ICC(C)条件―外航貨物海上保険の補償範囲と確認事項
ICC(C)条件とは、Institute Cargo Clauses (C) のことで、外航貨物海上保険において、約款に列挙された限定的な危険による貨物の滅失又は損傷を中心に補償する保険条件です。
ICC(A)条件、ICC(B)条件、ICC(C)条件の三つを比較すると、ICC(C)条件は最も補償範囲が限定されています。主な担保危険は、火災・爆発、船舶又は艀の座礁・乗揚げ・沈没・転覆、陸上輸送用具の転覆・脱線、船舶等と外部物との衝突・接触、遭難港での貨物荷卸し、共同海損犠牲及び投荷です。
したがって、輸送中に貨物が破損、濡損、盗難、不着又は数量不足となっただけでは、ICC(C)条件による補償可否は判断できません。まず事故原因を特定し、その原因がICC(C)の列挙危険に該当するか、さらにその危険と実際の貨物損害との間に関係があるかを確認する必要があります。
また、列挙危険に該当しても、一般免責、梱包不備、貨物固有の性質、遅延、船舶・コンテナ等の不適合、戦争危険、ストライキ危険、保険期間その他の条件を別途確認する必要があります。
本記事は、特記のない限りICC(C) 1/1/09を中心に説明します。実際の保険契約では、特別約款、追加危険、追加免責、貨物別条件その他の修正が加えられることがあるため、個別案件では保険証券及び実際に適用される約款を確認する必要があります。
この記事で扱う範囲
| 項目 | この記事で扱う内容 | 他記事で扱う内容 |
|---|---|---|
| ICC(C)の基本構造 | 限定された列挙危険を中心に補償する仕組みと判断順序 | 貨物海上保険で保険契約全体の基本構造を扱う |
| ICC(A)・ICC(B)との違い | 補償範囲、列挙危険、事故原因の確認方法の違い | ICC(A)、ICC(B)で各条件固有の担保範囲を詳しく扱う |
| 火災・船舶事故・陸上輸送事故 | ICC(C)で中心となる重大事故と貨物損害との因果関係 | 個々の事故における運送人責任は関連する事故記事で扱う |
| 共同海損・投荷 | 貨物が無損傷でも共同海損分担への対応が必要になること | 共同海損で保証状、分担金、精算手続を詳しく扱う |
| 水濡れ・地震等 | ICC(B)には含まれるが標準ICC(C)には含まれない危険の整理 | ICC(B)、海水濡れで水濡れ事故を詳しく扱う |
| 梱包不備・貨物固有の性質 | 列挙危険に該当しても別途免責が問題となり得ること | 梱包不備、貨物固有の性質で各免責を詳しく扱う |
| 保険期間 | Transit ClauseとWarehouse to Warehouseの基本 | 保険期間、輸送区間で開始・終了条件を詳しく扱う |
| 事故対応 | 列挙危険、因果関係、損害軽減、証拠保全及び第三者への権利保全 | 運送人への賠償請求や代位求償は関連する責任・事故記事で扱う |
ICC(C)条件の目的と基本構造
ICC(C)条件は、輸送中に発生するあらゆる偶然事故を広く補償する条件ではありません。あらかじめ約款に定められた限定的な危険によって貨物に損害が発生した場合に補償を検討する、列挙危険担保の条件です。
このため、ICC(C)の事故判断では「貨物に損害があるか」と「その損害原因が列挙危険か」を分ける必要があります。さらに、列挙危険が存在したことと、その列挙危険が個々の貨物損害を生じさせたことも別の問題です。
例えば、本船が座礁したという事実だけで、本船上のすべての貨物損害が自動的に補償対象となるわけではありません。座礁による衝撃、傾斜、浸水、荷崩れ等が実際の貨物損害につながったのかを確認します。
一方、ICC(C)は単に「貨物が壊れた場合の限定的な保険」でもありません。共同海損犠牲のほか、約款所定の共同海損・救助費用や、一定の場合のBoth to Blame Collision Clauseに基づく責任も規定されています。この点は、貨物そのものに損傷がない共同海損案件を理解するうえで重要です。
ICC(C)で列挙されている主な危険
| 区分 | 列挙危険 | 典型的な場面 | 判断上の確認事項 |
|---|---|---|---|
| 火災・爆発 | 火災又は爆発 | 本船火災、倉庫火災、トラック火災、爆発事故 | 火災・爆発と貨物損害との関係 |
| 船舶事故 | 船舶又は艀の座礁・乗揚げ・沈没・転覆 | 本船座礁、艀転覆、沈没事故 | 事故時期、積載位置、事故による貨物への影響 |
| 陸上輸送事故 | 陸上輸送用具の転覆・脱線 | トラック横転、鉄道貨車の脱線 | 実際に転覆・脱線が生じたか |
| 衝突・接触 | 船舶、艀又は輸送用具と水以外の外部物との衝突・接触 | 他船、岸壁、橋脚、構造物等への衝突 | 接触対象、事故状況、貨物への影響 |
| 遭難 | 遭難港での貨物の荷卸し | 本船事故により予定外の港で貨物を荷卸しする場合 | 遭難との関係、荷卸し理由、損害発生状況 |
| 共同海損 | 共同海損犠牲 | 共同の安全のため一部貨物を犠牲にする場合 | 共同海損行為、犠牲貨物、共同海損宣言 |
| 投荷 | 貨物の投荷 | 共同の安全確保等のため貨物を船外へ投棄する場合 | 投棄の経緯、船会社報告、共同海損との関係 |
ICC(C)第1条では、火災、座礁、転覆等については、貨物の滅失又は損傷がこれらの事故に合理的に帰属することが問題になります。共同海損犠牲及び投荷については、それらによって生じた損害であることが問題になります。
したがって、事故名が一致するだけではなく、実際の貨物損害と列挙危険との関係を、事故報告、写真、積付位置、車両事故記録、サーベイレポートその他の資料によって確認することが重要です。
ICC(A)・ICC(B)・ICC(C)条件の違い
| 条件 | 担保範囲の基本構造 | 典型的に検討しやすい損害 | 標準条件で対象外になりやすい損害 | 判断の中心 |
|---|---|---|---|---|
| ICC(A) | 除外事項に該当しない限り危険を広く担保する | 破損、濡損、盗難、不着、数量不足、汚損、荷役事故等 | 梱包不備、貨物固有の性質、通常消耗、遅延、戦争・ストライキ危険等 | 損害の事実、偶然性、免責該当性 |
| ICC(B) | 一定範囲の列挙危険を担保する | 火災、座礁、転覆、地震、波ざらい、海水等の侵入等 | 通常破損、盗難、雨濡れ、原因不明の不足、荷役中の一部破損等 | 列挙危険への該当性と因果関係 |
| ICC(C) | さらに限定された列挙危険を担保する | 火災、座礁、沈没、転覆、脱線、衝突、共同海損犠牲、投荷等 | 通常破損、盗難、水濡れ、地震、波ざらい、原因不明の不足等 | 限定された列挙危険への該当性と因果関係 |
ICC(C)を「ICC(B)より少し狭い条件」とだけ理解すると、実務上重要な差を見落とします。特に、地震・噴火・雷、波ざらい、海水・湖水・河川水の侵入、船舶又は艀への積卸中における一定の梱包単位全損はICC(B)には列挙されていますが、標準ICC(C)の第1条には列挙されていません。
ICC(C)を適用して判断するための確認要件
| 確認項目 | 確認する内容 | 判断上の意味 | 主な確認資料 |
|---|---|---|---|
| 適用約款 | ICC(C)の版、追加危険、特別約款、追加免責 | ICC(C)という名称だけでは実際の契約内容を確定できない | 保険証券、Certificate、Declaration、適用約款 |
| 被保険貨物 | 事故貨物が保険契約上の対象貨物か | 対象外貨物では列挙危険の検討以前に補償が問題となる | Invoice、Packing List、付保申込資料 |
| 被保険利益 | 請求者が損害発生時に被保険利益を有しているか | 保険金請求の基本的な確認事項となる | 売買契約、Incoterms、Invoice、保険証券 |
| 保険期間 | 事故がTransit Clause上の保険期間中に発生したか | 列挙危険でも保険期間外なら別問題となる | 集荷記録、搬入記録、B/L、搬出・納品記録 |
| 事故原因 | 何が貨物損害を生じさせたか | ICC(C)は損害結果だけでは判断できない | 事故報告、写真、車両記録、航海情報、Survey Report |
| 列挙危険 | 事故原因がICC(C)第1条の危険に該当するか | 補償判断の中心となる | 約款、事故証明、船会社・運送会社報告 |
| 因果関係 | 列挙危険が実際の貨物損害につながったか | 重大事故の存在だけでは足りない | 積付位置、損害写真、時系列、検査資料 |
| 除外事項 | 梱包不備、貨物固有の性質、遅延等が問題とならないか | 列挙危険に該当しても免責となる可能性がある | 梱包仕様、貨物仕様、温湿度記録、輸送経緯 |
火災・爆発―事故発生と貨物損害を分けて確認する
火災・爆発は、ICC(C)における代表的な列挙危険です。本船、倉庫、トラックその他の輸送過程で火災又は爆発が発生し、その影響によって貨物が滅失又は損傷した場合には補償検討の対象となります。
ただし、火災が発生したというだけで積載貨物のすべてについて損害が認められるわけではありません。焼損だけでなく、熱、煤、煙、消火水等によって貨物にどのような物的影響が生じたかを確認します。
例えば、食品、医薬品、精密部品等では外観上焼損がなくても、熱又は煙によって品質・安全性に影響が生じることがあります。その場合には、検査報告、メーカー判定、販売可否、サーベイ結果等により、単なる商品価値への懸念なのか、貨物自体の物的損害なのかを整理します。
座礁・沈没・転覆・衝突―重大事故だけでは足りない
船舶又は艀の座礁、乗揚げ、沈没、転覆、また船舶、艀又は輸送用具と外部物との衝突・接触は、ICC(C)の中心的な列挙危険です。
しかし、本船が座礁したという事実と、個々の貨物に生じた損害との因果関係は別途確認します。本船が軽微に座礁したものの貨物には何ら影響がなく、その後の荷役作業中に別の原因で貨物が破損した場合、その破損を座礁損害として扱えるとは限りません。
事故時刻、積載場所、コンテナ状態、衝撃の程度、荷崩れの有無、損害発見時点等を時系列で整理し、列挙危険が当該貨物損害へどのようにつながったかを確認します。
陸上輸送用具の転覆・脱線
ICC(C)は海上区間だけを対象とする条件ではなく、保険期間中の陸上輸送についても、陸上輸送用具の転覆又は脱線が列挙危険として規定されています。
例えば、最終納品先へ向かうトラックが横転し、その際の衝撃によって貨物が破損した場合は、列挙危険への該当性を検討します。
一方、トラックが急ブレーキをかけたことによる荷崩れ、道路振動による擦損、通常走行中の軽微な衝撃等は、車両の転覆そのものとは異なります。「陸上輸送中の事故」であるというだけでICC(C)の対象となるわけではありません。
共同海損―貨物が無損傷でも保険対応が必要になる
ICC(C)を理解するうえで特に重要なのが共同海損です。共同海損は、貨物そのものの物的損害だけを見る制度ではありません。
船舶及び積荷全体を共同の危険から守るため、意図的かつ合理的に特別な犠牲又は費用が発生した場合、一定の要件のもとでその負担を船舶、貨物等の利害関係者間で分担することがあります。
そのため、貨物が目的港へ無傷で到着していても、共同海損宣言がなされれば、cargo ownerが共同海損分担金に関する保証手続を求められることがあります。貨物を引き取るためにGeneral Average GuaranteeやGeneral Average Bond等の手続が必要となる場合もあります。
ICC(C)は、約款所定の範囲で共同海損・救助費用を補償する規定を有しています。したがって、「貨物に損害がないからICC(C)は関係ない」という判断は適切ではありません。
共同海損宣言を受けた場合には、貨物損傷の有無だけで判断せず、船会社又はAverage Adjusterからの通知、保証状提出の要否、保険会社による保証対応、将来の分担額等を早期に確認します。
投荷との関係
投荷はICC(C)に列挙される危険です。一般には、船舶及び積荷の共同の安全を図るため、貨物を意図的に船外へ投棄する場面が典型です。
投荷された貨物そのものの損害は、共同海損犠牲とも関係する可能性があります。ただし、船外へ貨物が流失したという結果だけで「投荷」と判断することはできません。
ICC(B)に含まれる波ざらいは標準ICC(C)には列挙されていないため、波によって貨物が船外へ流された事故と、人為的に貨物を投棄した投荷は区別して確認する必要があります。
ICC(B)にはあるが標準ICC(C)にはない主な危険
| 危険 | ICC(B) | ICC(C) | 実務上の意味 |
|---|---|---|---|
| 地震・噴火・雷 | 列挙危険 | 標準条件では列挙されない | 地震リスクを重視する場合はBとCで大きな差が生じる |
| 波ざらい | 列挙危険 | 標準条件では列挙されない | 甲板積み貨物等では条件差が重要になる |
| 海水・湖水・河川水の侵入 | 列挙危険 | 標準条件では列挙されない | コンテナ内濡損を重視する貨物では大きな差となる |
| 積卸中の一定の梱包単位全損 | 列挙危険 | 標準条件では列挙されない | 船舶・艀への積卸中事故に対する範囲が異なる |
| 火災・爆発 | 列挙危険 | 列挙危険 | B・C共通の基本的な重大事故 |
| 共同海損犠牲・投荷 | 列挙危険 | 列挙危険 | B・C双方で重要な海上危険 |
ICC(C)の主要な除外事項
| 除外論点 | 主な内容 | ICC(C)での意味 | 実務上の確認事項 |
|---|---|---|---|
| 被保険者の故意 | 被保険者の故意による損害等 | 通常の偶然事故として扱われない | 事故経緯、指示記録、関係者の行為 |
| 通常減耗 | 通常の漏損、重量・容積の減少、通常の摩耗 | 列挙危険とは別に除外される | 正常減耗、出荷数量、到着数量、貨物特性 |
| 梱包不備 | 通常の輸送上の負荷に耐えない梱包又は準備 | 重大事故が存在しても損害原因として問題となる場合がある | 梱包者、梱包時期、仕様、コンテナ内積付け |
| 貨物固有の性質 | 貨物自身の性質による自然的な損害 | 列挙危険による損害と分ける必要がある | 貨物仕様、出荷時品質、温湿度等 |
| 遅延 | 遅延によって生じた損害 | 遅延原因が担保危険でも免責が問題となる | 物的損害と逸失利益等を分ける |
| 一定の倒産・財務不履行 | 船主等の財務不履行と被保険者側の認識 | 約款所定の認識要件等を確認する | 契約時情報、通知、取引経緯 |
| 第三者による故意の毀損 | 第三者の不法行為による故意の損傷又は破壊 | 標準ICC(C)では重要な除外事項となる | 追加条件の有無を確認する |
| 船舶・コンテナ等の不適合 | 一定の不堪航又は安全運送への不適合 | 被保険者の認識や積載条件等が問題となる | コンテナ状態、積載記録、事前情報 |
| 戦争危険 | 戦争、内乱、拿捕・抑留、遺棄兵器等 | 通常のICC(C)とは別の戦争危険条件を確認する | War Clauses、航路、保険証券 |
| ストライキ等 | ストライキ、暴動、騒乱、テロ等 | 通常のICC(C)とは別の条件を確認する | Strikes Clauses等の付帯状況 |
保険期間―重大事故でも期間外なら別問題となる
ICC(C)は列挙危険を限定する条件ですが、保険期間の考え方自体も重要です。火災、座礁、トラック転覆等の列挙危険が発生しても、その事故が保険期間外であれば、列挙危険への該当性だけで補償を判断することはできません。
ICC(C) 1/1/09では、原則として、保険契約に記載された場所で、輸送開始のため運送用具へ直ちに積み込む目的で貨物が最初に動かされた時から保険が開始し、通常の輸送過程中継続します。
終了については、最終仕向地の倉庫等で運送用具からの荷卸しが完了した時、通常の輸送過程とは別の保管又は仕分け・配送目的で他の倉庫等を選択して荷卸しした時、輸送用具又はコンテナを通常輸送以外の保管に使用することを選択した時、最終荷揚港で本船から荷卸し完了後所定の日数が経過した時等のうち、約款上最も早く到来する終了事由を確認します。
したがって、「Warehouse to Warehouseだから倉庫内の事故は全部対象」「揚港から一定期間は必ず対象」と考えるのは適切ではありません。事故時点の保管目的と通常輸送との連続性を確認する必要があります。
ICC(C)条件が検討されやすい場面
| 貨物・輸送状況 | 主に想定する危険 | ICC(C)を検討する理由 | 条件選択時の注意点 |
|---|---|---|---|
| バルク貨物 | 火災、座礁、沈没、衝突等 | 日常的な小損害より重大海難を中心に備える場合がある | 水濡れ、盗難、数量差異等をどこまで必要とするか確認する |
| 原材料 | 重大な運送事故 | 貨物単体の破損リスクを限定的に考える場合がある | 貨物特性によってはC条件では不足する |
| 比較的損傷しにくい貨物 | 火災、船舶事故、車両転覆等 | 限定された事故への備えを中心とする | 盗難・水濡れ等の実際の損害頻度も確認する |
| 陸上輸送を含む一貫輸送 | トラック転覆・鉄道脱線 | Transit Clause上の保険期間中であれば陸上の列挙危険も問題となる | 通常の衝撃・荷崩れは別問題となる |
| 海上輸送を伴う貨物 | 共同海損 | 貨物無損傷でも共同海損分担が発生する可能性がある | 共同海損保証への対応を理解しておく |
| 保険料と補償範囲を限定的に調整する場合 | 重大事故中心 | A・Bより引受危険を限定する選択肢となる | 価格だけでなく貨物の主要リスクとの適合性を確認する |
ICC(C)は「安い保険だから選ぶ」という条件ではありません。貨物の主要リスクがICC(C)の列挙危険と一致しているかを確認した結果として選択する条件です。
完成品、精密機器、機械、部品、雑貨、衣類、食品、高額貨物等のように、通常破損、盗難、不着、水濡れ、数量不足等が実務上重要な貨物では、ICC(C)では荷主の期待する補償に届かない可能性があります。
ICC(C)の制度適用フロー
- 適用される保険契約を確認する。
ICC(C)の版、保険証券、追加危険、追加免責、War・Strikes等の付帯状況を確認します。 - 被保険貨物と被保険利益を確認する。
事故貨物が保険対象であり、請求者が損害発生時に被保険利益を有しているかを確認します。 - 事故発生時期と輸送区間を確認する。
集荷、搬入、本船積載、揚港、搬出、倉庫、配送、最終納品を時系列で整理し、保険期間内かを確認します。 - 実際の貨物損害又は共同海損請求を確認する。
物的損害の場合は事故前後の状態を確認し、共同海損の場合は宣言・保証要求等を確認します。 - 事故原因を特定する。
火災、爆発、座礁、沈没、転覆、脱線、衝突、投荷等、何が発生したかを確認します。 - ICC(C)の列挙危険へ当てはめる。
事故原因が第1条の限定された危険に該当するかを確認します。 - 列挙危険と損害との因果関係を確認する。
重大事故が存在するだけでなく、その事故が個々の貨物損害につながったかを確認します。 - 共同海損・救助費用を別に確認する。
貨物自体に損傷がなくても、共同海損分担又は救助費用の負担がある場合は別途約款を確認します。 - 除外事項と追加条件を確認する。
梱包不備、貨物固有の性質、遅延、船舶等の不適合、戦争・ストライキ危険等を確認します。 - 損害軽減と第三者への権利保全を行う。
損害拡大を防ぎ、運送人、倉庫その他の第三者に対する請求権を保存します。 - 保険会社・保険代理店へ資料を提出する。
事故原因、列挙危険、因果関係、免責、損害額又は共同海損資料を整理して補償判断につなげます。
ICC(C)では、第5段階から第7段階が特に重要です。「貨物が壊れた」という結果から直接保険金請求の結論へ進むのではなく、「何が起きたか」「それはICC(C)に列挙されているか」「その事故がこの損害を生じさせたか」という順番で当てはめます。
実務で問題になりやすいケース
| ケース | 主な原因・争点 | 確認資料 | 判断のポイント | 初動対応 |
|---|---|---|---|---|
| 座礁後に一部貨物だけ破損 | 座礁と個々の貨物損害との因果関係 | 本船事故報告、積付位置、写真、Survey Report | 座礁事故の存在だけでなく貨物への具体的影響を確認する | 事故時系列と損害発見時点を記録する |
| トラック横転による貨物破損 | 車両の転覆か、単なる荷崩れ・急ブレーキ事故か | 事故証明、車両写真、配送会社報告、貨物写真 | 陸上輸送用具の転覆への該当性を確認する | 事故現場と車両・貨物状態を保存する |
| 共同海損宣言を受けた無損傷貨物 | 貨物損害ではなく共同海損分担への対応 | 共同海損宣言、保証状要求、保険証券、船会社通知 | 貨物無損傷でも保険対応が必要となる | 直ちに保険会社・代理店へ通知し保証手続を確認する |
| 本船火災後の煙・煤損害 | 火災と実際の物的損害との関係 | 火災報告、写真、検査報告、商品評価 | 火災の存在と商品価値低下を分けて確認する | 廃棄・販売前に検査・サーベイを行う |
| コンテナ内の海水濡れ | ICC(C)第1条に海水等の侵入が列挙されていない | 保険条件、コンテナ写真、塩分反応、追加特約 | ICC(B)との条件差又は追加危険の有無を確認する | 原因資料を保存し実際の証券条件を確認する |
| 荷役中の一部破損 | 通常荷役事故がICC(C)の列挙危険に該当するか | 荷役記録、写真、事故報告、修理見積 | 落下事故というだけで標準ICC(C)の対象にはならない | 事故状況を保存し追加条件の有無を確認する |
| 原因不明の数量不足 | 盗難、不着、出荷数量差異等 | B/L、Packing List、シール、Devanning Report、納品記録 | 数量不足自体はICC(C)の列挙危険ではない | 差異が発生した地点と原因を追跡する |
| 危険品火災で周辺貨物が損傷 | 火災という列挙危険と梱包・申告等の別論点 | SDS、危険品申告、火災原因調査、梱包資料 | 列挙危険と免責・契約条件を別々に検討する | 安全確保後、事故原因資料を速やかに確保する |
制度適用シナリオ1―座礁後の一部貨物損傷
事例:インボイス価格2,500万円の産業機械をICC(C)で付保していた。本船が航海中に座礁し、その後目的港へ到着したところ、複数ケースのうち1ケースだけ内部部品が破損していた。
最初の要件である列挙危険については、本船の座礁がICC(C)に明示された危険に該当します。しかし、それだけで1ケースの内部破損まで自動的に補償されるわけではありません。
本船事故時の衝撃、船体傾斜、積付位置、コンテナ内の固定状態、事故前の貨物状態、損害発見時点等を確認し、座礁と内部破損との関係を説明できるかを検討します。
一方、破損が座礁とは無関係な固定不足や出荷前の不具合によるものであれば、座礁という列挙危険だけを理由に補償対象とすることはできません。本件では「座礁への該当」と「座礁による損害」の二段階で判断することが重要です。
制度適用シナリオ2―トラック横転による貨物破損
事例:インボイス価格800万円の原材料をICC(C)で付保していた。揚港から最終納品先へ輸送中、トラックが高速道路で横転し、積載貨物の一部が破損した。
ICC(C)には陸上輸送用具の転覆・脱線が列挙されています。したがって、事故時点が保険期間中であり、実際にトラックが横転したことを事故証明等で確認できれば、列挙危険への当てはめが可能です。
次に、横転時の衝撃や荷崩れによって当該貨物が破損したことを写真、車両事故記録、納品時の状態等から確認します。
これに対し、トラック自体は横転しておらず、急ブレーキによって貨物だけが荷崩れした場合は、同じ「トラック輸送中の破損」でもICC(C)の転覆という列挙危険には該当しない可能性があります。事故の呼称ではなく、車両そのものに何が起きたかを確認する必要があります。
制度適用シナリオ3―貨物無損傷で共同海損宣言を受けた場合
事例:インボイス価格3,000万円の原材料をICC(C)で付保していた。本船で重大な火災が発生し、避難港への入港、消火、曳航等を経て共同海損が宣言された。貨物自体には目立った損傷がなく、最終的には使用可能な状態であった。
この場合、「貨物が壊れていないから保険事故ではない」と判断してはいけません。共同海損では、貨物が無損傷であっても、共同の安全のために要した犠牲・費用について貨物側へ分担を求められることがあります。
cargo ownerは、貨物引渡しのために保証書類の提出を求められる可能性があります。そのため、共同海損宣言又はAverage Adjusterからの通知を受領した時点で、保険会社・保険代理店へ連絡し、保証対応を確認します。
その後、共同海損精算によって最終的な分担額が算定される場合があります。ICC(C)の実務では、貨物の物的損害と共同海損分担を別の補償論点として理解することが重要です。
よくある誤解
| 誤解 | 実際の考え方 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| ICC(C)でも貨物保険なので通常の破損は一通り対象になる | ICC(C)は限定された列挙危険を中心に補償する条件です。 | 破損原因が列挙危険に該当するかを確認します。 |
| 座礁・衝突等が起きれば貨物損害はすべて対象になる | 列挙危険と個々の貨物損害との因果関係が必要です。 | 積付位置、事故状況、損害状態を確認します。 |
| トラック輸送中に壊れれば転覆事故として補償される | ICC(C)では陸上輸送用具の転覆・脱線が重要です。 | 荷崩れ、急ブレーキ、通常振動とは区別します。 |
| 貨物が無損傷なら共同海損に保険は関係ない | 貨物無損傷でも共同海損分担や保証手続が必要になる場合があります。 | 共同海損宣言を受けたら早期に保険側へ連絡します。 |
| 海水で濡れれば海上保険なのでICC(C)でも対象になる | 海水・湖水・河川水の侵入は標準ICC(B)には列挙されますが、標準ICC(C)には列挙されていません。 | ICC(B)との条件差又は追加危険を確認します。 |
| 地震による損害も当然にICC(C)で補償される | 地震は標準ICC(B)には列挙されますが、標準ICC(C)には列挙されません。 | 自然災害リスクが必要なら条件選択時に確認します。 |
| 保険料が安いので、損傷しにくい貨物なら常にICC(C)で十分である | 貨物の性質だけでなく、盗難、水濡れ、荷役、輸送区間等のリスクも確認する必要があります。 | 保険料ではなく実際の損害原因から条件を選びます。 |
| 列挙危険に該当すれば免責事項は関係ない | 列挙危険該当後も梱包不備、貨物固有の性質、遅延等の免責を確認します。 | 担保危険と除外事項を別の段階で確認します。 |
フォワーダーの関与範囲対比
| 場面 | フォワーダーが支援できること | フォワーダーが断定すべきでないこと | 主な確認先 | 実務上の対応 |
|---|---|---|---|---|
| 条件選択 | 貨物内容、輸送区間、荷主が懸念する事故を整理する | ICC(C)で必要な事故がすべて補償されると保証すること | 保険会社・保険代理店 | ICC(A)・ICC(B)・ICC(C)の範囲を比較する |
| 重大事故発生時 | shipping lineや陸上運送人から事故資料を収集する | 重大事故の存在だけで全貨物損害を対象と判断すること | 保険会社・保険代理店・サーベイヤー | 列挙危険と個々の損害の関係を整理する |
| 共同海損 | 共同海損宣言、保証要求、貨物情報を整理する | 貨物無損傷だから保険対応不要と判断すること | 保険会社・保険代理店・Average Adjuster | 保証手続に必要な書類を早期に確認する |
| 水濡れ事故 | 濡損原因、コンテナ状態、証拠資料を収集する | 海水濡れだからICC(C)で対象と断定すること | 保険会社・保険代理店 | ICC(B)との差及び追加条件を確認する |
| 運送人への請求 | 事故通知、責任区間、運送書類を整理する | Contracting Carrier又はActual Carrierの責任を一律に確定すること | 運送人、保険会社、必要に応じ海事弁護士 | クレーム期限・出訴期間等に注意して権利を保全する |
| 保険金請求 | 事実資料、事故経緯、損害資料を整理する | 保険金支払可否又は支払額を保険者に代わって約束すること | 保険会社・保険代理店 | 保険判断と運送人責任を分けて整理する |
事故対応時の判断チェックリスト
| 確認場面 | 確認する相手 | 確認事項 | 問題がある場合の対応 |
|---|---|---|---|
| 事故発見時 | cargo owner、倉庫、配送会社 | 貨物状態、外装、数量、発見日時、受領時リマーク | 開梱前後の写真を保存し、受領書へ適切なリマークを記載する |
| 列挙危険確認時 | shipping line、陸上運送人、倉庫、港湾関係者 | 火災、座礁、沈没、転覆、脱線、衝突、投荷等の事実 | 事故証明、航海資料、現場記録、車両記録を入手する |
| 因果関係確認時 | 保険会社、サーベイヤー、運送関係者 | 列挙危険が実際の貨物損害を生じさせたか | 積付位置、事故時系列、損害写真等を追加確認する |
| 水濡れリスク確認時 | cargo owner、保険会社、保険代理店 | ICC(C)に水侵入危険の追加条件があるか、ICC(B)等との条件差 | 標準ICC(C)だけで対象と判断せず、証券・追加特約を確認する |
| 共同海損確認時 | shipping line、保険会社、保険代理店、Average Adjuster | 共同海損宣言、保証要求、分担金、貨物引渡条件 | 貨物無損傷でも早期に保険側へ連絡し保証対応を進める |
| 保険期間確認時 | freight forwarder、倉庫、保険会社 | 集荷、搬入、揚港、保管、搬出、最終納品の時系列 | 通常輸送外の保管や保険終了事由がないか確認する |
| 第三者への権利保全時 | Contracting Carrier、Actual Carrier、倉庫等 | 事故通知、クレーム期限、責任区間、必要証拠 | 保険請求と並行して第三者への権利を期限内に保全する |
| 廃棄・修理・売却前 | 保険会社、保険代理店、サーベイヤー | サーベイ、残存価値、現物確認の要否 | 証拠を失わないよう処分前に必要な確認を行う |
損害軽減と第三者への権利保全
ICC(C)で補償対象となり得る事故が発生した場合、被保険者は保険金請求を行うだけでなく、合理的な範囲で損害の発生又は拡大を防止する措置を講じることが重要です。
例えば、本船火災後の濡損貨物をそのまま放置して二次的な腐食を拡大させないこと、車両転覆後に救済可能な貨物を安全な場所へ移すこと等が考えられます。
一方で、貨物を直ちに廃棄、修理又は売却すると、事故原因、損害程度、残存価値等を確認する証拠が失われる場合があります。必要に応じて、保険会社・保険代理店又はサーベイヤーへの連絡と現物確認を先行します。
また、shipping line、Contracting Carrier、Actual Carrier、freight forwarder、倉庫業者、陸上運送人その他の第三者に対して責任追及が可能な事故では、受領時リマーク、事故通知、クレーム通知、写真、運送書類等を適切に保存します。
保険会社が保険金を支払った後には、責任主体に対して代位求償を行う場合があります。したがって、貨物保険に請求することと、運送人等への権利を保存することは並行して行う必要があります。
保険会社・保険代理店・海事弁護士へ相談すべき場面
ICC(C)は列挙危険が限定されているため、一見単純に見えますが、実際の高額事故では列挙危険、因果関係、共同海損、運送人責任等が同時に問題となることがあります。
- 高額事故で列挙危険への該当性又は因果関係が争われている場合
- 座礁・火災等の重大事故と貨物損害との関係が不明確な場合
- 共同海損が宣言され、保証状、分担金又は救助費用への対応が必要な場合
- 梱包不備と列挙危険の双方が損害原因として争われている場合
- 保険期間中の保管か通常輸送外の保管かが争点となっている場合
- Contracting Carrier又はActual Carrierへの責任追及と貨物保険請求が並行する場合
- 運送人へのクレーム期限又は出訴期間が迫っている場合
- ICC(C)の英法上の約款解釈そのものが争点となる場合
フォワーダーは事故資料の収集や関係者との連絡を支援できますが、個別事故について保険責任又は運送人の法的責任を確定する立場とは限りません。争点が複数に及ぶ場合は、保険会社・保険代理店、サーベイヤー及び必要に応じ海事弁護士へつなぐことが重要です。
実務上のポイント
ICC(C)条件で最も重要なのは、「貨物に損害がある」という事実と「ICC(C)で補償される」という結論の間に、列挙危険と因果関係の確認が必要であることです。
実務上は、①適用される保険証券・約款、②被保険貨物と被保険利益、③事故発生時期と保険期間、④実際の貨物損害、⑤事故原因、⑥ICC(C)の列挙危険への該当性、⑦列挙危険と損害との因果関係、⑧免責事項、⑨共同海損・救助費用、⑩第三者への権利保全という順序で確認すると整理しやすくなります。
付保時には、ICC(C)を単に「保険料を抑えた条件」と説明するのではなく、標準条件では通常破損、盗難、不着、数量不足、水濡れ、地震、波ざらい等が広く補償されるわけではないことを明確にする必要があります。
特に完成品、高額貨物、機械、精密機器、雑貨等では、実際に頻度の高い事故がICC(C)の列挙危険から外れていないかを確認することが重要です。
まとめ
ICC(C)条件は、Institute Cargo Clauses (C) のことで、限定された列挙危険による貨物の滅失又は損傷を中心に補償する外航貨物海上保険の代表的な条件です。
主な列挙危険は、火災・爆発、船舶又は艀の座礁・乗揚げ・沈没・転覆、陸上輸送用具の転覆・脱線、船舶等と外部物との衝突・接触、遭難港での荷卸し、共同海損犠牲及び投荷です。
ICC(B)に列挙されている地震・噴火・雷、波ざらい、海水・湖水・河川水の侵入、積卸中の一定の梱包単位全損等は、標準ICC(C)には列挙されていません。通常破損、盗難、不着、数量不足等についても、ICC(A)のように広く補償する条件ではありません。
一方で、ICC(C)でも共同海損は重要です。貨物自体が無損傷であっても共同海損分担や保証手続が必要になる場合があるため、「貨物損害がないから保険は関係ない」と判断してはいけません。
事故時には、事故名だけで結論を出さず、保険期間、事故原因、列挙危険、因果関係、免責事項、共同海損、損害軽減及び第三者への権利保全を順に確認することが基本です。付保条件の選択又は個別事故の約款解釈については、専門の保険会社・保険代理店へ確認することが重要です。
