SLC条件でのコンテナ穴見落としによる海水濡損とフォワーダーへの代位請求拒絶

Seawater Damage Caused by an Undetected Container Opening under Shipper’s Load and Count and Rejection of a Subrogated Claim Against the Forwarder

匿名化・掲載目的

本記事は、SLCコンテナを使用した混載貨物の海上輸送中に、コンテナドア部から海水が浸入し、貨物に水濡れ損害が発生した実例を匿名化して共有するものです。

会社名、個人名、荷主名、荷受人名、フォワーダー名、実運送人名、貨物海上保険者名、船名、港名、B/L番号、コンテナ番号、貨物品名、案件番号その他の特定につながる情報は掲載しません。

本件では、荷主の貨物海上保険から、免責金額10万円を控除した約136万円の保険金が支払われました。その後、貨物海上保険者は、元受け混載業者であるフォワーダーに対して約150万円の代位求償を行いました。

これに対しフォワーダーは、海水が浸入したコンテナは実運送人が提供していたものであり、ドア部の密閉性能及びコンテナ本体の保守管理は実運送人側の管理領域であったとして、自社の法的責任を否認しました。

そのうえで、貨物海上保険者に対し、事故原因及びコンテナ管理に関する資料を保有する実運送人へ直接代位求償するよう回答しました。

その後、貨物海上保険者が実運送人へ実際に代位求償したか、どのような責任判断が行われたか、回収に至ったかについては、フォワーダーが当事者ではないため確認していません。

事例の概要

荷主の貨物は、複数荷主の貨物を一つのコンテナへ積み合わせる混載貨物として、SLCコンテナを使用して海上輸送されました。

仕向地で貨物を確認したところ、コンテナ内の貨物に水濡れ損害が発生していました。事故発見後、サーベイヤーを手配し、貨物の損害状態、濡れ位置、水の種類、浸入経路及びコンテナの状態を調査しました。

サーベイの結果、水濡れは単なる結露又は真水によるものではなく、コンテナドア部から浸入した海水によるものと整理されました。

ドア部の密閉不良の背景として、ドアガスケット、いわゆるドアパッキンの腐食、硬化、変形又は経年劣化による密閉性能の低下が疑われました。ただし、ガスケットの劣化が技術的に断定されていない場合は、確定原因ではなく推定原因として扱う必要があります。

荷主側の損害については貨物海上保険による査定が行われ、免責金額10万円を控除した約136万円が支払われました。

保険金支払い後、貨物海上保険者は、荷主から混載輸送を引き受けた元受け混載業者であるフォワーダーに対し、約150万円の代位求償を行いました。

フォワーダーは、問題となったSLCコンテナが実運送人から提供されたものであり、コンテナドア部の密閉性能、ガスケットの状態及びコンテナ本体の保守管理は実運送人側の管理領域であったとして、自社の法的責任を否認しました。

本記事の固有担当範囲

区分 本記事で扱う範囲 本記事で扱わない範囲
輸送形態 SLCコンテナを使用した混載貨物輸送 単一荷主によるFCL輸送
事故原因 コンテナドア部からの海水浸入 コンテナ屋根又は側壁の穴からの浸入
推定される不具合 ドアガスケットの劣化等による密閉不良 資料の裏付けがない状態での原因断定
フォワーダーの立場 荷主から混載輸送を引き受けた元受け混載業者 コンテナを所有・保守していた事業者
コンテナ提供者 実運送人 荷主又はフォワーダーが所有するコンテナ
貨物保険 荷主の貨物海上保険 フォワーダー賠償責任保険による支払い
保険金 免責金額10万円控除後の約136万円 フォワーダーが支払った賠償金
代位求償 貨物海上保険者からフォワーダーへの約150万円の請求 荷主からフォワーダーへの直接請求
フォワーダーの対応 自社の法的責任を否認し、実運送人への直接代位求償を案内 責任を認めた示談又は賠償金支払い
その後の結果 フォワーダー側では未確認 実運送人との交渉又は回収結果の推測

本記事の中心は、海水濡損の保険処理だけではありません。元受け混載業者が代位求償を受けた場合に、混載輸送を引き受けていたという事実だけで責任を認めず、コンテナの提供者、保守管理主体、事故原因及び自社の関与範囲を確認したうえで法的責任を判断する実務を扱います。

匿名化した事故条件

項目 匿名化した事故条件 実務上の意味
輸送形態 国際海上混載輸送 複数荷主の貨物が一つのコンテナに積載されていました。
使用コンテナ SLCコンテナ 実運送人が提供したコンテナでした。
事故区間 海上輸送中 海上運送中の外部海水浸入として調査されました。
浸入箇所 コンテナドア部 屋根又は側壁の穴による浸入ではありませんでした。
推定不具合 ドアガスケットの劣化等による密閉不良 確定原因と推定原因を区別する必要があります。
貨物損害 海水による水濡れ損害 結露及び真水による損害とは区別されました。
貨物海上保険 荷主側で付保 フォワーダーの賠償責任保険ではありません。
免責金額 10万円 保険金査定時に控除されました。
保険金支払額 約136万円 概算の支払額として扱います。
代位求償額 約150万円 貨物海上保険者からフォワーダーへの概算請求額です。
フォワーダーの回答 自社の法的責任を否認 実運送人への直接代位求償を案内しました。
その後の求償結果 不明 フォワーダーが当事者ではないため確認していません。

事故発生からフォワーダーの対応終了まで

段階 発生した事実 実務上の確認事項
1 荷主の貨物が混載貨物として引き受けられました。 元受け混載業者、実運送人及び貨物受渡関係を確認します。
2 実運送人が提供したSLCコンテナが使用されました。 コンテナ番号、所有・管理関係及び受渡記録を確認します。
3 複数荷主の貨物がコンテナに混載されました。 貨物位置、梱包状態及び積付記録を確認します。
4 コンテナが海上輸送されました。 実運送人の運送責任期間を確認します。
5 コンテナドア部から海水が浸入しました。 ドア周辺の水跡、ガスケット及びロック機構を確認します。
6 貨物に水濡れ損害が発生しました。 貨物ごとの濡れ位置及び損害範囲を記録します。
7 サーベイヤーが貨物及びコンテナを調査しました。 海水、真水及び結露を区別します。
8 ドア部からの海水浸入として整理されました。 確認された浸入箇所と推定される部品不良を区別します。
9 荷主が貨物海上保険金を請求しました。 Claim Note及び損害資料を提出します。
10 約136万円の保険金が支払われました。 免責金額10万円及び支払範囲を確認します。
11 貨物海上保険者がフォワーダーへ約150万円を代位求償しました。 請求根拠、請求額及びフォワーダーの契約上の立場を確認します。
12 フォワーダーが自社の法的責任を否認しました。 コンテナ提供者及び保守管理主体を明確にします。
13 実運送人へ直接代位求償するよう回答しました。 実運送人が保有する点検・修理・管理資料の確認を求めます。
14 フォワーダー側の請求対応が終了しました。 その後の求償経緯を確認済み事実として推測しません。

問題となった争点

争点 本件での整理 責任判断への影響
水の種類 海水 結露、雨水又は真水による濡損とは責任関係が異なります。
浸入箇所 コンテナドア部 ドアガスケット及び閉鎖状態の確認が必要です。
直接原因 ドア部の密閉不良 水密性が確保されていたかが問題となります。
推定原因 ガスケットの腐食、硬化、変形又は経年劣化 技術資料がなければ断定せず、疑いとして扱います。
コンテナ提供者 実運送人 点検、修理及び保守管理資料の保有主体を確認します。
フォワーダーの立場 元受け混載業者 荷主との窓口であることと、コンテナ保守責任を区別します。
貨物保険金 約136万円 保険金支払いはフォワーダー責任を確定しません。
代位求償 貨物海上保険者からフォワーダーへ約150万円 代位権の取得と請求先の法的責任は別問題です。
フォワーダーの回答 自社の法的責任を否認 単なる支払拒否ではなく、責任原因に基づく回答でした。
適切な請求先 実運送人であると回答 事故原因及びコンテナ管理資料を保有する主体を示しました。
その後の結果 未確認 当事者でない交渉の結果を推測しません。
よくある誤解 正しい整理 本件への適用
元受け混載業者はすべての貨物事故について当然に責任を負う 契約上の地位、事故原因、作業範囲及び管理領域を確認します。 コンテナの保守管理は実運送人側の領域であると主張しました。
保険金を支払った貨物海上保険者は、任意の関係者へ回収請求できる 代位求償には、請求先の法的責任及び因果関係が必要です。 フォワーダーは責任原因がないとして否認しました。
フォワーダーが混載輸送を引き受けたため、コンテナの老朽化にも責任を負う コンテナの所有、提供、点検及び保守管理主体を確認します。 本件のコンテナは実運送人が提供していました。
ドア部から海水が入れば、必ずガスケット劣化が原因である ガスケット、ロック機構、扉変形、異物挟み込み等を確認します。 ガスケット劣化は推定原因として扱います。
貨物保険の請求を支援したフォワーダーは責任を認めたことになる 保険手続への協力と法的責任の承認は別です。 フォワーダーは保険対応後に自社責任を否認しました。
実運送人へ請求するよう回答した以上、その回収結果も把握すべきである フォワーダーがその後の交渉当事者でなければ、結果を知る立場にはありません。 その後の責任判断及び回収結果は確認していません。

関係者ごとの立場・契約関係

関係者 本件での立場 主な役割 責任判断上の確認事項
荷主・被保険者 水濡れ損害を受けた貨物の権利者 貨物海上保険金の請求 貨物価額、損害額及び免責金額を確認します。
元受け混載業者・フォワーダー 荷主から混載輸送を引き受けた事業者 輸送手配、事故連絡及び保険書類案内 契約上の地位、自社作業及び事故原因への関与を確認します。
実運送人・Actual Carrier 海上輸送を実施した運送人 SLCコンテナの提供及び海上運送 コンテナの点検、保守、修理及び水密性管理を確認します。
貨物海上保険者 荷主の貨物損害を補償した保険者 保険査定、保険金支払い及び代位求償 代位請求先の責任原因を立証する必要があります。
サーベイヤー 事故原因及び貨物損害を調査した者 水の種類、浸入箇所及び損害範囲の確認 技術的所見と法的責任判断を区別します。
混載作業者・CFS等 貨物の積合せに関与した者 積付け、梱包状態及び貨物位置の管理 ドア部の異常を確認できた状況であったかを検証します。

フォワーダーの契約上の関与範囲は、次の標準五分類を用いて確認できます。

この五分類は、法令上又は業界全体で確立された法的分類ではなく、本シリーズにおいて、フォワーダーが契約及び実務上どの範囲まで関与しているかを整理するための分析上の枠組みです。

標準分類 一般的な立場 本件で確認する事項 責任判断への影響
Simple Intermediary 荷主と実運送人との運送契約を取り次ぐ立場 運送契約の当事者及び請求書の発行主体 単純取次であれば、運送人としての責任とは区別されます。
Cargo Transportation Service Provider 貨物輸送サービスを受託する立場 混載輸送の受託範囲及び履行義務 受託範囲とコンテナ保守管理を分けて確認します。
NVOCC / House B/L Issuer House B/Lを発行する契約運送人 House B/L発行の有無及び適用約款 契約運送人である場合も、事故原因、免責及び責任制限を確認します。
Door-to-Door Single Contractor 集荷から納入までを一契約で引き受ける立場 契約区間及び海上区間の再委託関係 実運送人の作業であっても対外責任が問題となる場合があります。
Agent / Coordinator for Specific Operations 特定業務の連絡・調整を行う立場 事故連絡、サーベイ及び保険書類支援の範囲 事務支援だけで貨物損害責任が発生するものではありません。

本件で確認されているのは、フォワーダーが元受け混載業者であったことです。House B/L発行者等の最終的な契約上の地位は、実際のB/L、約款、Booking Confirmation及び運送契約によって判断する必要があります。

確認すべき証拠・資料

証拠・資料 確認する内容 本件での役割
B/L・House B/L 契約運送人、実運送人、責任期間及び適用約款 フォワーダーの契約上の地位を確認します。
Booking Confirmation 輸送条件、受託範囲及び使用コンテナ 元受け混載業者の業務範囲を確認します。
コンテナ受渡記録 コンテナ番号、提供者及び受渡時状態 実運送人提供コンテナであることを確認します。
コンテナ写真 ドア、ガスケット、ロックバー及び水跡 浸入箇所と密閉不良を確認します。
貨物写真 濡れ位置、梱包状態、変色及び腐食 海水浸入方向と損害範囲を確認します。
サーベイレポート 水の種類、浸入箇所、推定原因及び損害範囲 海水濡損判断の中心資料です。
塩分反応等の調査結果 海水又は真水の識別 結露及び淡水濡損との区別に使用します。
コンテナ点検・修理履歴 ドアガスケットの交換、補修及び定期点検 実運送人側の保守管理状況を確認します。
Commercial Invoice 貨物価額及び取引条件 損害額査定の基礎資料です。
Packing List 貨物個数、重量及び梱包形態 損傷貨物及び混載位置を確認します。
Claim Note 荷主から貨物海上保険者への保険金請求 請求内容及び損害額を確認します。
Receipt and Release 保険金受領及び精算内容 保険金支払いの完了を確認します。
Subrogation Receipt 貨物海上保険者が取得した代位権 代位求償の権利資料となります。
Claim Notice 事故通知及び権利留保 実運送人に対する請求権を保全します。
フォワーダーへの代位請求書 請求額、責任原因及び請求根拠 約150万円の代位求償内容を確認します。
フォワーダー回答書 法的責任の否認理由及び請求先の指摘 フォワーダー側の最終対応を確認します。

原因・因果関係の検証

本件で確認された事故現象は、コンテナドア部からの海水浸入です。

水濡れ事故では、貨物が濡れているという事実だけでは責任原因を確定できません。海水、雨水、結露、洗浄水又は貨物自体から生じた水分を区別する必要があります。

サーベイでは、濡れ位置、コンテナ内部の水跡、ドア周辺の状態及び貨物への影響を確認し、海水がドア部から浸入したものと整理されました。

ドア部の密閉不良の原因としては、ドアガスケットの腐食、硬化、変形、切損、経年劣化、扉自体の変形、ロック機構の不具合又は異物の挟み込み等が考えられます。

本件ではガスケットの劣化又は老朽化が疑われましたが、部品調査又は修理履歴によって断定されていない場合は、「ガスケットの劣化が原因であった」と確定的に記載してはなりません。

検証対象 本件での整理 証拠上の扱い
水の種類 海水 サーベイ結果に基づく確認事項
浸入箇所 コンテナドア部 サーベイ結果に基づく確認事項
直接的な事故現象 ドア部の密閉不良 浸入経路から整理された事項
部品上の原因 ドアガスケットの劣化等が疑われた 断定資料がなければ推定原因
コンテナ提供者 実運送人 受渡記録及び輸送資料で確認
コンテナ保守管理 実運送人側の管理領域であるとのフォワーダーの主張 実運送人の点検・修理記録による検証が必要
フォワーダーの関与 元受け混載業者として輸送を受託 コンテナ保守への具体的関与は別途確認

損害額・保険金・代位求償の整理

旧記事で使用されていた「賠償請求額約150万円、応訴額約150万円」という表現は使用しません。

本件では、貨物損害、貨物海上保険金及びフォワーダーへの代位求償を分けて記録します。

金額・処理 本件での内容 注意点
貨物損害 水濡れによる貨物損害 貨物価額、減価、処分費等を資料で確認します。
貨物海上保険 荷主側で契約 フォワーダーの賠償責任保険とは区別します。
免責金額 10万円 貨物海上保険の保険金査定時に控除されました。
貨物海上保険金 約136万円 概算の支払額として扱います。
フォワーダーへの代位求償 約150万円 貨物海上保険者から元受け混載業者への概算請求額です。
フォワーダーの対応 自社の法的責任を否認 責任原因に基づいて請求に応じませんでした。
フォワーダー支払額 なし 法的責任を認める支払いは行われていません。
実運送人への請求 直接代位求償するよう回答 実際に請求されたかは確認していません。
その後の回収額 不明 フォワーダーが当事者ではありません。

約150万円及び約136万円はいずれも概算表示です。数万円の差を、資料の裏付けなく個別の査定減額又は未填補損害として分解しません。

貨物海上保険請求と必要書類

書類 主な役割 本件での位置付け
Claim Note 被保険者から貨物海上保険者への保険金請求 荷主が貨物損害を申告するために使用します。
Receipt and Release 保険金受領及び精算内容の確認 約136万円の支払いに関する書類です。
Subrogation Receipt 貨物海上保険者が取得する代位権の確認 保険金支払い後の代位求償に使用されます。
Claim Notice 運送関係者への事故通知及び権利留保 通知期限及び求償権を保全します。
サーベイレポート 事故原因及び損害範囲の確認 保険査定と代位求償の双方で使用されます。
コンテナ写真 ドア部及びガスケット状態の記録 密閉不良及び管理主体の検討資料となります。
貨物損害明細 損傷数量、損害額及び関連費用の整理 保険金査定の基礎資料です。

フォワーダーが保険請求書類の案内又はサーベイ手配を支援したとしても、それは事故対応上の事務協力です。貨物損害に関する法的責任を承認したことにはなりません。

フォワーダーへの代位求償と法的責任の否認

貨物海上保険者は、約136万円の保険金を支払った後、元受け混載業者であるフォワーダーに対して約150万円の代位求償を行いました。

フォワーダーは、請求を受けたことだけを理由に責任を認めず、コンテナの提供者、ドア部の保守管理主体、事故原因及び自社の関与範囲を確認しました。

その結果、フォワーダーは次の事実関係を前提として回答しました。

  • 海水が浸入したSLCコンテナは、実運送人が提供していたこと
  • 海水の浸入箇所はコンテナドア部であったこと
  • ドア部の密閉不良が事故原因として問題となったこと
  • ドアガスケットの状態、点検、修理及び交換履歴は実運送人側で確認すべき事項であること
  • コンテナ本体の保守管理は実運送人側の管理領域であったこと
  • フォワーダーは事故原因となったコンテナの保守管理を行っていなかったこと

これに対しフォワーダーは、海水が浸入したコンテナは実運送人が提供していたものであり、ドア部の密閉性能及びコンテナ本体の保守管理は実運送人側の管理領域であったとして、自社の法的責任を否認しました。

そのうえで、貨物海上保険者に対し、事故原因及びコンテナ管理に関する資料を保有する実運送人へ直接代位求償するよう回答しました。

これは、単に支払いを拒んだという処理ではありません。事故原因、管理領域及び責任主体を踏まえ、自社に損害賠償責任が成立しないとの立場を示したものです。

実際の対応結果

処理項目 実際の結果 記録上の扱い
輸送形態 SLCコンテナを使用した混載貨物輸送 混載事故として記録
浸入水 海水 結露及び真水とは区別
浸入箇所 コンテナドア部 サーベイ結果に基づいて記録
推定原因 ドアガスケットの劣化等による密閉不良 断定資料がなければ推定原因として記録
コンテナ提供者 実運送人 保守管理主体の確認事項
貨物海上保険金 約136万円 免責金額10万円控除後の概算額
フォワーダーへの代位求償 約150万円 貨物海上保険者からの概算請求額
フォワーダーの対応 自社の法的責任を否認 実運送人への直接代位求償を回答
フォワーダーの支払い なし 責任を認める支払いは行われていません。
その後の求償 不明 フォワーダーが当事者ではないため未確認

フォワーダーに対する請求対応は、法的責任を否認し、貨物海上保険者に対して実運送人へ直接代位求償するよう回答した段階で終了しました。

その後、貨物海上保険者が実運送人へ実際に請求したか、実運送人が責任を認めたか、示談又は回収に至ったかについては確認していません。

事故を回避するための事前対策

実施時点 担当者 事前対策 目的
コンテナ提供前 実運送人・コンテナ管理者 ドアガスケット、扉、ロックバー及びヒンジを点検します。 密閉不良による海水浸入を防止します。
定期整備時 実運送人・修理業者 硬化、亀裂、変形又は腐食したガスケットを交換します。 経年劣化した部品の継続使用を防止します。
混載作業前 CFS・混載作業者 ドア部の変形、ガスケットの欠損及び閉鎖状態を確認します。 明らかな異常のあるコンテナを使用しません。
積込み前 CFS・混載作業者 コンテナ内部から外光、隙間及び水跡を確認します。 密閉性を損なう異常を早期に発見します。
積込み完了時 CFS・混載作業者 ドアを確実に閉鎖し、ロックバー及びシールを確認します。 閉鎖不完全による浸水を防止します。
コンテナ受渡時 実運送人・関係事業者 コンテナ番号、外観及び異常の有無を記録します。 事故後の管理区間を明確にします。
輸送契約時 フォワーダー コンテナ提供者及び保守管理主体を確認します。 事故発生時の照会先を明確にします。
保険手配時 荷主 海水濡損、免責金額及び通知義務を確認します。 事故時の貨物保険対応を円滑にします。

事故発生直後の初動対応

順序 担当者 直ちに行う対応 完了確認
1 荷受人・現地担当者 貨物及びコンテナの状態を保存します。 清掃、修理及び処分を一時停止します。
2 現地担当者 コンテナドア、ガスケット、水跡及び貨物を撮影します。 原画像及び撮影日時を保存します。
3 荷受人 濡損貨物と健全貨物を区分します。 移動前の貨物位置を記録します。
4 フォワーダー 荷主及び貨物海上保険者へ事故を通知します。 事故番号及びサーベイ指示を取得します。
5 貨物海上保険者 サーベイヤーを手配します。 修復又は処分前に調査を行います。
6 サーベイヤー 海水、真水及び結露を区別します。 調査結果をサーベイレポートへ記録します。
7 サーベイヤー・関係者 ドア部及びガスケットの状態を確認します。 確認事項と推定事項を分けて記録します。
8 フォワーダー・貨物海上保険者 実運送人へClaim Noticeを送付します。 通知期限及び受領証拠を保存します。
9 荷主・サーベイヤー 乾燥、選別、修復又は処分を検討します。 二次損害を抑制します。
10 フォワーダー 自社の契約上の地位と管理範囲を確認します。 責任を安易に承認せず、確認済み事実に基づいて回答します。

事故を解決・収束させるための対応

対応項目 必要な処理 判断主体 収束条件
水の種類 海水、真水及び結露を区別します。 サーベイヤー 海水濡損であることを確認します。
浸入箇所 ドア部の水跡及び貨物位置を照合します。 サーベイヤー 浸入経路を整理します。
密閉不良の原因 ガスケット、扉、ロック機構及び修理履歴を確認します。 実運送人・コンテナ管理者 確定原因又は推定原因を区分します。
損害額 貨物価額、減価及び関連費用を整理します。 荷主・貨物海上保険者 保険査定を完了します。
貨物海上保険 Claim Note及び損害資料を提出します。 荷主・貨物海上保険者 約136万円の保険金支払いを完了します。
代位権 Subrogation Receipt等を取得します。 貨物海上保険者 代位求償権の範囲を確認します。
フォワーダーへの請求 契約上の地位、自社作業及び事故原因を検証します。 貨物海上保険者・フォワーダー フォワーダーが書面で責任判断を回答します。
法的責任の否認 コンテナ提供者及び管理領域を明示します。 フォワーダー 自社に対する代位請求への対応を終了します。
実運送人への請求 事故資料及びClaim Noticeを提示します。 貨物海上保険者 実運送人との求償判断へ移行します。
フォワーダー案件の閉鎖 請求書、回答書及び証拠資料を保存します。 フォワーダー 自社への請求対応を完了します。

実務上の教訓

  • SLCコンテナを使用した混載貨物では、複数貨物の濡れ位置とコンテナ内の積付位置を照合する必要があります。
  • 水濡れ事故では、海水、真水及び結露を最初に区別します。
  • 本件で確認された浸入箇所は、コンテナドア部です。
  • ドアガスケットの腐食、硬化又は経年劣化は、資料によって断定されていない限り推定原因として扱います。
  • 元受け混載業者であることだけで、実運送人提供コンテナの保守管理責任が当然に確定するものではありません。
  • 貨物海上保険金の支払いは、フォワーダー又は実運送人の法的責任を確定するものではありません。
  • 代位求償を受けたフォワーダーは、請求額だけでなく、事故原因、管理領域及び自社の関与範囲を確認します。
  • 本件では、フォワーダーは単に請求を拒絶したのではなく、自社の法的責任を否認しました。
  • フォワーダーは、事故原因及びコンテナ管理資料を保有する実運送人へ直接代位求償するよう回答しました。
  • その後の実運送人との交渉、責任判断及び回収結果は、フォワーダーが当事者でないため確認していません。
  • 保険請求書類の案内やサーベイ手配への協力は、法的責任の承認とは区別します。
  • Claim Noticeは、保険金支払い後ではなく、事故確認後速やかに送付します。

具体例1:ドア部に水跡が集中していた場合

コンテナドア付近の床面及び貨物に水跡が集中している場合は、屋根又は側壁だけでなく、ドアガスケット、扉の変形、ロックバー及び閉鎖状態を確認します。

具体例2:貨物海上保険者から元受け混載業者へ代位求償された場合

元受け混載業者は、荷主との窓口であったという理由だけで責任を認めず、コンテナ提供者、保守管理主体、House B/Lの有無及び事故原因への具体的関与を確認します。

具体例3:実運送人への直接代位求償を回答した場合

実運送人が提供したコンテナの保守管理が争点である場合、フォワーダーは貨物海上保険者に対し、点検履歴、修理履歴及びコンテナ管理資料を保有する実運送人へ直接代位求償するよう回答することがあります。

まとめ

本件は、SLCコンテナを使用した混載貨物の海上輸送中に、コンテナドア部から海水が浸入し、貨物に水濡れ損害が発生した事例です。

サーベイでは、海水がコンテナドア部から浸入したものと整理されました。ドア部の密閉不良の背景として、ドアガスケットの腐食、硬化、変形又は経年劣化が疑われましたが、技術資料によって断定されていない場合は推定原因として扱います。

荷主の貨物海上保険からは、免責金額10万円を控除した約136万円が支払われました。

その後、貨物海上保険者は、元受け混載業者であるフォワーダーに対して約150万円の代位求償を行いました。

これに対しフォワーダーは、海水が浸入したコンテナは実運送人が提供していたものであり、ドア部の密閉性能及びコンテナ本体の保守管理は実運送人側の管理領域であったとして、自社の法的責任を否認しました。

そのうえで、貨物海上保険者に対し、事故原因及びコンテナ管理に関する資料を保有する実運送人へ直接代位求償するよう回答しました。

その後の貨物海上保険者と実運送人との交渉、責任判断及び回収結果は、フォワーダーが当事者ではないため確認していません。

本件の実務上の核心は、元受け混載業者という立場だけで責任を判断せず、コンテナの提供者、保守管理主体、浸入箇所、推定原因及び各当事者の契約上の役割を分けて検証することにあります。

同義語・別表記

  • SLCコンテナ
  • Shipper’s Load and Count
  • Shipper-Loaded Container
  • 海水浸入
  • 海水濡損
  • コンテナ漏水
  • 水濡れ損害
  • 貨物保険代位求償

関連用語