英国海上保険法における最高信義・告知義務・表示
英国海上保険法における最高信義とは
英国海上保険法1906年では、海上保険契約は最高信義に基づく契約であるとされています。
最高信義とは、保険者と被保険者の双方が、保険契約の締結にあたり、重要な事実を誠実に扱うべきであるという考え方です。
海上保険では、保険者が貨物、船舶、航海、梱包、輸送経路、危険事情のすべてを自ら確認できるわけではありません。そのため、保険を申し込む側が、引受判断に影響する重要な事情を適切に伝えることが重視されてきました。
MIA1906における伝統的な考え方
MIA1906第17条から第20条は、海上保険契約における最高信義、告知義務、表示に関する伝統的な考え方を示す条文です。
ただし、英国法ではその後の法改正により、これらの条文の扱いは変更されています。そのため、この記事では、外航貨物海上保険約款を理解するための背景知識として、MIA1906上の伝統的な考え方を整理します。
被保険者の告知義務
MIA1906の伝統的な考え方では、被保険者は、保険契約が成立する前に、保険者の引受判断に影響する重要な事情を告知する必要があるとされていました。
重要な事情とは、慎重な保険者が保険料を決める場合や、その危険を引き受けるかどうかを判断する場合に影響を与える事情をいいます。
外航貨物海上保険でいえば、貨物の種類、性質、梱包状態、輸送経路、積替えの有無、輸送方法、温度管理の必要性、過去の事故歴、危険地域の通過、特殊貨物であることなどが問題になることがあります。
告知しなくてもよい事情
MIA1906の伝統的な整理では、保険者から質問がない場合でも、すべての事情を告知しなければならないわけではありません。
例えば、危険を減少させる事情、保険者がすでに知っている事情、保険者が知っていると推定される事情、保険者が告知を不要とした事情、明示または黙示のワランティにより告知が不要となる事情などは、告知の対象から外れることがあります。
ただし、ある事情が重要であるかどうかは、個別の事実関係によって判断されます。そのため、実務では、判断に迷う事情ほど事前に整理しておくことが重要です。
保険代理人による告知
保険が代理人によって手配される場合、代理人も重要な事情を保険者に伝える必要があります。
代理人が知っている重要な事情、または通常の業務上知っているべき事情は、告知の対象となることがあります。また、被保険者自身が告知すべき重要な事情についても、代理人を通じて保険者に伝える必要があります。
外航貨物海上保険では、荷主、商社、フォワーダー、保険代理店、保険会社の間で情報が流れるため、誰がどの情報を把握していたかが問題になることがあります。
契約交渉中の表示
MIA1906では、保険契約の交渉中に、被保険者または代理人が保険者に対して行う重要な表示は、真実でなければならないとされていました。
ここでいう表示には、事実に関する表示だけでなく、見込みや信念に関する表示も含まれます。
事実に関する表示は、実質的に正確である必要があります。一方、見込みや信念に関する表示については、誠実に行われていることが重要になります。
表示の訂正
契約交渉中に行われた表示は、保険契約が成立する前であれば、撤回または訂正できるとされています。
そのため、保険申込後に、貨物の内容、輸送経路、船積予定、危険事情などに変更や誤りが判明した場合には、契約成立前に速やかに修正することが重要です。
外航貨物海上保険では、船積日、船名、航路、梱包状態、温度管理条件、危険品該当性などが後から変更されることがあります。このような場合、保険手配時の情報と実際の輸送内容がずれないように注意する必要があります。
保険契約の成立時期
MIA1906第21条では、海上保険契約は、被保険者の申込みを保険者が承諾した時点で成立するとされています。
重要なのは、保険証券がまだ発行されていなくても、保険者が申込みを承諾していれば、契約が成立している場合があるという点です。
契約成立時期を確認するためには、スリップ、カバーノート、その他の慣習的な契約メモが参照されることがあります。
外航貨物海上保険での実務上の意味
外航貨物海上保険では、保険証券が後日発行されることがあります。しかし、保険契約の成立は、必ずしも証券発行時と同じではありません。
そのため、事故が発生した場合には、保険申込日、保険者の承諾日、カバーノートの発行日、保険証券の発行日、船積日、危険開始時期を分けて確認する必要があります。
特に、緊急手配、船積後手配、包括予定保険、通知漏れ、保険証券発行前の事故などでは、契約成立時期と告知内容が重要になります。
実務上の注意点
最高信義、告知義務、表示の問題は、外航貨物海上保険の引受判断に直結します。
貨物の性質、輸送条件、梱包状態、危険品該当性、温度管理、航路、積替え、過去事故、特殊な保管条件などは、保険者の判断に影響する可能性があります。
実務では、保険会社にとって重要と思われる事情を隠さないこと、申込内容と実際の輸送内容を一致させること、変更があれば早めに連絡することが重要です。
MIA1906の最高信義・告知義務・表示に関する条文は、現在の英国法では改正の影響を受けていますが、外航貨物海上保険の約款解釈や実務感覚を理解するうえでは、今なお重要な基礎概念です。
