ICC2009 危険担保条項の基本構造

risks Covered under Institute Cargo Clauses 2009

ICC2009のRISKS COVEREDとは

ICC2009のRISKS COVEREDは、外航貨物海上保険において、どのような危険、費用または運送契約上の負担が保険の対象となるかを定める部分です。

RISKS COVEREDは、Article 1の危険担保、Article 2の共同海損および救助料、Article 3の双方過失衝突条項によって構成されています。

Article 1では、ICC(A)、ICC(B)、ICC(C)ごとに、貨物の滅失・損傷について補償対象となる危険を定めています。ICC(A)は、免責を除いて広く貨物の滅失・損傷を対象とする構造です。ICC(B)とICC(C)は、約款に列挙された危険に該当することを必要とする構造です。

Article 2とArticle 3は、貨物そのものの物的損害だけを扱う規定ではありません。Article 2は共同海損分担額および救助料、Article 3は運送契約上のBoth to Blame Collision Clauseに基づいて被保険者が負担する責任を扱います。

したがって、RISKS COVEREDの確認では、「貨物が壊れたか」だけでなく、事故原因、適用されるICC条件、免責、保険期間、共同海損、救助料、運送契約上の請求を区分する必要があります。

この記事で扱う範囲

本記事では、ICC2009のArticle 1からArticle 3を、貨物事故発生後の判断順序に沿って整理します。免責、保険期間、保険金請求、運送人責任などは接続部分だけを示し、詳細は兄弟記事へ委ねます。

項目 この記事で扱う内容 他の記事で詳しく扱う内容
Article 1 危険担保 ICC(A)・ICC(B)・ICC(C)で補償対象となる危険の基本構造 個別貨物に付された特約、免責金額、保険金額、損害額算定
ICC(A) 免責を除いて広く貨物の滅失・損傷を対象とする構造 ICC2009 免責条項の基本構造、個別事故における原因立証
ICC(B)・ICC(C) 列挙危険への該当性と、両条件の補償範囲の違い 個別特約による補償拡張、国内保険会社固有の特別約款
原因不明損害 原因不明の濡損、破損、数量不足における確認方向 事故区間不明の場合の責任判断、サーベイ、証拠評価
Article 2 共同海損・救助料 共同海損分担額、救助料、貨物引取り時の保証手配 共同海損精算、General Average Bond、General Average Guaranteeの詳細
Article 3 双方過失衝突条項 運送契約上の請求を受けた場合の保険者への通知と基本対応 衝突責任、準拠法、B/L上の運送人・荷主間の責任関係
免責・保険期間 補償危険確認後に免責と保険期間を確認する順序 ICC2009 免責条項の基本構造、ICC2009 保険期間条項の基本構造
運送人・NVOCC責任 貨物保険上の補償と運送契約上の責任を分ける判断軸 B/L裏面約款、NVOCC責任、責任制限、通知期限、提訴期間

RISKS COVEREDの目的と背景

貨物事故が発生したときは、損害額の計算や免責の検討から始めるのではなく、まず保険契約がどの危険を補償対象としているかを確認します。

ICC(A)、ICC(B)、ICC(C)は、いずれもInstitute Cargo Clausesですが、Article 1の構造が異なります。ICC(A)は広い危険を対象とし、免責に該当するかを検討する構造です。ICC(B)とICC(C)は、損害原因が列挙された危険に該当するかを先に確認し、その後に免責を確認します。

この違いは、火災や座礁のように原因が明確な事故よりも、原因不明の濡損、破損、数量不足、カビ、内部損傷などで大きく現れます。

また、Article 2とArticle 3は、貨物の物的損害とは別に、海上事故に伴う共同海損・救助料や、運送契約上の双方過失衝突条項による負担を保険へ接続する役割を持っています。

RISKS COVEREDを構成する3つのArticle

Article 1からArticle 3は、補償対象を異なる角度から定めています。一つの海難事故で、貨物損害、共同海損、救助料、双方過失衝突条項が同時に問題になることもあります。

Article・区分 中心となる対象 主要な成立要件 このArticleだけでは決まらない事項 主要な確認資料
Article 1 Risks 被保険貨物の滅失・損傷 ICC(A)では広い危険、ICC(B)・ICC(C)では列挙危険への該当 免責、保険期間、損害額、被保険利益 保険証券、適用約款、事故報告、写真、サーベイレポート
Article 2 General Average 共同海損分担額および救助料 運送契約、準拠法、実務に従って精算・決定された負担であること 保証状の提出方法、最終精算額、運送人責任 共同海損宣言、精算人通知、B/L、保険証券、貨物価額資料
Article 3 Both to Blame Collision Clause 運送契約上の同条項に基づく被保険者の責任 保険で対象となる危険に関し、同条項に基づく責任を負担すること 船舶間の過失割合、運送人の請求自体の適法性 B/L、運送契約、運送人からの請求、衝突事故通知
横断的な請求管理 保険請求、貨物引取り、第三者への権利保全 迅速な通知、証拠保存、関係契約の確認 運送人・NVOCC等の最終責任 Claim Letter、Master B/L、House B/L、受渡記録

RISKS COVEREDが問題になる主な場面

RISKS COVEREDは、貨物が物理的に損傷した場面だけでなく、共同海損宣言、救助料、運送人からの契約上の請求でも問題になります。

適用場面 主なArticle・条件 最初に確認する事実 主要な判断軸 別途確認する領域
貨物が火災・爆発で損傷した Article 1・ICC(A)(B)(C) 火災・爆発と貨物損害の因果関係 補償危険への該当と免責の有無 火災原因、共同海損、運送人責任
原因不明の破損・濡損が発見された Article 1・適用ICC条件 正常だった最後の時点と異常発見時点 ICC(A)か、列挙危険型のICC(B)(C)か 免責、保険期間、事故区間
海水等がコンテナへ浸入した ICC(B) Article 1.2.3 水の種類、浸入口、コンテナ状態 海水・湖水・河川水の浸入を説明できるか 結露、梱包不十分、コンテナ不適合
本船火災・座礁で共同海損が宣言された Article 2 共同海損宣言と貨物引取り条件 保証書類、貨物価額、保険契約の有無 共同海損精算、救助料、保険期間
衝突事故後に運送人から契約上の請求を受けた Article 3 請求根拠となるB/L条項 Both to Blame Collision Clauseに基づく責任か 準拠法、衝突責任、運送人の請求期限
積込み・荷卸し中に梱包1個が全損となった ICC(B) Article 1.3 船舶・艀への積卸し中か、全損か 単なる一部損傷ではなく梱包1個の全損か 荷役業者責任、作業記録、保険期間
ICC(C)に特別約款が付帯されている Article 1と個別特約 証券に組み込まれた特約の文言 標準ICC(C)を超える補償があるか 保険会社固有の自動付帯特約

適用要件と対象外のクロスマトリクス

損害の名称だけでは、Article 1からArticle 3の適用は決まりません。補償方向の要件、それだけでは不足する事実、免責・対象外となり得る事情を分けて確認します。

論点 補償方向の要件 それだけでは不足する事実 対象外・否定方向の事情 実務上の対応
ICC(A)の貨物損害 保険期間中に被保険貨物の滅失・損傷が発生 貨物価値が低下したことだけ 通常減耗、固有の性質、梱包不十分、遅延等 損害事実、発生時期、免責候補を整理する
ICC(B)の列挙危険 Article 1.1から1.3の危険・損害形態に該当 濡損・破損・不足があることだけ 列挙危険との因果関係を説明できない場合 事故資料を列挙危険ごとに照合する
ICC(C)の列挙危険 重大な輸送事故、共同海損犠牲、投荷等に該当 輸送中に損害が発生したことだけ 地震、波ざらい、水の浸入等で標準条項に該当しない場合 特別約款の有無も確認する
共同海損・救助料 運送契約・準拠法・実務に従って精算または決定された負担 船会社が共同海損と表現したことだけ Article 4から7の免責原因に関する負担 精算人通知と保険者の指示を確認する
双方過失衝突条項 運送契約上の同条項に基づく被保険者の責任 船舶衝突が発生したことだけ 同条項と無関係な一般的費用・請求 請求を認める前に保険者へ通知する
第三者への求償 運送・荷役・保管等の契約上の責任が存在 貨物保険で補償されたことだけ 責任制限、免責、通知・提訴期限の経過 保険請求と権利保全を並行する

ICC1963・ICC1982・ICC2009の構造比較

旧版を比較するときは、現在のICC(A)、ICC(B)、ICC(C)を1963年版へそのまま対応させてはいけません。1963年版はAll Risks、W.A.、F.P.A.という別体系であり、1982年版で現在につながるA・B・Cの体系へ再編されました。

比較軸 ICC1963 ICC1982 ICC2009 実務上の意味
基本条件の分類 All Risks、W.A.、F.P.A. ICC(A)、ICC(B)、ICC(C) ICC(A)、ICC(B)、ICC(C)を維持 1963年版と現行版を名称だけで対応させない
危険担保の構造 S.G. Policy Formを前提とした旧来の約款構造 Article 1からArticle 3にRISKS COVEREDを集約 1982年版の基本構造を維持し文言を再整理 適用年版と保険証券を必ず確認する
広い補償条件 All Risks ICC(A) ICC(A) 名称が似ていても免責・保険期間の文言は同一ではない
列挙危険条件 W.A.およびF.P.A.の独自構造 ICC(B)・ICC(C)へ再編 ICC(B)・ICC(C)を維持 W.A.を単純にICC(B)、F.P.A.をICC(C)と同一視しない
共同海損・救助料 旧約款とS.G. Policy Formの中で規定 Article 2へ体系化 Article 2の基本構造を維持 貨物損害とは別の費用補償として確認する
双方過失衝突条項 All Risks等の後段に独立規定 Article 3へ配置 Article 3の基本構造を維持 運送契約上の請求を受けた場合に確認する

RISKS COVEREDの判断フロー

事故対応では、適用条件、事故原因、補償危険、保険期間、免責、特約の順序を崩さないことが重要です。

段階 中心となる質問 確認する資料 判断を止める危険信号 次の対応
1 保険契約の特定 ICC(A)・ICC(B)・ICC(C)のどれか 保険証券、Certificate、特約一覧 見積条件と発行証券の条件が異なる 最終的に組み込まれた約款を確認する
2 損害事実の確認 何が、どの程度、いつ損傷したか 写真、検品、数量・重量記録、サーベイ 物的損害と経済損失が混在している 請求項目を損害種類ごとに分ける
3 原因の仮説化 火災、衝突、水の浸入、荷役事故等のどれか 事故速報、コンテナ記録、航海情報 損害外観だけで原因を断定している 複数の原因候補を維持して調査する
4 Article 1への照合 適用条件の補償構造に入るか 約款、事故原因資料、損害記録 ICC(B)(C)で列挙危険を特定できない 必要な因果関係資料を追加取得する
5 保険期間の確認 原因が保険期間中に作用したか 搬出、搬入、積卸し、配送、納品記録 発見時点しか分からない 正常だった最後の時点を特定する
6 免責・特約の確認 Article 4から7または特別約款が関係するか 免責条項、戦争・ストライキ・悪意損害特約 補償危険への該当だけで支払可能と判断している 免責と特約を事故原因ごとに照合する
7 Article 2・3の確認 共同海損、救助料、衝突条項請求があるか 共同海損宣言、B/L、運送人請求書 物的損害請求と費用負担が混在している 各Articleの請求を分けて保険者へ通知する
8 第三者への権利保全 運送人等への通知期限を守れるか Claim Letter、B/L約款、受渡記録 保険者の査定を待って通知が遅れている 保険請求と責任留保通知を並行する

Article 1 危険担保の基本構造

Article 1は、被保険貨物の滅失または損傷について、どの危険を保険の対象とするかを定めます。

ICC(A)とICC(B)・ICC(C)では、Article 1の考え方が異なります。ICC(A)は、Article 4からArticle 7の免責を除き、貨物の滅失・損傷を広く対象とします。

ICC(B)とICC(C)は、Article 1に列挙された危険または損害形態に該当することが必要です。損害が輸送中に発見されたというだけでは、Article 1への該当は確定しません。

ICC(A)の危険担保

ICC(A)は、Article 4からArticle 7の免責を除き、被保険貨物の滅失または損傷について広く補償する構造です。

一般にオールリスク型と呼ばれますが、「あらゆる損失が無条件に支払われる」という意味ではありません。貨物の物的な滅失・損傷、保険期間、免責、被保険利益、損害額などを確認する必要があります。

原因が完全に特定できない損害であっても、保険期間中に貨物へ損害が発生したことを資料で示せる場合には、補償可能性を検討できます。ただし、原因不明であること自体が補償を保証するわけではありません。

通常の減耗、貨物固有の性質、梱包不十分、遅延、コンテナ不適合、戦争、ストライキ・テロなどの免責候補があれば、Article 4からArticle 7との往復確認が必要です。

確認軸 補償方向の事情 慎重な確認が必要な事情 主要資料 実務上の対応
物的損害 貨物の破損、濡損、滅失等が確認できる 価格下落や納期遅延だけで物的損害がない 写真、検品報告、サーベイ 物的損害と経済損失を分ける
発生時期 保険期間中に正常状態から損傷状態へ変化 納品後・保管後に初めて確認された 搬入・配送・受領記録 正常だった最後の時点を特定する
事故原因 外部から作用した事故の痕跡がある 原因が貨物内部・梱包・通常減耗の可能性 事故報告、コンテナ記録、温湿度 原因候補を免責条項と照合する
梱包・貨物特性 適切な梱包と通常保存条件が確認できる 固定不足、防湿不足、自然変質の可能性 梱包仕様、SDS、商品仕様 Article 4.3・4.4を確認する
事故区間 輸送中の特定区間で損傷した可能性が高い 複数区間を経て発生時点が不明 EIR、CFS、上屋、配送記録 保険期間と求償先を別々に検討する

ICC(B)の危険担保

ICC(B)は、Article 1に列挙された危険を対象とする条件です。Article 1.1は、損害が列挙された事故へ合理的に帰属することを求め、Article 1.2は、列挙された原因によって損害が生じたことを求めます。

主な危険・損害形態は次のとおりです。

区分 補償対象となり得る危険・損害 確認する因果関係 主要資料 実務上の注意点
Article 1.1.1 火災または爆発 損害が火災・爆発へ合理的に帰属するか 火災報告、写真、消防・本船資料 熱・煙・消火水損害も原因別に確認する
Article 1.1.2 船舶・艀の座礁、乗揚げ、沈没、転覆 海難と貨物損害の関係 海難報告、本船動静、共同海損通知 海難発生だけで全貨物損害を推定しない
Article 1.1.3 陸上輸送用具の転覆・脱線 転覆・脱線による損傷か 事故証明、車両記録、警察資料 通常振動や急制動とは区別する
Article 1.1.4 船舶・艀・輸送用具と水以外の外部物体との衝突・接触 衝突・接触と損傷の対応 衝突記録、車両・本船報告 水との接触自体はこの規定に含まれない
Article 1.1.5 遭難港での貨物荷卸し 遭難港荷卸しに合理的に帰属する損害か 荷卸し指示、港湾記録、事故報告 通常の積替港作業とは区別する
Article 1.1.6 地震、噴火、雷 自然現象と損害の関係 公的記録、港湾・倉庫報告 単なる悪天候とは区別する
Article 1.2.1 共同海損犠牲 共同の安全のため意図的に生じた犠牲か 共同海損宣言、精算資料 Article 2の分担額とは区別する
Article 1.2.2 投荷または波ざらい 投荷・波ざらいが直接原因か 本船報告、海象記録、積付資料 単なる紛失とは区別する
Article 1.2.3 海水・湖水・河川水の船舶、艀、船艙、輸送用具、コンテナ、保管場所への浸入 対象となる水の浸入と貨物損害の関係 水質・塩分検査、コンテナ写真、サーベイ 結露・貨物自身の水分とは区別する
Article 1.3 船舶・艀への積込み・荷卸し中に海中へ落下した梱包1個の全損 積卸し中であり、梱包1個が全損したか 荷役記録、タリーレポート、事故写真 一部損傷や陸上荷役中の落下と区別する

ICC(C)の危険担保

ICC(C)も列挙危険型ですが、標準約款上の補償範囲はICC(B)より限定されています。

標準ICC(C)では、火災・爆発、船舶・艀の座礁・乗揚げ・沈没・転覆、陸上輸送用具の転覆・脱線、輸送用具等の水以外の外部物体との衝突・接触、遭難港での荷卸し、共同海損犠牲、投荷が中心です。

地震・噴火・雷、波ざらい、海水・湖水・河川水の浸入、積込み・荷卸し中の梱包1個ごとの全損は、標準ICC(C)のArticle 1には含まれていません。

ただし、実際の保険契約では、保険会社固有の特別約款によって、標準ICC(C)にはない危険が追加されていることがあります。名称だけで判断せず、保険証券と組込特約を確認する必要があります。

ICC(A)・ICC(B)・ICC(C)の補償範囲比較

次の表は、ICC2009の標準的なArticle 1を比較したものです。個別契約の特約によって補償範囲が変更される場合があります。

危険・損害の例 ICC(A) ICC(B) 標準ICC(C) 実務上の確認点
火災・爆発 対象となり得る 列挙危険 列挙危険 火災・爆発との因果関係を確認する
船舶・艀の座礁・沈没・転覆 対象となり得る 列挙危険 列挙危険 海難と貨物損害の関係を確認する
陸上輸送用具の転覆・脱線 対象となり得る 列挙危険 列挙危険 通常の振動・急制動と区別する
外部物体との衝突・接触 対象となり得る 列挙危険 列挙危険 水との接触は同項目に含まれない
遭難港での荷卸し 対象となり得る 列挙危険 列挙危険 通常の積替作業と区別する
地震・噴火・雷 対象となり得る 列挙危険 標準約款では対象外 特約による追加がないか確認する
共同海損犠牲 対象となり得る 列挙危険 列挙危険 Article 2の共同海損分担額とは区別する
投荷 対象となり得る 列挙危険 列挙危険 本船側記録を確認する
波ざらい 対象となり得る 列挙危険 標準約款では対象外 単なる紛失と区別する
海水・湖水・河川水の浸入 対象となり得る 列挙危険 標準約款では対象外 水の由来と浸入口を確認する
積込み・荷卸し中の梱包1個の全損 対象となり得る 列挙危険 標準約款では対象外 積卸しの場所・時点と全損を確認する
原因不明の破損・濡損 免責等の確認を前提に補償可能性を検討 列挙危険を特定できなければ困難 列挙危険を特定できなければ困難 事故区間と原因資料が重要となる

標準ICC(C)と個別の特別約款を区別する

保険会社によっては、ICC(C)へ特別約款を自動付帯し、波ざらいによる全損、積込み・荷卸し中の梱包1個の全損、水の浸入による全損などを追加する場合があります。

このような契約では、実際の補償範囲が標準ICC(C)より広くなることがあります。ただし、追加される危険、全損要件、適用範囲は特別約款の文言によって決まります。

したがって、「ICC(C)だから海水浸入は一切対象外」「国内で契約したICC(C)なら必ず追加補償がある」といういずれの断定もできません。最終的に発行された保険証券、特別約款、契約明細を確認します。

原因不明損害の判断構造

原因不明損害では、損害結果、事故区間、適用条件、免責候補を分けます。「原因が分からない」という一つの事情だけで、補償または免責を決めることはできません。

確認軸 ICC(A)での確認方向 ICC(B)・ICC(C)での確認方向 主要資料 実務上の注意点
損害事実 物的損害が保険期間中に発生したか 物的損害に加えて列挙危険との関係を確認 写真、検品、サーベイ 価格下落だけと区別する
事故区間 保険期間内のどこで変化したか 列挙危険が発生し得る区間を特定 EIR、CFS、配送、受領記録 正常だった最後の時点を特定する
外部事故 外部事故の有無と免責候補を確認 火災、衝突、水の浸入等へ結び付ける コンテナ記録、本船・車両事故情報 損害外観だけで原因を推定しない
梱包・貨物特性 Article 4.3・4.4等の免責を確認 列挙危険があっても免責を別途確認 梱包仕様、SDS、温湿度 補償危険と免責を往復確認する
証拠不足 不足資料を補い損害発生の経緯を整理 列挙危険を示す客観資料を優先取得 事故通知、作業記録、関係者供述 運送人への通知期限を待たない

事故区間不明の場合との関係

損害原因が不明な場合は、事故区間も不明であることが少なくありません。海上輸送、港湾荷役、CFS、上屋、保税倉庫、国内配送、納品後保管のどこで損害が発生したかによって、保険期間と求償先が変わります。

事故区間を整理するときは、「正常だったことを最後に確認した時点」と「異常を最初に確認した時点」を設定します。

時点・区間 確認する状態 主要資料 RISKS COVEREDとの関係 責任判断への影響
梱包・出荷時 貨物と梱包が正常だったか 梱包写真、検品、パッキングリスト 保険始期前損害・梱包免責の確認 荷主・梱包業者責任
コンテナ搬入時 外装、シール、コンテナ状態 EIR、搬入リマーク、写真 海上輸送開始前後の状態を区切る ターミナル・運送人責任
海上輸送・積替時 海難、荒天、衝突、荷役異常 本船事故情報、積替記録 ICC(B)(C)の列挙危険を確認 船社・実運送人責任
CFS・上屋作業時 開梱・仕分け・再積付け時の状態 CFS記録、タリー、監視映像 保険期間内の荷役損害か確認 倉庫・荷役業者責任
国内配送・納品時 受渡時の外装・数量・貨物状態 配送伝票、受領書、納品写真 保険期間の終期を確認 国内運送人・荷受人責任

RISKS COVEREDと免責条項の往復確認

Article 1とArticle 4からArticle 7は、別々に一度ずつ確認するのではなく、事故原因の仮説ごとに往復して確認します。

たとえば、コンテナ内で貨物が濡れていた場合でも、海水の浸入、雨水の浸入、結露、貨物自身の水分、梱包不十分、コンテナ不適合では、Article 1と免責条項の組合せが異なります。

損害外観 補償危険の候補 免責の候補 確認する証拠 判断上の注意点
濡損 水の浸入、荒天、コンテナ事故 貨物固有の性質、梱包不十分、コンテナ不適合 塩分検査、穴、結露痕、温湿度 水濡れという結果だけで原因を決めない
内部破損 衝突、転覆、荷役中の落下 梱包不十分、通常減耗 衝撃記録、木箱、固定、外装 外装異常がないことだけで事故を否定しない
カビ・腐敗 冷却停止、水の浸入 固有の性質、遅延、梱包不十分 温湿度、保存条件、運送日程 複数原因が競合する可能性を残す
数量不足 投荷、波ざらい、荷役中の全損、盗難等 通常の漏損・重量減少 積揚地計量、シール、外装、タリー 計量差と物理的紛失を区別する
長期滞留後の品質低下 滞留中の外部事故 遅延、固有の性質 事故記録、温度、保管環境 滞留という時間関係だけで遅延免責としない

Article 2 共同海損および救助料の基本構造

Article 2は、運送契約、準拠法および実務に従って精算または決定された共同海損分担額および救助料を対象とします。

対象となるのは、Article 4からArticle 7で免責される原因を除き、損失を回避するため、または損失回避に関連して負担した共同海損・救助料です。

共同海損犠牲と共同海損分担額は区別します。共同海損犠牲は、共同の安全のため貨物自体に意図的な犠牲が生じた場合で、ICC(B)・ICC(C)のArticle 1.2.1にも現れます。共同海損分担額は、共同海損として認められた犠牲・費用を関係利益間で分担する金額であり、Article 2が中心となります。

項目 内容 貨物に直接損傷が必要か 主要資料 実務上の対応
共同海損犠牲 共同の安全のため貨物等を意図的・合理的に犠牲にする 貨物自体に犠牲損害が生じる 共同海損宣言、本船報告、サーベイ Article 1とArticle 2を分けて整理する
共同海損分担額 認容された共同海損犠牲・費用を各利益が分担する 貨物が無損傷でも負担が生じ得る 精算人通知、貨物価額資料、精算書 保険者へ速やかに連絡する
救助料 海難から船舶・貨物等を救助したことに対する報酬 貨物の直接損傷は必須ではない 救助契約、裁定・合意、救助料請求 共同海損費用と混同しない
貨物引取り担保 貨物引渡し前に求められるBond・Guarantee等 損傷の有無にかかわらない General Average Bond、General Average Guarantee 必要書式と提出先を確認する
最終精算 共同海損精算人が各利益の分担額を計算する 直接損傷とは別の精算 共同海損精算書、価額資料 仮担保額と最終分担額を区別する

共同海損宣言を受けた場合の対応フロー

段階 確認内容 確認する相手 主要資料 問題がある場合の対応
1 宣言の確認 本船、航海、事故、精算人 船会社、NVOCC、海外代理店 共同海損通知 対象貨物・B/L番号の一致を確認する
2 保険者への通知 適用保険契約と保証手配 保険会社・代理店 保険証券、B/L、インボイス 無保険の場合は現金担保等を確認する
3 引取り書類の準備 Bond、Guarantee、価額資料 共同海損精算人、船会社 指定書式、貨物価額資料 書式・署名・提出方法を照合する
4 貨物引取り 担保受理と貨物リリース 船会社、ターミナル、倉庫 担保受領確認、D/O等 保管料等の別費用も確認する
5 最終精算 分担額、貨物価額、保険金請求 精算人、保険者 共同海損精算書 仮担保と最終負担額を精算する

Article 3 双方過失衝突条項の基本構造

Article 3は、運送契約中のBoth to Blame Collision Clauseに基づいて、被保険者が負担する責任を補償する規定です。

補償対象となるのは、当該貨物保険で補償される危険に関する範囲の責任です。船舶衝突が発生しただけで、被保険者へ当然に保険金が支払われる規定ではありません。

運送人から同条項に基づく請求を受けた場合、被保険者は保険者へ通知しなければなりません。保険者は、自らの費用で被保険者を防御する権利を有します。

そのため、被保険者、NVOCCまたはフォワーダーが、保険者への通知前に請求を承認し、支払合意や責任認諾を行うことは避ける必要があります。

確認軸 確認内容 主要資料 誤りやすい対応 実務上の対応
請求根拠 Both to Blame Collision Clauseに基づく請求か B/L、運送契約、請求書 衝突関連の全請求をArticle 3と考える 請求条項と計算根拠を確認する
保険との関係 保険で対象となる危険に関する責任か 保険証券、事故資料 貨物損害がなくても自動的に対象と考える Article 1・免責との関係を確認する
通知 保険者へ速やかに通知したか 事故通知、請求受領メール 運送人との交渉後に保険者へ連絡する 請求受領時点で速報する
責任認諾 被保険者が請求を承認していないか 和解案、メール、支払合意 取引上の配慮で先に支払う 保険者の防御権を害さないよう確認する
Master・House関係 どの運送契約から誰へ請求されているか Master B/L、House B/L、請求経路 船社請求とNVOCCの荷主請求を混同する 契約関係ごとに請求を図示する

近接するArticle・契約との役割分担

RISKS COVEREDだけで、保険金支払可否や運送人責任が最終確定するわけではありません。次の領域を分けて確認します。

論点 RISKS COVEREDで確認する事項 近接Article・契約で確認する事項 決定的な区別 兄弟記事への委譲
Article 1とArticle 4から7 補償危険に該当するか 補償から除外される原因か 補償の入口と免責は別段階 ICC2009 免責条項の基本構造
Article 1とArticle 8から10 どの危険が対象か その危険が保険期間中に作用したか 危険の種類と時間的範囲は別問題 ICC2009 保険期間条項の基本構造
Article 1とArticle 11から14 補償危険への該当 請求者、継搬費用、推定全損、増値保険 補償原因と請求条件は別問題 ICC2009 保険金請求条項の基本構造
Article 2と共同海損実務 共同海損分担額・救助料の補償 Bond、Guarantee、精算、貨物引取り 保険補償と共同海損手続は別工程 共同海損、共同海損保証の各記事
Article 3とB/L責任 双方過失衝突条項に基づく責任の補償 運送人の請求根拠、準拠法、衝突責任 保険者の補償と運送契約上の責任確定は別問題 B/L裏面約款、準拠法、運送人責任

実務で問題になりやすいケース

同じ損害外観でも、適用条件や事故原因により結論が異なります。次のケースでは、補償危険、免責、保険期間、第三者責任を並行して確認します。

ケース 問題になりやすい点 確認すべき資料 実務上の注意点
ICC(A)で原因不明の機械破損が発見された 保険期間内損害か、梱包不十分か 梱包写真、搬入・配送記録、サーベイ 原因不明だけで自動補償と考えない
ICC(B)でコンテナ内に海水濡損が発生した Article 1.2.3の水の浸入を説明できるか 塩分検査、穴、ドアシール、写真 結露・梱包不十分と区別する
標準ICC(C)で原因不明の濡損が発見された 列挙危険に結び付く資料がない 事故情報、コンテナ記録、特約 特別約款の付帯も確認する
荷卸し中に木箱が海中へ落下した 梱包1個の全損か、一部損傷か 荷役記録、写真、タリーレポート Article 1.3の場所・全損要件を確認する
本船火災後に共同海損が宣言された 貨物損害と共同海損担保が混在する 共同海損通知、保険証券、貨物価額 Article 1とArticle 2を分ける
貨物は無損傷だが共同海損担保を求められた 物的損害がないため保険と無関係と誤認する Bond、Guarantee、精算人通知 貨物引取り期限を優先して対応する
衝突事故後に船社から契約上の請求を受けた Article 3に該当する請求か B/L、請求書、衝突通知 責任を認める前に保険者へ通知する
事故原因不明の数量不足が発生した 通常減耗、荷役中紛失、投荷等の区別 積揚地計量、シール、タリー、事故情報 数量差だけで補償・免責を判断しない

フォワーダーの関与範囲対比表

フォワーダーが保険手配や事故対応に関与していても、補償可否を最終判断する権限があるとは限りません。契約上の立場ごとに、支援できる事項と断定すべきでない事項を分けます。

区分 支援しやすいこと 断定すべきでないこと 実務上の対応
契約運送人 House B/L、運送経路、下請運送人、事故・積替記録の提供 保険補償の確定、Article 1への最終該当、自らの責任不存在 保険請求支援と運送責任への回答を分ける
実運送人 本船・車両・荷役事故、コンテナ状態、海難資料の提供 貨物固有の性質や梱包不十分を一方的に確定すること 観察事実と責任認否を区別する
単純取次 保険者・運送人への連絡、書類転送、サーベイ手配の補助 補償を保証すること、保険請求代理権が当然にあること 受託範囲と代理権の有無を明示する
特定業務の代理・調整者 検品、見積、共同海損書類、貨物引取り、再輸送の調整 共同海損担保が受理されること、費用が必ず補償されること 保険者・精算人の指示を記録する
梱包・保管・検品等の周辺業務提供者 作業記録、写真、計量、温湿度、検品結果の提供 事故原因、補償可否、運送責任の最終判断 観察事実と評価・推測を分ける

単純取次、特定業務の代理・調整、梱包・保管・検品等では、運送書類上の責任規律だけで業務範囲が明確にならない場合があります。このような業務では、見積書、包括契約、個別依頼書等へ標準取引条件を事前に組み入れ、責任範囲、責任制限、免責事由、間接損害、通知期限、提訴期間、下請人保護を明示する実務的価値があります。

ただし、FCRの発行や標準取引条件名の記載だけで、約款が自動的に契約へ組み入れられるとは限りません。事前提示と合意、個別契約との優先関係、強行法規の適用を確認する必要があります。

判断チェックリスト

補償可能性が不明でも、事故通知、共同海損対応、運送人への権利保全を遅らせてはいけません。

確認場面 確認する相手 確認事項 問題がある場合の対応
事故発見直後 荷主、倉庫、運送人 発見日時、場所、外装、貨物状態、数量 原因を断定せず現物・写真・記録を保存する
保険条件確認時 保険会社・代理店、保険担当者 ICC(A)(B)(C)、特約、免責金額 見積書ではなく最終証券を確認する
ICC(B)(C)の事故原因確認時 運送人、サーベイヤー、現地代理店 列挙危険に該当する客観的事実 原因不明のまま断定せず追加資料を取得する
事故区間不明時 各区間の運送人、倉庫、荷受人 正常だった最後の時点、異常発見時点 時系列表を作成して保険期間を確認する
水濡れ確認時 サーベイヤー、倉庫、運送人 水の種類、浸入口、結露、梱包状態 塩分検査等で水の由来を確認する
共同海損宣言時 保険者、船会社、精算人 Bond、Guarantee、貨物価額、提出期限 貨物引取りに間に合うよう保証手配を進める
救助料請求時 保険者、精算人、船会社 救助契約、裁定・請求額、対象貨物 共同海損分担額と別に整理する
双方過失衝突条項請求時 保険者、運送人、必要に応じ法律専門家 B/L条項、請求根拠、計算、回答期限 責任認諾・和解前に保険者へ通知する
ICC(C)特約確認時 保険会社・代理店 標準約款から追加された危険・損害形態 特約文言の全損・因果関係要件を確認する
第三者への権利保全時 運送人、NVOCC、倉庫、荷役業者 通知期限、責任留保、提訴期間、証拠 保険者の査定完了を待たずClaim Letterを送る

よくある誤解

RISKS COVEREDでは、ICC条件の名称や損害外観だけで補償可否を判断する誤解が生じやすくなります。

よくある誤解 実際の考え方 実務上の注意点
ICC(A)ならどのような損害でも補償される ICC(A)でも物的損害、保険期間、免責等の確認が必要 オールリスクを無条件補償と理解しない
原因不明ならICC(A)で必ず支払われる 梱包不十分、固有の性質、通常減耗等の免責があり得る 発生時期と免責候補を確認する
ICC(B)とICC(C)はほぼ同じである 地震、水の浸入、波ざらい、荷役中の梱包1個全損等が異なる Article 1の列挙項目を個別に比較する
輸送中に損害が出ればICC(B)(C)でも対象になる 列挙危険または列挙された損害形態への該当が必要 事故原因を客観資料で説明する
ICC(C)では水の浸入が絶対に補償されない 標準約款では含まれないが、個別特約で追加される場合がある 最終証券と特約を確認する
濡損があればICC(B)の水の浸入に該当する 海水・湖水・河川水の対象場所への浸入を確認する必要がある 結露や貨物自身の水分と区別する
共同海損は貨物が損傷した場合だけ関係する 貨物が無損傷でも共同海損担保・分担額が問題になり得る 貨物引取り書類を早期に確認する
共同海損犠牲と共同海損分担額は同じである 前者は貨物等の犠牲、後者は関係利益間の費用分担 Article 1とArticle 2を分ける
双方過失衝突条項は船会社同士だけの問題である 運送契約上、被保険者へ請求が及ぶ場合がある 請求を受けたら保険者へ通知する
保険で補償されれば運送人への通知は不要である 保険者の代位求償や荷主の残存請求権のため権利保全が必要 保険請求とClaim Letterを並行する

実務シナリオ1:ICC(C)で原因不明の濡損が発見された場合

標準ICC(C)で付保された輸入貨物について、コンテナ開封時にカートンの濡損が発見されたケースを考えます。

標準ICC(C)では、濡損という結果だけで補償対象になるわけではありません。火災、座礁、転覆、衝突、遭難港での荷卸し等の列挙危険との関係を確認します。

同時に、保険証券へ水の浸入等を追加する特別約款が組み込まれていないかを確認します。特約がある場合も、対象となる水、浸入場所、全損要件等を特約文言に沿って確認します。

コンテナ写真、穴・ドアシール、床面状態、塩分反応、EIR、航海事故情報、サーベイレポートを収集し、標準約款と特約のどちらに基づく請求かを整理します。

実務シナリオ2:ICC(B)で海水浸入が疑われる場合

ICC(B)で付保された貨物が濡損し、コンテナ内から塩分が検出された場合は、Article 1.2.3の水の浸入が候補になります。

ただし、貨物から塩分が検出されたという事実だけでは足りません。海水・湖水・河川水が、船舶、艀、船艙、輸送用具、コンテナまたは保管場所へ浸入し、その結果として貨物が損傷したことを確認します。

コンテナの穴、腐食、ドアシール、水跡、床面、天井、外装、バンニング時の状態を確認します。貨物自身の塩分、過去の汚染、結露、防湿不足などの別原因も排除せず調査します。

実務シナリオ3:共同海損が宣言された場合

本船火災や座礁により共同海損が宣言されると、貨物に直接損傷がなくても、貨物引取りのためにGeneral Average BondやGeneral Average Guarantee等を求められることがあります。

フォワーダーは、荷主、保険会社、船会社、NVOCC、共同海損精算人の間で、必要書式、提出先、貨物価額、保険証券、提出期限を確認します。

保険付貨物では、保険会社がGeneral Average Guaranteeを手配することがあります。無保険貨物では、現金担保や別の保証を求められることがあります。

共同海損担保の手配と、最終的な共同海損分担額の精算は別工程です。貨物引取り時の仮担保と、後日の最終精算額を混同しないことが重要です。

実務シナリオ4:双方過失衝突条項に基づく請求を受けた場合

船舶衝突後、運送人からB/LのBoth to Blame Collision Clauseに基づく請求を受けた場合は、請求を認めたり支払合意を行ったりする前に、保険者へ通知します。

確認する資料は、Master B/L、House B/L、運送人からの請求書、衝突事故通知、貨物損害資料、保険証券です。

NVOCCが関与している場合は、船社からNVOCCへの請求と、NVOCCから荷主への請求を分けます。各請求がどの運送契約と条項に基づくかを図示すると整理しやすくなります。

Article 3は、衝突事故のあらゆる費用を包括的に補償する規定ではありません。保険対象危険との関係、運送契約上の責任、保険者の防御権を確認します。

実務シナリオ5:ICC(A)で原因不明の破損が発見された場合

ICC(A)で付保された機械部品が、納品時の開梱で破損していたものの、輸送中の具体的な事故が確認できないケースを考えます。

ICC(A)では、原因不明だから直ちに請求を断念する必要はありません。一方、原因不明だから自動的に補償されるわけでもありません。

梱包時の正常状態、木箱・パレット・固定、コンテナ搬入、海上輸送、CFS、国内配送、納品時の状態を時系列で整理します。

梱包不十分、貨物固有の性質、通常振動、保険期間外損害、納品後損害の可能性を確認しながら、貨物が保険期間中に正常状態から損傷状態へ変化したことを示す資料を収集します。

まとめ

ICC2009のRISKS COVEREDは、Article 1の危険担保、Article 2の共同海損および救助料、Article 3の双方過失衝突条項によって構成されています。

Article 1では、ICC(A)、ICC(B)、ICC(C)の補償構造を確認します。ICC(A)は免責を除いて広く貨物の滅失・損傷を対象とします。ICC(B)とICC(C)は、約款に列挙された危険または損害形態への該当が必要です。

ICC(B)と標準ICC(C)では、地震・噴火・雷、波ざらい、水の浸入、積込み・荷卸し中の梱包1個の全損などに違いがあります。ただし、ICC(C)には個別の特別約款が追加される場合があるため、証券と特約の確認が必要です。

原因不明の破損、濡損、数量不足では、適用条件、事故区間、正常だった最後の時点、異常が確認された最初の時点、免責候補を整理します。特にICC(B)・ICC(C)では、列挙危険との因果関係を示す資料が重要です。

Article 2では、共同海損分担額および救助料を確認します。貨物に直接損傷がなくても、共同海損担保や貨物引取りが問題になることがあります。

Article 3では、Both to Blame Collision Clauseに基づいて運送人から請求を受けた場合の補償と通知を確認します。責任認諾や和解を行う前に、保険者へ通知する必要があります。

また、貨物保険で補償されるかどうかと、運送人、NVOCC、フォワーダー、倉庫業者、荷役業者等へ責任追及できるかどうかは別の問題です。保険請求と第三者への権利保全を並行して進める必要があります。

外航貨物海上保険は、保険料より条件で差が出ます。付保条件の選択と約款の解釈は、専門の保険会社・代理店にご相談ください。

同義語・別表記

  • RISKS COVERED
  • Risks Covered Provisions
  • Risks Clause
  • ICC2009危険約款
  • 危険担保条項
  • 協会貨物約款第1条
  • 共同海損条項
  • 双方過失衝突条項

公式情報