CPTPPの原産地規則

Rules of Origin under CPTPP

CPTPPの原産地規則とは

CPTPPの原産地規則とは、CPTPP税率の適用を受けるために、輸入貨物がCPTPP上の「原産品」といえるかを判断するためのルールです。

CPTPPは、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定であり、特恵関税の適用を受けるには、対象貨物が協定上の原産品であることを説明できる必要があります。

実務上は、単にCPTPP締約国から輸入されたというだけでは足りません。貨物のHSコード、品目別原産地規則(PSR)、原材料の原産地、生産工程、関税分類変更基準(CTC)、付加価値基準(RVC)、加工工程基準、累積制度、デミニミス、積送基準、証拠資料の保管状況を確認する必要があります。

また、CPTPPでは自己申告制度が採用されているため、原産品申告書を作成するだけでなく、税関から確認を求められた場合に、原産性を説明できる資料を保管しておくことが重要です。

制度の目的・背景

CPTPPの原産地規則の目的は、CPTPP締約国の産品に対して特恵税率を認める一方で、非締約国の産品が単に締約国を経由しただけでCPTPP税率を利用することを防ぐことにあります。

国際取引では、製品の販売者、輸出国、製造国、原材料の原産地、積替地が一致しないことがあります。たとえば、CPTPP締約国の企業から購入した貨物であっても、主要部品が非締約国で生産されている場合があります。また、CPTPP締約国で出荷された貨物であっても、非締約国で単なる仕分け、梱包、ラベル貼付だけが行われている場合もあります。

そのため、CPTPP税率を適用するには、取引国名だけでなく、「その貨物がどこで、どの材料から、どのような工程で作られ、どの原産地規則を満たしているか」を確認する必要があります。

この記事で扱う範囲

項目 この記事で扱う内容 他の記事で詳しく扱う内容
原産品判定 CPTPP上の原産品に該当するかを判断する基本構造を扱います。 個別品目ごとの詳細な原産性判定は、品目別原産地規則の記事で扱います。
HSコード PSR確認の前提として、対象貨物のHSコード確認が必要であることを扱います。 HS分類そのものの詳細判断は、HSコード分類の記事で扱います。
PSR 品目別原産地規則が、CTC、RVC、加工工程基準などを指定することを扱います。 各HSコードごとのPSR本文の読み方は、個別品目の記事で扱います。
CTC・RVC・加工工程基準 非原産材料を使用する場合の主要な判定基準を比較して扱います。 RVCの具体的な計算式や費用項目の詳細は、RVCの記事で扱います。
累積制度・デミニミス CPTPP域内材料や少量の非原産材料をどのように考えるかを扱います。 繊維、食品、化学品など品目固有の例外は、個別品目の記事で扱います。
自己申告制度 輸出者、輸入者、生産者のいずれが原産品申告を行うかを扱います。 原産品申告書の具体的な記載方法は、原産品申告書の記事で扱います。
積送基準 第三国経由、積替え、保税保管時に確認すべき輸送書類を扱います。 通し船荷証券、B/L、Sea Waybillの詳細は各書類の記事で扱います。
税関事後検証 原産性資料の保存、照会対応、追加納税リスクを扱います。 税関調査、修正申告、更正請求の詳細は別記事で扱います。

CPTPP税率は締約国からの輸入だけでは使えない

CPTPP税率は、CPTPP締約国から輸入された貨物であれば自動的に適用されるものではありません。

輸入貨物がCPTPP上の原産品に該当し、必要な原産地証明情報が整っており、積送基準を満たし、税関に対して原産性を説明できることが必要です。

たとえば、CPTPP締約国で単に積み替えられただけの貨物や、締約国内で軽微な作業しか行われていない貨物は、CPTPP原産品とは認められない場合があります。

また、CPTPP締約国の企業から購入した貨物であっても、非原産材料を多く使用しており、品目別原産地規則を満たさない場合には、CPTPP税率を適用できないことがあります。

制度が適用される場面一覧

場面 制度が問題になる理由 確認すべき中心事項 主な関係者
CPTPP締約国から日本へ輸入する場合 CPTPP税率を適用できる可能性があります。 HSコード、PSR、原産品申告書、積送基準 輸入者、輸出者、通関業者
非原産材料を使用した製品を輸入する場合 PSRを満たすか確認する必要があります。 CTC、RVC、加工工程基準 生産者、輸出者、輸入者
CPTPP域内の複数国で生産・加工される場合 累積制度を利用できる可能性があります。 域内材料、域内加工、証拠資料 生産者、サプライヤー、輸入者
PSRを満たさない少量材料がある場合 デミニミスを検討できる場合があります。 非原産材料の価額、割合、品目例外 生産者、輸入者、関税担当
第三国を経由して輸送される場合 原産品としての資格を失っていないことを説明する必要があります。 積送基準、保税管理、積替え記録 輸出者、フォワーダー、輸入者
輸入後にCPTPP税率の適用を検討する場合 事後的な還付申請や更正請求が問題になります。 期限、原産性資料、輸入申告内容 輸入者、通関業者、税務・関税担当
税関から原産性確認を受けた場合 自己申告内容を資料で裏付ける必要があります。 原材料資料、工程資料、計算資料、輸送書類 輸入者、輸出者、生産者

原産品判定の全体像

CPTPPの原産品判定では、対象貨物がどのような理由で原産品といえるのかを確認します。

判定区分 内容 実務上の確認事項 主な証拠資料
完全生産品 締約国内で完全に得られ、または生産された産品です。 農産品、鉱物、水産品などで、生産地や採取地を確認します。 生産地証明、採取記録、漁獲記録、農産物資料
原産材料のみから生産された産品 CPTPP原産材料だけを使って生産された産品です。 使用材料がすべて原産材料であることを資料で確認します。 材料表、サプライヤー証明、原産材料証明資料
非原産材料を使用した産品 非原産材料を使用しているが、品目別原産地規則を満たす産品です。 HSコードごとのPSRを確認し、CTC、RVC、加工工程基準などを満たすか確認します。 部品表、原材料HSコード、RVC計算資料、工程表

多くの工業製品や加工品では、非原産材料を使用しているため、品目別原産地規則(PSR)の確認が重要になります。

適用要件・対象外になりやすい場面

区分 適用要件として確認すること 対象外・否認リスクになりやすい場面 対応の方向性
原産品該当性 完全生産品、原産材料のみ、またはPSR充足のいずれかで説明できること 締約国から出荷されただけで、実際には非締約国産品である場合 原材料・生産工程・PSRの根拠資料を確認します。
HSコード 輸入国側で妥当なHSコードを前提にPSRを確認すること 輸出者のHSコードをそのまま使い、輸入国税関の分類と異なる場合 輸入者側でHS分類を確認し、必要に応じて専門家へ確認します。
PSR 対象HSコードに対応する品目別原産地規則を満たすこと CTC、RVC、加工工程基準のいずれも満たせない場合 別基準の利用可否、累積、デミニミスを確認します。
自己申告 輸出者、輸入者、生産者のいずれかが原産性を説明できること 申告書はあるが、作成者が原産性資料を持っていない場合 証明主体と資料保有者を一致または連携させます。
積送基準 直接輸送または第三国経由時の管理状況を説明できること 第三国で加工、改変、自由流通が行われた可能性がある場合 通し船荷証券、積替え記録、保税保管資料を確保します。
資料保存 原産品申告書と裏付け資料を保存していること 税関事後検証時に部品表、工程表、計算資料を提示できない場合 輸入前に資料保管体制を決め、保存期限を管理します。

原産品判定の判断フロー

ステップ 確認すること 判断のポイント 確認資料
1 対象貨物のHSコードを確認する HSコードが変わると適用されるPSRも変わります。 インボイス、カタログ、仕様書、HS分類資料
2 CPTPP税率の有無を確認する MFN税率の方が低い場合や、関税割当が問題になる場合があります。 実行関税率表、税率情報
3 完全生産品に該当するか確認する 農産品、水産品、鉱物などで該当可能性があります。 生産地資料、採取記録、漁獲記録
4 原産材料のみから生産された産品か確認する すべての材料がCPTPP原産材料である必要があります。 材料表、原産材料証明、サプライヤー資料
5 非原産材料を使用しているか確認する 非原産材料がある場合、PSR確認が中心になります。 部品表、材料表、原材料HSコード
6 PSRを確認する CTC、RVC、加工工程基準のいずれが求められるか確認します。 品目別原産地規則、HSコード表
7 CTC・RVC・加工工程基準を満たすか確認する PSRで指定された条件を資料または計算で説明します。 CTC判定資料、RVC計算資料、製造工程表
8 累積制度・デミニミスを確認する 域内材料や少量の非原産材料を使えるか確認します。 原材料証明、価額資料、重量資料
9 積送基準を確認する 第三国経由時は加工・改変がなく税関管理下にあったことを確認します。 B/L、Sea Waybill、積替え記録、保税保管資料
10 自己申告書と証拠資料を整備する 税関事後検証に対応できる状態にしてから申告します。 原産品申告書、明細書、裏付け資料一式

この流れの中で特に重要なのは、HSコードとPSRです。HSコードを誤ると、確認すべきPSRも誤るため、CPTPP税率の適用判断全体が崩れる可能性があります。

HSコードと品目別原産地規則(PSR)

CPTPPの原産地規則では、対象貨物のHSコードごとに、品目別原産地規則(PSR)が定められています。PSRとは、その品目がCPTPP原産品と認められるために満たすべき具体的な条件です。

同じ製品に見えても、HSコードの分類が異なれば、適用されるPSRも異なることがあります。そのため、CPTPP税率を検討する場合は、まず対象貨物のHSコードを確認し、そのHSコードに対応するPSRを確認する必要があります。

特に、部品、機械、化学品、繊維製品、食品加工品などでは、HS分類とPSRの読み違いが大きなリスクになります。

CTC・RVC・加工工程基準の違い

非原産材料を使用している場合、PSRで指定された基準を満たすかを確認します。主な基準には、関税分類変更基準(CTC)、付加価値基準(RVC)、加工工程基準があります。

基準 内容 確認する資料 注意点
CTC 非原産材料のHS分類が、完成品のHS分類へ一定の変更をしているかを見る基準です。 完成品HSコード、原材料HSコード、部品表、材料表 HS分類の誤りがあると判定を誤る可能性があります。
RVC 完成品の価額に占める域内付加価値の割合を見る基準です。 原材料価格、製造費、FOB価額、計算資料、原価資料 計算方法、対象費用、証拠資料の整備が重要です。
加工工程基準 特定の製造工程や加工が締約国内で行われたかを見る基準です。 製造工程表、作業指示書、工場記録、生産記録 単なる梱包、選別、ラベル貼付などでは不足する場合があります。

CTC、RVC、加工工程基準のどれを使うかは、輸入者や輸出者が自由に選ぶものではありません。まずHSコードに対応するPSRを確認し、そのPSRがどの基準を求めているかを確認します。

PSRによっては、CTCまたはRVCのいずれかを満たせばよい場合もあれば、特定の加工工程を満たす必要がある場合、複数条件を同時に満たす必要がある場合もあります。

完全生産品と原産材料のみから生産された産品

完全生産品とは、CPTPP締約国内で完全に得られ、または生産された産品をいいます。たとえば、締約国内で収穫された農産品、採掘された鉱物、捕獲された水産品などが該当する場合があります。

原産材料のみから生産された産品とは、使用される材料がすべてCPTPP原産材料であり、それらを用いて締約国内で生産された産品をいいます。

この場合でも、単に「締約国のサプライヤーから購入した」というだけでは足りません。その材料がCPTPP原産材料であることを示す資料、サプライヤー証明、原材料情報、製造工程資料を確認する必要があります。

累積制度とは

累積制度とは、CPTPP締約国で生産された原材料や加工を、一定の条件のもとで原産性の判断に組み込める制度です。

たとえば、あるCPTPP締約国で作られた部品を、別のCPTPP締約国で加工して完成品にする場合、その部品や加工を原産性の判断に利用できることがあります。

これにより、CPTPP域内にまたがるサプライチェーンでも、原産地規則を満たしやすくなる場合があります。ただし、累積制度を使う場合でも、原材料の原産地、加工工程、取引書類、証拠資料を説明できることが前提になります。

「CPTPP締約国から仕入れた」というだけでは足りず、その材料が原産材料として扱えるかを確認する必要があります。

デミニミスとは

デミニミスとは、非原産材料がわずかに含まれている場合でも、一定の範囲内で原産地規則を満たすものとして扱えることがある制度です。

CPTPPでは、関税分類変更基準を満たさない非原産材料について、一定の条件のもとで産品の価額の10%以下であれば原産品として扱える可能性があります。

ただし、デミニミスは万能ではありません。デミニミスを利用する場合でも、産品が他の要件を満たす必要があります。また、繊維・衣類などでは別の扱いが問題になり、食品や農産加工品などでは例外規定が問題になることがあります。

そのため、デミニミスを利用できるかどうかは、対象品目のHSコード、PSR、非原産材料の内容、価額、重量、除外規定を確認して判断する必要があります。

自己申告制度の特徴

CPTPPでは、第三者機関が原産地証明書を発給する方式ではなく、輸出者、輸入者、生産者のいずれかが、貨物が原産品であることを申告する自己申告制度が採用されています。

自己申告制度では、証明主体が原産性を説明できる資料を持っていることが重要です。単に原産品申告書を作成するだけでなく、必要に応じて、原材料表、製造工程表、部品表、原産材料の証拠、RVC計算資料、輸送書類などを提示できる状態にしておく必要があります。

日本の輸入実務では、原産品申告書の有効期間や、輸入許可後の資料保存期間も管理対象になります。CPTPP税率を継続的に利用する場合は、申告書の作成日、対象貨物、対象期間、保存期限を社内で管理することが重要です。

誰が原産地証明を行うか

証明主体 向いている場面 メリット 注意点
輸出者 輸出者が製品や原材料情報を把握している場合 輸入者に代わって原産性説明を用意しやすい場合があります。 輸出者が実際の製造情報を持っていない場合、説明が不十分になることがあります。
生産者 製造情報、部品表、工程表、原価情報を最も把握している場合 PSR、CTC、RVC、加工工程の説明をしやすい場合があります。 輸入者や輸出者へどこまで情報を開示するかが問題になることがあります。
輸入者 輸入者が関税管理を主導し、必要資料を入手できる場合 日本での輸入申告や税関対応を一元管理しやすくなります。 輸入者自身が原産性を説明できる資料を確保しておく必要があります。
フォワーダー・通関業者 通関手続、物流書類、申告書類の整合確認を支援する場合 インボイス、B/L、輸入申告書類との整合確認を支援できます。 通常、原産性そのものを判断する製造情報や原材料情報は持っていません。

フォワーダーや通関業者は、通関手続や書類整合の支援を行うことはありますが、通常、原産性そのものを判断するための製造情報や原材料情報を持っているわけではありません。したがって、フォワーダーに任せれば原産地証明が完成するという考え方は危険です。

直送要件・積送基準の確認

CPTPP税率を適用するには、原産地規則を満たすだけでなく、直送要件または積送基準の確認も重要です。

CPTPP締約国から日本へ直接輸送される場合は比較的整理しやすいですが、非締約国を経由する場合には注意が必要です。

非締約国を経由する場合、経由地で加工や改変が行われていないこと、税関の管理下に置かれていたこと、単なる積替えや一時保管にとどまることなどを説明できる資料が必要になることがあります。

この確認のため、B/L、Sea Waybill、通し船荷証券、航空運送状、積替え記録、保税保管に関する資料などの輸送書類が重要になります。輸送書類は単なる物流書類ではなく、原産品としての資格を失っていないことを示す資料として使われる場合があります。

有効期間・資料保存・輸入後の還付申請

CPTPPの原産品申告書は、輸入実務上、有効期間を確認する必要があります。作成日、対象貨物、包括申告の場合の対象期間を確認し、通関時に有効な原産品申告書であるかを確認します。

また、CPTPP税率を利用した輸入では、原産品申告書だけでなく、原産性を明らかにする資料の保存が重要です。輸入者は、輸入許可後の保存期間を管理し、税関事後検証に対応できる状態にしておく必要があります。

輸入時にCPTPP税率を適用しなかった場合でも、一定の条件を満たすと、輸入後に特恵税率の適用や還付申請を検討できる場合があります。ただし、期限、提出資料、輸入申告内容、原産品申告書の有効性を確認する必要があります。

なお、輸入国が日本以外の場合は、CPTPP協定の内容に加えて、各国の実施法令や税関運用も確認する必要があります。

主要書類

書類区分 主な書類 確認目的 不足した場合のリスク
原産地証明関係 原産品申告書、原産地証明情報、証明主体の情報 CPTPP原産品として申告するためです。 特恵税率の適用を説明できない可能性があります。
品目・価格関係 インボイス、パッキングリスト、HSコード確認資料 対象貨物、金額、数量、HS分類を確認します。 PSRやRVCの前提が崩れる可能性があります。
PSR確認資料 品目別原産地規則の確認資料、CTC判定資料、RVC計算資料、加工工程資料 PSRを満たしているかを説明します。 原産品判定の根拠を示せない可能性があります。
原材料関係 部品表、材料表、原材料証明資料、サプライヤー証明書 原材料が原産材料か非原産材料かを確認します。 累積やCTC、RVCの説明が困難になります。
製造関係 製造工程表、生産記録、工場資料、加工内容の説明資料 締約国内でどのような生産・加工が行われたかを説明します。 加工工程基準や実質的変更を説明できない可能性があります。
輸送関係 B/L、Sea Waybill、通し船荷証券、航空運送状、積替え記録、保税保管資料 直送要件・積送基準を満たすことを説明します。 第三国経由時に原産資格維持を説明できない可能性があります。
税関検証対応 計算根拠、メール、契約書、取引記録、保管資料一式 税関の事後検証に対応するためです。 追加納税、過去分の見直し、社内統制上の問題につながる可能性があります。

他制度との比較

制度・税率区分 原産地証明の考え方 実務上の特徴 CPTPPとの違い
CPTPP 輸出者、輸入者、生産者による自己申告制度です。 申告書だけでなく、原産性資料を保管して説明できることが重要です。 第三者機関の証明書に依存せず、証明主体の資料管理が重要になります。
第三者証明型EPA 商工会議所などの発給機関が原産地証明書を発給する方式です。 発給申請時点で一定の確認を受ける一方、取得に手続期間がかかる場合があります。 CPTPPより外部発給手続の比重が大きくなります。
他の自己申告型EPA 協定ごとに輸出者、生産者、輸入者の関与方法や必要情報が異なります。 同じ自己申告でも、書式、記載事項、輸入者の説明責任が異なる場合があります。 CPTPPと同じ感覚で他協定を扱うと誤る可能性があります。
MFN税率・一般税率 特恵原産地規則による原産品判定は通常問題になりません。 EPA税率の適用を求めないため、原産品申告書は不要です。 関税メリットは小さくなる場合がありますが、原産性証明の負担は軽くなります。
関税割当対象品目 原産地規則とは別に、割当や数量管理が問題になる場合があります。 原産品であっても、割当条件を満たさなければ想定税率にならないことがあります。 CPTPP原産品判定だけでは足りない場合があります。

よくある誤解

よくある誤解 実務上の考え方 注意点
CPTPP締約国からの輸入ならCPTPP税率が使える 締約国から来ただけでは足りず、CPTPP原産品である必要があります。 HSコード、PSR、原産性資料、積送基準を確認します。
原産品申告書を作れば資料は不要である 自己申告制度では、申告内容を裏付ける資料が必要です。 税関事後検証に備えて、材料・工程・計算資料を保管します。
フォワーダーが原産地証明を担当する フォワーダーは通関や物流書類の支援はできますが、原産性の責任主体とは限りません。 輸入者、輸出者、生産者の誰が証明主体になるかを決めます。
累積制度を使えば締約国材料は何でも利用できる 締約国から仕入れた材料でも、原産材料として扱えるか確認が必要です。 原材料の原産性を示す証拠資料を確認します。
デミニミスがあるのでPSR未達でも問題ない デミニミスには割合や品目ごとの制限があります。 非原産材料の価額、重量、対象品目、除外規定を確認します。
HSコードは輸出者が書いたものをそのまま使えばよい 輸入国税関での分類が問題になるため、輸入者側でも確認が必要です。 HSコードの違いによりPSRが変わることがあります。
非締約国を経由しても原産性には影響しない 経由地で加工・改変がないことや税関管理下にあったことを説明する必要があります。 通し船荷証券、保税保管資料、積替え記録を確認します。
過去に一度使えた品目なら今後も同じ判断でよい 材料構成、仕入先、HSコード、PSR、協定運用が変わると判断も変わります。 継続取引でも定期的に原産性資料を見直します。

制度が問題になる典型場面

場面 問題の内容 確認すべき点 実務上の対応
PSR未達 非原産材料を多く使用しており、CTCやRVCを満たせないケースです。 HSコード、PSR、原材料HSコード、RVC計算資料 別基準の利用可否、累積、デミニミスを確認します。
累積利用 CPTPP締約国産の部品や材料を組み合わせるケースです。 締約国材料が原産材料として扱える資料 サプライヤー証明、材料表、取引書類を保管します。
デミニミス利用 一部の非原産材料がPSRを満たさないものの、許容範囲内として検討するケースです。 非原産材料の価額、割合、品目ごとの制限 10%基準だけでなく、品目例外と他要件を確認します。
生産者申告 製造情報を最も把握している生産者が原産性を説明するケースです。 生産者が必要資料を保有し、税関検証に対応できるか 輸入者、輸出者、生産者の連絡ルートを事前に決めます。
積送基準確認 非締約国を経由したため、経由地での管理状況を確認するケースです。 通し船荷証券、積替え記録、保税保管資料 輸送手配時点で必要書類をフォワーダーへ依頼します。
証拠不足 税関検証時に原材料資料や工程資料が不足するケースです。 申告書だけでなく、原産性を裏付ける資料 輸入前に資料保管責任者と保存場所を決めます。
輸入後還付申請 輸入時にCPTPP税率を適用せず、事後的に還付申請を検討するケースです。 期限、原産品申告書、原産性資料、輸入申告内容 申請期限と必要書類を確認し、過去申告を整理します。
サプライヤー変更 同じ製品でも原材料仕入先や製造場所が変わるケースです。 変更後の材料構成、工程、原産性資料 変更時に原産性判定を再確認します。

4列判断チェックリスト

確認場面 確認する相手 確認事項 問題がある場合の対応
取引開始前 輸出者、生産者、購買担当 対象品目、HSコード、CPTPP税率、原産性資料の入手可否 資料提供できない場合は、CPTPP税率を前提に価格交渉しないようにします。
契約・発注前 輸出者、生産者、法務・購買担当 誰が原産品申告書を作成し、誰が資料を保管するか 契約書や発注条件で原産性資料の提供義務を整理します。
生産・出荷前 生産者、輸出者 原材料、部品表、製造工程、CTC、RVC、累積、デミニミス PSR未達の場合は、通常税率での輸入や別調達を検討します。
輸送手配時 輸出者、フォワーダー 直送、第三国経由、積替え、保税保管、通し船荷証券 積送基準を説明できる輸送書類を事前に依頼します。
通関申告時 通関業者、輸入者、関税担当 原産品申告書、有効期間、HSコード、CPTPP税率、必要書類 疑義がある場合は、CPTPP税率の適用を保留し、通常税率での申告も検討します。
税関事後検証時 輸入者、輸出者、生産者 原材料資料、工程資料、RVC計算資料、輸送資料、申告根拠 回答期限を確認し、資料不足部分を関係者から速やかに回収します。
輸入後還付申請時 通関業者、税務・関税担当 申請期限、原産品申告書、原産性資料、輸入申告内容 期限切れや資料不足の場合は、申請可否を慎重に判断します。
社内管理見直し時 法務、貿易管理、購買、経理 過去申告、追加納税リスク、サプライヤー資料、保存体制 継続案件は定期点検し、誤適用があれば修正申告や再発防止を検討します。

制度適用シナリオ

シナリオ1:ベトナムで組み立てた機械部品を日本へ輸入する場合

日本の輸入者が、CPTPP締約国であるベトナムから機械部品を輸入する場面です。インボイス上の輸出国がベトナムであっても、それだけではCPTPP税率を適用できません。

まず、完成品のHSコードを確認し、そのHSコードに対応するPSRを確認します。非原産材料を使用している場合は、原材料のHSコードと完成品のHSコードを比較し、CTCを満たすかを確認します。CTCを満たさない材料がある場合には、RVCやデミニミスを利用できるかを確認します。

このシナリオでは、生産者が部品表、原材料情報、製造工程表を保有していることが多いため、生産者申告または輸出者申告を利用する場合でも、輸入者は税関事後検証に備えて、必要資料をどこまで入手できるかを確認しておく必要があります。

シナリオ2:CPTPP域内の複数国で材料調達・加工を行う場合

マレーシアで調達した部品をベトナムで加工し、日本へ輸入するような取引では、累積制度の利用が問題になります。CPTPP域内の材料や加工を原産性判断に組み込める場合がありますが、単に締約国から購入したという事実だけでは十分ではありません。

この場合、マレーシア産部品がCPTPP原産材料として扱えるか、ベトナムで行われた加工がPSR上どのように評価されるかを確認します。サプライヤー証明、部品表、加工工程表、取引書類を整理し、累積制度を利用する根拠を説明できる状態にします。

累積制度は便利な制度ですが、証拠資料が不足していると、税関事後検証時に説明ができなくなります。サプライチェーンが複数国にまたがる場合ほど、原産性資料の保管責任を事前に決めておくことが重要です。

シナリオ3:第三国で積替え・一時保管された貨物を輸入する場合

CPTPP締約国で生産された貨物が、非締約国の港で積み替えられて日本へ輸入される場合、積送基準が問題になります。原産品であっても、輸送途中で加工や改変が行われた場合や、税関管理下にあったことを説明できない場合には、CPTPP税率の適用に支障が出ることがあります。

このシナリオでは、B/L、Sea Waybill、通し船荷証券、積替え記録、保税保管資料などを確認します。輸送手配の段階で第三国経由が分かっている場合は、フォワーダーに対して、積送基準の説明に必要な資料を取得できるかを確認しておく必要があります。

輸送書類は単なる物流確認資料ではありません。CPTPP税率を維持するためには、貨物が原産品としての資格を失っていないことを示す資料として機能する場合があります。

シナリオ4:輸入時にCPTPP税率を使わず、後から還付申請を検討する場合

輸入時点で原産品申告書や原産性資料がそろっていなかったため、通常税率で輸入申告を行い、後からCPTPP税率の適用を検討するケースがあります。

この場合、輸入後に原産品申告書、原産性を明らかにする資料、輸入申告内容、申請期限を確認します。単に後から申告書を入手しただけでは足りず、輸入時の貨物と申告書の対象貨物が一致していること、PSRを満たす資料があること、積送基準を説明できることが必要です。

還付申請は、期限管理と資料管理の両方が重要です。社内では、輸入日、輸入許可日、申請期限、必要資料の回収状況を一覧管理しておくと実務上の漏れを防ぎやすくなります。

社内管理上の注意点

CPTPP税率の利用は、通関担当者だけの問題ではありません。購買、法務、経理、物流、貿易管理、サプライヤー管理が関係します。

特に、サプライヤー変更、製造場所変更、原材料変更、HSコード変更、価格変更がある場合は、過去の原産性判断をそのまま使えないことがあります。継続取引では、初回だけでなく、一定期間ごとに原産性資料を見直すことが重要です。

また、関税削減メリットが小さい場合には、CPTPP税率を利用するための資料収集・保存・検証対応コストが見合わないこともあります。関税メリットと管理コストを比較し、CPTPP税率を使う品目を選別することも実務上重要です。

まとめ

CPTPPの原産地規則は、HSコード、品目別原産地規則(PSR)、CTC、RVC、加工工程基準、累積制度、デミニミス、自己申告制度、積送基準を組み合わせて確認する実務です。

CPTPP締約国から輸入された貨物であっても、CPTPP上の原産品であることを説明できなければ、CPTPP税率を安全に適用することはできません。

特に重要なのは、最初にHSコードを確認し、そのHSコードに対応するPSRを正しく確認することです。CTC、RVC、加工工程基準のどれを使うかは、品目ごとのPSRによって決まります。

自己申告制度では、原産品申告書を作成するだけでは不十分です。輸入者、輸出者、生産者のいずれが証明主体になる場合でも、税関事後検証に対応できる証拠資料を保管しておく必要があります。

また、累積制度やデミニミスを利用する場合でも、対象材料、割合、品目ごとの制限、証拠資料を確認する必要があります。

非締約国を経由する場合には、直送要件・積送基準を満たすことを説明するため、通し船荷証券、積替え記録、保税保管資料などの輸送書類も重要になります。

CPTPP税率を安全に活用するには、原産品申告書だけでなく、サプライチェーン全体の原産地情報、製造工程、原材料資料、計算資料、輸送書類を整備し、税関の事後検証に対応できる状態にしておくことが重要です。

同義語・別表記

  • CPTPP原産地規則
  • TPP11原産地規則
  • CPTPP Rules of Origin
  • CPTPP Origin Criteria
  • CPTPP原産品
  • CPTPP原産地証明
  • CPTPP自己申告制度

関連用語