Institute War Clauses(Cargo)の免責条項
Institute War Clauses(Cargo)の免責条項とは
Institute War Clauses(Cargo)の免責条項とは、協会戦争約款が付帯されていても、保険で補償されない損害・費用を定める部分です。
Institute War Clauses(Cargo)は、通常のICC(A)、ICC(B)、ICC(C)では免責となる戦争、内乱、敵対行為、捕獲、拿捕、拘束、抑止、抑留、遺棄機雷等の危険を別途担保するための約款です。
しかし、戦争または武力紛争が事故の背景にあるという事実だけで、貨物損害、遅延損害、追加費用、保管料、継搬費用、運送契約上の損失がすべて補償されるわけではありません。
実務では、次の要素を順番に切り分けます。
- Institute War Clauses(Cargo)が保険契約に付帯されているか
- 事故原因が第1条の担保危険に該当するか
- 事故が第5条の保険期間内に発生したか
- 第3条の一般免責に該当しないか
- 第4条の不堪航・不適合免責に該当しないか
- 第2条の共同海損・救助料として別途担保される費用か
- 第7条の優先条項が適用されるか
- 保険上の免責と、B/L・House B/L・標準取引条件上の費用負担を分けているか
戦争危険担保があることと、個別の損害について保険金が支払われることは同じではありません。
この記事で扱う範囲
| 項目 | この記事で扱う内容 | 他の記事で詳しく扱う内容 |
|---|---|---|
| 第3条 一般免責 | 故意、通常損耗、梱包不十分、固有の性質、遅延、支払不能、航海事業の喪失・中絶、核関連兵器 | 第1条の個別担保危険の成立要件 |
| 第4条 不堪航・不適合 | 船舶・艀、コンテナ・輸送用具についての免責要件と被保険者の認識 | 船舶の技術的な耐航性・船級・検査制度 |
| 故意 | 被保険者の故意の不法行為または故意の不正行為に帰せられる損害・費用 | 刑事責任、役職員個人の法的責任 |
| 通常損耗・固有の性質 | 自然減量、通常劣化、腐敗、錆、蒸れ、自己発熱等と戦争危険との因果関係 | 貨物ごとの品質規格・保存期限の詳細 |
| 梱包・準備・積付け | 梱包不十分免責の対象者、実施時期、コンテナ内積付け、独立請負人との区別 | 梱包業者・倉庫業者・フォワーダーの個別責任 |
| 遅延 | 戦争危険による遅延でも原則免責となる損害・費用と、第2条費用との区別 | 売買契約上の違約金、逸失利益の最終的な請求可能性 |
| 支払不能・金銭債務不履行 | 船舶所有者、管理者、用船者、運航者の支払不能と被保険者の認識、善意の譲受人特則 | 船社倒産手続、債権届出、貨物回収手続 |
| 航海・航海事業の喪失または目的達成不能 | 第3条7項の判断要素、運送契約の打切りとの違い、貨物損害と商業損失の区別 | 英国法上のfrustrationの最終的な法的評価 |
| 核関連兵器等 | 核分裂、核融合、放射性物質等を用いた兵器・装置の敵対的使用と境界事例 | 原子力損害賠償制度、放射線測定・除染基準 |
| 共同海損・救助料 | 第2条で担保され得る費用と、遅延・航海中絶免責との境界 | 共同海損分担額、General Average Bond、General Average Guarantee |
| 保険期間・優先条項 | 第5条の期間と第7条が優先する範囲 | 15日ルール、航海変更、運送契約打切り後の担保再開 |
| NVOCC・フォワーダー | 資料収集、保険者通知、B/L条件、追加費用、第三者への権利保全 | NVOCC責任、フォワーダー責任、責任制限、提訴期間 |
制度の目的と背景
貨物保険は、外来的かつ偶然な事故による貨物の滅失・損傷を中心に担保する制度です。
戦争危険が発生すると、貨物損害だけでなく、航路変更、港湾閉鎖、抑留、積替え遅延、輸送中断、販売機会喪失、追加保管料、代替輸送費等が同時に発生しやすくなります。
しかし、これらをすべて戦争危険保険で補償すると、貨物の物的損害と、運送契約上・商業上の損失との境界が失われます。
第3条は、通常貨物保険と共通する一般免責に加え、戦争危険約款特有の「航海または航海事業の喪失・目的達成不能」と「核関連兵器等の敵対的使用」を明示しています。
第4条は、貨物損害が戦争危険ではなく、船舶・艀・コンテナ・輸送用具の不堪航または不適合に起因する場合の取扱いを定めています。
したがって、本記事では「戦争危険が発生したか」だけでなく、「保険金請求の基礎となっている損害または費用は何か」を確認します。
免責条項の基本構造
| 条項 | 免責事由 | 中心となる判断 | 主な資料 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 第3条1項 | 被保険者の故意の不正行為 | 損害・費用が被保険者の故意に帰せられるか | 指示記録、社内通信、事故報告 | 単なる過失・判断ミスとは区別する |
| 第3条2項 | 通常の漏損、重量・容積の通常減少、通常損耗 | 通常予想される減耗か、外来的事故か | 計量記録、品質規格、輸送前後記録 | 戦争危険が背景にあっても通常減耗は別判定する |
| 第3条3項 | 梱包・準備の不十分または不適切 | 誰が、いつ、どのような梱包・コンテナ内積付けをしたか | Packing List、梱包仕様、積付写真 | 独立請負人は約款上のemployeesに含まれない |
| 第3条4項 | 貨物固有の瑕疵または性質 | 損害が貨物自身の性質から通常生じたか | 製品仕様、温湿度記録、検査報告 | 遅延・保管環境・梱包との複合原因を確認する |
| 第3条5項 | 遅延 | 損害・費用が遅延によって生じたか | 輸送時系列、納期資料、損害明細 | 第2条で支払われる共同海損・救助料は別扱い |
| 第3条6項 | 船舶所有者等の支払不能・金銭債務不履行 | 積込み時の認識と、正常な航海遂行への影響 | 信用情報、船社通知、Booking資料 | 善意の譲受人特則を確認する |
| 第3条7項 | 航海または航海事業の喪失・目的達成不能に基づく請求 | 請求が貨物損害ではなく航海失敗そのものを基礎としているか | 運送打切通知、費用明細、B/L、荷主指示 | 正式な打切り通知がなくても問題になり得る |
| 第3条8項 | 核分裂・核融合、放射性力・物質等を用いる兵器・装置の敵対的使用 | 損害との直接・間接の因果関係 | 当局発表、兵器情報、放射線測定記録 | 原子力施設が攻撃対象だったという事実だけで即断しない |
| 第4条1項1号 | 船舶・艀の不堪航または安全運送への不適合 | 積込み時に被保険者が認識していたか | 船級記録、検査報告、事故履歴 | 善意の譲受人特則はこの号に適用される |
| 第4条1項2号 | コンテナ・輸送用具の不適合 | 積込み時期、積込み主体、被保険者の認識 | EIR、コンテナ検査、積付記録 | 第4条2項の譲受人特則は直接適用されない |
| 第4条3項 | 黙示の耐航性保証違反の放棄 | 保証違反と第4条1項の個別免責を区別する | Policy、船舶資料、積込み記録 | 第4条1項の免責自体が消滅するわけではない |
免責条項が問題になる主な場面
| 場面 | 確認する理由 | 中心となる争点 | 主な資料 | 別途確認する事項 |
|---|---|---|---|---|
| 戦争危険による長期遅延 | 遅延免責が適用される可能性があるため | 物的損害か、納期・商業損失か | 輸送時系列、損害明細、売買契約 | 共同海損・救助料 |
| 別港揚げ後に追加費用が発生 | 航海事業の喪失・中絶に基づく請求の可能性があるため | 費用の発生原因と請求根拠 | 船社通知、B/L、請求書 | 運送契約上の費用負担 |
| 運送契約が途中で打ち切られた | 保険期間と第3条7項を別々に確認する必要があるため | 貨物損害、航海失敗、再積送費用の区別 | 打切り通知、貨物所在地、保険者通知 | 第5条3項の担保再開 |
| 拿捕・抑留で引渡しが遅れた | 担保危険に該当しても遅延損害は別問題であるため | 物的損害の有無、遅延損害の内容 | 抑留命令、船社通知、貨物検査 | B/L上の運送人責任 |
| 長期滞留中に錆・カビ・腐敗が発生 | 遅延、固有の性質、梱包不十分が競合するため | 直接原因と寄与原因 | 温湿度記録、写真、サーベイレポート | 保険期間 |
| 船社の支払不能で航海が続行されない | 第3条6項が問題になるため | 積込み時の認識と通常航海への影響 | 信用情報、積込み記録、倒産通知 | 善意の譲受人 |
| 不適合コンテナ内で貨物が損傷 | 第3条3項と第4条1項2号が競合するため | 梱包・積付けとコンテナ自体の不適合 | EIR、積付写真、コンテナ検査記録 | 積込み主体と認識 |
| 不堪航船へ貨物が積み込まれた | 第4条1項1号が問題になるため | 被保険者の認識と積込み時点 | 船級、Port State Control、社内通信 | 善意の譲受人特則 |
| 戦争危険回避のため共同海損が宣言された | 第2条で担保され得るため | 共同安全、担保危険との因果関係 | 共同海損宣言、船長報告、精算人通知 | 第3条5項・7項との区別 |
| 原子力施設への軍事攻撃で貨物が損傷 | 第3条8項との因果関係が複雑なため | 通常兵器の爆発か、核・放射性力等による損害か | 当局発表、放射線測定、事故原因資料 | 他の核・放射能関連免責 |
適用要件・対象外一覧
| 確認項目 | 免責方向の要件 | それだけでは不足する事実 | 本記事の対象外 | 実務対応 |
|---|---|---|---|---|
| 故意 | 損害・費用が被保険者の故意の不正行為に帰せられる | 単なる注意不足、判断ミス、通常の過失 | 刑事責任の最終判断 | 指示者、目的、認識、結果予見を整理する |
| 通常損耗 | 通常の漏損、自然減量、通常の摩耗として説明できる | 輸送後に数量・重量が減っていた事実だけ | 業界許容差の最終的な商取引判断 | 輸送前後の計量と商品規格を比較する |
| 梱包不十分 | 通常の被保険輸送上の出来事に耐えられない梱包・準備で、所定の主体・時期に該当する | 外装に変形・破損があった事実だけ | 梱包業者への最終的な賠償請求 | 梱包仕様、積付け、実施主体、実施日を確認する |
| 固有の性質 | 貨物自身の性質から損害が生じた | 腐敗、錆、カビ等の現象が発生した事実だけ | 製品保証・品質保証上の責任 | 温湿度、期間、包装、事故外力を総合する |
| 遅延 | 損害・費用が遅延によって生じた | 事故発生後に到着が遅れた事実だけ | 売買契約上の違約金の最終負担 | 貨物の物的損害と商業損失を分ける |
| 支払不能 | 積込み時に被保険者が認識し、または通常知るべきで、正常な航海遂行を妨げ得た | 船社が後日倒産した事実だけ | 倒産手続上の債権回収 | 積込み時点の信用情報と社内認識を保存する |
| 航海事業の喪失・中絶 | 請求の基礎が貨物の物的損害ではなく、航海・運送事業の失敗または目的達成不能にある | 一時的な遅延、離路、寄港変更の事実だけ | 英国法上のfrustrationの最終判断 | 請求項目ごとに根拠と因果関係を整理する |
| 核関連兵器等 | 損害・費用が、核分裂・核融合、類似反応、放射性力・物質を用いる兵器・装置の敵対的使用から直接・間接に生じた | 原子力施設または核関連地域で事故が発生した事実だけ | 核事故・放射線障害の専門的因果関係評価 | 兵器・装置、作用機序、放射性物質、損害経路を確認する |
| 船舶・艀の不堪航等 | 積込み時に被保険者が不堪航・不適合を認識していた | 事故後に船舶の欠陥が判明した事実だけ | 船舶所有者の最終責任 | 積込み時の認識資料を確認する |
| コンテナ・輸送用具の不適合 | 保険開始前に積み込まれた、または被保険者・使用人が積み込み不適合を認識していた | コンテナに欠陥があった事実だけ | リース会社・ターミナルの責任 | 積込み主体と保険開始時点を確認する |
| 善意の譲受人 | 拘束力ある売買契約に基づき善意で貨物を購入または購入合意し、保険契約の譲渡を受けた | 単にB/Lを所持している事実だけ | 権利移転の最終的な法的判断 | 売買契約、譲渡、取得時の認識を確認する |
| 共同海損・救助料 | 担保危険による損失回避のために発生し、契約・準拠法・実務に従って算定された | 共同海損宣言が出された事実だけ | 分担率・認容項目の最終精算 | 宣言理由と担保危険との因果関係を確認する |
ICC2009本体との比較
| 比較項目 | 通常のICC2009本体 | Institute War Clauses(Cargo) | 主な差分 | 実務上の対応 |
|---|---|---|---|---|
| 故意 | 免責 | 免責 | 基本構造は共通 | 故意と過失を区別する |
| 通常損耗 | 免責 | 免責 | 基本構造は共通 | 外来的事故との因果関係を確認する |
| 梱包不十分 | 免責 | 免責 | 実施主体・実施時期・コンテナ内積付けの定義も共通 | 独立請負人との区別を確認する |
| 固有の性質 | 免責 | 免責 | 基本構造は共通 | 戦争危険が背景にあっても別判定する |
| 遅延 | 原則免責 | 原則免責 | いずれも共同海損・救助料等の条項を別確認 | 遅延自体と担保費用を分ける |
| 支払不能 | 所定の認識要件で免責 | 所定の認識要件で免責 | 善意の譲受人特則も共通 | 積込み時点の認識を確認する |
| 不堪航・不適合 | 所定条件で免責 | 所定条件で免責 | 基本構造は共通 | 船舶・艀とコンテナ・輸送用具を分ける |
| 航海事業の喪失・中絶 | War Clauses第3条7項と同じ形式の独立免責はない | 独立した重要免責 | 戦争危険約款固有の確認点 | 貨物損害と航海失敗に基づく請求を区別する |
| 核関連兵器等 | 核分裂・核融合等を用いる兵器・装置の使用を除外 | 敵対的使用を明示して除外 | War Clausesでは戦争危険の中で明確に切り分ける | 兵器・装置と損害原因を確認する |
| 保険期間 | 倉庫から倉庫までを中心に判断 | 航洋船舶への積込み、荷卸し、15日等を中心に判断 | 同じ貨物でも期間が一致しない | 免責判断前にWar Clausesの期間を確認する |
免責判断の基本フロー
| 段階 | 確認事項 | 判断の分岐 | 実務対応 |
|---|---|---|---|
| 1 | 適用する保険契約を特定する | どのPolicy・Certificate・約款版が適用されるか | 保険番号と対象貨物を照合する |
| 2 | War Clausesの付帯を確認する | 戦争危険担保が存在するか | Schedule・Endorsementを取得する |
| 3 | 担保危険を確認する | 第1条の戦争危険に該当するか | 当局発表、船長報告、事故資料を収集する |
| 4 | 貨物の物的損害を確認する | 滅失・損傷か、遅延・費用・商業損失だけか | サーベイ、写真、検査を行う |
| 5 | 保険期間を確認する | 本船積込み後か、荷卸し・15日前か | 積込み、到着、荷卸し記録を時系列化する |
| 6 | 故意・通常損耗を確認する | 第3条1項・2項に該当するか | 指示記録、計量記録を確認する |
| 7 | 梱包・準備・積付けを確認する | 第3条3項の主体・時期・不十分性を満たすか | 梱包仕様、写真、作業委託関係を確認する |
| 8 | 固有の性質を確認する | 貨物自身の性質による損害か | 品質資料、温湿度記録を確認する |
| 9 | 遅延を確認する | 損害・費用が遅延により生じたか | 物的損害と納期・逸失利益を分ける |
| 10 | 支払不能を確認する | 積込み時の認識と正常航海への影響があるか | 信用情報と社内認識を保存する |
| 11 | 航海事業の喪失・中絶を確認する | 請求が航海失敗そのものに基づくか | 請求項目別に原因と根拠を整理する |
| 12 | 核関連兵器等を確認する | 第3条8項との直接・間接の因果関係があるか | 当局・専門機関・保険者へ照会する |
| 13 | 不堪航・不適合を確認する | 船舶・艀か、コンテナ・輸送用具か | 積込み主体、時点、認識を分ける |
| 14 | 共同海損・救助料を確認する | 第2条で別途担保され得る費用か | 宣言理由と精算資料を保険者へ提出する |
| 15 | 第7条の優先関係を確認する | 他条件が第3条7項・8項または第5条と抵触するか | Endorsementを含めて契約文言を横断確認する |
| 16 | 運送契約上の責任を確認する | 保険免責と船社・NVOCC等の責任を区別できているか | B/L、標準取引条件、タリフを確認する |
故意・通常損耗・貨物固有の性質
被保険者の故意
第3条1項は、被保険者の故意の不正行為に帰せられる損害・費用を免責とします。
単なる判断ミス、通常の過失、予測が外れたという事実だけで、直ちに故意免責となるわけではありません。
誰が、何を認識し、どのような目的で指示を出し、損害発生をどの程度予見していたかを確認します。
通常損耗
通常の漏損、重量・容積の通常減少、通常の摩耗・消耗は、第3条2項により免責となります。
戦争危険によって輸送期間が長くなった場合でも、請求対象が通常予想される自然減量や経時的な摩耗だけであれば、戦争危険による貨物損害とは別に判断します。
貨物固有の性質
第3条4項は、貨物固有の瑕疵または性質による損害・費用を免責とします。
腐敗、自己発熱、自然発酵、蒸れ、吸湿、錆、変色等が、戦争危険による外力で生じたのか、貨物自身の性質から生じたのかを確認します。
実務では、戦争危険、遅延、温湿度、梱包、換気、冷凍機器、保管環境等が複合原因となるため、単に「紛争で輸送が遅れた」という事実だけでは判断しません。
梱包不十分免責
第3条3項は、被保険貨物が通常の被保険輸送中に生じる出来事に耐えられないほど、梱包または準備が不十分・不適切であることによる損害・費用を免責とします。
約款上の梱包には、コンテナ内への積付けも含まれます。
ただし、梱包不十分であれば無条件に免責となるのではなく、次の主体・時期を確認します。
| 確認項目 | 約款上の取扱い | 主な資料 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 被保険者が梱包・準備した | 免責の対象となり得る | 作業記録、社内指示、写真 | 梱包仕様と通常輸送への耐性を確認する |
| 被保険者の使用人が梱包・準備した | 免責の対象となり得る | 作業者記録、雇用関係 | 独立請負人との区別が必要 |
| 保険開始前に梱包・準備された | 実施主体にかかわらず免責が問題になり得る | 梱包日、保険始期、作業委託書 | War Clausesの保険始期は本船積込み時である |
| 独立した梱包業者が作業した | 約款上のemployeesには含まれない | 業務委託契約、請求書 | ただし保険開始前の梱包であれば別途免責が問題になる |
| コンテナ内積付け | 梱包として扱われる | Stuffing Report、積付写真 | コンテナ自体の不適合は第4条とも区別する |
戦争危険回避のために航路変更や長期滞留が生じても、貨物破損の直接原因が不十分な固定、外装強度不足、防湿不足または積付け不良であれば、第3条3項が問題になります。
遅延免責
第3条5項は、遅延が担保危険によって生じた場合であっても、遅延によって生じた損害・費用を原則として免責とします。
| 請求項目 | 基本的な見方 | 主な確認事項 | 別途確認する条項 |
|---|---|---|---|
| 納期遅延による違約金 | 遅延・商業損失として免責が問題になる | 売買契約、違約金条項 | B/L・売買契約 |
| 販売機会・利益の喪失 | 遅延・間接損害として整理する | 販売計画、損害算定 | 貨物保険外の事業中断保険等 |
| 生産ライン停止 | 貨物の物的損害とは別問題 | 操業記録、代替調達 | 売買契約・事業保険 |
| 長期遅延中の腐敗・変質 | 遅延、固有の性質、梱包、温度管理を総合判断する | 温湿度、商品性質、保管記録 | 第3条3項・4項 |
| 共同海損分担金 | 単なる遅延費用とはせず、第2条を確認する | 共同海損宣言、精算人資料 | 第2条 |
| 救助料 | 担保危険回避との関係で第2条を確認する | 救助契約、裁定・精算資料 | 第2条 |
第3条5項は、第2条により支払われる費用を例外として扱っています。
したがって、事故後に時間が経過して発生した費用であっても、それが共同海損・救助料なのか、単なる遅延・保管・商業費用なのかを区別します。
船舶所有者等の支払不能・金銭債務不履行
第3条6項は、船舶所有者、管理者、用船者または運航者の支払不能・金銭債務不履行による損害・費用について、所定の条件で免責とします。
中心となるのは、貨物を本船へ積み込んだ時点です。
被保険者がその支払不能・金銭債務不履行を認識していた、または通常の業務過程で認識すべきであり、それが正常な航海の遂行を妨げ得る状態であったかを確認します。
単に航海後に船社が倒産した、または支払不能が後日判明したという事実だけで、直ちに免責となるわけではありません。
善意の譲受人特則
拘束力のある売買契約に基づき、善意で貨物を購入または購入することに合意し、保険契約の譲渡を受けた保険金請求者については、第3条6項の免責が適用されない場合があります。
確認する資料は、売買契約、保険契約の譲渡、B/L、インボイス、取得時の認識、関連当事者との関係です。
航海または航海事業の喪失・目的達成不能
第3条7項は、航海または航海事業の喪失・目的達成不能に基づく請求を免責とします。
原文は、貨物の物的損害そのものではなく、航海または運送上の冒険が失敗した、継続できなくなった、または当初の目的を達成できなくなったことを請求の基礎とする場合を問題にしています。
この免責は、運送契約が正式に打ち切られた場合だけに限定されるとは限りません。
一方、運送契約の打切り通知が存在するだけで、貨物の物的損害まで一律に免責となるわけでもありません。
認定に用いる主な事実
| 事実・資料 | 判断上の意味 | それだけでは確定しない理由 | 実務対応 |
|---|---|---|---|
| 船社・NVOCCの正式な運送打切り通知 | 当初の運送が契約上終了したことを示す重要資料 | 貨物損害・共同海損等の請求まで当然に免責とはならない | 通知理由、発効日、貨物所在地を確認する |
| 貨物引取り要求 | 以後の運送が荷主側へ移された可能性を示す | 一時的な保管・引取調整の場合もある | B/L条件と後続輸送指示を確認する |
| 運送人が以後の運送を拒絶 | 当初航海・運送の継続不能を示す | 代替運送が同一契約内で手配される場合がある | 拒絶範囲、代替案、追加費用条件を確認する |
| 長期間の港湾閉鎖・軍事封鎖 | 事実上の目的達成不能を示す場合がある | 一時的な中断・遅延にとどまる可能性がある | 期間、再開見込み、当局発表を継続確認する |
| 別港揚げ・保管 | 当初の航海変更を示す | 第5条上の中間港・避難港処理の場合もある | 運送打切りか継搬目的かを確認する |
| 再積送・継搬費用の請求 | 航海失敗に伴う費用請求の可能性を示す | 第2条、損害軽減費用、個別特約の対象となる場合がある | 費用項目ごとに根拠条項を分ける |
| 貨物に物的損害がない | 請求が航海失敗・遅延・追加費用中心である可能性が高い | 共同海損・救助料等は物的損害がなくても問題になる | 第2条の費用を別途確認する |
運送契約の打切りとの関係
「運送契約の打切り」は、第5条3項における保険期間の処理です。
これに対し、第3条7項は、保険金請求が航海・航海事業の喪失または目的達成不能そのものに基づくかを判断する免責です。
| 比較項目 | 運送契約の打切り | 航海事業の喪失・中絶免責 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|---|
| 主な条項 | 第5条3項 | 第3条7項 | 期間条項と免責条項を混同しない |
| 中心となる問題 | どこで担保が終了し、再積送時にいつ再開するか | 請求が何を基礎としているか | 同じ事故で両方を確認する |
| 正式通知 | 重要な判断資料 | 重要だが必須条件とは限らない | 事実上の継続不能も資料化する |
| 貨物の物的損害 | 期間内かを確認する | 担保危険による物的損害なら別途請求可能性を確認する | 航海失敗だけを理由とする請求と分ける |
| 追加費用 | 再積送前の通知・追加保険料が問題になる | 航海失敗に基づく費用として免責となる可能性がある | 第2条・第11条・個別特約も確認する |
第3条7項の最終的な法的評価は、個別契約文言、事実関係および英国法上の解釈を踏まえて行います。
核兵器等の敵対的使用
第3条8項は、核分裂、核融合、これらに類する反応、放射性力または放射性物質を用いる兵器・装置の敵対的使用から、直接または間接に生じる損害・費用を免責とします。
戦争危険担保が付帯されていても、この免責は別枠で確認します。
境界事例
| 事例 | 第3条8項との関係 | 確認する事項 | 実務対応 |
|---|---|---|---|
| 核兵器の爆発で貨物が損傷 | 典型的に第3条8項が問題になる | 兵器、爆発原因、放射性作用 | 当局・保険者へ即時通知する |
| 放射性物質散布装置が敵対的に使用された | 放射性物質を用いる装置として免責が問題になる | 装置の構造、使用目的、汚染経路 | 現場立入制限と測定記録を保存する |
| 通常兵器で原子力施設が攻撃され、通常爆発・火災で貨物が損傷 | 攻撃対象が原子力施設という事実だけでは結論できない | 損害が通常兵器の爆風・火災によるものか、核・放射性力等によるものか | 損害原因を分離して保険者へ提出する |
| 原子力施設への攻撃後、放射性物質が放出され貨物が汚染 | 第3条8項の直接・間接因果関係や他の核関連免責が問題になる | 放出原因、兵器・装置、汚染経路、放射線測定 | 専門家・保険者による個別評価を行う |
| 原子力施設周辺の避難命令により配送が遅延 | 物的損害がなければ遅延免責も問題になる | 貨物損害の有無、遅延費用の内容 | 第3条5項と第3条8項を分けて確認する |
原子力施設、放射性物質または核関連地域が関係しているという名称・所在地だけで判断せず、損害を生じさせた作用と第3条8項の兵器・装置との因果関係を確認します。
第4条 不堪航・不適合免責
船舶・艀の不堪航または不適合
第4条1項1号は、船舶または艀の不堪航、または被保険貨物を安全に運送するための不適合による損害・費用について、被保険者が積込み時にその状態を認識していた場合に免責とします。
事故後に船舶の欠陥が判明しただけでは足りず、被保険者が貨物積込み時にその不堪航・不適合を認識していたかが重要です。
コンテナ・輸送用具の不適合
第4条1項2号は、コンテナまたは輸送用具が被保険貨物の安全な運送に適していないことによる損害・費用を対象とします。
次のいずれかが問題になります。
- コンテナ・輸送用具への積込みが保険開始前に行われた場合
- 被保険者またはその使用人が積込みを行い、積込み時に不適合を認識していた場合
コンテナの穴、ドアシール不良、床面損傷、換気能力不足、リーファー機器の不適合、貨物に対する材質不適合等を、積込み前後のEIR、写真、PTI記録、温度記録等で確認します。
善意の譲受人特則の範囲
第4条2項は、拘束力ある売買契約に基づき善意で貨物を購入または購入合意した保険契約の譲受人について、第4条1項1号の免責を適用しない旨を定めています。
この特則が明示的に対象とするのは、船舶・艀の不堪航または不適合に関する第4条1項1号です。
コンテナ・輸送用具の不適合に関する第4条1項2号まで、一律に同じ例外が適用されるとは書かれていません。
| 免責 | 善意の譲受人特則 | 確認事項 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 第4条1項1号 船舶・艀の不堪航・不適合 | 第4条2項により適用除外となり得る | 拘束力ある売買契約、善意取得、保険契約の譲渡 | 単なるB/L所持だけでは足りない |
| 第4条1項2号 コンテナ・輸送用具の不適合 | 第4条2項の明示的対象ではない | 積込み時期、積込み主体、認識 | 船舶の不堪航と同じ扱いにしない |
黙示の耐航性保証違反の放棄
第4条3項では、保険者は、船舶の耐航性および貨物を仕向地まで運送する適合性についての黙示保証違反を放棄しています。
ただし、この規定は第4条1項の個別免責を消滅させるものではありません。
被保険者が積込み時に不堪航・不適合を認識していた等、第4条1項の要件を満たす場合は、同項の免責を別途確認します。
共同海損・救助料との関係
第2条は、担保危険による損失を回避するため、またはその回避に関連して発生し、運送契約、準拠法または実務に従って算定・決定された共同海損および救助料を担保します。
第3条5項の遅延免責および第3条7項の航海事業の喪失・中絶免責があるからといって、共同海損・救助料がすべて免責になるわけではありません。
典型例:機雷危険を避けるため代替港へ回航した場合
本船が航路上の機雷危険を回避し、船舶・乗組員・積載貨物の共同安全を確保するため、予定航路を離れて安全な代替港へ回航したとします。
その結果、異常な追加燃料費、避難港費用、緊急荷卸し費用等が発生し、船社が共同海損を宣言することがあります。
この場合は、単に輸送が遅れたという理由ではなく、担保される戦争危険による損失を共同の安全のために回避した費用かを確認します。
必要資料は、共同海損宣言、船長報告、航路変更理由、当局の機雷警報、General Average Bond、General Average Guarantee、共同海損精算人の通知です。
| 費用・請求 | 確認する条項 | 中心となる判断 | 実務対応 |
|---|---|---|---|
| 共同海損分担金 | 第2条 | 担保危険回避との関係、契約・準拠法・実務による算定 | 精算人資料を保険者へ提出する |
| 救助料 | 第2条 | 担保危険による損失回避との関係 | 救助契約・裁定資料を提出する |
| 単なる保管料 | 第3条5項・7項、個別特約 | 遅延または航海失敗に伴う費用か | B/L上の費用負担も確認する |
| 通常の継搬費用 | 第3条7項、個別特約 | 航海事業の中絶に基づく請求か | 運送契約上の請求と分ける |
| 合理的な損害軽減費用 | 第11条 | 担保損害を回避・軽減するため合理的に支出されたか | 事前通知と費用根拠を保存する |
通常のICC本体では補償されそうに見えてもWar Clausesで対象外となり得る場面
| 場面 | 一見すると補償されそうに見える理由 | War Clausesで確認する事項 | 実務対応 |
|---|---|---|---|
| 最終港到着後15日を超えて戦争危険損害が発生 | 通常ICCでは60日条項との関係で期間内に見える場合がある | 第5条の15日ルール | 両約款の期間を別計算する |
| 航海中断後に保管料・継搬費用が発生 | 戦争危険が原因で発生した費用である | 第3条7項、第2条、第11条 | 費用項目ごとに根拠を分ける |
| 拿捕・抑留により納期遅延が発生 | 拿捕・抑留は担保危険となり得る | 第3条5項の遅延免責 | 貨物の物的損害を確認する |
| 戦争危険回避の迂回で追加運賃が発生 | 戦争危険回避のための支出である | 運送契約上の追加運賃か、共同海損等か | B/L、タリフ、共同海損資料を確認する |
| 長期滞留で貨物が腐敗 | 紛争による港湾閉鎖が背景にある | 遅延、固有の性質、梱包・温度管理 | 原因別のサーベイを行う |
| 核関連施設への攻撃で貨物が汚染 | 敵対行為により生じた損害である | 第3条8項と他の核・放射能免責 | 汚染経路・作用機序を確認する |
実務で問題になりやすいケース
| ケース | 主な争点 | 確認資料 | 初動対応 |
|---|---|---|---|
| 戦争危険による遅延だけで貨物損害がない | 第3条5項、商業損失 | 貨物検査、納期資料、損害明細 | 物的損害と遅延損害を分ける |
| 別港揚げ後に保管料が発生 | 第3条7項、B/L上の費用負担 | 船社通知、B/L、請求書 | 保険請求と運送契約上の請求を分ける |
| 運送契約打切り後に再積送費用が発生 | 第3条7項、第5条3項 | 打切り通知、保険者通知、Booking | 期間再開と費用担保を別判定する |
| 長期滞留中にカビが発生 | 第3条3項・4項・5項 | 梱包、温湿度、保管記録、サーベイ | 複合原因を分解する |
| 積込み前から船社の信用不安が判明 | 第3条6項の認識要件 | 信用情報、社内通信、積込み日時 | 積込み時の認識を固定する |
| 不適合コンテナで水濡れした | 第4条1項2号と第3条3項 | EIR、写真、Stuffing Report | コンテナ欠陥と積付不良を分ける |
| 不堪航船で事故が発生 | 第4条1項1号、被保険者の認識 | 船級、検査、社内情報 | 積込み時の認識を確認する |
| 善意の買主が保険金請求 | 第3条6項・第4条2項の適用 | 売買契約、保険譲渡、B/L | どの免責に対する例外かを限定する |
| 機雷危険回避で共同海損宣言 | 第2条と第3条5項・7項 | 共同海損宣言、船長報告、警報 | 担保危険回避との因果関係を確認する |
| 原子力施設攻撃後に貨物が汚染 | 第3条8項、直接・間接因果関係 | 当局発表、放射線測定、事故原因 | 専門家と保険者へ即時連絡する |
フォワーダーの関与範囲
| 業務場面 | フォワーダーが支援できること | フォワーダーが断定すべきでないこと | 主な確認相手 | 実務対応 |
|---|---|---|---|---|
| 適用約款確認 | Policy、Certificate、Endorsementの収集 | 最終的な保険金支払可否 | 荷主、保険者、保険代理店 | 通常ICCとWar Clausesを分ける |
| 事故原因整理 | 当局・船社・港湾・倉庫資料の収集 | 担保危険・免責の最終認定 | 船社、保険者、サーベイヤー | 事実と評価を分けて報告する |
| 貨物損害確認 | 写真、検査、サーベイ、温湿度資料の調整 | 損害原因・損害額の最終判断 | 荷主、倉庫、サーベイヤー | 物的損害と費用損害を分ける |
| 梱包・積付け確認 | 梱包仕様、作業者、写真、Stuffing Reportの収集 | 梱包業者等の法的責任 | 荷主、梱包業者、倉庫 | 独立請負人と使用人を区別する |
| 遅延・追加費用 | 費用明細、期間、請求者、発生理由の整理 | すべての追加費用が保険対象との判断 | 荷主、船社、NVOCC、保険者 | 第2条・第3条・B/Lを分ける |
| 運送契約の打切り | 正式通知、貨物所在地、再積送案の整理 | 第3条7項または第5条の最終解釈 | 船社、NVOCC、保険者 | 保険期間と免責を別判定する |
| 不堪航・不適合 | 船級、EIR、コンテナ検査、積込み資料の収集 | 被保険者の認識の最終判断 | 船社、ターミナル、保険者 | 積込み時点を固定する |
| 共同海損 | 宣言、保証書、精算人通知の調整 | 認容項目・分担額の最終決定 | 船社、共同海損精算人、保険者 | 貨物引取り期限前に保証手続を行う |
| 核・放射性事案 | 当局発表、測定資料、立入制限情報の収集 | 第3条8項の最終適用判断 | 当局、専門家、保険者 | 安全確保を優先し原資料を保存する |
| 第三者への権利保全 | Claim Letter、通知期限、証拠収集の支援 | 船社・NVOCC・倉庫等の法的責任 | 船社、NVOCC、倉庫、専門家 | 保険者通知と並行して行う |
実務シナリオ1:戦争危険により航海が中断し、追加費用が発生した場合
紛争地域を避けるため、本船が予定航路を離れ、代替港で貨物を荷卸しし、保管料と継搬費用が発生したとします。
戦争危険が背景にあるという理由だけで、これらの費用がすべてWar Clausesで補償されるわけではありません。
まず、貨物に物的損害があるかを確認します。
次に、費用が第2条の共同海損・救助料、第11条の合理的な損害軽減費用、個別特約の対象なのか、または第3条7項の航海事業の喪失・中絶に基づく請求、単なる運送契約上の費用なのかを分けます。
船社通知、共同海損宣言、B/L、タリフ、保険者通知、費用明細を同一の時系列で整理します。
実務シナリオ2:拿捕・抑留により貨物引渡しが遅れた場合
船舶が担保され得る戦争危険によって拿捕・抑留され、貨物の引渡しが大幅に遅れたとします。
拿捕・抑留自体が第1条の担保危険に該当する可能性はあります。
しかし、貨物に滅失・損傷がなく、請求内容が納期遅延、販売機会喪失、違約金、在庫不足だけであれば、第3条5項の遅延免責が問題になります。
貨物の物的状態、抑留命令、貨物所在地、保険期間、売買契約、B/L上の責任を分けて確認します。
実務シナリオ3:長期滞留中に貨物が変質した場合
港湾閉鎖により貨物が倉庫で長期滞留し、その間にカビ、錆、腐敗または品質低下が発生したとします。
この場合は、戦争危険を背景原因として扱うだけでなく、第3条3項の梱包不十分、第3条4項の貨物固有の性質、第3条5項の遅延を個別に確認します。
温湿度記録、梱包仕様、換気、リーファーログ、電源停止、保管期間、事故前後の品質検査を確認します。
戦争危険と貨物変質との間に複数の原因が介在する場合は、サーベイヤーによる原因分析が重要です。
実務シナリオ4:原子力施設への軍事攻撃後に貨物が損傷した場合
通常兵器による原子力施設への攻撃後、周辺倉庫の貨物が爆風、火災または放射性物質で損傷したとします。
攻撃対象が原子力施設であるという事実だけで、第3条8項の適用を即断しません。
通常兵器の爆風・火災による物的損害なのか、核分裂・核融合、放射性力・放射性物質を用いる兵器・装置の敵対的使用から直接・間接に生じた損害なのかを確認します。
放射性物質の放出・汚染がある場合は、第3条8項だけでなく、他の核・放射能関連免責や個別Endorsementも確認します。
実務シナリオ5:不適合コンテナと戦争危険が重なった場合
戦争危険回避のために航路変更と長期滞留が発生し、その間にコンテナ内で貨物が水濡れまたは変質したとします。
貨物損害が戦争危険に関連して見えても、直接原因がコンテナの穴、ドアシール不良、換気不足、温度管理不良または積付け不良であれば、第4条1項2号または第3条3項が問題になります。
コンテナ自体の不適合と、貨物の梱包・積付け不良を分けて確認します。
EIR、PTI記録、積付写真、コンテナ選定者、積込み主体、保険始期、被保険者の認識を整理します。
よくある誤解
| よくある誤解 | 実際の考え方 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| War Clausesがあれば戦争関連費用はすべて補償される | 貨物の物的損害、共同海損、救助料、遅延費用、航海中絶費用を分ける | 費用項目ごとに根拠条項を確認する |
| 担保危険に該当すれば免責条項は確認不要である | 第1条に該当しても第3条・第4条で除外され得る | 担保危険、期間、免責の順で確認する |
| 戦争危険による遅延なら遅延損害も補償される | 第3条5項は担保危険による遅延も原則免責とする | 第2条の共同海損・救助料は別確認する |
| 運送契約が打ち切られればすべて第3条7項で免責となる | 物的損害、共同海損等は別途確認する | 第5条の期間処理と第3条7項を分ける |
| 正式な運送打切り通知がなければ第3条7項は適用されない | 請求の基礎が航海・航海事業の喪失にあるかが中心である | 事実上の継続不能や請求項目も確認する |
| 共同海損宣言があれば必ずWar Clausesで支払われる | 担保される戦争危険の回避との因果関係が必要である | 宣言理由と精算資料を確認する |
| 船社が倒産すれば必ず支払不能免責になる | 積込み時の被保険者の認識と正常航海への影響が必要である | 積込み時点の信用情報を確認する |
| 善意の譲受人特則はすべての免責を解除する | 条項ごとに適用範囲が異なる | 第4条2項は第4条1項1号を対象とする |
| 第4条2項は不適合コンテナにも当然適用される | 第4条2項の明示的対象は第4条1項1号である | 第4条1項2号は別途要件を確認する |
| 船舶が不堪航なら被保険者の認識に関係なく免責となる | 第4条1項1号では積込み時の被保険者の認識が重要である | 事故後に欠陥が判明しただけでは足りない |
| 原子力施設が攻撃されればすべて核兵器免責になる | 兵器・装置と損害原因との直接・間接の因果関係を確認する | 通常兵器の爆風・火災と放射性損害を分ける |
| 保険で免責ならNVOCC・フォワーダーが負担する | 保険免責と運送契約上の責任は別問題である | B/L、標準取引条件、見積条件を確認する |
| 通常ICCで補償対象ならWar Clausesでも同じ結論になる | War Clauses独自の期間・第3条7項・第3条8項がある | 両約款を個別に判定する |
判断チェックリスト
| 確認場面 | 確認する相手 | 確認事項 | 問題がある場合の対応 |
|---|---|---|---|
| 保険契約の特定 | 保険契約者、保険者、保険代理店 | Policy、Certificate、約款版、Endorsement | 適用書類一式を取得する |
| War Clauses付帯 | 保険者、保険代理店 | 付帯の有無、適用版、特別条件 | 書面による回答を取得する |
| 担保危険 | 保険者、船社、当局 | 戦争、敵対行為、拿捕、抑留、遺棄兵器等 | 複数の客観資料を収集する |
| 貨物の物的損害 | 荷主、倉庫、サーベイヤー | 滅失・損傷、発生時期、直接原因 | 現場保存、写真、サーベイを行う |
| 保険期間 | 船社、ターミナル、保険者 | 本船積込み、到着、荷卸し、15日 | War Clauses独自の期間を算定する |
| 梱包・積付け | 荷主、梱包業者、倉庫 | 仕様、作業者、作業日、コンテナ内積付け | 第3条3項の主体・時期を確認する |
| 貨物固有の性質 | 荷主、メーカー、サーベイヤー | 腐敗、錆、自己発熱、吸湿等 | 外力・遅延・環境との因果関係を分析する |
| 遅延損害 | 荷主、保険者、売買当事者 | 納期遅延、逸失利益、違約金、物的損害 | 第3条5項と第2条を分ける |
| 支払不能 | 荷主、船社、NVOCC、保険者 | 積込み時の信用情報、認識、航海への影響 | 認識資料と積込み日時を固定する |
| 航海事業の喪失・中絶 | 船社、NVOCC、保険者、必要に応じ専門家 | 打切り通知、航海継続可能性、請求項目 | 貨物損害と航海失敗に基づく請求を分ける |
| 核関連兵器等 | 当局、専門家、保険者 | 兵器・装置、放射性作用、損害経路 | 専門資料を確保し個別評価する |
| 船舶・艀の不堪航 | 船社、船級、保険者 | 積込み時の状態と被保険者の認識 | 船級・検査・社内記録を保存する |
| コンテナ・輸送用具の不適合 | 船社、ターミナル、倉庫、荷主 | EIR、PTI、積込み主体、認識 | 第4条1項2号の各要件を分ける |
| 善意の譲受人 | 売買当事者、保険者、必要に応じ専門家 | 拘束力ある売買契約、善意、保険契約譲渡 | 適用される免責条項を限定する |
| 共同海損・救助料 | 船社、共同海損精算人、保険者 | 宣言理由、担保危険、保証、分担請求 | 第2条に基づく請求として提出する |
| 第三者への請求 | 船社、NVOCC、倉庫、専門家 | Claim Letter、通知期限、責任制限、提訴期間 | 保険請求と並行して権利を保全する |
実務上確認すべき資料
| 資料区分 | 具体的な資料 | 確認できる内容 | 取得先 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 保険契約 | Policy、Certificate、Schedule、Endorsement | War Clauses、版、免責修正、特約 | 保険契約者、保険者 | 通常ICCとWar Clausesを分ける |
| 担保危険 | 政府・軍事・海事当局発表、船長報告 | 戦争危険、行為者、事故背景 | 当局、船社 | 発表日時と更新履歴を保存する |
| 保険期間 | Stowage Plan、Port Log、AIS、Discharge Report | 積込み、到着、荷卸し、15日 | 船社、港湾、ターミナル | 貨物部分ごとに確認する |
| 貨物損害 | 写真、サーベイレポート、検査記録 | 損害状態、原因、発生時期 | 荷主、倉庫、サーベイヤー | 原本・メタデータを保存する |
| 梱包・積付け | Packing List、梱包仕様、Stuffing Report、写真 | 梱包方法、作業者、作業時期 | 荷主、梱包業者、倉庫 | 独立請負人との関係を確認する |
| コンテナ | EIR、PTI、修理履歴、温度記録 | 不適合、損傷、機器状態 | 船社、ターミナル、デポ | 積込み前後を比較する |
| 遅延 | 輸送時系列、Arrival Notice、納期資料 | 遅延期間、原因、商業損失 | 船社、NVOCC、売買当事者 | 物的損害と分ける |
| 支払不能 | 信用情報、倒産通知、Booking、積込み記録 | 積込み時の認識と航海への影響 | 船社、NVOCC、信用情報機関 | 後日判明した情報と区別する |
| 運送契約打切り | 正式通知、B/L、貨物引取通知、再積送指示 | 航海・運送の終了、貨物所在地 | 船社、NVOCC | 第5条と第3条7項を分ける |
| 共同海損 | 宣言、General Average Bond、General Average Guarantee | 宣言理由、保証、分担請求 | 船社、共同海損精算人 | 担保危険との因果関係を確認する |
| 核・放射性事案 | 当局発表、放射線測定、汚染分析、兵器情報 | 作用機序、汚染経路、因果関係 | 当局、専門機関 | 安全規制に従って取得する |
| 運送契約 | Master B/L、House B/L、標準取引条件、タリフ | 免責、追加費用、運送打切権、責任制限 | 船社、NVOCC、フォワーダー | 保険上の免責と混同しない |
| 権利保全 | Claim Letter、受領記録、通知期限管理表 | 第三者請求の保存 | 船社、NVOCC、倉庫 | 保険者通知とは別に行う |
まとめ
Institute War Clauses(Cargo)の免責条項とは、戦争危険約款が付帯されていても、保険で補償されない損害・費用を定める部分です。
第3条は、被保険者の故意、通常の漏損・自然減量・通常損耗、梱包・準備の不十分、貨物固有の性質、遅延、船舶所有者等の支払不能・金銭債務不履行、航海または航海事業の喪失・目的達成不能、核関連兵器等の敵対的使用を免責として定めています。
第3条7項は、単に運送契約が打ち切られたかだけでなく、保険金請求が貨物の物的損害ではなく、航海・運送事業の失敗または目的達成不能そのものを基礎としているかを確認する条項です。
運送契約の打切りは第5条3項による保険期間の問題でもあるため、第3条7項の免責と分けて確認します。
第3条8項では、核分裂・核融合、類似反応、放射性力または放射性物質を用いる兵器・装置の敵対的使用から直接・間接に生じる損害・費用が免責となります。
原子力施設が攻撃されたという事実だけで即断せず、通常兵器による爆風・火災なのか、核・放射性力等による損害なのかを確認します。
第4条は、船舶・艀の不堪航・不適合と、コンテナ・輸送用具の不適合を別々の要件で規定しています。
善意の譲受人に関する第4条2項の特則は、第4条1項1号の船舶・艀の不堪航・不適合を対象としており、第4条1項2号のコンテナ・輸送用具の不適合まで一律に適用される規定ではありません。
遅延による損害・費用は原則免責ですが、担保される戦争危険による損失を回避するために発生した共同海損・救助料は、第2条に基づいて別途確認します。
共同海損宣言が存在するだけでは足りず、担保危険の回避、運送契約、準拠法、実務および精算資料を確認する必要があります。
また、貨物保険で免責となることと、船社、NVOCC、フォワーダー、倉庫または荷主の間で誰が損害・追加費用を負担するかは別問題です。
実務では、保険証券、適用約款、積込み・荷卸し記録、B/L、打切り通知、梱包・積付記録、EIR、温湿度記録、共同海損資料、費用明細、保険者通知、Claim Letterを時系列で整理し、担保危険、保険期間、免責、費用担保、運送契約上の責任を分けて判断します。

Institute War Clauses(Cargo)の担保危険