RCEPの原産地規則

概要

RCEPの原産地規則とは、RCEP税率の適用を受けるために、輸入貨物がRCEP協定上の原産品に該当するかを判断するためのルールです。

RCEPは、ASEAN10か国、日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランドの15か国が参加する広域の経済連携協定です。
日本にとっては、中国・韓国を含む初めてのEPAとしても重要であり、アジア・太平洋地域のサプライチェーンを前提にした原産地規則が設けられています。

RCEP原産地規則の特徴は、締約国間の原産材料を活用できる累積制度にあります。
複数のRCEP締約国にまたがって部品調達、加工、組立を行う場合でも、一定の条件を満たせば、域内の材料や生産を原産性の判断に利用できることがあります。

RCEPの参加国・発効状況の確認

RCEPの参加国は、ASEAN10か国であるブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムに、日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランドを加えた15か国です。

ただし、実務上は、対象国との間でRCEPが利用できるか、日本への輸入でRCEP税率を適用できるかを確認する必要があります。
発効状況、対象品目、税率、協定上の条件は変更されることがあるため、輸入実務では税関資料や公式情報で最新状況を確認します。

RCEP原産地規則で確認すること

RCEP税率を適用するには、対象貨物がRCEP締約国の原産品であることを確認します。
原産品に該当するかどうかは、主に次の観点から判断します。

  • 完全生産品に該当するか
  • 原産材料のみから生産された産品か
  • 非原産材料を使用している場合、品目別原産地規則(PSR)を満たすか
  • 関税分類変更基準(CTC)を満たすか
  • 付加価値基準(RVC)を満たすか
  • 加工工程基準が設定されている場合、その工程を満たすか
  • 累積制度を利用できるか
  • デミニミスを利用できるか
  • 直接積送または積送基準を満たすか

RCEPでは、品目ごとに求められる原産地基準が異なります。
そのため、最初にHSコードを確認し、その品目に適用されるPSRを確認することが重要です。

原産国の特定と税率の関係

RCEPでは、対象貨物がRCEP原産品であるかだけでなく、どの締約国の原産品として扱われるかも重要になります。
たとえば、日本で生産された原産品、中国で生産された原産品、韓国で生産された原産品、ASEAN締約国で生産された原産品では、日本側の税率や待遇が異なる場合があります。

これは、RCEP税率が相手国や品目によって異なる場合があるためです。
同じRCEP協定を利用する場合でも、原産国の特定を誤ると、適用税率や申告内容を誤る可能性があります。

そのため、RCEPでは「RCEP域内で作られたから同じ税率になる」と単純に考えるのではなく、どの締約国の原産品として扱われるのかを確認する必要があります。

広域累積とは

RCEPの大きな特徴は、広域累積を利用できる点です。
累積制度とは、他のRCEP締約国の原産材料を、自国の原産材料とみなして原産性を判断できる制度です。

たとえば、タイで生産されたRCEP原産材料をベトナムで加工し、さらに日本へ輸出する場合、そのタイ原産材料をベトナム側の原産性判断に組み込めることがあります。
これにより、RCEP域内にまたがるサプライチェーンでも、原産地規則を満たしやすくなる場合があります。

RCEPの累積は、二国間だけでなく、複数のRCEP締約国をまたぐサプライチェーンを前提に活用できる点に実務上の意味があります。
部品調達、一次加工、最終組立が複数国に分かれている場合でも、域内原産材料を適切に証明できれば、原産性判断に利用できる可能性があります。

ただし、累積を利用するには、各材料がRCEP締約国の原産材料であることを証明できる資料が必要です。
単にRCEP参加国から仕入れたというだけでは足りず、その材料自体がRCEP原産品であることを確認する必要があります。

デミニミスとは

デミニミスとは、非原産材料がわずかに含まれている場合でも、一定の範囲内で原産地規則を満たすものとして扱えることがある制度です。

たとえば、関税分類変更基準を満たさない非原産材料が一部含まれている場合でも、その割合が協定上認められる範囲内であれば、原産品として認められる可能性があります。

ただし、デミニミスには品目や材料によって制限があります。
そのため、適用できるかどうかは、対象品目のHSコード、PSR、非原産材料の内容と割合を確認して判断する必要があります。

CTC・RVC・加工工程基準

RCEPの品目別原産地規則では、関税分類変更基準、付加価値基準、加工工程基準などが使われます。

関税分類変更基準(CTC)とは、非原産材料と完成品との間で、HSコード上の分類が一定以上変わることを求める基準です。
たとえば、部品や原材料のHSコードと、完成品のHSコードが協定上求められる水準で変わっているかを確認します。

付加価値基準(RVC)とは、産品に一定以上の域内付加価値があることを求める基準です。
原材料費、製造費、利益、輸送費などの扱いは協定や計算方法によって異なるため、計算資料を整備する必要があります。

加工工程基準とは、特定の加工や製造工程が締約国内で行われていることを求める基準です。
化学品、繊維製品、特定の加工品などでは、単なる組立や軽微な加工では原産地規則を満たさない場合があります。

実務の流れ

RCEP原産地規則の実務は、一般的には次の流れで進みます。

  1. 対象国との間でRCEPが利用できるか確認する
  2. 対象貨物のHSコードを確認する
  3. RCEP税率が設定されているか確認する
  4. 品目別原産地規則(PSR)を確認する
  5. CTC、RVC、加工工程基準などの適用条件を確認する
  6. RCEP締約国の原産材料を累積できるか確認する
  7. デミニミスを利用できるか確認する
  8. サプライヤーから原産地情報を取得する
  9. 原産地証明書または原産地申告を準備する
  10. 直接積送または積送基準を確認する
  11. 輸入申告時にRCEP税率の適用を申告する
  12. 税関の事後確認に備えて資料を保存する

原産地証明制度

RCEPでは、原産地証明の方法として、第三者証明制度、認定輸出者による自己申告、輸出者または生産者による自己申告などが採用されています。
また、日本への輸入では、一定の条件のもとで輸入者による自己申告が利用できる場合があります。

第三者証明制度では、輸出国の発給機関が原産地証明書を発給します。
認定輸出者による自己申告では、認定を受けた輸出者が原産地申告を作成します。
自己申告制度では、輸出者、生産者、または輸入者が原産性を説明できる資料をもとに申告します。

ただし、自己申告制度の運用は国ごとに差異があります。
どの証明方式を利用できるか、誰が申告主体になれるか、どの書類が必要かは、対象国と輸入国の制度を確認する必要があります。

連続する原産地証明

RCEPでは、連続する原産地証明が問題になることがあります。
これは、あるRCEP締約国の原産品が、別のRCEP締約国を経由して再輸出される場合などに、元の原産性を引き継いで証明するための仕組みです。

たとえば、RCEP原産品がシンガポールなどの物流拠点を経由して日本へ輸入される場合、経由国で新たな原産地証明を発行または作成する場面があります。
この場合、元の原産地証明、再輸出国での管理状況、積送基準を確認する必要があります。

連続する原産地証明は、積送基準と連動して確認が必要になることがあります。
積送基準では、経由地で加工や改変が行われていないことを確認します。
一方、連続する原産地証明では、経由国を通じても元の原産性を証明する書類のつながりが維持されているかを確認します。

連続する原産地証明を利用する場合は、原産地証明の連鎖が切れていないか、経由地で原産品としての資格を失う加工や改変が行われていないかを確認します。

主要書類

RCEPの原産地規則を利用する際に確認・保存する主な書類は次のとおりです。

  • 原産地証明書
  • 原産地申告書または自己申告書
  • インボイス
  • パッキングリスト
  • HSコード確認資料
  • 品目別原産地規則(PSR)の確認資料
  • 原材料・部品の原産地資料
  • サプライヤー証明書
  • 製造工程表
  • 部品表、材料表
  • RVC計算資料
  • 中間工程の証明資料
  • 累積を利用する材料の原産性資料
  • B/L、Sea Waybill、航空運送状などの輸送書類
  • 積送基準を確認するための通し船荷証券や経由地資料
  • 連続する原産地証明に関する資料
  • 税関確認に備える保存資料

輸送書類は、単なる物流書類ではなく、直接積送または積送基準を確認するために重要になることがあります。
非締約国を経由する場合や、物流拠点を経由する場合には、原産品としての資格を失っていないことを示す資料が必要になることがあります。

フォワーダーの関与範囲

フォワーダーは、RCEP利用において、輸送書類、インボイス、パッキングリスト、B/L、Sea Waybillなどの整合確認を支援することがあります。
また、積送基準の確認に必要な輸送経路や積替え資料の整理を補助することもあります。

しかし、フォワーダーは通常、貨物の原産性そのものを判断する責任主体ではありません。
原産性の判断には、HSコード、PSR、原材料、製造工程、RVC計算、サプライヤー情報などが必要であり、これは輸入者、輸出者、生産者が管理すべき情報です。

そのため、フォワーダーの役割は、原産地証明そのものの責任を負うことではなく、通関書類や輸送証拠の整合を支援する補助的な役割と整理するのが実務上安全です。

注意点

RCEPの原産地規則を利用する際は、次の点に注意が必要です。

  • 参加国であっても、日本との間でRCEP税率を利用できるか確認する必要がある
  • 同じRCEPでも、相手国や品目によって税率が異なる場合がある
  • 原産国の特定を誤ると、適用税率を誤る可能性がある
  • HSコードを誤ると、PSRの確認も誤る可能性がある
  • CTC、RVC、加工工程基準のいずれを満たす必要があるか確認する必要がある
  • デミニミスの適用には品目ごとの制限がある
  • 累積制度を利用する場合、材料自体の原産性資料が必要になる
  • 連続する原産地証明では、原産地証明の連鎖を確認する必要がある
  • 自己申告制度の運用は国ごとに異なる
  • 積送基準を満たさない場合、原産品資格を失うことがある
  • 書類不備や資料不足があると、RCEP税率の適用が認められない場合がある
  • 税関の事後確認に備えて、原産性を説明できる資料を保存する必要がある

具体例

RCEPの原産地規則では、次のような場面が問題になります。

  • 累積利用:タイ製部品をベトナムで加工し、日本へ輸入する場合に、RCEP締約国原産材料として原産性を検討するケース
  • 非原産材料使用:一部部品が非締約国産であるため、CTCやRVCを満たすか確認するケース
  • デミニミス利用:一部の非原産材料がPSRを満たさないものの、許容範囲内として原産性を検討するケース
  • 中間工程の証明不足:複数国で加工されたが、各工程の証明資料が不足し、原産性を説明できないケース
  • 連続する原産地証明:物流拠点を経由して再輸出される貨物について、元の原産地証明と経由地での証明を確認するケース
  • 積送基準不足:第三国を経由した貨物について、通し船荷証券や保税管理資料を提示できないケース
  • 原産国の特定誤り:RCEP原産品ではあるが、どの締約国原産品として扱うかを誤り、適用税率の確認に問題が生じるケース

まとめ

RCEPの原産地規則は、広域累積を特徴とし、アジア・太平洋地域のサプライチェーンを活用しやすくする制度です。
ただし、RCEP参加国から輸入するだけで自動的にRCEP税率が適用されるわけではありません。

実務では、対象国の発効状況、HSコード、RCEP税率、原産国の特定、PSR、CTC、RVC、デミニミス、累積制度、証明方式、積送基準、連続する原産地証明、書類保存を一体で確認する必要があります。
RCEPを安全に活用するには、サプライチェーン全体で原産地情報を管理し、税関の事後確認に対応できる資料を整備しておくことが重要です。

関連用語

  • 累積制度
  • 品目別原産地規則(PSR)
  • 関税分類変更基準(CTC)
  • 付加価値基準(RVC)
  • 自己申告制度
  • EPA
  • FTA

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