貨物保険はどの輸送経路まで有効?積替え・保管・迂回と保険期間

Transit Route and Cargo Insurance Period: Transshipment, Storage and Diversion

輸送区間と保険期間とは

輸送区間と保険期間とは、貨物海上保険で、どこからどこまでの輸送を保険の対象にするか、また保険がいつ開始し、いつ終了するかを整理する実務です。

貨物海上保険では、単に「海上輸送中だけ」を確認するのではありません。出荷地、集荷、輸出港、CFS・CY、船積み、海上輸送、積替え、揚げ港、保税地域、通関、国内配送及び最終納品先までの実際の貨物の動きを確認します。

輸送区間が曖昧なまま付保すると、事故が発生した場所や時点が保険期間内かどうかで問題になる可能性があります。特に、港到着後の保管中、通関後の配送中、別倉庫への搬入後、又は納品後に発見された損傷では、「事故が保険対象区間内で発生したか」が重要になります。

本記事では、主としてInstitute Cargo Clauses(A)、(B)及び(C)1/1/09のTransit Clauseを前提に、輸送区間と保険期間の基本構造を説明します。実際の保険期間は、保険証券、適用約款、特別約款、個別合意及び輸送実態によって確認する必要があります。

この記事で扱う範囲

項目 この記事で扱う内容 他記事で扱う内容
Transit Clause 保険始期、保険終期及び複数の終了事由のうち最も早い時点で判定する基本構造 ICC2009約款第8条の英文、各号の詳細解釈及び判例・約款解釈
Warehouse to Warehouse 倉庫から倉庫までという考え方と、無制限の保管補償ではないこと 倉庫間保険の個別条件、保管危険及び期間延長特約
ordinary course of transit 貨物が通常の輸送過程にあるかを判断する基本要素 転売、加工、検査、長期保管等の個別事案における詳細判断
港到着後の期間制限 ICC2009を前提とした最終荷揚港での本船荷揚げ完了後60日の終了事由 航空貨物、郵便貨物、特別約款又は期間延長条件の詳細
建値との関係 FOB、CFR、CIF、DAP、DDP等と保険対象区間が自動的には一致しないこと 建値ごとの危険移転、費用負担及び建値と保険金額
保険金額 輸送区間に含まれる運賃、保険料、内陸費用等の確認が必要になること インボイス金額、運賃、保険料及び希望利益を含む保険金額の計算
事故発生区間 事故発生場所・時点と保険期間との関係を確認する基本的な考え方 貨物事故の通知、サーベイ、運送人への事故通知、損害資料及び保険金請求

この記事は、「実際の貨物の動きのうち、どこまでがinsured transitに含まれるか」を整理する総論です。具体的な事故原因、保険金請求及び個別約款の法的解釈は、各専門記事で確認します。

制度の目的と背景

貨物海上保険では、貨物が保険契約締結時から無期限に補償されるわけではありません。輸送のために貨物が動き始めた時点から、通常の輸送過程を経て、最終目的地で輸送が終了するまでを一定の条件で保険期間として整理します。

この仕組みは、運送中の危険と、通常の輸送から離れた保管、販売、加工、仕分け又は配送準備等の事業上の危険を区別するためにあります。

したがって、単に貨物が「倉庫内にある」「港にある」「コンテナ内にある」という物理的な場所だけで保険期間を判断することはできません。貨物が置かれている目的、次の輸送予定、保管期間、被保険者の選択及び実際の取扱いを確認する必要があります。

輸送区間と保険期間が問題になる主な場面

場面 主な確認事項 保険期間上の論点 確認資料
出荷元で貨物を動かした時 輸送開始のための移動か、単なる倉庫内整理か Transit Clause上の保険始期に該当するか 出荷指示、集荷記録、積込記録、倉庫作業記録
輸出港又はCFSで保管された時 船積みのための一時保管か、長期保管か ordinary course of transitが継続しているか 搬入記録、Booking、船積予定、保管理由
積替港で滞留した時 通常の積替えか、輸送計画から外れた保管か 積替え又は遅延中も保険が継続するか B/L、運航予定、積替記録、遅延通知
輸入港で通関待ちとなった時 通常の通関待ちか、荷主都合の長期滞留か 通常輸送内の一時保管か、保管目的へ転換したか 入港日、荷揚日、申告日、輸入許可日、搬出日
別倉庫へ搬入した時 最終目的地への途中保管か、振分け・配送用倉庫か 他の倉庫への荷卸しによる保険終了事由に該当するか 配送指示、倉庫契約、入庫記録、後続配送計画
コンテナや車両を保管に使用した時 輸送待ちか、保管設備として使用しているか 通常輸送外の保管として保険が終了するか 滞留期間、保管理由、搬出予定、指示メール
納品後に損傷が発見された時 損傷がいつ発生したか、納品時に異常があったか 保険期間内の事故であることを確認できるか 受領書、写真、ダメージリマーク、検品記録

Transit Clauseを適用するために確認する事項

確認事項 確認する内容 判断上の意味 情報不足時の対応
保険証券上の出発地 From、Place of Origin、出荷倉庫等 保険始期を判断する場所 実際の集荷地と一致するか保険代理店へ確認する
保険証券上の目的地 To、Final Destination、最終倉庫等 通常の保険終期を判断する場所 港止めか最終納品先までかを明確にする
貨物が最初に動いた目的 直ちに運送用具へ積み込み、輸送を開始するためか 保険始期に該当するか 倉庫内作業と輸送開始作業を区別する
途中保管の目的 輸送上必要な一時保管か、販売・加工・振分け等か ordinary course of transitが継続しているか 保管指示、次の輸送予定及び保管期間を確認する
荷卸し先の用途 最終倉庫か、通常輸送外の保管・振分け・配送用倉庫か 保険終了事由に該当するか 倉庫選定者及び倉庫使用目的を確認する
最終港での荷揚げ完了日 外航船からの荷揚げが完了した日 ICC2009の60日終了事由の起算点 入港日ではなく、荷揚げ完了日を確認する
個別特約・期間延長 保管危険、期間延長、別目的地等の特約 標準Transit Clauseが修正されているか 保険証券、Endorsement及び保険代理店の回答を確認する

Transit Clauseの基本構造

ICC(A)、(B)及び(C)1/1/09のTransit Clauseでは、保険は、保険契約に記載された倉庫又は保管場所で、貨物が輸送開始のため運送用具へ直ちに積み込まれる目的で最初に動かされた時から開始します。

その後、貨物がordinary course of transitにある間は保険が継続し、次の終了事由のうち最も早い時点で終了する構造です。

終了事由 終了する時点 典型例 実務上の確認点
最終倉庫での荷卸し完了 保険契約に記載された最終目的地の倉庫又は保管場所で、運送用具からの荷卸しが完了した時 トラックから買主倉庫への荷卸し完了 単なる到着時ではなく、荷卸し完了時を確認する
他の倉庫での荷卸し完了 被保険者側が通常輸送外の保管、振分け又は配送のために選択した他の倉庫で荷卸しが完了した時 販売用在庫として配送センターへ入庫 倉庫の場所ではなく、選択目的を確認する
運送用具・コンテナを保管に転用 被保険者側が車両、運送用具又はコンテナを通常輸送外の保管に使用することを選択した時 納品調整のためコンテナを長期保管庫として使用 輸送待機と保管転用を区別する
最終荷揚港での荷揚げ完了後60日 外航船から最終荷揚港への荷揚げが完了してから60日が経過した時 通関又は配送が長期化し、60日を超えた場合 本船入港日ではなく、本船からの荷揚げ完了日を起算点とする

「いずれか早い時点」で終了するため、最終荷揚港での荷揚げ完了後60日以内であっても、通常輸送外の保管用倉庫へ荷卸しした時点や、コンテナを保管に転用した時点で先に保険が終了する可能性があります。

通常のTransit Clauseだけでは当然に対象とならない場面

場面 対象とならない可能性がある理由 必要な確認 検討する対応
輸送開始前の長期保管 貨物が輸送開始のために動き始めていない 最初の移動時点と移動目的 保管保険又は特別条件を確認する
梱包・加工・検品だけを目的とする移動 直ちに輸送を開始するための移動とは限らない 作業内容、作業後の保管及び集荷予定 保険始期を保険代理店へ事前確認する
販売待ちの保管 通常輸送ではなく在庫保管へ目的が変わっている 販売契約、保管目的、次の輸送予定 在庫保険等を検討する
加工・組立てのための中間保管 貨物輸送が中断され、別の事業目的に使用されている 加工内容、滞留期間、再出荷条件 加工中危険を含む別条件を確認する
振分け・配送センターへの入庫 Transit Clause上の他の倉庫への荷卸しに該当する可能性がある 倉庫選定者、使用目的、配送計画 保険終期又は延長条件を確認する
最終港荷揚げ後60日を超える保管 標準的な60日終了事由に該当する可能性がある 荷揚げ完了日、経過日数、遅延理由 期限前に期間延長を相談する
納品完了後の保管 最終倉庫での荷卸し完了により保険が終了している可能性がある 納品・荷卸し完了時点、損傷発見時点 事故発生時点を資料で確認する

これらの場面で必ず保険対象外になるという意味ではありません。個別の保険証券、特約及び事実関係によって判断が変わるため、輸送開始前又は保管形態を変更する前に確認する必要があります。

輸送に関する各概念の違い

概念 示すもの 主な資料 保険期間との関係 混同した場合の問題
実際の輸送経路 貨物が物理的に移動した場所と順序 Booking、B/L、配送指示、追跡記録 事故場所及び実際の輸送実態を確認する基礎 予定経路だけで事故区間を判断してしまう
insured transit 保険契約上、対象として合意された輸送区間 保険証券、付保証明書、付保依頼 保険対象となる場所的範囲 実際の経路がすべて自動的に対象だと誤解する
保険期間 保険が開始してから終了するまでの時間的範囲 Transit Clause、特別約款、Endorsement 事故発生時点が補償期間内かを判断する 場所が対象なら期間も無制限だと誤解する
B/L上の区間 運送契約上のPlace of Receipt、Port of Loading、Port of Discharge、Place of Delivery等 Master B/L、House B/L、Sea Waybill 輸送実態を確認する資料の一つ B/L区間と保険対象区間を同一視する
建値 売主・買主間の費用、危険及び手配の分担 売買契約、インボイス 保険を誰が手配するかの判断材料 建値だけで保険始期・終期が決まると誤解する
運送人の責任期間 運送契約又は適用法令に基づく運送人の責任範囲 B/L約款、運送契約、適用法令 貨物保険の保険期間とは別の概念 運送人責任と貨物保険の補償を混同する

付保依頼で確認する輸送区間

貨物海上保険の付保依頼では、B/L上の積港と揚港だけでなく、貨物が実際にどこから動き出し、どこで最終的に荷卸しされるかを確認します。

主な確認対象は、出荷元倉庫から輸出港まで、輸出港から輸入港まで、輸入港から納品先まで、海外工場から国内倉庫まで、CFS・CY・保税地域を含む区間、通関後の国内配送及び納品先での荷卸しまでです。

B/Lが港から港までであっても、荷主が必要としているinsured transitは、海外工場から国内の最終納品先までである場合があります。反対に、運送契約がDoor-to-Doorであっても、保険証券が港から港までしか記載していない場合は、その差を確認する必要があります。

保険期間の開始

ICC2009のTransit Clauseを前提とする場合、貨物が出荷倉庫に存在しているだけでは、保険が開始したとは限りません。

貨物が、輸送開始のため運送用具へ直ちに積み込まれる目的で、保険契約に記載された倉庫又は保管場所内で最初に動かされた時が、保険始期を判断する基本になります。

したがって、棚卸し、倉庫内の配置変更、検品、加工、梱包場所への移動等は、直ちに保険始期になるとは限りません。移動の目的と、その後に輸送が継続して開始されたかを確認します。

保険期間の終了

保険期間は、単に貨物が目的地の市町村や港へ到着した時に終了するとは限りません。最終倉庫での荷卸し完了、通常輸送外の保管等に使用する別倉庫での荷卸し完了、運送用具等の保管転用、又は最終荷揚港での荷揚げ完了後60日のうち、最も早い終了事由を確認します。

このため、貨物が最終目的地へ向かう途中でも、被保険者側が配送センターを販売用の振分け又は在庫保管に使用することを選択した場合、その倉庫への荷卸し完了時に保険が終了する可能性があります。

逆に、通常の通関待ち、運送人の都合による遅延、通常の積替え等であれば、他の終了事由に該当しない範囲で保険が継続する場合があります。

Warehouse to Warehouseの考え方

Warehouse to Warehouseは、出荷地から最終目的地までの一連の輸送を保険対象として捉える考え方です。しかし、「倉庫から倉庫まで」という日本語だけでは、正確な保険期間を判断できません。

保険は、出荷倉庫に貨物が置かれた時から無条件に始まるのではなく、輸送開始のための最初の移動から問題になります。また、最終目的地に到着する前でも、通常輸送外の保管、振分け、配送又はコンテナの保管転用等により終了する場合があります。

Warehouse to Warehouseは、すべての倉庫内危険を無期限に補償する倉庫保険ではありません。

ordinary course of transitの考え方

ordinary course of transitとは、貨物が出荷地から保険契約上の目的地へ向かう合理的かつ通常の輸送の流れにある状態を指します。

通常の輸送に必要な港湾内保管、積替え、通関待ち、運送人都合による遅延及び通常の配送待ちは、個別事情によりordinary course of transitの一部と整理される場合があります。

一方、販売待ち、加工待ち、長期在庫、振分け、被保険者都合の無期限保管又は別目的地への転送等は、通常の輸送過程から外れたり、別の終了事由に該当したりする可能性があります。

実務では、次の3点を中心に確認します。

  1. なぜ貨物がその場所にあるのか
    輸送上必要な待機か、販売・加工・保管等の別目的かを確認します。
  2. どの程度の期間置かれているのか
    通常の輸送に必要な期間か、長期保管へ変化しているかを確認します。
  3. 具体的な次の輸送予定があるか
    運送人、配送日、納品先等が決まっているかを確認します。

建値との関係

FOB、CFR、CIF、DAP、DDP等の建値は、売主と買主の間で費用、危険及び手配を分担する条件です。しかし、建値だけで貨物保険の保険始期、保険終期又はinsured transitが自動的に決まるわけではありません。

建値 保険手配者の典型例 想定される保険区間 実務上の確認点
FOB 買主側が手配することが多い 船積港以降を中心に、必要に応じて内陸区間を追加 船積前区間を誰が付保するか、保険の空白がないかを確認する
CFR 買主側が手配することが多い 海上輸送及び輸入側内陸輸送 売主が運賃を負担していても、保険手配は別に確認する
CIF 売主側が手配することが多い 売買契約及び保険証券で合意された区間 買主が必要とする補償条件、金額及び最終納品区間と一致するかを確認する
DAP 売主側が手配することが多い 指定仕向地までの内陸輸送を含む区間 荷卸し前後のどこで保険が終了するかを確認する
DDP 売主側が手配することが多い 輸入通関後の最終納品先までを含む区間 通関後配送、納品待ち及び最終荷卸し時点を確認する

建値と保険金額の関係については、建値と保険金額で、費用、運賃、保険料及び希望利益の取扱いを確認します。

港から港までと一貫輸送の違い

比較項目 港から港まで 出荷地から納品先まで 確認上の注意点
主な対象区間 輸出港から輸入港まで 集荷、輸出港、海上輸送、輸入港、国内配送及び納品先 保険証券のFromとToを確認する
輸出側内陸輸送 含まれない可能性がある 含める設計が可能 工場から港までの事故を誰が付保するか確認する
輸入側内陸輸送 含まれない可能性がある 最終納品先まで含める設計が可能 通関後配送を明示する
CFS・CYでの保管 海上輸送に付随する範囲で確認 全輸送過程の一部として確認 保管目的と期間制限を確認する
納品時の荷卸し 通常は対象区間外となる可能性がある 最終倉庫での荷卸し完了まで含む場合がある 単なる到着と荷卸し完了を区別する
主なリスク 港前後に保険の空白が生じる可能性 途中保管や終期の認識違いが生じる可能性 実際の輸送全体と保険証券を照合する

CFS・CY・保税地域での保管

CFS、CY及び保税地域での一時保管は、通常の輸送過程に付随する場合があります。しかし、その場所にあるという事実だけで保険期間内と判断することはできません。

船積み又は通関のための通常の一時保管か、船積み延期、納品予約待ち、書類不備、荷主都合の引取り遅れ又は在庫保管へ変化しているかを確認します。

また、最終荷揚港での本船荷揚げ完了後60日という終了事由は、フリータイムとは別の概念です。コンテナのフリータイムが残っていることや、保税蔵置が認められていることだけで、貨物保険が継続しているとは判断できません。

輸送区間と保険期間の判断フロー

  1. 適用する保険証券・約款を確認する
    ICC2009、個別特約、保管特約及び期間延長条件を確認します。
  2. 保険証券上の出発地と目的地を確認する
    From、To、Via、Place of Origin及びFinal Destinationを確認します。
  3. 実際の輸送経路を時系列で整理する
    集荷、搬入、船積み、積替え、荷揚げ、通関、搬出及び納品を整理します。
  4. 保険始期を確認する
    貨物が輸送開始のため最初に動かされた時点を確認します。
  5. 途中保管がordinary course of transitにあるかを確認する
    保管目的、保管期間及び次の輸送予定を確認します。
  6. 終了事由をすべて確認する
    最終倉庫での荷卸し、別倉庫での荷卸し、保管転用及び60日経過を比較します。
  7. 最も早い終了時点を特定する
    複数の終了事由のうち最初に発生した時点を保険終期の候補とします。
  8. 事故発生推定時点と照合する
    保険始期後かつ保険終期前の事故であることを資料で確認します。

保険期間で問題になりやすいケース

ケース 主な原因 確認資料 判断のポイント 初動対応
出荷前に倉庫内で損傷 輸送開始前の保管又は作業中に事故が発生 作業記録、集荷予定、写真、出荷指示 輸送開始目的の最初の移動後か 事故時点と最初の移動目的を確認する
輸出CFSで長期滞留 本船延期、書類不備、荷主都合等 CFS搬入日、Booking、船積変更記録 ordinary course of transitが継続しているか 滞留理由と次の船積予定を保険代理店へ共有する
積替港での長期遅延 運送人都合、航路変更、港湾混雑等 B/L、運航通知、積替記録 被保険者の支配を超える遅延か 運送人通知を保存し、変更内容を連絡する
輸入港で通関が長期化 検査、許認可、書類不足等 荷揚日、申告記録、検査通知、輸入許可 60日終了事由及び保管目的 荷揚げ完了日からの日数を管理する
配送センターへ先行搬入 納品先未確定、振分け又は配送準備 入庫指示、倉庫契約、配送計画 通常輸送外の振分け・配送用倉庫か 搬入前に保険終期を確認する
コンテナを長期保管に使用 倉庫不足、納品予約待ち等 コンテナ滞留記録、指示メール 運送用具を保管に転用したか 保管転用前に期間延長等を相談する
国内配送中に事故 保険が港から港までしか設定されていない 保険証券、配送指示、事故報告 国内配送がinsured transitに含まれるか 付保依頼と保険証券の区間を照合する
納品後に損傷発見 納品時の検品不足、潜在損傷等 受領書、外装写真、開梱記録 保険期間内に損傷したことを説明できるか 直ちに写真を残し、事故通知と原因調査を行う

具体例1 工場から買主倉庫までの一貫輸送

日本の工場から貨物を集荷し、輸出港、海上輸送、輸入港、通関及び国内配送を経て、買主倉庫へ納品するケースです。

保険証券に工場から買主倉庫までが記載され、貨物が輸送開始のためトラックへ直ちに積み込まれる目的で工場内を最初に動かされた場合、その時点が保険始期の候補になります。

輸入港で通常の通関待ちがあり、その後予定どおり買主倉庫へ配送された場合は、他の終了事由に該当しない限り、通常の輸送過程が継続していると整理できる可能性があります。

買主倉庫でトラックからの荷卸しが完了した時点が、通常の保険終期になります。貨物が倉庫の敷地へ到着した時点と、荷卸しが完了した時点を区別する必要があります。

具体例2 輸入港到着後に通関が長期化した場合

貨物が最終荷揚港で本船から荷揚げされた後、輸入許可に必要な書類や許認可の問題により、保税地域での保管が長期化したケースです。

まず、本船入港日ではなく、本船からの荷揚げが完了した日を確認します。ICC2009の標準的なTransit Clauseでは、この日から60日が終了事由の一つになります。

ただし、60日以内であれば必ず保険が継続するわけではありません。被保険者側が貨物を通常輸送外の保管に使用する別倉庫へ搬入した場合や、コンテナを保管に転用した場合には、別の終了事由が先に発生する可能性があります。

60日を超える可能性が判明した段階で、保険代理店へ遅延理由、現在地、貨物状態及び今後の配送予定を連絡し、期間延長等の可否を確認する必要があります。

具体例3 配送用倉庫で振分けを行う場合

保険証券上の最終目的地は複数の店舗ですが、輸入後に貨物を配送センターへ搬入し、店舗別に振り分けてから配送するケースです。

配送センターが単なる通常輸送上の一時中継地点であるのか、被保険者側が振分け又は配送のために選択した倉庫であるのかを確認します。

後者である場合、配送センターで運送用具からの荷卸しが完了した時点が、Transit Clause上の終了事由に該当する可能性があります。最終店舗まで実際の輸送が続いていても、貨物保険が自動的に継続するとは限りません。

店舗までの輸送も保険対象にしたい場合は、付保時点で配送センターの役割、店舗別配送及び最終目的地を保険代理店へ説明し、保険証券又は特約へ反映させる必要があります。

事故発生区間との関係

貨物事故が発生した場合は、事故発見場所だけでなく、事故が実際に発生したと考えられる場所と時点を確認します。

納品時に外装破損が確認された場合でも、船積前、海上輸送中、港湾荷役中、保税保管中又は国内配送中のどこで損傷したかによって、保険期間、運送人への通知先及び必要資料が変わります。

事故対応の詳細は、貨物事故、事故発生区間の特定、サーベイ及び保険金請求に関する各記事で確認します。本記事では、事故発生推定時点を保険始期・終期と照合するところまでを扱います。

よくある誤解

誤解 実際の考え方 実務上の注意点
Warehouse to Warehouseなら、出荷倉庫に置かれた時から保険が始まる ICC2009では、輸送開始のため運送用具へ直ちに積み込む目的で、貨物が最初に動かされた時が基本です。 単なる保管、棚移動、検品又は加工のための移動と区別します。
倉庫から倉庫までなら、途中の保管はすべて無期限に補償される 通常の輸送過程にあるか、他の終了事由に該当していないかを確認します。 販売待ち、振分け、加工及び長期在庫は特に注意が必要です。
最終港で荷揚げ後60日間は必ず保険が継続する 60日は終了事由の一つであり、他の終了事由が先に発生すれば、その時点で終了する可能性があります。 別倉庫への荷卸しやコンテナの保管転用を確認します。
60日の起算日は本船の入港日である ICC2009では、最終荷揚港で外航船からの荷揚げが完了した時を基準にします。 入港日、荷役開始日及び荷揚げ完了日を区別します。
B/LがDoor-to-Doorなら貨物保険も最終納品先まで有効である 運送契約上の区間とinsured transitは別に確認する必要があります。 保険証券のFrom、To及びFinal Destinationを確認します。
CIFであれば買主が必要とする全区間が十分に付保されている CIFで売主が保険を手配しても、補償条件、金額及び区間が買主の期待と一致するとは限りません。 保険証券、適用約款、保険金額及び対象区間を確認します。
納品後に損傷を発見すれば、貨物保険で当然に対応できる 保険期間内に損傷したことを確認する必要があります。 納品時の外装確認、写真、受領書へのリマーク及び早期通知が重要です。
フリータイム中であれば貨物保険も継続している フリータイムと貨物保険の保険期間は別の制度です。 コンテナ条件とTransit Clauseの終了事由を別々に確認します。

フォワーダー実務での判断チェックリスト

確認場面 確認する相手 確認事項 問題がある場合の対応
付保依頼の受付時 荷主 実際の出荷地、最終納品先、途中倉庫及び輸送目的 住所と施設用途を確認し、曖昧な「港から倉庫まで」等の表現を具体化する
Booking確認時 荷主・運送担当者 Place of Receipt、積港、揚港、Place of Delivery及び積替港 実際の輸送経路と保険対象区間の差を整理する
保険証券確認時 保険代理店 From、To、Via、Final Destination、適用約款及び特約 実輸送と一致しない場合は、輸送開始前に訂正を依頼する
出荷開始時 荷主・倉庫業者 貨物が最初に動いた時刻、目的及び積込状況 輸送開始前作業との区別が曖昧な場合は記録を残す
CFS・CY搬入時 運送人・倉庫業者 搬入日、船積予定、滞留理由及び次の輸送予定 長期化する場合は保険代理店へ早期に連絡する
最終港荷揚げ時 船会社・運送人 本船入港日ではなく、本船からの荷揚げ完了日 60日の期限管理を開始する
別倉庫へ搬入する時 荷主・配送担当者 一時中継か、保管・振分け・配送目的か 搬入前に保険終期及び期間延長の要否を確認する
納品時 配送会社・荷受人 荷卸し完了時刻、外装状態、数量及びダメージリマーク 異常があれば写真を残し、直ちに事故通知する

関係者の役割

関係者 主な役割 提供する情報 注意点
荷主 実際の出荷地、納品先、途中保管及び輸送目的を伝える 売買契約、出荷指示、倉庫・納品情報 途中倉庫の用途や輸送変更を速やかに共有します。
フォワーダー 輸送全体を時系列で整理し、付保区間と照合する Booking、B/L、配送指示、搬入・搬出情報 B/L上の区間だけで保険範囲を判断しません。
保険代理店 適用約款、保険始期・終期及び特約の確認を支援する 保険証券、付保証明書、Endorsement、引受回答 輸送変更や保管長期化の連絡を受けた場合は、保険会社へ確認します。
保険会社 契約条件と事実関係に基づき保険期間を判断する 適用約款、個別条件、変更承認及び事故資料 保険期間内でも、損害原因や免責事項は別に判断されます。

実務上のポイント

輸送区間と保険期間は、貨物海上保険の場所的範囲と時間的範囲を決める基本です。

付保時には、保険証券上のFromとToだけでなく、実際の出荷地、集荷方法、CFS・CY、積替え、最終荷揚港、保税保管、国内配送、途中倉庫及び最終荷卸しまでを時系列で確認します。

特に重要なのは、途中保管の場所ではなく目的です。通常輸送上の一時保管か、販売、加工、振分け、配送又は在庫保管に変化しているかによって、保険期間の判断が変わる可能性があります。

輸送経路、目的地、保管目的又は配送計画が変更された場合は、変更後に事故が起きてから確認するのではなく、変更前又は判明後直ちに保険代理店へ連絡します。

まとめ

輸送区間と保険期間とは、貨物海上保険で、どこからどこまでの輸送を保険対象とし、保険がいつ開始し、いつ終了するかを整理する実務です。

ICC2009のTransit Clauseを前提とする場合、保険は、輸送開始のため運送用具へ直ちに積み込む目的で貨物が最初に動かされた時から開始し、ordinary course of transitにある間継続します。

保険終期は、最終倉庫での荷卸し完了、通常輸送外の保管等に使用する他の倉庫での荷卸し完了、運送用具又はコンテナの保管転用、最終荷揚港での本船荷揚げ完了後60日のうち、最も早い終了事由によって判断します。

Warehouse to Warehouseであっても、すべての保管中危険が無期限に補償されるわけではありません。また、B/L上の区間、建値、運送人の責任期間及び貨物保険のinsured transitは、それぞれ別に確認する必要があります。

フォワーダーは、出荷地、最終目的地、途中保管の目的、荷揚げ完了日及び納品時の状態を記録し、輸送変更や長期保管が生じた場合は早期に保険代理店へ相談することが重要です。

外航貨物海上保険の保険期間は、保険証券、適用約款、特約及び実際の輸送状況によって判断されます。具体的な輸送変更、長期保管又は事故がある場合は、専門の保険会社・保険代理店へご相談ください。

同義語・別表記

  • 保険期間
  • 輸送区間
  • 保険対象区間
  • 保険始期
  • 保険終期
  • 倉庫間保険
  • Warehouse to Warehouse
  • Transit Clause
  • ordinary course of transit
  • insured transit