付加価値基準(RVC)とは
概要
付加価値基準(RVC)とは、製品の価値のうち、一定割合以上が特定の国または協定域内で生み出されていることを要件として、原産品と認めるための基準です。
RVCは、Regional Value Contentの略で、日本語では域内原産割合、域内付加価値基準などと呼ばれることがあります。
原産地規則では、関税分類変更基準(CTC)だけで原産性を判断する場合もありますが、品目によっては付加価値基準(RVC)が使われることがあります。
特に、材料や部品のHSコードが完成品と大きく変わらない場合でも、域内で十分な価値が加えられていれば、RVCによって原産品と認められる可能性があります。
RVCは、EPA、FTA、CPTPP、RCEPなどの特恵原産地規則で重要になる判定方法の一つです。
ただし、計算方法、基準値、対象費用、証拠資料は協定や品目によって異なるため、対象協定ごとに確認する必要があります。
RVCが使われる理由
RVCは、製品の中でどれだけ協定域内の経済的価値が生み出されているかを数値で確認するための基準です。
単に輸出国で最終的な作業を行っただけではなく、材料調達、加工、組立、製造工程などを通じて、一定以上の価値が域内で付加されているかを見ます。
この基準により、第三国産の材料をほとんどそのまま使い、協定締約国内で形式的な作業だけを行って特恵税率を利用するような取引を防ぐ役割があります。
一方で、CTCでは原産性を満たしにくい製品でも、域内で十分な加工や製造コストが発生していれば、RVCによって原産品と判断できる場合があります。
CTCとの違い
関税分類変更基準(CTC)は、非原産材料と完成品のHSコードが、協定で定められた水準以上に変わっているかを確認する基準です。
これに対して、RVCは、完成品の価額に占める域内付加価値の割合を計算して確認する基準です。
CTCはHSコードの変化を重視するのに対し、RVCは価額や原価構成を重視します。
そのため、同じ貨物でも、CTCでは満たせないがRVCでは満たせる場合があります。
品目別原産地規則(PSR)では、「CTCまたはRVC」のように選択制になっている場合もあります。
この場合、どちらの基準で確認する方が実務上説明しやすいかを判断します。
主な計算方法
RVCの計算方法は、協定や品目によって異なります。
代表的な方法として、控除方式、積上げ方式、集中方式などがあります。
控除方式
控除方式は、産品の価額から非原産材料の価額を差し引いて、域内付加価値の割合を計算する方法です。
Build-down Methodと呼ばれることがあります。
基本的な考え方は、次のとおりです。
RVC = (FOB価格 − 非原産材料の価額)÷ FOB価格 × 100
FOB価格とは、一般に船積港渡し価格を意味し、輸出時点での産品の価格を基準にする考え方です。
ただし、具体的にどの価格を使うか、どの費用を含めるかは、協定や計算方法によって確認する必要があります。
積上げ方式
積上げ方式は、原産材料の価額、域内で発生した労務費、製造間接費、利益などを積み上げて、域内付加価値の割合を計算する方法です。
Build-up Methodと呼ばれることがあります。
基本的な考え方は、次のとおりです。
RVC = 域内で生じた原産材料・労務費・製造間接費等の価額 ÷ FOB価格 × 100
積上げ方式では、どの費用を域内付加価値として算入できるかが重要になります。
原産材料費、労務費、製造間接費、利益などの扱いは、協定ごとに確認する必要があります。
集中方式
集中方式は、特定の非原産材料の価額に着目してRVCを計算する方式です。
Focused Methodと呼ばれることがあります。
通常の控除方式では、すべての非原産材料の価額を広く確認するのに対し、集中方式では、協定や品目別原産地規則で指定された特定の材料に着目して計算することがあります。
そのため、どの材料を計算対象にするのか、どの価額を使うのか、どの基準値を満たす必要があるのかを、対象協定ごとに確認する必要があります。
集中方式は、協定や品目によって計算方法の指定が異なるため、一般的な一つの式だけで処理することはできません。
CPTPPなど一部の協定では、品目や条件によって、通常の控除方式や積上げ方式とは異なる計算方法が定められている場合があります。
そのため、RVCを使う場合は、単に一般式を当てはめるのではなく、対象協定と品目別原産地規則で指定された計算方法を確認する必要があります。
デミニミス規定との関係
RVCを確認する際は、デミニミス規定との関係にも注意が必要です。
デミニミス規定とは、原産地基準を満たさない一部の非原産材料について、協定で定められた範囲内で例外的に許容する制度です。
デミニミスは主にCTCを補完する場面で問題になりますが、RVC基準と併用する場合には、非原産材料の価額をどのようにRVC計算に反映するかを確認する必要があります。
たとえば、デミニミスの判定では許容範囲内と整理できる材料であっても、RVC計算上は非原産材料の価額として扱う必要がある場合があります。
そのため、デミニミスで許容されることと、RVC計算上どのように扱うかは、分けて確認します。
実務では、PSR、CTC、RVC、デミニミスの関係を一体で確認し、計算根拠が矛盾しないように整理することが重要です。
RVCで確認する主な資料
RVCでは、計算結果だけでなく、その根拠資料が重要になります。
税関確認や事後検証に対応するため、次のような資料を整理しておく必要があります。
- インボイス
- パッキングリスト
- 製品のFOB価格を確認できる資料
- 原材料リスト
- 部品表、材料表
- 原産材料と非原産材料の区分資料
- 非原産材料の価額資料
- 原産材料の証明資料
- 原価計算資料
- 労務費、製造間接費の資料
- 製造工程表
- サプライヤー証明書
- RVC計算表
- デミニミスを利用する場合の計算根拠資料
- 税関確認に備える保存資料
RVCは数値で判定するため、計算根拠が不明確な場合、原産性を説明できないことがあります。
単に「基準値を超えている」と記載するだけではなく、どの資料に基づいて計算したのかを残すことが重要です。
基準値は協定・品目ごとに異なる
RVCの基準値は、協定や品目によって異なります。
たとえば、40%以上、45%以上など、品目別原産地規則で具体的な割合が定められている場合があります。
同じ製品であっても、CPTPP、RCEP、日EU・EPA、日ASEAN・EPAなど、利用する協定が変わると、求められるRVCの基準値や計算方法が変わることがあります。
そのため、RVCを確認する際は、対象貨物のHSコードを確認し、対象協定の品目別原産地規則を見て、どの基準値が求められているかを確認します。
CPTPPでのRVC
CPTPPでは、品目別原産地規則の中でRVCが使われる場合があります。
品目によっては、CTC、RVC、加工工程基準などが選択制または組み合わせで定められていることがあります。
CPTPPでは、自己申告制度が採用されているため、RVCを使う場合には、申告主体が計算根拠を説明できる資料を保存しておくことが重要です。
FOB価格、非原産材料の価額、原産材料の証拠、製造工程資料などを整理し、税関確認に対応できる状態にしておく必要があります。
具体的な基準値や計算方法は品目ごとに異なるため、対象品目のHSコードとCPTPPの品目別原産地規則を確認します。
RCEPでのRVC
RCEPでも、品目別原産地規則の中でRVCが使われる場合があります。
RCEPは広域累積を特徴とするため、RVCを計算する際には、RCEP締約国の原産材料と非原産材料を正しく区分することが重要です。
RCEP締約国で生産された材料であっても、その材料がRCEP原産材料として扱えるかを確認する必要があります。
単にRCEP参加国から仕入れたというだけでは、RVC計算上の原産材料として扱えるとは限りません。
RCEPでRVCを利用する場合は、対象国、原産国、HSコード、PSR、累積制度、証明方式、保存資料をあわせて確認する必要があります。
為替・価格変動の影響
RVCは価額を基礎に計算するため、為替変動や原材料価格の変動の影響を受けることがあります。
非原産材料の価格が上昇すると、RVC比率が下がり、基準値を下回る可能性があります。
特に、同一製品を継続的に輸出入する場合でも、原材料価格、為替、調達先、製造工程が変わると、過去のRVC計算結果をそのまま使えないことがあります。
定期的に原価情報や材料構成を見直すことが重要です。
同一製品の継続的な輸出入での活用
同一製品を継続的に輸出入する場合、RVC管理を整備しておくと、EPAやFTAの利用を安定させやすくなります。
製品ごとに材料表、原価計算、原産材料の証明資料、非原産材料の価額資料を整理しておくことで、継続的な原産地判定に対応しやすくなります。
ただし、同じ製品名であっても、材料の仕入先、価格、製造場所、工程が変わるとRVCが変動することがあります。
そのため、初回判定だけで終わらせず、継続取引では定期的な確認が必要です。
フォワーダーの関与範囲
RVCの計算は、貨物の原価情報、材料構成、製造工程、原産材料・非原産材料の区分を前提に行います。
そのため、通常、フォワーダーがRVC計算そのものを行う立場にはありません。
フォワーダーは、インボイス、パッキングリスト、B/L、Sea Waybill、輸送経路、積送基準に関する資料の整合を支援することがあります。
しかし、RVCの計算根拠や原産性の判断は、輸入者、輸出者、生産者が管理すべき情報です。
フォワーダー実務では、RVCを満たすかどうかを断定するのではなく、必要書類、輸送書類、通関手続、税関確認への備えを補助する立場として整理するのが安全です。
注意点
RVCを利用する際は、次の点に注意が必要です。
- 対象協定と品目別原産地規則を確認する必要がある
- 協定ごとに基準値や計算方法が異なる
- FOB価格や材料価額の根拠資料が必要になる
- 原産材料と非原産材料の区分を誤ると計算結果が変わる
- 原価配分の誤りによりRVC未達となる可能性がある
- 集中方式では、対象材料や計算方法を協定ごとに確認する必要がある
- デミニミス規定を利用する場合、RVC計算との整合を確認する必要がある
- 為替や材料価格の変動で基準値を下回る可能性がある
- 同一製品でも材料や製造工程が変われば再確認が必要になる
- 税関確認に備えて計算根拠資料を保存する必要がある
具体例
RVCでは、次のような場面が問題になります。
- RVC未達:非原産材料の割合が高く、協定で求められるRVC基準を満たせないケース
- CTC不可・RVC利用:HSコードの分類変更は満たせないが、域内付加価値が十分にあるためRVCで原産性を検討するケース
- 計算ミス:原産材料と非原産材料の区分や原価配分に誤りがあり、税関確認で説明できないケース
- 価格変動:非原産材料の価格上昇により、過去は満たしていたRVC基準を下回るケース
- 集中方式:特定の非原産材料に着目する計算方式が指定されており、通常の控除方式とは異なる確認が必要になるケース
- デミニミスとの関係:CTC未達材料をデミニミスで整理しつつ、RVC計算上の非原産材料価額との整合を確認するケース
- RCEPでの累積:RCEP締約国の原産材料を累積し、RVC計算上の原産材料として扱えるかを確認するケース
まとめ
付加価値基準(RVC)は、製品の価額のうち一定割合以上が特定国または協定域内で生み出されていることを確認する原産地基準です。
CTCでは原産性を満たしにくい場合でも、域内付加価値が十分にある場合には、RVCによって原産品と認められる可能性があります。
一方で、RVCは原価情報、材料価額、FOB価格、製造工程、原産材料と非原産材料の区分を正確に把握する必要があります。
協定ごとの計算方法、基準値、集中方式、デミニミス規定との関係、CPTPPやRCEPでの扱い、税関確認に備えた資料保存を確認し、継続的に管理することが重要です。
