関税分類変更基準(CTC)とは
概要
関税分類変更基準(CTC)とは、非原産材料と完成品との間で、HSコード上の分類が協定で定められた水準以上に変わっているかを確認する原産地基準です。
CTCは、Change in Tariff Classificationの略で、EPA、FTA、CPTPP、RCEPなどの特恵原産地規則で広く使われる判定方法です。
原産地規則では、単に協定締約国で作業が行われたというだけでは原産品と認められません。
非原産材料を使っている場合、その材料が加工によって別の分類の製品になったかを確認することで、実質的な加工が行われたかを判断します。
CTCは、付加価値基準(RVC)のような原価計算を必要としないため、実務上使いやすい基準です。
一方で、HSコードの分類を誤ると判定全体が誤るため、正確なHS分類が前提になります。
CTCが使われる理由
CTCは、第三国産の材料や部品を使っている場合に、その加工が協定締約国内で実質的な変更を生じさせたかを確認するために使われます。
非原産材料が加工によって完成品となり、HSコード上の分類が協定で求める水準で変わっていれば、原産性を認める根拠になることがあります。
CTCは、加工内容そのものを直接評価するのではなく、加工の結果としてHSコードが変わったかどうかを確認する基準です。
そのため、製造工程の詳細な原価情報がなくても、材料と完成品のHSコードを比較することで判定できる場合があります。
CTCの種類
CTCでは、どのレベルでHSコードの変更が必要かが、品目別原産地規則(PSR)で定められます。
主な種類は次のとおりです。
CC:類変更
CCとは、Change in Chapterの略で、HSコードの類、つまり2桁レベルで分類が変わることを求める基準です。
たとえば、非原産材料のHSコードが72類で、完成品が73類になるような場合に、類の変更が問題になります。
一般的には、CTCの中でも厳しい基準として扱われます。
CTH:項変更
CTHとは、Change in Tariff Headingの略で、HSコードの項、つまり4桁レベルで分類が変わることを求める基準です。
完成品と非原産材料のHSコードを4桁レベルで比較し、協定で求められる変更が生じているかを確認します。
CTHは、多くの品目別原産地規則で使われる代表的なCTC基準です。
CTSH:号変更
CTSHとは、Change in Tariff Subheadingの略で、HSコードの号、つまり6桁レベルで分類が変わることを求める基準です。
6桁レベルでの変更を確認するため、CCやCTHより細かい分類で判定します。
品目によっては、CTSHで足りる場合もあれば、CTHやCCが求められる場合もあります。
HSコードが前提になる理由
CTCは、HSコードの変化を基準にするため、HS分類の正確性がすべての前提になります。
完成品のHSコードだけでなく、使用する非原産材料や部品のHSコードも確認する必要があります。
完成品のHSコードを誤ると、確認すべき品目別原産地規則が変わってしまいます。
また、材料や部品のHSコードを誤ると、CTCを満たしているかどうかの判定も誤る可能性があります。
そのため、CTCを使う場合は、完成品、主要部品、非原産材料について、HSコードをどの根拠で分類したかを説明できるようにしておくことが重要です。
CTCと軽微な加工の関係
CTCでは、HSコード上の分類変更が重要になりますが、形式的な分類変更だけを見ればよいわけではありません。
協定によっては、軽微な加工だけでは原産性を与える加工とは認められない場合があります。
たとえば、包装、ラベル貼付、単純な選別、小分け、簡単な組立などは、実質的な加工とは評価されないことがあります。
このような作業だけでCTCを満たすように見える場合でも、協定上の軽微な加工規定や除外規定を確認する必要があります。
CTCを確認する際は、HSコードの変更だけでなく、実際の加工内容が原産性を与えるものとして認められるかもあわせて整理します。
CTCとデミニミス規定の関係
CTCを確認する際に重要になるのが、デミニミス規定との関係です。
デミニミス規定とは、原産地基準を満たさない一部の非原産材料について、協定で定められた一定範囲内で例外的に許容する制度です。
CTCでは、原則として、対象となる非原産材料がすべて協定で求められる分類変更を満たす必要があります。
しかし、一部の非原産材料だけがCTCを満たさない場合でも、その材料の価額や重量が協定で認められる範囲内であれば、デミニミス規定により原産品として扱える可能性があります。
ただし、デミニミスは無条件で使える制度ではありません。
協定ごとの割合、対象品目、価額基準・重量基準、繊維製品の特則などを確認する必要があります。
一部材料がCTC未達の場合
CTCでは、完成品に使われる非原産材料ごとに、協定で求められる分類変更を満たしているかを確認します。
そのため、一部の非原産材料がCTCを満たしていない場合、完成品全体の原産性が問題になることがあります。
たとえば、完成品の主要部分はCTCを満たしていても、特定の部品だけが完成品と同じHS分類に残っている場合、その部品が原産地基準を満たしていない材料として問題になることがあります。
この場合、デミニミス規定を利用できるか、別の基準であるRVCを選択できるか、または品目別原産地規則で特例が定められているかを確認します。
単に「大部分が変わっているからよい」と判断せず、非原産材料ごとに確認することが重要です。
RVC・加工工程基準との関係
品目別原産地規則では、CTCだけでなく、付加価値基準(RVC)や加工工程基準が定められている場合があります。
「CTCまたはRVC」のように選択制になっている場合は、どちらの基準で原産性を説明しやすいかを検討します。
CTCで説明できる場合は、原価計算を行わずに判定できるため実務上扱いやすいことがあります。
一方で、CTCを満たさない場合でも、RVCで基準値を満たせば原産品として認められる可能性があります。
また、品目によっては、CTCに加えて特定の加工工程を満たす必要がある場合もあります。
この場合、HSコードの変更だけでなく、実際に求められる工程が協定締約国内で行われているかを確認する必要があります。
CPTPPでのCTC
CPTPPでは、品目別原産地規則の中でCTCが使われる場合があります。
品目によって、CC、CTH、CTSHのいずれが求められるか、またはRVCや加工工程基準との選択制になっているかが異なります。
CPTPPは自己申告制度を採用しているため、CTCを使う場合でも、完成品と非原産材料のHSコード、PSRの確認資料、材料表、製造工程資料などを保存しておくことが重要です。
また、CPTPPではデミニミス規定が問題になることがあります。
CTCを満たさない一部の非原産材料がある場合には、対象品目、許容割合、価額基準・重量基準を確認します。
RCEPでのCTC
RCEPでも、品目別原産地規則の中でCTCが使われる場合があります。
RCEPは広域累積を特徴とするため、RCEP締約国の原産材料と非原産材料を正しく区分することが重要です。
RCEP締約国から仕入れた材料であっても、その材料がRCEP原産材料として扱えるかを確認する必要があります。
原産材料として扱える材料であれば、CTC判定上の非原産材料から除外できる場合があります。
RCEPでCTCを確認する場合は、対象国、原産国、HSコード、PSR、累積制度、デミニミス規定、証明方式、保存資料をあわせて確認します。
実務の流れ
CTCを確認する場合、一般的には次の流れで進めます。
- 利用するEPA、FTA、CPTPP、RCEPなどの協定を確認する
- 完成品のHSコードを確認する
- 対象品目の品目別原産地規則(PSR)を確認する
- CTCが使えるか、RVCや加工工程基準との選択制かを確認する
- CC、CTH、CTSHのどの水準が求められているか確認する
- 使用する原材料・部品を原産材料と非原産材料に分ける
- 非原産材料ごとのHSコードを確認する
- 完成品と非原産材料のHSコードを比較する
- CTCを満たさない材料がある場合、デミニミスや他基準の利用可否を確認する
- 材料表、HS分類根拠、工程資料などを保存する
- 税関の事後確認に備えて根拠資料を整理する
主要書類
CTCを確認する場合に必要となる主な資料は次のとおりです。
- 完成品のHSコード確認資料
- 非原産材料・部品のHSコード確認資料
- 品目別原産地規則(PSR)の確認資料
- 材料表、部品表
- 原産材料と非原産材料の区分資料
- サプライヤー証明書
- 製造工程表
- インボイス
- パッキングリスト
- 原産地証明書または原産品申告書
- デミニミス規定を使う場合の計算根拠資料
- 税関確認に備える保存資料
判断が難しい場合の確認方法
CTCでは、完成品と材料のHSコード分類、品目別原産地規則の読み方、軽微な加工規定、デミニミス規定などが重なり、判断が難しくなることがあります。
特に、複雑な機械、化学品、複合材料、部品点数が多い製品では、完成品と非原産材料の分類確認だけでも時間がかかることがあります。
また、協定ごとにCTCの水準や例外規定が異なるため、同じ貨物でも利用する協定によって判断が変わる場合があります。
判断が難しい場合には、税関の事前教示や専門家確認を利用することがあります。
事前教示とは、輸入申告前に税関へ照会し、関税分類や原産地などについて事前に確認を受ける制度です。
フォワーダーの関与範囲
フォワーダーは、CTCの判定そのものを行う責任主体ではありません。
CTCの確認には、完成品と材料のHSコード、材料構成、製造工程、原産材料・非原産材料の区分などが必要であり、これは輸入者、輸出者、生産者が管理すべき情報です。
一方で、フォワーダーは、インボイス、パッキングリスト、B/L、Sea Waybill、Arrival Noticeなどの書類整合を確認する立場にあります。
通関書類上の品名、HSコード、原産地、製造国に不一致がある場合は、荷主や通関業者に確認することが重要です。
フォワーダー実務では、CTCを満たすかどうかを断定するのではなく、必要資料、HSコード確認、通関手続、税関確認への備えを補助する立場として整理するのが安全です。
注意点
CTCを利用する際は、次の点に注意が必要です。
- HSコードの誤りは、CTCの判定全体に影響する
- 完成品だけでなく、非原産材料・部品のHSコードも確認する必要がある
- 協定ごとにCC、CTH、CTSHなど求められる水準が異なる
- 品目ごとにCTC、RVC、加工工程基準の関係が異なる
- 同一HS分類内の加工では、CTCを満たさない場合がある
- 一部の非原産材料がCTC未達の場合、完成品全体の原産性が問題になることがある
- CTC未達材料がある場合、デミニミス規定の利用可否を確認する必要がある
- 軽微な加工だけでは原産性が認められない場合がある
- 判断が難しい場合、事前教示や専門家確認を検討することがある
- 証拠資料が不足すると、税関確認で原産性を説明できない場合がある
具体例
CTCでは、次のような場面が問題になります。
- CC成立:非原産材料が72類の鉄鋼材料で、完成品が73類のねじとなり、品目別原産地規則上の類変更を満たすケース
- CTH成立:非原産部品と完成品のHSコードが4桁レベルで異なり、項変更を満たすケース
- CTC未達:非原産部品と完成品が同じHS項に分類され、品目別原産地規則で求められる変更を満たせないケース
- 分類ミス:完成品または部品のHSコードを誤って分類し、CTCを満たすと誤認するケース
- 一部材料未達:大部分の材料はCTCを満たしているが、一部の非原産材料がCTCを満たさず、デミニミスの利用可否を確認するケース
- RVCへの切替え:CTCでは満たせないが、品目別原産地規則でRVCが選択可能であり、付加価値基準で原産性を検討するケース
- RCEPでの累積:RCEP締約国の原産材料を非原産材料から除外できるか確認し、CTC判定を行うケース
まとめ
関税分類変更基準(CTC)は、非原産材料と完成品との間でHSコード上の分類が変わっているかを確認する原産地基準です。
CTCは、原価計算を必要としないため実務上使いやすい一方で、完成品と材料のHSコードを正確に把握することが前提になります。
実務では、品目別原産地規則を確認し、CC、CTH、CTSHのどの水準が求められているか、CTC未達材料がないか、デミニミス規定を使えるか、RVCや加工工程基準との選択制があるかを整理する必要があります。
CPTPPやRCEPなど協定ごとの違いも踏まえ、税関確認に対応できる資料を保存しておくことが重要です。
