下請業者バンニング後の輸出FCL貨物のコンテナ内荷崩れ
匿名化・掲載目的
本記事は、顧客及び関係先が実際に遭遇した輸出FCL貨物のコンテナ内荷崩れ事例を、会社名、個人名、船名、港名、コンテナ番号、B/L番号、品名、数量、重量、貨物価額、下請業者名、保険会社名、詳細な事故日その他の特定につながる情報を伏せたうえで整理した実務事例です。
匿名化に当たり、フォワーダーが起用した下請業者が本船積込み前にバンニングを行ったこと、その作業に起因してコンテナ内荷崩れが発生したこと、フォワーダーは海上運送人ではなく取次の立場であったこと及び約150万円が賠償請求額・応訴対象額となったことは変更していません。
事例の概要
本件は、輸出FCL貨物について、フォワーダーが起用した下請業者がコンテナへのバンニングを行った後、輸送中又は到着後にコンテナ内で荷崩れ及び貨物損害が確認された事例です。
損害の原因となった作業は、本船への積込み前に行われたコンテナ内の積付け及び固定作業でした。フォワーダー自身がバンニングを実施したのではなく、下請業者への作業手配を行った取次の立場でした。
荷主側は、輸送及びバンニング手配の窓口であったフォワーダーへ約150万円の賠償請求を行いました。フォワーダー側でも、約150万円を応訴対象額として事故対応を行いました。
本件について、荷主とフォワーダーとの間には、本件バンニング作業の責任条件や責任限度を定めた個別の書面契約は作成されていませんでした。また、フォワーダー独自の運送約款又は責任制限条項が合意されていた事実も確認されていません。
したがって、本件はHague-Visby Rules又は国際海上物品運送法上の一包若しくは一単位当たりの責任限度によって処理された事例ではありません。取次業務上の対応、下請業者の作業責任及び関係者間の最終負担を検証する必要があった事例です。
本件は、Errors and Omissions(E&O。業務上の誤り又は不作為に起因する賠償責任)のうち、下請作業の手配、指示、確認又は管理に関する責任が問題となった事例として整理されます。
本記事の固有担当範囲
本記事が扱うのは、本船積込み前に下請業者が行った輸出FCL貨物のバンニング作業に起因するコンテナ内荷崩れと、取次窓口であったフォワーダーへの直接請求です。
兄弟記事である「CIF輸出貨物の梱包不備による荷崩れと高額請求」は、荷主側が貨物保険の利用を拒否し、フォワーダーへの直接請求が約300万円から追加損害を含む約2,000万円規模へ拡大した事例を扱います。
これに対し、本記事では、貨物保険利用拒否又は請求額の拡大が中心的な争点ではありません。約150万円の請求について、フォワーダーが海上運送人ではなく取次の立場であったこと、下請業者のバンニング作業に原因があったこと及び書面による責任条件が存在しなかったことが固有の論点です。
また、本件はshipping line又はActual Carrierの海上運送責任を中心とする事例ではありません。損害が輸送中又は到着後に発見されたとしても、原因となった作業は本船積込み前のバンニングにありました。
本件では、Hague-Visby Rulesのpackage limitation、B/L裏面約款又はフォワーダーの標準取引条件による責任制限が実際に適用された事実はありません。
匿名化した事故条件
| 項目 | 本件の条件 | 確認上の注意点 |
|---|---|---|
| 対象貨物 | 輸出FCL貨物 | 品名、数量、重量、価額及び荷姿は非公開としています。 |
| 輸送形態 | 国際海上コンテナ輸送 | 船名、航路、積地港及び揚地港は非公開としています。 |
| 事故発見時点 | 輸送中又は到着後 | 正確な発見場所及び発見日時は、確認できる範囲では不明です。 |
| 原因となった工程 | 本船積込み前のバンニング作業 | 損傷の発見時点と原因行為の発生時点を区別します。 |
| バンニング実施者 | フォワーダーが起用した下請業者 | フォワーダー自身は直接作業していません。 |
| フォワーダーの立場 | バンニング及び輸送手配の取次窓口 | 海上運送を自己の責任で引き受けた運送人ではありません。 |
| 書面契約 | 本件作業に関する個別の書面契約なし | メール、依頼記録、見積書その他の事実上の合意内容を確認します。 |
| 約款 | 合意された責任制限約款は確認されていない | B/L裏面約款又は標準取引条件の適用を推定しません。 |
| 事故内容 | コンテナ内の荷崩れ及び貨物損害 | 損傷貨物の範囲及び程度は非公開としています。 |
| 物理的原因 | 積付け又は固定作業上の問題 | 具体的な不備内容及び寄与割合は不明です。 |
| 請求者 | 荷主側 | 輸出者、売主、買主その他の具体的立場は非公開としています。 |
| 請求先 | 取次窓口であったフォワーダー | 請求窓口となったことと最終責任を区別します。 |
| 賠償請求額 | 約150万円 | 貨物損害及び付随費用の詳細な内訳は不明です。 |
| 応訴対象額 | 約150万円 | 最終的に全額を支払ったかは確認できません。 |
| package limitation | 適用なし | フォワーダーは海上運送人ではなく、合意された責任制限条項もありませんでした。 |
| 最終負担 | 確認できる範囲では不明 | フォワーダー、下請業者及び保険会社の負担を区別します。 |
事故発生から解決までの時系列
| 段階 | 発生した事実 | 実務上の確認事項 |
|---|---|---|
| 1 | 荷主から輸出FCL貨物の輸送手配が依頼されました。 | 依頼内容、フォワーダーの受託範囲及びバンニング手配の有無を確認します。 |
| 2 | フォワーダーが下請業者へバンニング作業を依頼しました。 | 作業指示、貨物情報、固定方法及び写真提出条件を確認します。 |
| 3 | 下請業者が貨物をコンテナへ積載しました。 | 作業者、作業場所、積付け順序及び使用資材を確認します。 |
| 4 | ラッシング、ショアリングその他の固定作業が行われました。 | 固定位置、固定強度、空隙処理及び重量配分を確認します。 |
| 5 | コンテナが封印され、海上輸送へ引き渡されました。 | 封印前写真、完了報告、EIR及び搬入記録を確認します。 |
| 6 | 輸送中又は到着後にコンテナ内の荷崩れが発見されました。 | 開扉時の状態、封印、貨物配置及び損傷状況を記録します。 |
| 7 | 本船積込み前のバンニング作業が原因として問題となりました。 | 積付け、固定及び重量配分のどこに不備があったかを確認します。 |
| 8 | 荷主側がフォワーダーへ約150万円を請求しました。 | 請求項目、損害資料及び請求の法的根拠を確認します。 |
| 9 | フォワーダーが取次の立場及び下請業者の作業内容を確認しました。 | 請求窓口と原因作業の実施者を区別します。 |
| 10 | 書面契約及び責任制限条項の有無が確認されました。 | 本件では個別の書面契約又は合意された約款は確認されませんでした。 |
| 11 | フォワーダー側で約150万円が応訴対象として整理されました。 | 原因及び最終負担が確定する前に全面的な責任承認を行いません。 |
| 12 | 下請業者への求償及び保険対応が検討されました。 | 実際の求償、保険金支払い及び最終負担の結果は不明です。 |
問題となった争点
| 争点 | 本件で確認された事情 | 判断に必要な事項 |
|---|---|---|
| 原因工程 | 原因は本船積込み前のバンニング作業にありました。 | 輸送中の発見と作業時の原因発生を区別します。 |
| バンニング方法 | 下請業者がコンテナ内の積付け及び固定を行いました。 | 作業基準、貨物特性及び使用した固定資材を確認します。 |
| ラッシング | 固定状態が荷崩れ原因として問題となりました。 | 固定点、張力、方向及び資材強度を確認します。 |
| ショアリング | 貨物の移動防止措置が問題となる可能性がありました。 | 木材等による支持及び空隙処理を確認します。 |
| 重量配分 | コンテナ内で貨物が移動しました。 | 重量物の位置、重心及び左右・前後のバランスを確認します。 |
| 梱包状態 | 貨物自体の梱包も確認対象となりました。 | バンニング不良と貨物自体の梱包不足を区別します。 |
| フォワーダーの立場 | フォワーダーは取次窓口でした。 | 運送人として結果責任を負う立場と、取次業務上の注意義務を負う立場を区別します。 |
| 下請業者の責任 | 原因作業は下請業者が実施しました。 | 作業上の過失、指示内容及び専門業者としての裁量を確認します。 |
| 下請業者の選定・指示 | フォワーダーが作業を手配しました。 | 業者選定、貨物情報の伝達及び作業指示が適切であったかを確認します。 |
| 書面契約の不存在 | 個別の契約書は作成されていませんでした。 | 依頼メール、見積書、請求書及び従前の取引内容から受託範囲を確認します。 |
| 責任制限 | 合意された責任制限条項は確認されませんでした。 | Hague-Visby Rules又はB/L約款のpackage limitationを当然には適用しません。 |
| 請求額 | 約150万円が請求されました。 | 貨物損害、再梱包費、保管費その他の内訳を確認します。 |
| 最終負担 | 約150万円が応訴対象として処理されました。 | フォワーダーと下請業者の最終負担及び保険金を確認します。 |
関係者ごとの立場・契約関係
| 関係者 | 本件における立場 | 責任判断上の注意点 |
|---|---|---|
| 荷主・輸出者 | 輸出FCL貨物の輸送及びバンニング手配を依頼した者 | 貨物情報、重量、重心、梱包上の注意事項を正確に提供したかを確認します。 |
| フォワーダー | 下請バンニング及び輸送手配の取次窓口 | 海上運送人としてではなく、業者選定、指示及び連絡に関する責任を検証します。 |
| 下請バンニング業者 | 本船積込み前に積付け及び固定作業を実施した者 | 荷崩れ原因となった作業を直接管理していた主体です。 |
| 梱包業者 | 貨物自体の内装又は外装梱包を行った可能性がある者 | 下請バンニング業者と同一か別事業者かを確認します。 |
| 倉庫・作業場所管理者 | バンニング場所を提供又は管理した関係者 | 設備、作業環境及び安全管理への関与を確認します。 |
| shipping line | コンテナ受領後の海上輸送を行う船会社 | 本件の主たる原因作業はshipping lineへの引渡し前に行われました。 |
| Actual Carrier | 本船による海上輸送を実施した運送人 | 異常な外力又は取扱い事故の証拠がない限り、本件の中心的な原因主体とは扱いません。 |
| 貨物保険会社 | 貨物損害を補償する可能性がある保険者 | 付保及び保険金支払いの有無は確認できる範囲では不明です。 |
| フォワーダー賠償責任保険会社 | フォワーダーの取次業務上の賠償責任に対応する可能性がある保険者 | 事故通知、補償判断及び保険金支払いの有無は不明です。 |
確認した証拠・資料
本件では、事故発見時の状態だけでなく、本船積込み前に下請業者がどのようなバンニングを行ったかを示す資料が重要となります。ただし、次の資料がすべて保存又は提出されていたかは、確認できる範囲では不明です。
| 資料 | 主な確認内容 | 責任・損害判断との関係 |
|---|---|---|
| 荷主からの輸送依頼 | 輸送区間、貨物情報及び依頼業務 | フォワーダーの受託範囲を確認します。 |
| 見積書・請求書 | バンニング費用、輸送費及び作業内容 | 書面契約がない場合の事実上の依頼内容を確認します。 |
| 下請業者への作業依頼 | 貨物情報、作業場所、固定方法及び注意事項 | フォワーダーの指示内容を確認します。 |
| 貨物明細 | 数量、重量、寸法、重心及び荷姿 | 合理的な積付け及び固定方法を判断する基礎となります。 |
| 梱包仕様書 | 外装、内装、耐荷重及び積重ね条件 | 貨物自体の梱包不足を検証します。 |
| バンニングプラン | 配置、積付け順序、重量配分及び固定方法 | 作業前に合理的な計画が作成されていたかを確認します。 |
| バンニング写真・動画 | 貨物配置、空隙、ラッシング及びショアリング | 本件の原因を確認する中心的な資料です。 |
| 作業完了報告 | 作業者、確認者、作業日時及び異常の有無 | 下請業者の作業及び確認体制を検証します。 |
| 使用資材の記録 | ベルト、ワイヤー、木材、エアバッグその他の資材 | 固定強度及び作業方法の妥当性を確認します。 |
| コンテナEIR・搬入記録 | コンテナ状態、封印番号及び搬入日時 | バンニング完了からshipping line受領までの状態を確認します。 |
| B/L・Sea Waybill | 海上運送人、荷送人、荷受人及び運送区間 | フォワーダーが運送人として発行した書類かを確認します。 |
| 本船積付け・航海記録 | 荒天、衝撃及び異常な取扱い | バンニング以外の原因が存在したかを確認します。 |
| 開扉時写真・動画 | 封印、貨物配置、荷崩れ及び損傷状況 | 到着時の客観的な状態を確認します。 |
| サーベイレポート | 荷崩れ原因、損害範囲及び残存価値 | 重要な証拠ですが、最終的な法的責任を単独で確定するものではありません。 |
| 荷主からの賠償請求書 | 約150万円の請求項目及び根拠 | 貨物損害と付随費用を分けて確認します。 |
| 荷主・フォワーダー間の連絡 | 依頼内容、事故対応及び責任に関する協議 | 書面契約がない場合の当事者の認識を確認します。 |
| 下請業者への事故通知 | 責任留保、資料提出及び求償通知 | 下請業者への再求償権を保全します。 |
| 保険証券・事故通知 | 補償範囲、免責及び保険会社の判断 | 保険による最終負担を確認します。 |
| 示談書・支払記録 | 最終支払額、清算範囲及び求償権 | 実際の解決結果を確認します。 |
原因・因果関係・責任範囲の検証
本件では、荷崩れの原因となった作業が本船積込み前の下請業者によるバンニングであったことが確認されています。損害が輸送中又は到着後に発見されたことと、原因となる作業が行われた時点を混同しないことが重要です。
下請業者が、貨物の重量、形状、重心及び梱包状態を踏まえず、不適切な配置又は固定方法を採用していた場合は、バンニング作業を直接実施・管理した下請業者の責任が中心となります。
一方、荷主から提供された重量、重心、積重ね可否その他の貨物情報が不正確又は不足していた場合は、荷主側の事情も事故原因及び責任分担へ影響します。
フォワーダーはバンニングを直接実施しておらず、海上運送を自己の責任で引き受けた運送人でもありませんでした。そのため、フォワーダーが荷主から請求を受けたことだけで、貨物損害全額について最終責任を負うことにはなりません。
フォワーダーについて検証すべき事項は、下請業者の選定、貨物情報の伝達、必要な作業指示、異常時の照会及び作業完了記録の取得が合理的に行われていたかという取次業務上の対応です。
書面契約又は合意された標準約款がなかったため、フォワーダーの責任範囲を判断する際は、依頼メール、見積書、請求内容、従前の取引、実際の作業分担及び当事者の認識を確認する必要があります。
本件では、フォワーダーが海上運送人としてpackage limitationを主張し、約150万円へ責任を制限した事実はありません。海上運送人に適用される責任限度と、本船積込み前の下請バンニングを取り次いだフォワーダーの責任を混同しないことが必要です。
損害額・請求額の検証
本件の賠償請求額及び応訴対象額はいずれも約150万円でした。ただし、約150万円が直ちにフォワーダーの賠償額となるわけではなく、損害の内訳、原因との因果関係、残存価値、保険回収及び下請業者の負担を確認する必要があります。
| 区分 | 本件で確認できる内容 | 主な検証事項 |
|---|---|---|
| 賠償請求額 | 約150万円 | 請求書、損害明細及び根拠資料を確認します。 |
| 応訴対象額 | 約150万円 | 責任を認めた金額か、協議対象とした金額かを区別します。 |
| 貨物の直接損害 | 荷崩れによる貨物損傷 | 事故前価額、修理可能性及び損傷割合を確認します。 |
| 再梱包・再作業費 | 請求への包含は不明 | 安全な取扱いに必要な合理的費用かを確認します。 |
| デバンニング費 | 発生の有無は不明 | 荷崩れ貨物を安全に取り出すために必要であったかを確認します。 |
| 保管費 | 発生の有無は不明 | 保管期間、単価及び処理遅延との関係を確認します。 |
| 検査・サーベイ費 | 発生の有無は不明 | 必要性、依頼者及び保険負担を確認します。 |
| 処分費 | 発生の有無は不明 | 処分の必要性及び残存価値を確認します。 |
| 残存価値 | 確認できる範囲では不明 | 損害額から控除すべき売却代金等を確認します。 |
| 貨物保険金 | 支払いの有無は不明 | 保険金との重複請求を排除します。 |
| package limitation | 適用された事実なし | 約150万円が一包又は一単位当たりの限度額から算定されたものではありません。 |
| 下請業者の負担 | 確認できる範囲では不明 | 作業過失に対応する求償額を確認します。 |
| 最終支払額 | 確認できる範囲では不明 | 示談書及び支払記録を確認します。 |
| 最終純負担額 | 確認できる範囲では不明 | 保険金及び下請業者からの回収を控除します。 |
保険通知・弁護士対応・再求償
| 項目 | 本件で確認できる事実 | 同種事故で必要となる対応 |
|---|---|---|
| フォワーダー賠償責任保険 | 通知及び保険金支払いの詳細は不明です。 | 取次業務上の請求を受けた段階で、責任未確定でも事故通知します。 |
| E&Oとしての整理 | 下請手配及び作業管理が問題となりました。 | フォワーダーが直接作業していないことと、取次上の注意義務を説明します。 |
| 責任承認 | 約150万円が応訴対象となりました。 | 原因、損害額及び下請業者の責任が確定する前に全額責任を認めません。 |
| 貨物保険 | 付保及び保険金支払いの有無は不明です。 | 貨物保険による回収がある場合は、荷主側の残存損害を確認します。 |
| 弁護士対応 | 弁護士関与の有無は不明です。 | 書面契約がなく責任範囲に争いがある場合は、早期に専門家と整理します。 |
| 下請業者への事故通知 | 実施及び結果は不明です。 | 事故判明後直ちに通知し、現場資料と作業記録の保存を求めます。 |
| 下請業者への再求償 | 最終結果は不明です。 | 作業上の過失と損害との因果関係に応じて求償します。 |
| shipping lineへの通知 | 異常な海上輸送の証拠は確認されていません。 | 異常外力の可能性が残る場合だけ、運送約款上の期限内に通知します。 |
| 求償権の保全 | 保全状況は不明です。 | 荷主との示談前に下請業者及び関係者への権利を留保します。 |
| 示談 | 約150万円が応訴対象として処理されました。 | 最終支払額、追加請求放棄及び再求償権を文書化します。 |
実際の解決結果
本件では、下請業者が本船積込み前に実施した輸出FCL貨物のバンニング作業に起因して、コンテナ内荷崩れ及び貨物損害が発生しました。
荷主側は、バンニング及び輸送手配の窓口であったフォワーダーへ約150万円を請求しました。フォワーダー側でも、約150万円を応訴対象額として事故対応を行いました。
フォワーダーは海上運送人ではなく、下請バンニングを手配した取次の立場でした。また、荷主とフォワーダーとの間には、本件作業の責任条件又は責任限度を定めた個別の書面契約はありませんでした。
そのため、本件はHague-Visby Rulesのpackage limitation又はB/L裏面約款によって約150万円へ責任を制限した事例ではありません。
確認できる範囲では、約150万円の全額が実際に支払われたか、フォワーダー賠償責任保険が適用されたか、下請業者へ求償したか及び最終的に誰がどの金額を負担したかは不明です。
本件から確認できるのは、取次窓口であったフォワーダーが約150万円の直接請求を受け、下請業者の作業責任及び自社の取次業務上の対応を切り分けながら応訴したという点までです。
事故を回避するための事前対策
| 実施時点 | 担当者 | 本件に即した対策 |
|---|---|---|
| 受託時 | フォワーダー | 自社がバンニングを直接請け負うのか、下請業者を取り次ぐのかを明確にします。 |
| 依頼内容確認時 | 荷主・フォワーダー | 貨物の重量、寸法、重心、荷姿、積重ね可否及び固定上の注意事項を確認します。 |
| 下請業者選定時 | フォワーダー | 貨物特性に対応できる技術、設備、経験及び賠償責任保険を確認します。 |
| 作業依頼時 | フォワーダー | 貨物情報、積付け条件、固定方法及び異常時の照会義務を書面で伝えます。 |
| バンニング前 | 下請業者 | 梱包状態、重量表示、重心、破損及び積載可能性を確認します。 |
| バンニング時 | 下請業者 | 重量配分、空隙、ラッシング、ショアリング及び荷重方向を確認します。 |
| 封印前 | 下請業者 | コンテナ内部を複数方向から撮影し、作業完了記録を保存します。 |
| 作業完了時 | フォワーダー | 写真、チェック表及び異常報告を受領してから船積手配を進めます。 |
| 取引開始時 | フォワーダー | 書面による受託範囲、責任条件、下請利用及び求償関係を整備します。 |
| 保険確認時 | フォワーダー・下請業者 | 各当事者の賠償責任保険及び事故通知先を確認します。 |
事故発生直後の初動対応
| 順序 | 誰が行うか | 具体的な対応 |
|---|---|---|
| 1 | 現地担当者 | 貨物を動かす前にコンテナ、封印、荷崩れ及び梱包状態を保存します。 |
| 2 | 現地担当者 | 開扉前後の状態、貨物配置、固定材及び損傷箇所を写真と動画で記録します。 |
| 3 | フォワーダー | 荷主、下請業者、貨物保険会社及び賠償責任保険会社へ通知します。 |
| 4 | フォワーダー | バンニング写真、作業指示、完了報告、EIR及びB/Lを保全します。 |
| 5 | 下請業者 | 作業者から聞き取りを行い、使用資材及び作業方法を記録します。 |
| 6 | 関係者 | 必要に応じて独立サーベイヤーを選任し、原因及び損害を確認します。 |
| 7 | 事故対応責任者 | 依頼、作業、搬入、本船積込み、輸送、発見及び請求までの時系列を作成します。 |
| 8 | フォワーダー | 取次窓口であることと、原因作業を直接実施した下請業者の立場を荷主へ説明します。 |
| 9 | フォワーダー | 原因及び損害額が確定する前に約150万円全額の責任を認めません。 |
| 10 | フォワーダー | 下請業者への事故通知、証拠保存要求及び求償権留保を行います。 |
事故を解決・収束させるための対応
| 検討項目 | 実施内容 | 収束条件 |
|---|---|---|
| 原因工程 | バンニング写真、作業記録及び到着時状態を照合します。 | 本船積込み前のどの作業が荷崩れへ影響したかを特定します。 |
| 梱包とバンニング | 貨物自体の梱包とコンテナ内の積付け・固定を分けて検証します。 | 荷主側と下請業者側の原因を区別します。 |
| フォワーダーの立場 | 依頼記録、見積書及び実際の業務分担を確認します。 | 取次として引き受けた範囲を確定します。 |
| 契約条件 | 書面契約がないため、メール、請求書及び従前の取引を確認します。 | 責任範囲についての当事者の合意内容を可能な範囲で確定します。 |
| 損害額 | 約150万円の各費目、残存価値及び保険回収を確認します。 | 荷主側に残る合理的な実損額を確定します。 |
| 責任分担 | 荷主、フォワーダー及び下請業者の行為を工程別に比較します。 | 請求窓口と最終負担主体を分けて判断します。 |
| 保険対応 | 貨物保険及びフォワーダー賠償責任保険を確認します。 | 保険金と各当事者の自己負担を区別します。 |
| 再求償 | 下請業者の作業過失に応じて求償します。 | 示談前に証拠、通知期限及び求償権を保全します。 |
| 示談 | 支払額、追加請求放棄及び求償権の取扱いを協議します。 | 荷崩れ損害に関する最終清算を文書化します。 |
| 再発防止 | 書面受託、作業基準、写真提出及び完了確認を導入します。 | 次回の同種バンニング前に改訂手順を適用します。 |
実務上の教訓
- 損害が海上輸送中又は到着後に発見されても、原因となった作業が本船積込み前であれば、その作業工程と管理主体を確認します。
- 取次窓口であるフォワーダーが請求を受けたことと、貨物損害の最終責任を負うことは同一ではありません。
- 下請業者がバンニングした場合は、作業指示、貨物情報、写真、ラッシング及びショアリング記録を保存します。
- 書面契約がない場合でも、依頼メール、見積書、請求書及び実際の作業分担から受託範囲を確認する必要があります。
- フォワーダーが海上運送人ではなく、責任制限条項の合意もない場合、Hague-Visby Rulesのpackage limitationを当然の責任限度として扱いません。
- 荷主対応と下請業者への再求償を並行して行い、荷主への支払いだけで事故処理を終了させないことが重要です。
まとめ
本件は、下請業者が本船積込み前にバンニングした輸出FCL貨物について、輸送中又は到着後にコンテナ内荷崩れが発見され、取次窓口であったフォワーダーへ約150万円の賠償請求が行われた事例です。
フォワーダーは海上運送を自己の責任で引き受けた運送人ではなく、バンニング及び輸送手配の取次を行った立場でした。また、荷主との間に本件作業の責任条件又は責任限度を定めた個別の書面契約はありませんでした。
したがって、本件はHague-Visby Rulesのpackage limitation又はB/L裏面約款によって処理された事例ではありません。検証の中心は、下請業者による積付け・固定作業、フォワーダーの業者選定・指示・確認、荷主から提供された貨物情報及び約150万円の損害内容です。
同種事故を防止するには、下請業者への書面指示、バンニング写真、固定作業記録、作業完了確認及び受託範囲の書面化が必要です。事故発生後は、荷主への窓口対応と、原因作業を行った下請業者への再求償を分けて進める必要があります。
