真正品であることを資料で説明できるかが重要です。
並行輸入品 海外で流通している真正品を正規代理店ルート以外で輸入する商品です。 海外正規店から仕入れたブランド品 真正品でも、品質の実質同一性や仕入経路の説明が必要になることがあります。

偽ブランドバッグ、ブランドロゴ入りコピー衣類、無断で有名ブランド名を付けたスマートフォンケースなどは、模倣品であり、同時に商標権侵害品にもなり得ます。

ただし、商標権侵害品には、単なる偽物だけでなく、真正品に見えても商標の使用、流通経路、包装変更、品質管理の点で問題になるものが含まれる可能性があります。

真正品・並行輸入との違い

真正品とは、商標権者またはその許諾を受けた者によって製造・販売された本物の商品です。

並行輸入とは、海外で流通している真正品を、日本の正規代理店ルートとは異なる経路で輸入する取引です。

真正商品の並行輸入にあたる場合、商標権侵害にあたらないと整理されることがあります。ただし、商品が本物であれば常に問題ないというわけではありません。

区分 商標表示の扱い 通関で問題になる点 確認資料の例
真正品 商標権者または許諾を受けた者により適法に商標が付されています。 真正品であること、正規仕入れであることを説明できるかが問題になります。 正規販売店インボイス、購入証明、正規販売証明、商品写真
並行輸入品 海外で適法に商標が付された真正品であることが前提です。 内外権利者の関係、品質の実質同一性、仕入経路が問題になります。 仕入先資料、商品仕様、保証資料、販売地域資料
商標権侵害品 商標権者の許諾なく商標が使用されています。 知的財産侵害物品として輸入差止めや認定手続の対象になる可能性があります。 税関通知、商品写真、権利者資料、輸入者提出資料
出所不明品 商標表示はあるが、適法な使用か確認できません。 真正品性や仕入経路を説明できなければ通関が止まる可能性があります。 追加購入証明、販売者情報、型番資料、正規販売証明

並行輸入では、海外で適法に商標が付された商品か、海外の商標権者と日本の商標権者の関係、品質の実質同一性、包装変更や改造の有無、販売地域制限などが問題になることがあります。

したがって、商標権侵害品を理解するには、模倣品だけでなく、真正品、並行輸入、品質管理機能との関係も整理する必要があります。

輸入実務で問題になる理由

商標権侵害品は、見た目だけでは判断が難しい場合があります。

商品自体の品質が高くても、ロゴやブランド表示が無断で使用されていれば、知的財産侵害物品として扱われる可能性があります。

また、荷主が正規品だと認識していても、仕入先が非正規ルートである場合、仕入経路を説明できない場合、権利者の許諾が確認できない場合には、通関上問題になることがあります。

問題になりやすい理由 具体的な状況 通関上の影響 確認の方向性
見た目だけでは判断しにくい 商品品質が高く、正規品に見える 真正品性や仕入経路の説明が必要になります。 購入証明、正規販売証明、商品写真を確認します。
ロゴやブランド名が目立つ 商品本体、タグ、箱、袋、保証書に商標表示がある 商標表示の使用根拠が確認されます。 権利者許諾、正規仕入れ、販売者情報を確認します。
仕入先が不明確 海外EC、個人販売者、現地市場、無名サプライヤーからの仕入れ 正規流通品かどうか説明できない場合があります。 仕入先会社情報、販売ページ、注文履歴を確認します。
価格が極端に安い 通常流通価格と大きく異なる価格で仕入れている 模倣品や無許諾流通品の疑いが出やすくなります。 価格根拠、仕入ルート、販売条件を確認します。
販売目的である 同一商品が多数あり、EC販売や再販売を予定している 商用輸入として資料確認が重くなることがあります。 販売予定、数量、仕入経路を確認します。
包装や付属品に商標がある 商品本体にロゴがなくても、タグや箱にブランド表示がある 付属品や包装材も確認対象になります。 本体、タグ、箱、袋、説明書の写真を確認します。

特に、海外ECサイト、個人販売者、現地市場、無名サプライヤーから仕入れたブランド表示付き商品は注意が必要です。

問題になりやすい貨物

商標権侵害品として問題になりやすい貨物には、ブランド表示やロゴが付された商品が広く含まれます。

貨物の種類 問題になりやすい表示 確認対象 注意点
バッグ・財布 ブランド名、ロゴ、型押し、金具のマーク 商品本体、タグ、箱、保証書、販売ページ 偽ブランド品として典型的に確認対象になります。
時計・アクセサリー 文字盤、刻印、ケース、保証書上のブランド表示 本体、型番、シリアル、保証書、外箱 型番やシリアル番号の資料が重要になる場合があります。
衣類・靴 ロゴ、タグ、刺繍、プリント、ラベル 本体、洗濯表示、タグ、箱、袋 商品本体だけでなくタグや包装も確認します。
スマートフォン関連商品 有名ブランド名やロゴを付したケース・アクセサリー 商品本体、パッケージ、販売ページ ブランドと無関係な商品にロゴが付されている場合は注意が必要です。
化粧品・香水 ブランド名、容器ラベル、外箱、販売地域表示 容器、箱、成分表示、仕入資料 商標だけでなく成分・表示・他法令も問題になることがあります。
家電・部品類 メーカー名、型番、ロゴ、部品パッケージ 本体、部品ラベル、型番資料、仕入先情報 正規補修部品か模倣部品かの確認が必要になる場合があります。
ノベルティ商品 ブランド名やロゴを付した販促品 商品本体、配布元資料、許諾資料 非売品や販促品でも商標使用根拠が問題になることがあります。
包装材・付属品 箱、袋、タグ、ラベル、説明書、保証書上の商標表示 包装材、付属品、印刷物 商品自体にロゴがなくても問題になることがあります。

商品本体だけでなく、タグ、箱、袋、ラベル、説明書、保証書、ステッカー、包装材にブランド名やロゴが表示されている場合も確認対象になります。

また、商品自体にはロゴがなくても、販売用パッケージや付属品に商標が無断使用されている場合には問題になることがあります。

税関での確認ポイント

税関では、貨物が商標権を侵害する疑いがある場合、輸入者に対して確認が行われることがあります。

この際、輸入者は、商品が真正品であること、権利者の許諾を受けていること、または商標権侵害にあたらない理由を説明する必要があります。

確認ポイント 確認される内容 不足しやすい資料 実務上の注意点
ブランド名・ロゴ 商品や包装に表示された商標 商品写真、タグ写真、外箱写真 商品本体だけでなく包装や付属品も確認します。
型番・数量 対象商品が何で、どれだけ輸入されるか 型番資料、商品カタログ、インボイス明細 goodsやpartsなど曖昧な品名では不足することがあります。
価格 通常流通価格と大きく乖離していないか 購入証明、注文履歴、価格資料 極端な低価格は確認対象になりやすいです。
仕入先 正規販売店、正規代理店、卸業者、個人販売者の別 仕入先会社情報、正規販売証明、注文履歴 販売者の自己説明だけでは不足することがあります。
販売目的 個人使用か、販売用在庫か、反復輸入か 販売計画、販売ページ、注文書 販売目的の場合は資料確認が重くなることがあります。
許諾資料 商標使用や販売について権利者の許諾があるか ライセンス契約書、使用許諾書、正規販売証明 許諾範囲が対象商品・対象地域に及ぶか確認します。
並行輸入該当性 真正商品性、内外権利者の関係、品質の実質同一性 仕入経路資料、商品仕様、保証資料 真正品でも説明資料が不足すると確認が続くことがあります。

インボイスに商品名が記載されているだけでは十分ではありません。仕入先情報、購入証明、正規代理店証明、権利者からの許諾資料、商品写真、販売ページなどが求められることがあります。

輸入差止めと認定手続

税関で商標権侵害品に該当するおそれがあると判断された場合、認定手続が行われることがあります。

認定手続とは、税関が発見した侵害疑義物品について、知的財産侵害物品に該当するかどうかを判断するための手続です。

認定手続が開始されると、輸入者に通知が行われ、輸入者は期限内に意見や証拠を提出することになります。

段階 主な内容 輸入者側で必要になる対応 注意点
侵害疑義の発見 税関で商標権侵害品の疑いがある貨物が確認される 商品内容、商標表示、仕入先、真正品性、許諾資料を確認します。 通関が止まり、保管料や回答期限の管理が必要になります。
認定手続の開始 税関から輸入者へ手続開始の通知が行われる 通知内容、回答期限、必要資料を確認します。 期限内対応が重要です。
意見・証拠の提出 輸入者が侵害物品ではないことを説明する資料を提出する インボイス、購入証明、販売ページ、正規販売証明、許諾資料を準備します。 販売者の説明だけでは十分な証拠にならない場合があります。
税関による判断 提出資料をもとに侵害物品に該当するか判断される 追加資料や補足説明に対応します。 フォワーダーや通関業者は最終判断を行う立場ではありません。
侵害物品ではないと認定 輸入許可へ進む可能性がある 通関再開、搬出、配送を進めます。 他の通関不備が残っていないか確認します。
侵害物品と認定 輸入できない方向で処理が進む 廃棄、任意放棄、権利者同意、修正対応、返送可否などを検討します。 費用、保管料、販売計画への影響を確認します。

商標権侵害品は、知的財産侵害物品の中でも税関で確認対象になりやすい分野です。そのため、輸入者は通関前に仕入経路と正規性を説明できる資料を準備する必要があります。

実務の流れ

段階 主な確認事項 止まりやすい原因 実務上の対応
仕入前 ブランド表示の有無、商標使用許諾、仕入先の信頼性 海外EC販売者の説明だけで正規品と判断してしまう 仕入先情報、正規販売証明、許諾資料を確認します。
輸入手配前 ブランド名、ロゴ、型番、数量、価格、販売目的 インボイスの商品名が曖昧で、商標表示の有無が分からない 商品写真、型番資料、ブランド表示の有無を確認します。
通関申告時 真正品性、仕入経路、権利者許諾、並行輸入該当性 正規仕入れや許諾を示す資料が不足している 通関業者へ資料を共有し、不足資料を確認します。
税関照会時 インボイス、購入証明、販売ページ、正規販売証明、許諾資料 仕入先と連絡が取れず、資料取得に時間がかかる 輸入者から資料を回収し、期限内に通関業者へ連携します。
認定手続開始時 輸入者が期限内に意見書・証拠を提出するか判断 輸入者が真正品性や並行輸入の説明資料を準備できない 回答期限、必要資料、保管料リスクを共有します。
侵害該当と判断された場合 廃棄、任意放棄、権利者同意、修正対応、返送可否 保管料、廃棄費用、販売計画への影響、荷主との費用負担が問題になる 輸入者判断事項として、費用と手続状況を整理します。

必要となる資料

商標権侵害品の疑いで確認が入った場合、次のような資料が必要になることがあります。

資料 主な役割 確認される内容 注意点
正規仕入れを示すインボイス 品名、数量、価格、仕入先を説明する ブランド名、型番、数量、単価、売主、買主 bag、goods、partsなど曖昧な品名では不足することがあります。
購入証明・注文履歴 購入経緯を説明する 注文日、販売者、商品名、数量、価格 購入経緯の資料であり、真正品性の証明として十分とは限りません。
仕入先との契約書 取引関係や販売権限を説明する 契約当事者、対象商品、販売地域、取引条件 契約範囲が対象貨物に及ぶか確認します。
正規代理店または販売店からの購入資料 正規流通ルートから入手したことを説明する 販売店名、対象商品、購入数量、販売地域 仕入先が正規流通に属するか確認します。
権利者または正規代理店からの許諾資料 商標使用や販売について許諾があることを説明する 対象商標、対象商品、対象地域、期間、許諾範囲 許諾範囲が対象貨物に及ぶか確認します。
商品カタログ・型番資料 商品内容、型番、仕様を説明する ブランド名、型番、仕様、正規品情報 インボイス明細と一致するか確認します。
商品写真 本体、ロゴ、タグ、箱、保証書、ラベルを確認する ブランド表示、品質、型番、包装状態 商品本体だけでなく付属品や包装も確認します。
販売ページ 販売者、商品説明、表示内容を確認する ブランド名、商品名、価格、販売者表示 販売ページだけでは権利者許諾を証明できない場合があります。
仕入先の会社情報 販売者の実在性や信用性を確認する 会社名、所在地、連絡先、販売実績 海外EC上の販売者名だけでは不足することがあります。
ブランド表示やロゴの使用根拠を示す資料 商標が適法に使用されていることを説明する ライセンス、正規販売証明、権利者資料 輸入販売の対象地域や対象商品も確認します。

これらの資料は、単に「商品が本物らしい」ことを示すためではなく、商標が適法に付されていること、仕入経路に問題がないこと、輸入販売が商標権侵害にあたらないことを説明するために使われます。

特に海外ECサイトや個人販売者から購入した商品では、販売ページや注文履歴だけでは不十分な場合があります。

フォワーダー実務での対応

フォワーダーは、商標権侵害の有無を判断する立場ではありません。

しかし、ロゴ入り商品、ブランド品、キャラクター表示商品、商標表示付きパッケージを含む貨物については、荷主に対して事前確認を促すことが重要です。

場面 フォワーダーが対応できること フォワーダーだけでは判断できないこと 輸入者・通関業者と連携すべき事項
輸入手配前 ブランド名、ロゴ、商標表示がある貨物かを把握する 商標権侵害にあたるかの最終判断 荷主へ正規性、仕入経路、許諾資料の有無を確認します。
通関申告前 インボイス、商品写真、ブランド名、型番、数量を整理する 真正品性や並行輸入該当性の判断 通関業者へ事前相談し、必要資料を確認します。
税関照会時 輸入者から資料を回収し、通関業者へ連携する 商標権侵害ではないと断定すること 購入証明、正規販売証明、許諾資料を輸入者へ依頼します。
認定手続開始時 通知、回答期限、必要資料を輸入者へ共有する 意見書の内容や提出方針の判断 輸入者・通関業者・必要に応じて専門家確認を促します。
保留中 保管料、搬出停止、配送予定への影響を整理する 輸入を継続するか、放棄・廃棄するかの判断 輸入者へ費用発生と期限を共有します。
侵害該当と判断された場合 手続状況、費用、返送・廃棄の実務情報を整理する 権利者交渉、任意放棄、廃棄判断 輸入者の判断に基づき、通関業者と実務対応を確認します。
修正対応の相談が出た場合 商標部分の切除や包装変更が話題になっていることを通関業者へ共有する 修正すれば輸入できるかどうかの判断 税関・通関業者・必要に応じて専門家確認を促します。
記録管理 誰に何を確認し、どの資料を提出したかを残す 権利侵害の有無や法的責任の判断 確認経緯、回答期限、資料提出履歴を保存します。

特に、極端に安いブランド品、仕入先が不明確な貨物、商品説明が曖昧なインボイス、販売目的が明確な小口大量貨物は注意が必要です。

通関で確認が入った場合には、フォワーダーは荷主から資料を回収し、通関業者へ速やかに連携します。

ただし、フォワーダーが輸入者の代理人として「商標権侵害ではありません」「真正品です」と断定することは避けるべきです。

フォワーダーの役割は、事実確認、資料回収、通関業者との連携、期限管理、保管料や廃棄費用などのリスク説明にあります。

4列判断チェックリスト

確認場面 確認する相手 確認事項 問題がある場合の対応
仕入前 輸入者、仕入先 ブランド表示の有無、商標使用許諾、仕入先の信頼性 正規販売証明、許諾資料、仕入先情報を確認します。
輸入手配前 輸入者、海外売主 ブランド名、ロゴ、型番、数量、価格、販売目的 商品写真、型番資料、詳細インボイスを依頼します。
インボイス確認時 輸入者、海外売主、通関業者 品名が曖昧でないか、ブランド名・型番が記載されているか 訂正インボイスまたは補足資料を取得します。
商品写真確認時 輸入者、倉庫、海外売主 商品本体、タグ、箱、袋、保証書、説明書の商標表示 本体だけでなく付属品・包装材の写真を取得します。
税関照会時 輸入者、通関業者 購入証明、販売ページ、正規販売証明、許諾資料、仕入先情報 回答期限内に提出できる資料を整理します。
並行輸入と説明する場合 輸入者、通関業者 真正商品性、内外権利者の関係、品質の実質同一性 並行輸入記事の判断軸に沿って資料を整理します。
認定手続開始時 輸入者、通関業者 通知内容、回答期限、意見・証拠提出方針 輸入者判断事項として期限管理を行います。
輸入継続が難しい場合 輸入者、通関業者 任意放棄、廃棄、権利者同意、修正対応、返送可否 費用、期限、販売計画への影響を整理します。
フォワーダーに真正品説明を求められた場合 輸入者、通関業者 フォワーダーが判断できる範囲とできない範囲 侵害有無を断定せず、資料回収と通関業者連携に徹します。

実務で問題になりやすいケース

ケース 起きやすい原因 実務上の影響 対応の方向性
インボイス品名がbagsやfashion goodsだけ ブランド名、型番、数量、単価が省略されている 税関で商標表示の有無や真正品性を確認される可能性があります。 詳細インボイス、商品写真、型番資料を取得します。
海外ECサイトからブランド品を仕入れている 販売者の正規性や仕入経路が不明確 購入証明だけでは正規流通を説明できない場合があります。 仕入先情報、正規販売証明、販売ページを確認します。
価格が極端に安いロゴ入り商品 模倣品、無許諾品、非正規流通品の疑い 税関照会や認定手続につながる可能性があります。 価格根拠、販売者情報、商品写真を確認します。
商品本体ではなく箱やタグに商標がある 包装材や付属品だけが商標表示付きになっている 商品本体にロゴがなくても確認対象になります。 箱、タグ、保証書、ラベル、説明書を確認します。
真正品と主張するが仕入経路を説明できない 個人販売者や非正規業者から仕入れている 真正品性の説明が不十分になり、通関が止まる可能性があります。 購入証明、仕入先情報、正規流通資料を取得します。
並行輸入品が商標権侵害と疑われる 海外仕様品、包装変更品、保証対象外品などで説明が不足している 真正品でも品質保証機能が問題になることがあります。 真正商品性、権利者関係、品質の実質同一性を整理します。
商標部分を切除すれば輸入できると思っている 修正対応の限界を理解していない 切除しても輸入できるとは限らず、費用だけ発生する可能性があります。 通関業者・税関・専門家確認を促します。
認定手続中に輸入者が判断できない 手続の意味や期限を理解していない 回答期限超過、保管料増加、輸入不可につながる可能性があります。 期限、必要資料、費用リスクを共有します。

実務シナリオ1:偽ブランド品の疑いで通関が止まるケース

輸入者が海外ECサイトからブランドロゴ入りのバッグや財布を仕入れ、日本国内で販売しようとするケースがあります。

インボイスには「bags」「fashion goods」とだけ記載され、ブランド名や型番が明確に記載されていません。しかし、貨物検査で有名ブランドのロゴが確認され、税関から商標権侵害品の疑いで確認が入ります。

輸入者が販売ページのスクリーンショットしか提出できず、正規販売店からの購入証明や権利者許諾を示せない場合、認定手続に進む可能性があります。

この場合、通関保留、保管料、販売計画の遅れ、廃棄費用、荷主との費用負担が問題になります。

実務シナリオ2:真正品と主張するが仕入経路を説明できないケース

輸入者が「本物のブランド品」と説明していても、仕入先が個人販売者や非正規業者であり、正規流通を示す資料がない場合があります。

商品自体が高品質に見えても、商標が適法に付された商品か、正規流通品か、権利者の許諾を得た商品かを説明できなければ、通関時に確認が続くことがあります。

この場合、フォワーダーは「荷主が本物と言っている」とだけ通関業者へ伝えるのではなく、購入証明、販売ページ、仕入先情報、型番、商品写真、権利者または正規代理店との関係を確認します。

資料がそろわない場合、通関遅延や認定手続のリスクが残ります。

実務シナリオ3:並行輸入品が商標権侵害と疑われるケース

真正品の並行輸入として申告していても、海外仕様品、包装変更品、再包装品、保証対象外品などでは、商標の品質保証機能を害していないかが問題になることがあります。

輸入者が、海外の商標権者と日本の商標権者の関係、品質の実質同一性、仕入経路を説明できない場合、税関照会や認定手続に進むことがあります。

この場合、商品が本物かどうかだけでなく、並行輸入として商標権侵害にあたらないと説明できるかが重要です。

並行輸入の判断軸については、別記事「並行輸入」で整理します。

実務シナリオ4:包装材だけに商標表示があるケース

商品本体にはブランドロゴがないものの、外箱、タグ、袋、保証書、説明書に有名ブランド名やロゴが表示されているケースがあります。

この場合、商品本体だけを見て商標権侵害のリスクがないと判断することはできません。包装材や付属品に商標が表示されていれば、税関で確認対象になることがあります。

対応としては、商品本体、外箱、タグ、保証書、説明書の写真を取得し、商標表示の使用根拠を確認します。仕入先情報や正規販売証明も合わせて通関業者へ共有します。

実務シナリオ5:ノベルティ商品にブランドロゴが付いているケース

海外で配布されたノベルティ商品を仕入れ、日本で販売しようとするケースがあります。ノベルティにはブランドロゴが付いているものの、販売目的で流通することが想定されていない場合があります。

この場合、ロゴが付いていること、非売品であること、販売目的で輸入することが問題になる可能性があります。正規品に見えても、販売権限や流通経路を説明できなければ通関で確認されることがあります。

対応としては、配布元、入手経路、販売許諾、商品状態、数量を確認します。輸入者が販売目的で扱う場合は、権利者または正規流通との関係を説明できる資料が必要です。

実務シナリオ6:商標部分の切除で解決できると考えているケース

商標権侵害品の疑いで通関が止まった場合、輸入者から「ロゴ部分を外せば輸入できるのではないか」と相談されることがあります。

しかし、商標部分の切除、ラベル剥離、包装変更をすれば常に輸入できるわけではありません。商品の性質、商標表示の位置、権利者の対応、税関判断、修正作業の実現可能性によって結論は変わります。

フォワーダーは、修正すれば輸入できると断定せず、通関業者へ確認します。必要に応じて、輸入者が専門家や権利者確認を行うべき事項として整理します。

輸入差止めになった場合の費用と判断

商標権侵害品の疑いで通関が止まると、貨物は保留状態になります。

その間、保管料、検査立会費用、書類準備費用、翻訳費用、廃棄費用、返送可否の確認費用などが問題になることがあります。

費用・判断項目 発生しやすい場面 輸入者が判断すべきこと フォワーダーの対応
保管料 通関保留や認定手続が長引く場合 輸入継続するか、放棄・廃棄を検討するか 保管料発生日と見込みを共有します。
検査立会費用 税関検査や現物確認が必要になる場合 検査対応を行うか、資料提出で対応できるか 通関業者・倉庫と実務手配を確認します。
翻訳・書類準備費用 外国語資料や契約資料を提出する場合 翻訳や補足説明を準備するか 期限内に提出できるよう資料回収を促します。
廃棄費用 輸入できないと判断される場合 任意放棄・廃棄を選ぶか 通関業者と廃棄手続の実務を確認します。
返送可否 輸入できない貨物を海外へ戻したい場合 返送が可能か、費用を負担するか 通関業者・運送人と実務可否を確認します。
修正対応 商標部分の切除、ラベル剥離、包装変更が検討される場合 修正対応を行うか、費用を負担するか 修正すれば輸入できると断定せず、通関業者へ確認します。
販売計画への影響 販売開始日や納品予定に間に合わない場合 販売延期、キャンセル、代替対応 通関保留の見込みを輸入者へ共有します。
権利者同意の取得 権利者から輸入同意を得られる可能性がある場合 権利者へ連絡するか、専門家に相談するか フォワーダーは交渉主体ではなく、通関業者への連携を行います。

認定手続の結果、輸入できないと判断された場合、輸入者は任意放棄、廃棄、権利者からの同意書取得、商標部分の切除などの修正対応を検討することになります。

ただし、商標部分を切除すれば常に輸入できるわけではありません。商品の性質、権利者の対応、税関判断、修正の可否によって結論は変わります。

フォワーダーや通関業者は、輸入者に代わって権利関係を判断するのではなく、手続の状況、期限、発生し得る費用を整理して伝える立場になります。

よくある誤解

よくある誤解 実際の考え方 実務上の注意点
商品が高品質なら商標権侵害品ではない 品質が高くても、商標を無断使用していれば問題になる可能性があります。 商品品質ではなく、商標使用の根拠を確認します。
ロゴが小さければ問題ない 小さなロゴでも、商標として表示されていれば確認対象になることがあります。 商品本体、タグ、箱、包装材の表示を確認します。
海外で普通に売っていたから輸入できる 海外で販売されていたことだけでは、商標使用の適法性や輸入販売権限を説明できません。 仕入経路、正規販売証明、許諾資料を確認します。
販売ページに正規品と書いてあれば十分である 販売ページの表示だけでは、真正品性や権利者許諾を証明できない場合があります。 購入証明、仕入先情報、正規販売証明を確認します。
商品本体にロゴがなければ問題ない 箱、袋、タグ、保証書、説明書などに商標がある場合も問題になります。 付属品や包装材も確認対象にします。
並行輸入品なら商標権侵害にはならない 真正商品性、内外権利者の関係、品質の実質同一性を説明できなければ問題になることがあります。 並行輸入として説明できる資料を準備します。
商標部分を切除すれば必ず輸入できる 切除やラベル剥離で常に解決するわけではありません。 通関業者、税関、必要に応じて専門家確認を行います。
フォワーダーが真正品と説明すればよい フォワーダーは商標権侵害の有無を判断する立場ではありません。 資料回収、通関業者連携、期限管理に徹します。

実務上の注意点

商標権侵害品は、輸入実務において最も典型的な知的財産リスクの一つです。

商品が高品質に見えても、ロゴやブランド表示を無断で使用していれば、商標権侵害品として扱われる可能性があります。

また、真正品と主張する場合でも、仕入経路、正規販売証明、権利者許諾、並行輸入としての説明資料を準備できなければ、通関で確認が続く可能性があります。

フォワーダーは、ブランド名やロゴが含まれる貨物について、荷主に正規性の確認を促し、疑義がある場合は通関業者への早めの情報共有が求められます。

特に、海外ECサイト、個人販売者、現地市場、無名サプライヤーから仕入れたブランド表示付き商品では、仕入前に正規性、仕入経路、権利者許諾を確認することが重要です。

まとめ

商標権侵害品とは、ブランド名、ロゴ、マーク、商品名などを商標権者の許諾なく使用した商品です。

偽ブランド品やロゴ入りコピー商品が典型例ですが、真正品に見える商品や並行輸入品でも、商標の出所表示機能や品質保証機能を害する場合には問題になることがあります。

輸入実務では、商品が本物かどうかだけでなく、商標の使用根拠、仕入経路、権利者許諾、並行輸入としての説明資料を確認する必要があります。

フォワーダーは商標権侵害の判断者ではありませんが、荷主への事前確認、資料回収、通関業者との連携、期限管理、費用リスクの説明を行う立場です。

商標権侵害品は、ブランド品輸入、並行輸入、模倣品、輸入差止め、認定手続が交差する重要論点であり、仕入前の正規性確認と資料準備が最重要の予防策です。

同義語・別表記

  • 商標侵害品
  • ロゴ侵害品
  • 無断商標使用品
  • Trademark Infringing Goods
  • Trademark Violation Goods
  • Infringing Branded Goods
  • 商標権侵害物品
  • 偽ブランド品

関連用語

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