ICC2009 免責条項の基本構造
ICC2009の免責条項とは
ICC2009の免責条項とは、外航貨物海上保険において、保険で補償されない損害・費用を定める部分です。
ICC(A)は広い補償を前提とする条件ですが、免責条項に該当する場合には保険金支払の対象外となります。ICC(B)およびICC(C)でも、列挙された危険に該当するかどうかに加えて、免責条項の確認が必要です。
ICC2009では、主に第4条の一般免責、第5条の不堪航・不適合免責、第6条の戦争免責、第7条のストライキ・テロ免責が重要です。
第4条 一般免責
第4条は、貨物保険で一般的に補償されない損害・費用を定める条項です。
主な免責事由には、被保険者の故意、通常の漏損・重量減少・自然消耗、梱包または準備の不十分、貨物固有の瑕疵または性質、遅延、船社等の支払不能、原子力・放射能関連の危険があります。
実務上は、貨物に損害があったとしても、それが外来的・偶然な事故によるものなのか、貨物自体の性質や通常の消耗によるものなのかを整理する必要があります。
梱包不十分免責
ICC2009では、梱包または準備の不十分・不適切に関する免責が整理されています。
貨物は、通常の国際輸送や荷役に耐えられるように梱包・準備されている必要があります。ここでいう梱包には、コンテナ内の積付けも含まれます。
ただし、ICC2009では、免責が適用される場面が、被保険者またはその使用人による梱包・準備、または保険の危険開始前に行われた梱包・準備に限定される方向で整理されています。
そのため、誰が梱包したのか、いつ梱包したのか、コンテナへの積付けを誰が行ったのかが、保険事故処理では重要になります。
船社倒産免責
第4条では、船舶の所有者、管理者、用船者、運航者の支払不能または金銭債務不履行による損害・費用も免責事由として定められています。
ただし、ICC2009では、被保険者が積込み時にそのような支払不能や金銭債務不履行を知っていた、または通常の業務上知っているべきであった場合に限り、免責が問題となる方向で整理されています。
また、善意で貨物を購入した保険契約の譲受人が保険金請求をする場合には、この免責が適用されない旨も明確化されています。
船社倒産によって貨物が途中港で止まる場合、貨物保険、継搬費用、B/L上の運送人責任、フォワーダー・NVOCCの説明責任が同時に問題になります。
第5条 不堪航・不適合免責
第5条は、船舶・艀の不堪航、またはコンテナ・輸送用具の不適合による損害・費用について定める条項です。
船舶や艀については、被保険者が積込み時に不堪航または安全な運送に適さないことを知っていた場合に、免責が問題となります。
コンテナや輸送用具については、積込みが保険の危険開始前に行われた場合、または被保険者・使用人が積込みを行い、かつ不適合を知っていた場合に問題となります。
この条項は、船会社、NVOCC、フォワーダー、荷主のいずれが輸送用具の状態を把握できたのかを整理するうえで重要です。
第6条 戦争免責
第6条は、戦争、内乱、革命、反乱、敵対行為、捕獲、拿捕、拘束、抑留、遺棄された機雷・魚雷・爆弾などによる損害・費用を免責とする条項です。
通常のICC(A)、ICC(B)、ICC(C)では、戦争危険は基本的に免責となります。
戦争危険を補償するには、別途、協会戦争約款などの付帯を確認する必要があります。
海賊危険の扱い
海賊危険の扱いは、ICC(A)とICC(B)・ICC(C)で注意が必要です。
ICC(A)では、海賊行為は戦争免責から除外されているため、通常の海上危険として補償対象になる可能性があります。
一方、ICC(B)およびICC(C)では、海賊行為の扱いが異なり、補償には別途約定や特約が必要となる場合があります。
第7条 ストライキ・テロ免責
第7条は、ストライキ、職場閉鎖、労働争議、騒じょう、暴動、テロ行為、政治的・思想的・宗教的動機による行為などによって生じる損害・費用を免責とする条項です。
ICC2009では、テロ行為の定義が明確化され、政治的動機だけでなく、思想的または宗教的動機による行為も含まれる方向で整理されています。
これらの危険を補償するには、通常のICC(A)(B)(C)だけでなく、Institute Strikes Clausesなどの付帯状況を確認する必要があります。
ICC(A)とICC(B)(C)の違い
免責条項はICC(A)、ICC(B)、ICC(C)で共通する部分が多い一方、完全に同じではありません。
ICC(B)およびICC(C)では、一切の者の不法行為による故意の損傷または故意の破壊が免責として追加されます。
そのため、悪意ある損傷や故意の破壊を補償対象にしたい場合には、別途Institute Malicious Damage Clauseなどの特約を確認する必要があります。
貨物保険・B/L・NVOCC責任との関係
免責条項は、貨物保険で支払われるかどうかを判断する中心部分です。
ただし、保険で免責になるからといって、必ず荷主がすべてを負担するとは限りません。
梱包不十分、コンテナ不適合、輸送用具の問題、遅延、戦争・ストライキ・テロ、船社倒産などは、B/L裏面約款、NVOCC約款、運送契約、インコタームズとの関係で、運送人・フォワーダー・荷主の責任分担を別途確認する必要があります。
特にNVOCCやフォワーダーが関与する取引では、保険事故として処理する話と、運送契約上の責任を問う話を分けて整理することが重要です。
実務上の注意点
貨物事故が発生した場合には、まず事故原因を整理し、その原因が補償危険に該当するのか、免責条項に該当するのかを確認します。
特に、梱包不十分、貨物固有の性質、遅延、船社倒産、不堪航、戦争・ストライキ・テロは、保険金支払の可否に直結しやすい論点です。
そのため、事故報告の段階では、事故発生時期、事故場所、梱包状態、コンテナ状態、輸送経路、B/L条件、保険条件、特約の有無を早期に確認する必要があります。

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