BREAKUP VESSEL CLAUSE(解体船約款)

BREAKUP VESSEL CLAUSE

Breakup Vessel Clauseとは

Breakup Vessel Clause(解体船約款)とは、貨物を積載する船舶について、出帆前にその船舶が解体されることがすでに決定している場合に、貨物保険の条件、保険料率又は引受判断が変更される可能性を定める特別約款です。

この約款は、解体予定船の最終航海又はそれに近い状態で行われる航海が、通常の商業航海とは異なるリスクを持つ可能性があることを前提としています。

すでに通常の保険条件や料率が提示されている場合でも、実際の積載船が解体予定船であることが判明すれば、保険会社が追加保険料、免責条件、担保範囲、船舶変更又は引受可否を再検討することがあります。

Breakup Vessel Clauseは、貨物そのものの性質ではなく、貨物を輸送する船舶の状態と、その船舶について出帆前に解体予定が決定していたかという事実に着目する約款です。

そのため、Institute Classification Clause(協会船級約款)、船齢制限、船齢割増、非適格船舶の通知義務、船級、船種、推進能力、本船変更及びトランシップと密接に関係します。

Breakup Vessel Clauseで重要なのは、単に船齢が高いかどうかではなく、貨物を積載して出帆する前に、当該船舶の解体が決定していたかどうかを確認することです。

この記事で扱う範囲

項目 この記事で扱う内容 別に確認すべき内容
Breakup Vessel Clause 出帆前に解体が決定している船舶を使用する場合の保険条件・料率への影響を整理します。 個別保険契約の正式な約款文言、保険会社の引受判断
解体予定船 通常の老朽船と、解体を前提とした船舶の違いを整理します。 船舶売買契約、解体契約及び船主側の最終的な処分判断
Institute Classification Clause 船級、船齢、船種、構造及び推進能力との関係を整理します。 適格船舶、非適格船舶、追加保険料及び通知義務の正式条件
船齢割増 高船齢船の使用により保険料率が変更される可能性を扱います。 船齢基準、船種別基準及び保険会社ごとの割増条件
本船変更 Booking後に実際の積載船が変更された場合の再確認を扱います。 船会社による配船判断及び運送契約上の変更権限
トランシップ 積替先船舶が高船齢船、ローカル船又は解体予定船である場合を整理します。 全積替船の確定時期及び船会社からの情報提供範囲
迅速通知 解体予定船である可能性を把握した後の保険会社への連絡を扱います。 通知期限、通知方法、通知遅延時の法的効果
事故対応 事故後に解体予定船であったことが判明した場合の資料確認を整理します。 事故原因、因果関係、保険金支払及び法的責任の最終判断
フォワーダーの関与 Booking、船舶情報確認、荷主説明、保険通知及び事故資料収集を扱います。 最終的な賠償責任は契約上の地位、過失及び責任制限で判断します。

本記事は、解体予定船に関する基本的な実務整理を目的としています。

具体的な引受可否、追加保険料、免責条件又は担保制限の有無は、保険証券、包括予定保険の条件、実際の使用船舶、航路、貨物内容及び保険会社の判断により確認する必要があります。

なぜ解体予定船が問題になるのか

貨物保険は、通常の商業航海に使用される船舶によって貨物が輸送されることを前提として引き受けられることがあります。

これに対し、解体がすでに決定している船舶は、通常運航を継続する船舶とは異なる事情を持つ可能性があります。

懸念事項 解体予定船で問題になり得る事情 貨物輸送への影響 主な確認資料
船体の老朽化 腐食、構造疲労又は船体設備の劣化が進んでいる可能性があります。 浸水、船体損傷、座礁等のリスク確認が必要になります。 建造年、船級、検査履歴、船舶情報
機関の状態 大規模修繕又は部品交換が見送られている可能性があります。 機関故障、航行不能、曳航又は遅延が問題になります。 機関情報、運航履歴、事故情報
修繕・整備 継続運航を前提とした長期的な保守が抑制されている可能性があります。 通常航海と同じ安全水準が維持されているか確認が必要です。 船級情報、検査証書、修繕履歴
船級維持 解体までの短期間だけ船級を維持している場合があります。 Institute Classification Clauseへの適合を確認します。 船級協会、Class Status、証書
運航管理 売船又は解体を前提とした運航管理体制となっている可能性があります。 通常の商業航海との管理上の違いが問題になります。 船主、管理会社、運航会社の情報
航海目的 解体ヤード、売船地又は最終揚地へ向かう航海である場合があります。 通常航路と異なる寄港、積替え又は航海計画が問題になります。 航海スケジュール、寄港地、現地代理店情報
事故後対応 修理して商業運航へ復帰する経済的動機が弱い場合があります。 事故後の修理、救助、継搬及び貨物処理へ影響する可能性があります。 船主方針、事故報告、救助・修理計画

これらの事情が存在するからといって、解体予定船であるだけで必ず事故が発生するとは限りません。

また、船舶が解体予定であることだけで、貨物事故の原因が直ちに確定するものでもありません。

貨物保険上は、通常の引受条件や料率を維持できるか、追加条件が必要かというリスク評価の問題として整理します。

Institute Classification Clauseとの関係

Breakup Vessel Clauseは、Institute Classification Clause(協会船級約款)と密接に関係します。

Institute Classification Clauseは、貨物保険上、使用船舶が一定の船級、船齢、構造、船種及び推進能力等の条件を満たしているかを確認するための約款です。

高船齢船、非自航船、特定船種又は非適格船舶を使用する場合には、保険会社への通知、追加保険料又は個別承認が問題になることがあります。

一方、Breakup Vessel Clauseで中心となるのは、単に船齢が高いことではなく、出帆前に解体されることが決定していたかという点です。

比較項目 Institute Classification Clause Breakup Vessel Clause 実務上の確認
中心となる情報 船級、船齢、船種、構造、推進能力等 出帆前に解体予定が決定していたか 双方を別々に確認します。
高船齢船 船齢基準や船種別条件が問題になります。 高船齢だけでは解体予定船とは限りません。 船齢と解体予定を混同しません。
船級 適格船級を維持しているか確認します。 船級があっても解体予定船である場合があります。 船級適合だけで判断しません。
通知 非適格船舶等について通知が必要になる場合があります。 解体予定の情報取得後、迅速な連絡が必要になる場合があります。 通知対象と通知時期を確認します。
保険会社の対応 追加保険料、条件変更又は個別承認 料率変更、条件制限、船舶変更又は引受不可 事前に保険会社へ照会します。

船齢が高くても、通常の商業運航を継続し、必要な船級、検査及び保守管理を維持している船舶は存在します。

反対に、船級条件を形式上満たしていても、解体目的で売却され、最終航海へ入ることが決定している船舶もあり得ます。

通常の老朽船と解体予定船の違い

区分 主な特徴 貨物保険上の確認点 典型的な対応
通常の商業船 継続的な商業運航を前提として管理されています。 船級、船齢、船種及び通常の適格条件を確認します。 包括予定保険等の通常条件で確認します。
通常の老朽船 船齢は高いものの、商業運航を継続しています。 Institute Classification Clause、船齢制限及び船齢割増を確認します。 必要に応じて追加保険料又は通知を行います。
解体予定船 出帆前に、解体を前提とした売却又は処分が決定しています。 Breakup Vessel Clause、引受可否、料率変更及び条件制限を確認します。 速やかに保険会社へ通知し、承認を得ます。
最終航海に近い船舶 解体地、売船地又はスクラップヤードへ向かう可能性があります。 解体決定の有無、航海目的及び実際の積載貨物を確認します。 疑わしい段階で保険会社へ照会します。
売船予定船 所有者変更又は管理会社変更が予定されています。 売船が継続運航目的か、解体目的かを確認します。 売船情報だけで解体予定と断定しません。

老朽船は、主に船齢、船級、船種及び保守状態の問題として整理されます。

解体予定船は、船舶としての商業運航寿命が終了し、解体を前提とした処分又は最終航海に入る船舶として、別の観点から確認する必要があります。

「出帆前に解体が決定している」とは

Breakup Vessel Clauseで重要になるのは、貨物を積載した船舶が出帆する前に、すでに解体予定船であることが決まっていたかどうかです。

単に船齢が高い、解体ヤードの近くへ向かう、又は事故後に解体されたという事情だけで、出帆前から解体が決定していたと直ちに判断できるものではありません。

確認する情報 主な情報源 確認すべき事項 実務上の意味
船舶売買情報 船主、船舶ブローカー、船会社、海事情報 継続運航目的か、スクラップ目的の売却か 解体予定船である可能性を確認します。
解体契約・売却先 船主、ブローカー、解体事業者 解体業者又はスクラップ買主への売却か 出帆前の決定時期を確認する資料になります。
航海目的 運航スケジュール、港湾情報、現地代理店 通常の商業航海か、解体地への最終航海か 航海目的と解体予定の関係を確認します。
船齢・船級 船舶情報サービス、船級協会、Booking情報 高船齢、船級状態、検査期限 解体予定を疑う補助情報になります。
本船変更 船会社通知、Booking Confirmation、B/L 変更後の船名、IMO番号、船齢、船級 当初予定船とは別に再確認します。
トランシップ 船会社、海外代理店、現地オペレーター 積替先船の船名、船種、船齢及び運航目的 積替後の船舶にも条件が適用される可能性があります。
現地からの注意情報 海外代理店、港湾関係者、通関業者 情報源、取得日時、具体的な内容 保険会社へ照会するきっかけになります。
事故後の報道・調査 事故報告、海事情報、サーベイヤー 事故前から解体予定があったか 通知時期と契約前提を再検証します。

荷主やフォワーダーが、常に船主の売船・解体方針を把握できるとは限りません。

しかし、著しく高船齢の船舶、在来船、バルク船、ローカル船、解体地に近い航路、本船変更又はトランシップを伴う輸送では、船舶情報の追加確認が必要になることがあります。

貨物保険への影響

保険会社の対応 内容 荷主・フォワーダー側の確認 注意点
通常条件での引受 情報確認後も既存条件を維持する場合です。 承認内容と対象船舶を記録します。 口頭確認だけでなく記録を残します。
追加保険料 解体予定船、高船齢又は非適格船舶リスクに応じて割増します。 料率、適用期間及び対象航海を確認します。 船齢割増と解体船割増を区別します。
免責条件の変更 自己負担額又は特定損害の免責が追加される場合です。 変更後の条件を荷主へ説明します。 従来条件との差を明確にします。
担保範囲の制限 一部危険又は特定事故の補償が制限される場合です。 対象危険と除外内容を確認します。 保険料の割増だけとは限りません。
条件付き引受 船級維持、指定航路、追加検査等を条件とする場合です。 条件を誰が確認・履行するか整理します。 条件違反時の扱いを確認します。
船舶変更の要請 別の適格船舶へ積載することを求める場合です。 船会社へ変更可能性を確認します。 納期、運賃、保管費等への影響があります。
引受不可 当該船舶又は航海では保険を引き受けない判断です。 代替船、代替航路又は別契約を検討します。 保険が自動的に継続すると考えません。

解体予定船である可能性を把握した場合は、自己判断で「船級があるため問題ない」「コンテナ船だから対象外」と処理せず、保険会社又は保険代理店へ確認することが重要です。

事前に解体予定を把握できなかった場合でも、船会社、ブローカー、海外代理店又は海事情報から疑わしい情報を得た時点で、速やかに連絡します。

問題になるのは、最初から把握できたかという点だけではなく、情報を取得した後にどのような確認・通知を行ったかという点です。

具体例1:本船変更後に解体予定船と判明した場合

Booking時には、船齢が比較的新しく、通常の商業運航を継続するコンテナ船への積載が予定されていたとします。

しかし、港湾混雑又は配船変更により、本船が別の高船齢船へ変更されました。

変更後の船名とIMO番号を確認したところ、その船舶がスクラップ目的で売却され、今回の航海後に解体ヤードへ向かう予定であるとの情報が見つかりました。

この場合、Booking時点の保険確認だけで終了せず、変更後の船舶について、船齢、船級、船種、航海目的及び解体予定の決定時期を再確認します。

フォワーダーは、船会社から本船変更通知を受けた日時、解体予定情報を把握した日時、情報源及び保険会社へ通知した日時を記録します。

保険会社が追加保険料又は条件変更を求める場合は、荷主へ説明し、承認を得たうえで輸送を継続するか、船舶変更を求めるかを決定します。

本船変更が行われた場合は、当初予定船の確認結果をそのまま変更後の船舶へ適用せず、船舶情報と保険条件を再確認します。

具体例2:トランシップ先のローカル船が事故後に解体予定船と判明した場合

貨物が大型コンテナ船で中継港まで輸送された後、最終仕向地までローカル船へ積み替えられたとします。

荷主及び日本側フォワーダーは、最初の積載船については船名と船級を確認していましたが、積替先船舶の詳細は確認していませんでした。

積替後のローカル船で機関故障と浸水事故が発生し、貨物が損傷しました。

事故後の調査により、積替先船舶は高船齢で、事故前から解体目的の売却が決定していた可能性が判明したとします。

この場合、積替先船舶の船名、IMO番号、船級、航海履歴、売船情報、解体予定の決定日時及び関係者が情報を把握した時期を確認します。

事故原因が機関故障又は浸水であっても、解体予定船であったという事実だけで因果関係が確定するものではありません。

貨物事故の原因調査と、Breakup Vessel Clauseに基づく事前通知・引受条件の問題を分けて整理します。

トランシップを伴う輸送では、最初の積載船だけでなく、実際に貨物を積載する積替先船舶についても確認が必要になる場合があります。

具体例3:解体予定情報を把握後も通知しなかった場合

在来船による重量物輸送を手配した後、海外代理店から「当該船舶は今回の航海後に売船され、解体される予定らしい」との連絡を受けたとします。

情報は正式な船会社通知ではなかったため、担当者は確定情報ではないと判断し、保険会社や保険代理店へ連絡しませんでした。

その後、航海中に機関故障が発生し、避難港での長期滞留中に貨物損害が発生しました。

この場合、担当者が解体予定を確定できたかだけではなく、疑わしい情報を得た後に、船会社、ブローカー又は保険会社へ確認を行ったかが問題になります。

海外代理店からのメール、担当者間の連絡、船舶情報の検索履歴及び保険会社への通知記録を整理します。

確定情報ではなかったとしても、保険条件へ影響する合理的な疑いがあった場合には、保険会社へ照会し、判断を委ねることが実務上安全です。

解体予定を完全に証明できるまで通知を待つのではなく、保険条件へ影響する可能性を認識した時点で照会することが重要です。

実務で問題になりやすいケース

ケース 主な争点 確認資料 判断のポイント 初動対応
Booking後に高船齢船へ本船変更 船齢条件、解体予定、通知時期 変更通知、船名、IMO番号、船級情報 変更後の船舶を再確認したか 保険会社へ船舶変更を通知します。
積替先がローカル船 積替船情報、船級、解体予定 積替記録、海外代理店報告、B/L 実際の積載船を特定できるか 積替先船舶の情報を収集します。
高船齢バルク船を使用 船齢割増、船級、解体船との区別 建造年、船級、運航履歴 高船齢だけで解体予定と判断していないか Institute Classification Clauseを確認します。
解体ヤード付近が最終揚地 航海目的、通常航海、最終航海 航路、寄港地、船舶売買情報 解体地へ向かうだけか、解体が決定済みか 船会社又はブローカーへ照会します。
非公式な解体予定情報を取得 情報の確度、通知義務、確認対応 メール、チャット、現地報告 情報取得後に確認・通知したか 情報源を記録し保険会社へ照会します。
事故後に解体予定が判明 決定時期、把握時期、事故原因 売船情報、事故報告、連絡記録 出帆前から決定していたか 事故原因と通知問題を分けます。
船級は有効だが解体予定船 船級適合と解体予定の関係 船級証書、売船・解体情報 船級だけで通常船と判断していないか Breakup Vessel Clauseを別途確認します。
通知後に追加保険料を求められた 条件変更、荷主承認、輸送継続 保険会社回答、見積、Booking 変更条件を荷主が承認したか 船舶変更を含む選択肢を提示します。

フォワーダー関与範囲の標準五分類

本記事の五分類は、法令上又は業界全体で確立された分類ではなく、本シリーズにおいてフォワーダーの関与範囲を整理するために使用する分析上の枠組みです。

標準五分類 Breakup Vessel Clauseに関する主な関与 責任判断の中心 主な確認資料
Simple Intermediary(単純取次) 荷主、船会社、保険会社、保険代理店及び海外代理店の情報を取り次ぎます。 単なる取次を超えて、使用船舶の適格性又は保険継続を保証したか 見積書、メール、案内文、取次記録
Cargo Transportation Service Provider(貨物利用運送事業者) 船腹予約、船舶選定、積替え、保管及び輸送情報管理を貨物輸送サービスとして提供します。 本船情報確認、船会社選定、変更通知、保険連絡及び下請管理 運送契約、Booking、船舶通知、作業記録
NVOCC / House B/L Issuer House B/Lを発行し、契約運送人として本船・積替船を使用して輸送を引き受けます。 House B/L上の責任区間、実際の積載船、通知期限及び責任制限 House B/L、Master B/L、Booking、積替記録
Door-to-Door Single Contractor 集荷、海上輸送、積替え、保管、通関及び最終配送を一括して引き受けます。 一括契約の範囲、全区間の船舶情報、下請管理及び荷主説明 包括見積書、仕様書、下請契約、輸送計画
Agent/Coordinator for Specific Operations(特定業務の代理・調整者) 船舶情報確認、保険通知、船舶変更又は現地照会を個別に調整します。 委任範囲、確認義務、通知権限、手配期限及び最終決定者 委任記録、照会記録、保険通知、承認書

Contracting Carrier及びActual Carrierは、法的又は契約上の地位を示す概念であり、本記事の標準五分類を置き換える代替分類ではありません。

船舶情報検索、保険会社への照会、船齢確認、船級確認又は海外代理店への連絡等の個別作業は、それ自体で第六の分類を構成しません。

フォワーダー実務での判断チェックリスト

確認タイミング 確認する相手 確認事項 問題がある場合の対応
Booking時 船会社、NVOCC、船舶情報提供者 予定本船名、IMO番号、船種、建造年、船齢及び船級 高船齢又は船級不明の場合は、荷主と保険代理店へ確認します。
保険手配時 荷主、保険会社、保険代理店 包括予定保険の船級条件、船齢制限、非適格船舶及び解体船条件 通知、追加保険料、条件変更又は引受可否を確認します。
本船変更時 船会社、フォワーダー、NVOCC 変更後の船名、IMO番号、船齢、船級及び船種 変更後の船舶情報を再確認し、必要に応じて保険会社へ通知します。
トランシップ時 船会社、海外代理店、現地オペレーター 積替先船舶、ローカル船、高船齢船及び解体予定の可能性 積替先船舶の情報を取得し、保険条件を確認します。
解体予定情報取得時 船会社、ブローカー、海外代理店、保険会社 情報源、取得日時、決定時期、売却先及び航海目的 情報を記録し、速やかに保険会社又は代理店へ照会します。
船級確認時 船級協会、船会社、船舶情報提供者 船級の有効性、検査期限、Class Status及び推進能力 Institute Classification Clauseへの適合を確認します。
荷主説明時 荷主、輸出者、輸入者 船舶変更、追加保険料、条件変更及び代替船の選択肢 保険継続を断定せず、保険会社の判断を説明します。
事故発生時 荷主、保険会社、サーベイヤー、船会社 事故原因、実際の積載船、解体予定、通知履歴及び本船変更 船舶情報と事故資料を早期に確保します。
責任整理時 荷主、保険会社、運送人、海事弁護士 保険条件、通知義務、事故原因、運送人責任及びフォワーダー関与 保険請求と運送責任を分けて整理します。

保険会社へ通知するときの情報

情報項目 確認内容 実務上の意味 主な資料
船名・IMO番号 実際に貨物を積載する船舶を特定します。 同名船との混同を防ぎ、船齢・船級を確認します。 Booking、B/L、船会社通知
船種 コンテナ船、バルク船、在来船等を確認します。 船種別の船齢条件やリスクを確認します。 船舶情報、船会社資料
建造年・船齢 建造年と出帆時点の船齢を確認します。 船齢制限及び船齢割増の判断材料になります。 船舶データ、船級情報
船級協会・船級状態 船級協会名、Class Status及び検査期限を確認します。 Institute Classification Clauseとの関係を確認します。 船級証書、船級情報
旗国・管理会社 旗国、船主、管理会社及び運航会社を確認します。 運航・管理体制を確認する参考になります。 船舶登録情報
航路・積地・揚地 通常航海か、解体地向け航海かを確認します。 最終航海又は解体ヤード向け航海の可能性を検討します。 運航スケジュール、Booking
貨物の種類・価額 貨物内容、価額、梱包及び損害規模を確認します。 引受可否、条件変更及び免責の判断材料になります。 インボイス、パッキングリスト
解体予定情報 誰から、いつ、どのような情報を得たかを整理します。 情報の確度と通知時期を判断します。 メール、報告書、海事情報
本船変更・積替え 当初予定船と実際の積載船が異なるか確認します。 変更後に新たな問題が生じたか確認します。 変更通知、積替記録

事故時に確認すべき資料

資料区分 主な資料 確認目的 実務上の注意点
保険条件 保険証券、包括予定保険、特別約款 Breakup Vessel Clause及び船級条件を確認します。 正式文言と適用日を確認します。
船舶特定 船名、IMO番号、旗国、船主 実際の積載船を特定します。 本船変更と積替えを確認します。
船齢・船級 建造年、船齢、船級協会、Class Status Institute Classification Clauseへの適合を確認します。 事故時点の状態を確認します。
運送書類 Booking Confirmation、B/L、積替記録 予定船と実際の船舶を比較します。 発行時期と変更履歴を確認します。
売船・解体情報 売船情報、ブローカー情報、解体予定資料 出帆前に解体が決定していたか確認します。 情報の公開日だけで判断しません。
通知履歴 船会社、フォワーダー、保険会社との連絡 誰がいつ情報を把握し通知したか確認します。 メール、電話記録、社内報告を保存します。
事故原因 事故報告、サーベイ、船会社報告 機関故障、浸水、座礁等の原因を確認します。 解体予定との因果関係を自動的に推定しません。
貨物損害 貨物写真、検品記録、損害明細 実際の損害内容と金額を確認します。 船舶条件と貨物損害評価を分けます。
第三者責任 運送約款、事故通知、責任留保 運送人その他への求償を検討します。 通知期限と出訴期限を管理します。

Breakup Vessel Clauseの判断フロー

  1. 予定本船名、IMO番号、船種、建造年及び船齢を確認します。
  2. 船級協会名、Class Status、検査期限及び推進能力を確認します。
  3. 包括予定保険又は個別保険のInstitute Classification Clauseを確認します。
  4. 船齢制限、船齢割増、非適格船舶及びBreakup Vessel Clauseの正式文言を確認します。
  5. 当該船舶が通常の商業運航を継続する船舶か確認します。
  6. 船舶売買情報、解体業者への売却又は最終航海情報の有無を確認します。
  7. 解体予定が貨物積載・出帆前に決定していた可能性があるか確認します。
  8. 本船変更又はトランシップがある場合は、実際の各積載船について再確認します。
  9. 解体予定に関する情報源、取得日時、情報内容及び確認者を記録します。
  10. 疑わしい情報を得た時点で、船会社、ブローカー又は海外代理店へ追加確認します。
  11. 船名、IMO番号、船齢、船級、航路、貨物内容及び解体予定情報を保険会社へ通知します。
  12. 通常条件、追加保険料、条件変更、船舶変更又は引受不可の判断を確認します。
  13. 変更された条件と選択肢を荷主へ説明し、輸送継続又は代替船の判断を得ます。
  14. 事故発生時は、事故原因、実際の積載船、売船・解体情報及び通知履歴を保全します。
  15. 保険条件、船舶情報、事故資料及び責任資料を整理し、保険会社、専門代理店又は海事弁護士へ提出します。

よくある誤解

誤解 実際の考え方 実務上の対応
老朽船と解体予定船は同じである。 老朽船は船齢・船級の問題であり、解体予定船は出帆前に解体が決定している船舶の問題です。 船齢だけでなく、売船情報、解体予定及び航海目的を確認します。
船齢が若ければBreakup Vessel Clauseは関係ない。 中心となるのは船齢ではなく、解体予定が決定していたかです。 船齢と解体予定を別々に確認します。
船級が有効なら通常条件で問題ない。 船級を維持していても、解体予定船である場合があります。 Institute Classification ClauseとBreakup Vessel Clauseを別に確認します。
知らなければ通知しなくてもよい。 最初から知らなかった場合と、情報取得後に通知しなかった場合は異なります。 疑わしい情報を得た時点で保険会社へ照会します。
確定情報になるまで保険会社へ連絡してはいけない。 保険条件へ影響する合理的な疑いがあれば、照会することができます。 情報源と確度を示して確認を依頼します。
事前通知をすれば保険は必ず継続する。 通知後の引受可否と条件は保険会社が判断します。 追加保険料、制限条件又は引受不可を確認します。
コンテナ船には解体船約款は関係ない。 中心は船種ではなく、実際の積載船が解体予定船かどうかです。 コンテナ船でも船名とIMO番号を確認します。
Booking時に確認すれば、その後の確認は不要である。 本船変更又は積替えにより実際の積載船が変わることがあります。 変更後及び積替後の船舶を再確認します。
解体ヤードへ向かう船舶はすべて解体予定船である。 航路だけでは解体決定の有無を確定できません。 売船目的、航海目的及び決定時期を確認します。
事故後に解体された船舶は、出帆前から解体予定だった。 事故を契機として解体された可能性もあります。 解体決定がいつ行われたか確認します。
解体予定船で事故が起きれば、解体予定が事故原因である。 事故原因と保険条件上の通知問題は別に確認します。 サーベイと事故調査に基づいて因果関係を判断します。
フォワーダーが船名を知らなければ責任はない。 契約上の役割、情報取得可能性及び通知後の対応を確認する必要があります。 標準五分類、運送契約、連絡記録を確認します。

フォワーダー実務で安全な案内

  • 予定本船名とIMO番号を確認してください。
  • 船種、建造年、船齢及び船級協会を確認してください。
  • 包括予定保険の船齢条件とInstitute Classification Clauseを確認してください。
  • Breakup Vessel Clauseの付帯及び正式文言を確認してください。
  • 本船変更又はトランシップ後の実際の積載船も確認してください。
  • 解体予定又はスクラップ売船の情報を得た場合は、情報源と取得日時を記録してください。
  • 確定情報でなくても、保険条件へ影響する可能性があれば保険会社へ照会してください。
  • 追加保険料、条件変更、船舶変更又は引受不可の可能性を荷主へ説明してください。
  • 事故時は船舶情報、売船情報、本船変更及び通知履歴を保存してください。
  • 貨物保険上の条件と運送人の事故責任を分けて確認してください。

フォワーダーとしては、「船級があるため問題ありません」「老朽船ですが通常条件で補償されます」又は「事前通知すれば必ず保険が継続します」と断定するのではなく、「実際の積載船、船齢、船級、解体予定の有無及び正式な保険条件を保険会社へ確認する必要があります」と案内することが基本です。

海事弁護士・専門家を利用すべき場面

  • 解体予定が出帆前に決定していたかについて関係者の説明が異なる場合
  • 船舶売買契約又は解体契約の成立時期が争われる場合
  • 解体予定情報を誰がいつ把握していたかが争点になる場合
  • 保険会社への通知時期又は通知義務違反が問題になる場合
  • 保険会社が追加保険料未払い、条件違反又は引受対象外を主張する場合
  • 事故原因と船体・機関の老朽化との因果関係が争われる場合
  • 本船変更又はトランシップ後の船舶情報が十分に開示されていなかった場合
  • 荷主からフォワーダー又はNVOCCへ高額な賠償請求が行われている場合
  • 貨物保険上の補償判断と運送人責任上の判断が大きく異なる場合
  • 事故通知期限、保険金請求期限又は出訴期限が近い場合

実務上のポイント

  • Breakup Vessel Clauseは、出帆前に解体予定が決定している船舶を使用する場合の保険条件・料率を整理する特別約款です。
  • 解体予定船と通常の老朽船は同じではありません。
  • 船齢が高いことだけで解体予定船と判断しません。
  • 船級が有効であることだけでBreakup Vessel Clauseの問題がなくなるわけではありません。
  • Institute Classification ClauseとBreakup Vessel Clauseを別々に確認します。
  • 本船変更又はトランシップがある場合は、変更後の船舶情報を再確認します。
  • 船名だけでなくIMO番号を確認して船舶を特定します。
  • 解体予定に関する情報を得た場合は、確度、情報源及び取得日時を記録します。
  • 疑わしい情報を得た後は、自己判断で放置せず保険会社又は保険代理店へ照会します。
  • 通知しても、通常条件での引受が保証されるわけではありません。
  • 追加保険料、免責変更、担保制限、船舶変更又は引受不可の可能性があります。
  • 事故原因、保険条件及びフォワーダーの情報確認責任を分けて整理します。

まとめ

Breakup Vessel Clauseは、貨物を積載する船舶について、出帆前に解体されることがすでに決定している場合に、貨物保険の条件、保険料率及び引受判断が変更される可能性を定める特別約款です。

この約款の実務上の核心は、単に船齢が高いかどうかではなく、貨物を積載して出帆する前に、当該船舶の解体が決定していたかどうかにあります。

通常の老朽船は、船齢、船級、船種及び保守状態をInstitute Classification Clauseとの関係で確認します。

一方、解体予定船では、船舶としての商業運航寿命が終了し、解体を前提とした売却又は最終航海に入っていることから、通常の引受条件や料率を維持できるかを別途確認する必要があります。

船級を維持している船舶であっても、解体予定船である場合があります。また、高船齢船であっても、通常の商業運航を継続する老朽船であり、解体予定船ではない場合があります。

実務では、船名、IMO番号、船種、建造年、船齢、船級、航路、船舶売買情報、解体予定情報及び航海目的を確認します。

Booking時点で問題がなくても、本船変更又はトランシップによって実際の積載船が変わり、保険条件上の問題が新たに発生する可能性があります。

解体予定船であることを最初から把握できなかった場合でも、疑わしい情報を得た後にどのような確認と通知を行ったかが重要になります。

保険会社へ通知した場合でも、必ず通常条件で保険が継続するわけではなく、追加保険料、免責変更、担保制限、船舶変更又は引受不可となる可能性があります。

事故後に解体予定船であったことが判明した場合は、事故原因の調査と、出帆前の解体決定、情報取得時期及び保険会社への通知履歴を分けて整理します。

フォワーダー又はNVOCCは、予定本船だけでなく、変更後の船舶及び積替先船舶についても、契約上の関与範囲に応じて情報確認と荷主への説明を行う必要があります。

最終的な保険金支払及び賠償責任は、保険証券、Breakup Vessel Clause及びInstitute Classification Clauseの正式文言、船舶情報、解体決定時期、通知履歴、事故原因及び関係者の契約上の地位に基づいて個別に判断されます。

高船齢船、在来船、バルク船、ローカル船、本船変更又はトランシップを伴う輸送で、解体予定船又は非適格船舶の可能性がある場合は、船名、IMO番号、船齢、船級、航路及び解体予定に関する情報を準備し、保険会社又は外航貨物海上保険を扱う専門の保険代理店へ速やかに相談してください。

本記事は一般的な情報を提供するものであり、個別の船舶についてBreakup Vessel Clauseが適用されるか、当該船舶が出帆前から解体予定船であったか、通常条件で保険が継続するか、追加保険料又は条件変更が必要か、保険金が支払われるか、又は船会社、船主、フォワーダー若しくはNVOCCが法的責任を負うかを確定するものではありません。

同義語・別表記

  • Breakup Vessel Clause
  • BREAKUP VESSEL CLAUSE
  • 解体船約款
  • 解体予定船約款
  • 最終航海約款
  • スクラップ船約款

関連用語

公式情報