直送基準とは
概要
直送基準とは、EPA・FTAなどの協定上の原産品が、輸出国から輸入国まで適切に輸送されていることを確認するための要件です。
積送基準、直接積送、Direct Shipment、Non-alteration ruleと呼ばれることもあります。
貨物が原産地基準を満たしていても、第三国を経由する途中で加工、改変、非保税状態での保管などが行われた場合、原産品としての資格が問題になることがあります。
そのため、原産地証明だけでなく、輸送経路と第三国経由中の管理状態を確認する必要があります。
実務では、B/L、Sea Waybill、航空運送状、通し船荷証券、積替え記録、保税管理証明、原産地証明書、インボイス、パッキングリストなどを確認し、貨物が原産品としての状態を維持して輸入国へ到着したことを説明できるようにしておくことが重要です。
直送基準が必要になる理由
EPA・FTAの特恵税率は、協定締約国の原産品に対して認められる制度です。
そのため、貨物が協定上の原産品であることに加えて、その原産品が輸送中に別の貨物と入れ替わったり、第三国で加工されたりしていないことを確認する必要があります。
直送基準は、原産品が輸出国から輸入国まで真正な状態で移動したことを確認するための要件です。
第三国を経由すること自体が直ちに問題になるわけではありませんが、経由中の作業が積替え、一時保管、保税管理下での取扱いなど、協定で認められる範囲に収まっていることが重要になります。
特に、国際物流では主要な物流ハブを経由する輸送が多く、シンガポール、香港、韓国、台湾、ドバイなどを経由することがあります。
このような場合、単に「第三国を経由した」という事実だけでなく、その経由地で何が行われたかを確認します。
Non-alteration ruleとは
Non-alteration ruleとは、第三国を経由する場合でも、貨物の性質や状態が変更されていないことを求める考え方です。
日本語では、非変更要件、貨物状態不変更要件などと整理できます。
第三国で認められる取扱いは、通常、積替え、分割、一時保管、貨物の保存に必要な作業などに限られます。
一方で、第三国で加工、組立、再包装、商品価値を変える作業、用途を変える作業などが行われると、原産品資格が問題になることがあります。
直送基準を確認する際は、単に輸送経路を見るだけではなく、第三国経由中に貨物が変更されていないことを説明できる資料を確認する必要があります。
第三国経由が認められる場合
第三国を経由した場合でも、協定で認められる条件を満たしていれば、直送基準を満たすことがあります。
一般的には、次のような取扱いが問題になります。
- 第三国での単なる積替え
- 保税地域での一時保管
- 貨物の保存に必要な作業
- 輸送上必要な分割や積替え
- 税関管理下での保管
重要なのは、第三国で貨物の実質的な加工や改変が行われていないことです。
また、第三国で保管された場合は、その保管が税関管理下または保税状態で行われたことを説明できる資料が必要になることがあります。
CPTPPでの直送基準
CPTPPを利用する場合も、原産品が輸入国へ到着するまでの輸送経路を確認する必要があります。
CPTPP締約国から日本へ輸入する貨物が、第三国を経由する場合には、その経由中に貨物が加工・改変されていないこと、必要に応じて税関管理下にあったことを説明できる資料を確認します。
CPTPPでは自己申告制度が採用されているため、原産品申告書や原産性資料だけでなく、輸送経路を示す書類も保存しておくことが重要です。
第三国経由がある場合は、通しB/L、輸送経路資料、積替え記録、保税管理資料などを確認します。
CPTPPを使う場合は、品目別原産地規則、累積制度、デミニミス規定、自己申告制度とあわせて、直送基準を確認します。
RCEPでの直送基準
RCEPでも、原産品が輸出国から輸入国まで適切に輸送されているかが重要になります。
RCEPは広域累積を特徴とするため、複数のRCEP締約国にまたがるサプライチェーンや輸送経路が問題になることがあります。
RCEP締約国を経由する場合でも、原産国の特定、累積制度、連続する原産地証明、積送基準を分けて確認する必要があります。
特に、第三国での積替えや保管がある場合は、その取扱いが協定上認められる範囲に収まっているかを確認します。
RCEPを利用する場合は、原産地証明書、原産品申告書、輸送書類、経由地での管理資料を整理し、税関確認に対応できる状態にしておくことが重要です。
Switch B/Lとの関係
Switch B/Lとは、商社経由取引や三国間取引などで、当初発行されたB/Lとは異なる内容で差し替えられるB/Lをいいます。
売主・買主情報や積地・荷受人情報を調整する目的で使われることがあります。
直送基準との関係では、Switch B/Lを使う場合、実際の輸送経路と書類上の表示がずれていないかを確認する必要があります。
書類上は単純な輸送に見えても、実際には第三国経由、積替え、再輸出が行われている場合があります。
Switch B/Lを利用すること自体が直ちに問題というわけではありません。
しかし、原産地証明書、インボイス、パッキングリスト、実際の輸送経路、積替え地、保税管理資料との整合が取れていない場合、直送基準の説明が難しくなることがあります。
Through B/Lとの関係
Through B/Lとは、複数の輸送区間をまたいで発行される通し船荷証券です。
第三国で積替えがある場合でも、輸出国から輸入国までの一連の輸送経路を示す資料として使われることがあります。
直送基準を説明するうえでは、Through B/Lにより、輸出国から輸入国までの輸送経路が一体として確認できる場合があります。
ただし、Through B/Lがあるだけで常に十分とは限らず、第三国での保管状況、積替え記録、貨物の変更有無を追加で確認する必要がある場合もあります。
実務の流れ
直送基準を確認する場合、一般的には次の流れで進めます。
- 利用するEPA、FTA、CPTPP、RCEPなどの協定を確認する
- 対象貨物が協定上の原産品であるか確認する
- 輸出国、輸入国、経由国を整理する
- 輸送経路が直接輸送か、第三国経由かを確認する
- 第三国経由の場合、積替え、一時保管、分割、再包装などの有無を確認する
- 経由地で貨物が税関管理下または保税状態にあったか確認する
- 貨物に加工・改変が行われていないか確認する
- B/L、Sea Waybill、航空運送状、Through B/Lなどを確認する
- Switch B/Lを利用している場合、実際の輸送経路との整合を確認する
- 必要に応じて、保税管理証明、非加工証明、経由地の税関資料を確認する
- 輸入申告時に必要な書類を提出する
- 税関の事後確認に備えて輸送関係資料を保存する
主要書類
直送基準を確認する際に重要となる主な書類は次のとおりです。
- B/L
- Through B/L
- Sea Waybill
- 航空運送状
- Switch B/Lを使用した場合の関係資料
- インボイス
- パッキングリスト
- 原産地証明書
- 原産品申告書
- 積替え記録
- 経由地での保税管理証明
- 非加工証明、Non-manipulation certificate
- 倉庫保管記録
- 輸送経路を示す資料
- 税関確認に備える保存資料
第三国での保管・積替えで確認する点
第三国で貨物を保管または積み替える場合は、その取扱いが協定上認められる範囲に収まっているかを確認します。
主に確認する点は次のとおりです。
- 保税地域または税関管理下で保管されていたか
- 貨物に加工や改変が行われていないか
- 再包装やラベル貼付が行われていないか
- 貨物の保存に必要な作業にとどまっているか
- 積替えや分割が輸送上必要な範囲か
- 輸送書類と実際の輸送経路が一致しているか
- 経由地での証明書類を取得できるか
第三国で通常の保管や積替えを行っただけでも、証明資料が不足していると直送基準を説明できないことがあります。
複雑な輸送ルートを使う場合は、輸送手配の段階から必要書類を確認しておくことが重要です。
フォワーダーの関与範囲
フォワーダーは、直送基準の確認において、輸送経路、B/L、Sea Waybill、航空運送状、積替え記録、保税管理資料などの整理を支援することがあります。
また、第三国経由や積替えがある場合、必要書類を荷主や通関業者へ案内する役割を担うことがあります。
ただし、フォワーダーは通常、貨物の原産性そのものを判断する責任主体ではありません。
原産性の判断には、HSコード、原産地規則、原産地証明書、原産性資料などが必要であり、これは輸入者、輸出者、生産者が管理すべき情報です。
フォワーダー実務では、直送基準を満たすかどうかを断定するのではなく、輸送経路と証拠書類を整理し、税関確認に備える補助をする立場として整理するのが安全です。
注意点
直送基準を確認する際は、次の点に注意が必要です。
- 原産地基準を満たしていても、直送基準を満たさなければ特恵税率の適用に影響することがある
- 第三国経由の場合、貨物が加工・改変されていないことを確認する必要がある
- 非保税状態での保管は原産品資格の説明を難しくすることがある
- 第三国で再包装、ラベル貼付、加工が行われた場合は慎重に確認する必要がある
- Switch B/Lを利用する場合、実際の輸送経路との整合が重要になる
- Through B/Lがあっても、追加資料が必要になる場合がある
- 証明書類が不足すると、直送基準を説明できない場合がある
- CPTPPやRCEPなど協定ごとに求められる資料や考え方が異なる
- フォワーダーは輸送書類を整理できるが、原産性の最終判断主体ではない
具体例
直送基準では、次のような場面が問題になります。
- 適正な積替え:シンガポールで本船を積み替えたが、貨物は保税状態で管理され、加工・改変が行われていないことを資料で説明できるケース
- 保管中の問題:第三国で一時保管中に再包装やラベル貼付が行われ、Non-alteration ruleとの関係で確認が必要になるケース
- 書類不備:実際には適正な積替えだったが、保税管理資料や輸送経路資料が不足し、直送基準を説明できないケース
- Switch B/L利用:商社経由取引でSwitch B/Lを使用したが、実際の輸送経路と書類上の表示の整合確認が必要になるケース
- RCEP取引:RCEP原産品が別のRCEP締約国を経由して輸入され、積送基準と連続する原産地証明の確認が必要になるケース
- CPTPP取引:CPTPP原産品が第三国を経由して日本へ輸入され、通しB/Lや経由地での非加工証明が問題になるケース
まとめ
直送基準とは、協定上の原産品が輸出国から輸入国まで適切に輸送され、途中で加工・改変されていないことを確認するための要件です。
第三国経由がある場合でも、積替え、一時保管、税関管理下での保管など、協定上認められる範囲に収まっていれば、直送基準を満たす可能性があります。
実務では、B/L、Through B/L、Sea Waybill、航空運送状、Switch B/L、保税管理証明、非加工証明、原産地証明書を整理し、輸送経路と書類の整合を確認することが重要です。
フォワーダーは輸送書類の整理を支援できますが、原産性の判断は輸入者、輸出者、生産者が管理すべき事項として分けて考える必要があります。
