貨物海上保険で補償される損害

貨物海上保険で補償される損害とは

貨物海上保険で補償される損害とは、輸送中に発生した偶然な事故によって、貨物に滅失、破損、濡損、盗難、不着、数量不足などの損害が生じた場合に、保険条件に従って補償の対象となる損害をいいます。

貨物海上保険は、単に船が沈んだ場合だけを対象にする保険ではありません。海上輸送、航空輸送、陸上輸送、港湾作業、積込み、荷卸し、保管など、輸送の流れの中で発生するさまざまな事故が問題になります。

ただし、どの損害が補償されるかは、ICC(A)、ICC(B)、ICC(C)などの保険条件や、戦争危険、ストライキ危険などの特約によって変わります。

主な補償対象となる事故

貨物海上保険で補償対象になりやすい事故には、次のようなものがあります。

  • 火災・爆発
  • 船舶の座礁・沈没・衝突
  • 輸送用具の転覆・脱線
  • 積込み・荷卸し中の落下事故
  • 海水・雨水などによる濡損
  • 破損・曲損・へこみ
  • 盗難・不着・抜荷
  • 数量不足
  • 汚損・混合
  • 共同海損・投荷

これらはすべて同じ条件で補償されるわけではなく、選択した保険条件によって補償の有無が変わります。

ICC(A)条件で補償される損害

ICC(A)条件は、貨物海上保険の中でも補償範囲が広い条件です。

火災、爆発、座礁、沈没、衝突などの大きな事故だけでなく、破損、濡損、盗難、不着、汚損、数量不足など、輸送中に発生する偶然な事故を広く対象にします。

実務上、「オールリスク」と呼ばれることがありますが、すべての損害が無条件に補償されるという意味ではありません。梱包不備、貨物固有の性質、遅延損害、被保険者の故意などは、免責となる可能性があります。

ICC(B)条件で補償される損害

ICC(B)条件は、ICC(A)条件より補償範囲が限定された条件です。

火災、爆発、船舶の座礁、沈没、衝突、輸送用具の転覆、地震、噴火、雷、海水の侵入、共同海損、投荷など、列挙された事故を中心に補償します。

そのため、破損、盗難、雨濡れ、不着、数量不足などについては、条件や特約の確認が必要になります。

ICC(C)条件で補償される損害

ICC(C)条件は、ICC(B)条件よりさらに補償範囲が限定された条件です。

主に、火災、爆発、船舶の座礁、沈没、衝突、輸送用具の転覆、共同海損、投荷など、大きな海難事故を中心に補償します。

一般的な破損、濡損、盗難、数量不足などは、通常は補償対象外となる可能性があるため、貨物内容や取引条件に応じて注意が必要です。

戦争危険で補償される損害

貨物海上保険では、通常の海上危険とは別に、戦争危険を特約で付けることがあります。

戦争、内乱、反乱、敵対行為、捕獲、拿捕、抑留、遺棄機雷などによって貨物に損害が生じた場合、戦争危険の条件に従って補償対象となることがあります。

ただし、戦争危険は通常の海上危険とは保険期間や補償範囲が異なるため、対象区間や終了時期を確認する必要があります。

ストライキ危険で補償される損害

ストライキ危険は、労働争議、暴動、騒乱、テロ行為などにより貨物に損害が生じた場合に問題となる補償です。

通常の貨物保険だけではなく、ストライキ危険を付帯しているかどうかによって、補償対象となるかが変わります。

特に、海外の港湾、政情不安地域、労働争議が起きやすい地域を経由する貨物では、付保時に確認しておくことが重要です。

共同海損・救助料

貨物海上保険では、共同海損や救助料も重要な補償対象になります。

共同海損とは、船舶と積荷全体を守るために、意図的に一部の貨物を犠牲にしたり、特別な費用を支出したりした場合に、その損失や費用を関係者で分担する制度です。

貨物自体に目立った損傷がない場合でも、共同海損分担金の支払いが求められることがあるため、貨物海上保険の重要な役割になります。

損害防止費用

貨物事故が発生した場合、損害の拡大を防ぐために必要な費用が発生することがあります。

たとえば、濡れた貨物を乾燥させる費用、再梱包費用、検品費用仕分け費用、緊急保管費用などが問題になることがあります。

これらの費用が保険でどこまで扱われるかは、保険条件、事故原因、費用の必要性、妥当性によって確認されます。

補償されるかどうかは条件で変わる

貨物海上保険で重要なのは、事故名だけで補償可否を判断しないことです。

同じ「破損」であっても、ICC(A)条件では補償対象になりやすい一方、ICC(B)やICC(C)では補償されない場合があります。

また、同じ「濡損」であっても、海水濡れ、雨濡れ、結露、汗濡れ、梱包不備、貨物固有の性質など、原因によって判断が変わります。

フォワーダー実務での注意点

フォワーダーが荷主から貨物保険の相談を受ける場合、「保険に入っているから大丈夫」と説明するだけでは不十分です。

どの保険条件で付保されているか、戦争危険・ストライキ危険が付いているか、破損や盗難が対象になる条件かを確認する必要があります。

事故が発生した後では、保険条件を広げることはできません。輸送前の段階で、貨物内容、輸送区間、事故リスクに合った補償範囲を確認しておくことが重要です。

実務上のポイント

貨物海上保険で補償される損害は、輸送中の偶然な事故による貨物の滅失・損傷が中心です。

ただし、補償範囲はICC(A)、ICC(B)、ICC(C)、戦争危険、ストライキ危険、各種特約によって変わります。

そのため、貨物保険を手配する際には、単に保険を付けるだけでなく、どの事故を補償対象にするのかを確認する必要があります。

貨物海上保険で補償される損害を正しく理解することは、付保依頼、保険金請求、事故対応のすべての前提になります。

同義語・別表記

  • 貨物保険で払われる損害
  • 海上貨物保険の補償対象
  • 担保危険
  • 補償される事故
  • Covered Risks

関連用語

  • 貨物海上保険
  • ICC(A)
  • ICC(B)
  • ICC(C)
  • 担保危険
  • 戦争危険
  • ストライキ危険
  • 共同海損
  • 救助料
  • 損害防止費用

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