コンテナ重量の虚偽申告(VGM問題)と事故リスク
VGM(Verified Gross Mass)とは、国際海上輸出コンテナについて、船積み前に確定されたコンテナ総重量をいいます。
コンテナ総重量には、貨物そのものの重量だけでなく、梱包材、パレット、ラッシング材、ダンネージ、コンテナ自重などが含まれます。
VGM問題とは、申告されたコンテナ重量が実際の重量と異なることにより、船積み、荷役、積付け、輸送安全、事故対応に支障が生じる問題です。
重量の虚偽申告や不正確な申告は、単なる書類ミスではありません。船舶の積付計画、ターミナル作業、コンテナの安定性、事故時の責任判断に影響する重要なリスクです。
VGMとは
VGMは、船積みされるコンテナの総重量を、所定の方法で確認したうえで船会社やターミナルに提出するための情報です。
船会社は、VGMをもとに船舶の積付計画を作成します。重量が実態と異なると、船上での重量バランス、コンテナ段積み、ラッシング、復原性に影響するおそれがあります。
そのため、VGMは単なる通関書類や物流書類ではなく、船舶安全と貨物事故防止に直結する情報です。
制度的根拠
VGM制度は、SOLAS条約の改正により導入された国際的な安全ルールです。
背景には、コンテナ総重量の誤申告に起因するとみられる荷崩れ、コンテナ流出、船舶事故、荷役事故などがあります。
日本では、国際海上輸出コンテナの総重量を確定する制度として、国土交通省への届出または登録が必要となる仕組みが整備されています。
荷送人が自らコンテナ重量を確定する場合は、国土交通大臣への届出が必要です。
一方、荷送人から委託を受けて、事業としてコンテナ重量確定を行う場合は、国土交通大臣への登録が必要です。
したがって、VGM対応では、誰が重量を確定するのか、単なる情報提供なのか、重量確定業務を受託しているのかを明確にすることが重要です。
VGMで確認される重量
VGMで確認されるのは、貨物重量だけではなく、コンテナ全体の総重量です。
実務上は、次のような重量を含めて考える必要があります。
- 貨物本体の重量
- 梱包材の重量
- パレット、木箱、スキッドなどの重量
- ラッシング材、ダンネージ、固定材の重量
- コンテナ自重
インボイスやパッキングリストに記載された貨物重量だけを見ていると、実際のコンテナ総重量と一致しないことがあります。
そのため、VGMでは、貨物重量、梱包重量、コンテナ自重を含めた総重量として確認することが重要です。
VGMの確定方法
VGMの確定方法には、大きく分けて、コンテナ全体を計量する方法と、貨物・梱包材・コンテナ自重などを合算する方法があります。
コンテナ全体を計量する方法では、貨物を収納した後のコンテナを計量器で測定し、総重量を確定します。
合算する方法では、貨物、梱包材、パレット、固定材などの重量に、コンテナ自重を加えて総重量を算出します。
いずれの方法でも、推測値や概算値ではなく、実務上説明可能な根拠に基づいて重量を確定する必要があります。
重量虚偽申告が問題になる理由
コンテナ重量の虚偽申告は、船積み前の事務処理だけでなく、実際の事故リスクにつながります。
実際より軽く申告されたコンテナが上段に積まれると、船上での積付けバランスやラッシングに影響する可能性があります。
また、重量超過のコンテナが荷役機器、シャーシ、トレーラー、クレーンの想定重量を超えると、荷役事故や陸上輸送中の事故につながることがあります。
重量の誤りは、船会社、ターミナル、フォワーダー、荷主、運送会社の間で責任関係を複雑にします。
保険との関係
VGMの虚偽申告や重量誤申告は、貨物保険や賠償責任保険の実務にも影響します。
貨物保険では、事故そのものが偶然な外来事故であれば、損害が保険の対象となる可能性があります。ただし、事故調査の過程で荷主側の重量虚偽申告や不正確な重量申告が判明した場合、事故原因、損害拡大、求償の論点が生じます。
たとえば、荷主が実重量より軽い重量を申告し、その情報が積付け、荷役、陸上輸送の判断に影響して事故が発生した場合、保険会社、運送人、船会社、ターミナル側から荷主へ求償が行われる可能性があります。
また、フォワーダーやNVOCCが単に荷主から受け取った重量情報を伝達しただけなのか、重量確定業務を受託していたのかによって、責任判断は大きく変わります。
フォワーダーが重量確定業務を受託していた場合、誤ったVGMが船積みや事故に影響したときは、フォワーダー賠償責任保険上の争点になりうるため、業務範囲、受託条件、記録保存が重要になります。
つまり、VGM問題では、単に「誰が重量を間違えたか」だけでなく、誰が重量を確認し、誰が船会社へ提出し、どの書類に基づいて処理したのかが保険対応上の争点になります。
実務上の流れ
VGM対応では、まず荷主が貨物重量、梱包形態、コンテナ詰め条件を確認します。
次に、コンテナ総重量を計量または合算により確定します。この段階で、貨物重量だけでなく、梱包材やコンテナ自重を含める必要があります。
確定したVGMは、船会社、NVOCC、フォワーダー、ターミナルなど、実務上必要な関係者へ所定の期限までに提出します。
船会社は、提出されたVGMをもとに本船積付計画を作成します。
VGMが提出されない場合、または提出内容に不備がある場合、コンテナが船積みされないことがあります。
実務上の確認ポイント
VGM対応では、まず誰が重量を確定するのかを明確にする必要があります。
荷主が自ら重量を確定するのか、登録確定事業者に委託するのか、フォワーダーがどの範囲まで関与するのかを事前に整理しておくことが重要です。
次に、パッキングリスト、Booking、VGM申告、B/L情報の整合を確認します。
貨物重量、コンテナ番号、Booking番号、船名、航海番号、CY搬入期限、VGM提出期限が食い違っていると、船積み遅延や確認作業の混乱につながります。
また、重量が異常に軽い、または重い場合には、単なる入力ミスではなく、梱包重量、パレット重量、コンテナ自重の反映漏れがないかを確認する必要があります。
確認すべき書類
VGM問題では、重量情報が複数の書類にまたがるため、書類間の整合確認が重要です。
- パッキングリスト
- 商業インボイス
- Booking Confirmation
- VGM申告書またはVGM提出記録
- コンテナ番号の記録
- B/LまたはSea Waybill
- CY搬入記録
- 計量記録または重量計算根拠
- 貨物保険証券または賠償責任保険の事故対応資料
特に、VGM申告値とパッキングリスト上の貨物重量は、必ずしも一致するものではありません。
パッキングリストは貨物重量を示す書類であり、VGMはコンテナ自重や梱包材を含めた総重量です。この違いを理解しないまま単純比較すると、誤った判断につながることがあります。
フォワーダーの関与範囲
フォワーダーは、荷主から受け取った重量情報をもとに、船会社やNVOCCへVGM情報を伝達することがあります。
ただし、フォワーダーが常に重量の真実性を保証する立場になるわけではありません。
重要なのは、フォワーダーが単なる情報伝達者なのか、重量確定業務を受託しているのかを明確にすることです。
重量確定業務を受託していない場合でも、明らかに不自然な重量差や書類不一致がある場合には、荷主へ確認を促す対応が望まれます。
一方、フォワーダーが重量確定業務を事業として行う場合には、制度上の登録、社内管理体制、計量記録、荷主との委託条件が問題になります。
NVOCC・船会社側のリスク
NVOCCや船会社は、提出されたVGMをもとに船積み可否や積付計画を判断します。
重量情報が不正確な場合、船積み遅延、積付計画の変更、他貨物への影響、荷役事故、船舶事故につながる可能性があります。
NVOCCがHouse B/Lを発行している場合、荷主との関係では運送契約上の責任を負う場面があります。
そのため、NVOCCは、荷主から受領した重量情報、VGM提出記録、船会社への送信記録を保存しておくことが重要です。
注意点
VGMでは、貨物重量とコンテナ総重量を混同しないことが重要です。
パッキングリスト上の重量は、必ずしもVGMではありません。梱包材、パレット、ラッシング材、コンテナ自重を含めた総重量として確認する必要があります。
また、重量情報の誤りは、船積み遅延だけでなく、事故時の責任判断にも影響します。
事故後に重量申告の不一致が判明すると、荷主、フォワーダー、NVOCC、船会社、ターミナルの間で、誰が誤った情報を提供したのかが問題になります。
高重量貨物、機械類、金属製品、液体貨物、大型貨物、偏荷重になりやすい貨物では、特に慎重な重量確認が必要です。
具体例
貨物重量だけをVGMとして提出したケース
荷主がパッキングリスト上の貨物重量だけをVGMとして提出し、コンテナ自重や梱包材の重量を含めていなかったケースです。
この場合、実際のコンテナ総重量は申告値より重くなります。
船会社は誤った重量情報をもとに積付計画を作成するため、船上での重量バランスや荷役安全に影響する可能性があります。
このケースでは、荷主はVGMが貨物重量ではなくコンテナ総重量であることを理解し、計量または合算の根拠を確認してから提出すべきでした。
重量誤申告により船積みが止まったケース
CY搬入後、提出されたVGMと実測重量に大きな差があることが判明し、船会社またはターミナルが船積みを保留することがあります。
この場合、船積み遅延、スケジュール変更、追加保管料、再計量費用、顧客への納期遅延が発生する可能性があります。
このケースでは、荷主とフォワーダーが、CY搬入前にVGM提出期限、重量確定方法、計量記録を確認しておくべきでした。
重量誤申告が事故後に問題になるケース
海上輸送中にコンテナの荷崩れや他貨物への損傷が発生し、事故調査の過程で申告重量と実重量が大きく異なることが判明することがあります。
この場合、単なる貨物事故ではなく、重量情報の虚偽申告または不正確な申告が事故原因の一部として問題になります。
保険対応では、申告内容、計量根拠、フォワーダーの関与範囲、荷主の説明内容が確認されることがあります。
このケースでは、荷主は正確な重量情報を提出し、フォワーダーは受領・送信した重量情報の記録を保存しておくべきでした。
まとめ
VGMは、国際海上輸出コンテナの安全な船積みと輸送のために必要なコンテナ総重量情報です。
VGM問題は、単なる重量入力ミスではなく、船積み、荷役、積付け、事故対応、保険対応に影響する実務リスクです。
荷主は、貨物重量とコンテナ総重量を区別し、正確なVGMを提出する必要があります。
フォワーダーやNVOCCは、自らが重量確定者なのか、情報伝達者なのかを明確にし、VGM提出記録、荷主からの指示、船会社への送信記録を保存しておくことが重要です。
重量の虚偽申告や不正確な申告は、船積み不可、追加費用、事故時の責任追及、保険上の争点につながるため、出荷前の確認体制を整える必要があります。
