英国海上保険法における損害填補額の算定
英国海上保険法における損害填補額とは
英国海上保険法における損害填補額とは、保険事故が発生した場合に、被保険者が保険契約に基づいて回収できる金額の範囲をいいます。
外航貨物海上保険では、貨物に損害が発生した場合でも、常に保険金額の全額が支払われるわけではありません。損害の種類、保険証券の種類、保険価額、損害割合、到着地での価額、共同海損分担金、救助料などを確認して、填補額を算定します。
評価済保険証券と評価未済保険証券
MIA1906第67条では、評価未済保険証券の場合には保険価額の範囲内、評価済保険証券の場合には保険証券で定められた価額の範囲内で、被保険者が損害を回収できるとされています。
評価済保険証券では、保険証券にあらかじめ定められた価額が基準になります。一方、評価未済保険証券では、後日確定される保険価額が基準になります。
この違いは、全損、分損、共同海損分担金、救助料などの算定に影響します。
複数の保険者がいる場合
複数の保険者が同一の保険を引き受けている場合、各保険者は、それぞれの引受割合に応じて損害填補責任を負います。
評価済保険証券の場合は保険証券上の評価額を基準にし、評価未済保険証券の場合は保険価額を基準にして、各保険者の負担割合を計算します。
全損の場合の填補額
MIA1906第68条では、保険対象に全損が発生した場合、評価済保険証券では保険証券で定められた価額が、評価未済保険証券では保険対象の保険価額が、損害填補額の基準になるとされています。
外航貨物海上保険では、貨物が完全に滅失した場合、または推定全損として扱われる場合に、保険証券上の評価額や保険価額を確認する必要があります。
船舶の分損の場合
MIA1906第69条では、船舶が全損ではなく損傷した場合の填補額について定めています。
船舶が修理された場合には、合理的な修理費用が基準になります。部分的に修理された場合には、修理費用と未修理部分による価値低下が問題になります。修理されていない場合には、未修理損傷による合理的な価値低下が基準になります。
貨物保険実務では直接中心になる条文ではありませんが、修理費用、価値低下、保険金額上限という考え方は、貨物損害の算定にも参考になります。
運賃の分損の場合
MIA1906第70条では、運賃の一部に損害が発生した場合、被保険者が失った運賃の割合に応じて填補額を算定するとされています。
評価済保険証券では保険証券で定められた価額に対して、評価未済保険証券では保険価額に対して、失われた運賃の割合を乗じて算定します。
貨物の分損の場合
MIA1906第71条は、外航貨物海上保険実務で特に重要です。
貨物の一部が全損した場合と、貨物の全部または一部が損傷して到着した場合とで、填補額の考え方が分かれます。
貨物の一部が全損した場合、評価済保険証券では、失われた部分の保険価額が全体の保険価額に占める割合を、保険証券上の評価額に乗じて算定します。評価未済保険証券では、失われた部分の保険価額を基準にします。
損傷貨物の填補額
貨物の全部または一部が損傷して仕向地に到着した場合には、到着地における総正品価額と総損品価額の差額が重要になります。
評価済保険証券では、その価額差が総正品価額に占める割合を、保険証券上の評価額に乗じます。評価未済保険証券では、同じ割合を保険価額に乗じます。
つまり、貨物の分損では、単に修理費や請求額だけを見るのではなく、到着地で正品としての価値と損品としての価値がどれだけ違うかを確認する必要があります。
総正品価額と総損品価額
総正品価額とは、貨物が損傷していなかった場合の到着地での価額をいいます。
総損品価額とは、損傷した状態での価額をいいます。
実務では、インボイス価格、到着地市場価格、修理見積、売却処分価格、残存価額、サーベイレポートなどをもとに、損害割合を整理することになります。
評価額の按分
MIA1906第72条では、異なる種類の財産が一つの評価額で保険に付けられている場合、その評価額を各種類の保険価額に応じて按分するとされています。
貨物保険では、複数種類の貨物、複数品質、複数ロット、複数明細が一つの保険証券で付保されていることがあります。
その場合、どの貨物にどの程度の損害が発生したかを確認し、全体の保険金額や評価額を合理的に按分する必要があります。
共同海損分担金と救助料
MIA1906第73条では、被保険者が共同海損分担金を支払った場合、または支払う責任を負う場合の填補額について定めています。
保険対象が分担価額の全額について保険に付けられている場合には、原則として共同海損分担金の全額が填補対象になります。
一方、一部保険の場合には、その一部保険の割合に応じて保険者の責任が減額されます。救助料についても同様の考え方で保険者の責任範囲を判断します。
第三者賠償責任の填補額
MIA1906第74条では、被保険者が第三者に対する賠償責任を明示的に保険に付けている場合、その填補額は、被保険者が第三者に対して支払った、または支払うべき金額とされています。
外航貨物海上保険そのものは貨物損害を中心としますが、海上保険の枠組みでは、第三者賠償責任が保険対象になることもあります。
フォワーダー責任、運送人責任、船舶保険、賠償責任保険などとの違いを意識して読む必要があります。
一般規定としての意味
MIA1906第75条では、前記の規定で明示されていない保険対象に損害が発生した場合でも、可能な限り同じ考え方に従って填補額を算定するとされています。
また、損害填補額に関する規定は、重複保険のルールや、保険者が被保険利益の有無、または損害時に保険対象が危険にさらされていなかったことを主張することを妨げるものではありません。
外航貨物海上保険での実務上の注意点
貨物事故が発生した場合には、損害額を感覚で判断せず、保険証券の種類、保険価額、保険金額、貨物の損傷割合、到着地での正品価額と損品価額、共同海損分担金、救助料などを確認する必要があります。
特に、貨物の一部損傷では、修理費だけでなく、損傷による価値低下や残存価額の評価が問題になります。
MIA1906第67条から第75条は、外航貨物海上保険における保険金額、保険価額、損害額、填補限度額を整理するための基本規定です。
