船荷証券(B/L)の裏書と権利移転
概要
船荷証券(B/L)の裏書は、B/L上の権利を移転し、現在の所持人が貨物についてどのような権利を行使できるのかを確認するための重要な手続きです。
特にOrder B/Lでは、Consignee欄の記載、最初の裏書人、裏書の方式、裏書の連続性及びOriginal B/Lの所持関係が、L/C決済、荷為替取引、銀行担保、D/O発行及び貨物引渡しに直接影響します。
一方、「B/Lへ裏書すれば貨物所有権が必ず移転する」「Original B/Lを持っていれば誰でも貨物を受け取れる」と単純に理解するのは適切ではありません。B/L上の権利、運送人に対する貨物引渡請求権、売買契約上の所有権、銀行の担保権その他の権利関係は、それぞれ区別して確認する必要があります。
また、日本法では、記名式の船荷証券についても、裏書禁止の記載がない限り、裏書による譲渡又は質入れを認める明文規定があります。これは、外国法又は運送人実務においてStraight B/Lを非流通型書類として取り扱う場合があることと区別して理解する必要があります。
本記事では、B/L全体の基本機能を繰り返さず、Consignee欄と裏書、B/L上の権利移転、裏書の連続性、L/C・銀行取引及び貨物引渡し時の権利確認に特化します。B/L・Sea Waybill・FCRの基本的な違いは「運送証券と類似証書」、Original B/Lの提示、Full Set、D/O、原本未着、Bank L/G等の詳細は「B/L原本がないと貨物を引き取れない理由」で扱います。
本記事の固有担当範囲
| 項目 | この記事で扱う内容 | 他記事で扱う内容 |
|---|---|---|
| B/Lの基本機能 | 裏書を理解するために必要な範囲のみ扱う | B/L・Sea Waybill・FCRの総合比較は「運送証券と類似証書」で扱う |
| Order B/L | Consignee欄、最初の裏書人、裏書による権利移転 | B/L全体の分類はB/L総論記事で扱う |
| Straight B/L | 日本法上の裏書可能性と外国実務との差異 | 貨物引渡し方式全般は「B/L原本がないと貨物を引き取れない理由」で扱う |
| 白地裏書 | 意味、権利移転、管理上の注意 | Original B/L紛失時の対応は原本記事で扱う |
| 記名裏書 | 被裏書人を指定する場合の連続性 | 売買契約上の所有権移転一般は本記事の対象外 |
| 銀行指図式B/L | 銀行裏書、Release権限、Applicantとの区別 | L/C全体の決済実務は信用状関連記事で扱う |
| L/C | 信用状条件とConsignee・裏書の整合確認 | UCP 600全体の解説は信用状関連記事で扱う |
| 裏書の連続性 | 裏書人・被裏書人・名称・署名の連続確認 | Original B/L全通管理の詳細は原本記事で扱う |
| D/O交換 | 裏書されたB/Lから正当な引渡請求者を確認する観点 | D/O発行手続及び原本提示要件の詳細は原本記事で扱う |
| B/L上の権利と所有権 | 両者を同一視しないための基本整理 | 売買契約上の所有権移転は契約・準拠法ごとに判断する |
裏書とは
裏書とは、B/Lの裏面又は所定欄に、現在の権利者が署名その他必要な記載を行い、B/L上の権利を他人へ移転するための手続きです。
Order B/Lでは、Consignee欄の記載と裏書を組み合わせることによって、B/L上で誰から誰へ権利が移転したのかを追跡できるようにします。
たとえば、Consignee欄が「To Order of Shipper」であれば、通常、最初に確認するのはShipperによる裏書です。そこから銀行、買主その他の者へ記名裏書が行われる場合には、被裏書人と次の裏書人が連続しているかを確認します。
ただし、裏書の意味は単なる「署名」ではありません。裏書はB/L上の権利関係を変動させるため、署名権限、法人名、裏書方法、Original B/Lの所持関係を含めて確認します。
日本法における船荷証券の裏書
日本法上の船荷証券では、記名式か指図式かだけで裏書可能性を判断することはできません。
商法第762条は、船荷証券について、記名式である場合でも、船荷証券に裏書を禁止する旨の記載がない限り、裏書によって譲渡し、又は質権の目的とすることができるという構造を採っています。
また、商法第761条は、船荷証券が作成された場合、運送品に関する処分を船荷証券によって行うという基本構造を定めています。
商法第763条では、船荷証券によって運送品を受け取ることができる者へ船荷証券を引き渡した場合、その引渡しは、運送品について行使する権利の取得との関係で、運送品自体の引渡しと同一の効力を持つとされています。
さらに商法第764条は、船荷証券が作成された場合、原則として船荷証券との引換えでなければ運送品の引渡しを請求できないという基本構造を定めています。
したがって、日本法では「Consignee欄に特定人名が書かれているから、裏書による譲渡は絶対にできない」と一律に判断することはできません。
日本法と国際実務上のStraight B/Lを混同しない
日本法上の規律と、外国法又は各shipping line・NVOCCの実務上のStraight B/Lの取扱いは分けて確認する必要があります。
| 確認軸 | 日本法上の基本構造 | 国際実務で問題となる点 | 実務対応 |
|---|---|---|---|
| 記名式B/L | 裏書禁止の記載がなければ裏書による譲渡・質入れが可能 | Straight B/Lを非流通型として扱う法域・運送人実務がある | 準拠法と運送人の取扱いを確認する |
| Order B/L | 裏書による権利移転を予定する | 信用状・銀行実務でも裏書が重要になる | Consignee欄と裏書条件を確認する |
| 裏書禁止 | 裏書禁止の記載があれば商法762条の通常の裏書譲渡から外れる | Non-negotiable等の表示との関係を確認する | 書類文言を直接確認する |
| 貨物引渡し | B/L所持・権利関係が重要 | 各国法・港・運送人のRelease手続も影響する | D/O手続を事前確認する |
そのため、外国向け貨物について「日本法なら裏書できるはず」という理由だけで、仕向地のshipping line又は代理店へ貨物引渡しを要求するのは危険です。
B/Lの準拠法、裁判管轄、Consignee欄、裏書禁止文言、shipping lineのRelease手続及び仕向地法を確認します。
Consignee欄から最初の裏書人を確認する
| Consignee欄の例 | 基本的な性質 | 裏書確認の出発点 | 主な実務リスク |
|---|---|---|---|
| ABC Co., Ltd. | 記名式・Straight型 | 準拠法上の譲渡可能性とABC社の権限を確認 | 「記名式=世界中で絶対に裏書不可」と誤解する |
| To Order | 単純指図式 | 通常はShipper側の裏書を確認 | 最初の裏書欠落 |
| To Order of Shipper | 荷送人指図式 | Shipperの裏書を確認 | Shipperの白地裏書・記名裏書がない |
| To Order of ABC Bank | 銀行指図式 | ABC Bankの裏書又はRelease指図を確認 | ApplicantがOriginalを持っているだけで引渡し可能と誤認する |
| ABC Co., Ltd. / Non-negotiable | 非流通型であることを明示する構造 | 裏書ではなく記名Consigneeとしての引渡権限を確認 | Order B/Lと同じ処理をする |
主な裏書方式
| 方式 | 記載方法 | 主な効果・目的 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|---|
| 白地裏書 | 被裏書人を指定せず裏書人が署名する | B/Lを所持人へ流通させやすくする | Original B/Lの管理リスクが高くなる |
| 記名裏書 | 特定の被裏書人を指定する | 特定人へB/L上の権利を移転する | 次の裏書では名称の連続性を確認する |
| 指図文言を伴う記名裏書 | 特定人又はその指図人を指定する | さらに次の裏書による移転を予定する | 裏書の連続性が重要になる |
| 銀行による裏書 | 銀行が裏書人となる | 銀行が保有するB/L上の権利を移転・Releaseする | 「銀行裏書」は独立した法的裏書方式というより、銀行が裏書人となる実務場面である |
白地裏書
白地裏書(Blank Endorsement)は、被裏書人を指定せず、裏書人が署名する方式です。
L/C条件で「made out to order and blank endorsed」等と指定されることがあり、その場合には、B/LをOrder形式で作成するだけでなく、信用状が要求する白地裏書まで整っているかを確認します。
白地裏書後は、B/Lの物理的所持がより重要になります。そのため、Original B/Lの紛失、誤送付、社内管理ミス等が発生すると、貨物引渡しや権利関係に重大な問題を生じる可能性があります。
Original B/Lを紛失した場合のBank L/Gその他の対応は、「B/L原本がないと貨物を引き取れない理由」で扱います。
記名裏書と裏書の連続性
記名裏書では、特定の被裏書人を明記して権利を移転します。
たとえば、ShipperであるABC Export Co., Ltd.が「Pay to the order of XYZ Bank」と裏書し、次にXYZ Bankが「Pay to the order of DEF Import Co., Ltd.」と裏書する場合、各段階の名称が連続している必要があります。
実務では、次のような点で連続性が問題になります。
- 前の裏書の被裏書人と次の裏書人の名称が一致していない
- 会社名の変更・合併前後の名称が混在している
- 支店名と本店名の関係が不明である
- 署名者の権限が確認できない
- 銀行名が信用状条件と異なる
- 必要なShipperの最初の裏書がない
- 裏書欄の訂正が適切に認証されていない
裏書の連続性は、単に署名が複数並んでいるかではなく、前の権利者から次の権利者へ権利移転の流れを証券上追跡できるかという観点で確認します。
B/L上の権利移転と貨物所有権は同じ問題ではない
B/Lの裏書を説明する際に最も注意すべき点の一つが、「B/Lを裏書したから貨物の所有権が必ず移転した」と単純化しないことです。
B/Lは貨物について一定の権利を表象し、B/Lの引渡しには貨物について行使する権利の取得との関係で重要な法的効果があります。
しかし、売主と買主の間で貨物所有権がいつ移転するかは、売買契約、準拠法、当事者の合意その他の事情によって判断される問題です。
したがって、次の三つは分けて整理します。
| 権利関係 | 主な根拠 | B/L裏書との関係 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 運送人への貨物引渡請求権 | B/L・運送契約・適用法 | 裏書・所持が直接問題となる | 正当なB/L所持人を確認する |
| B/L上の処分権 | B/L及び適用法 | 裏書による移転が重要 | 裏書禁止等を確認する |
| 銀行の担保的地位 | L/C・荷為替・担保関係 | 銀行指図式・銀行裏書が重要 | Applicantの物理的所持だけで判断しない |
| 売買契約上の貨物所有権 | 売買契約・準拠法 | B/L移転と関係する場合があるが同一問題ではない | 自動的な所有権移転と断定しない |
L/C取引とUCP 600・ISBP
L/C取引では、B/LのConsignee欄、裏書方法、発行者・署名、On Board Notation、積地・揚地、Original枚数その他が、信用状条件に適合しているか銀行によって審査されます。
UCP 600第20条は、信用状でBill of Ladingが要求された場合のB/Lについて、Carrier、Master又はそのAgentによる署名、船積済みであることの表示、指定された積地・揚地、Originalの提示等を含む基本的な要件を定めています。
ただし、UCP 600第20条が、すべてのB/Lについて一律に「白地裏書しなければならない」と定めているわけではありません。
具体的に「To Order」「To Order of Shipper」「To Order of Issuing Bank」「blank endorsed」等のどの形式が必要かは、まず信用状条件を確認します。
ISBPは、UCP 600を変更する規則ではなく、UCP 600の下で銀行が各種書類をどのように審査するかを具体化する国際標準銀行実務です。したがって、L/C取引では信用状条件 → UCP 600 → ISBPによる実務的審査という関係を理解しておく必要があります。
「Consigned to Bank」と「To Order of Bank」は同じではない
銀行名がConsignee欄に記載されていても、その記載方法によってB/Lの性質は異なります。
| 記載例 | 基本的な読み方 | 裏書との関係 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|---|
| ABC Bank | ABC Bankを記名Consigneeとする形 | 準拠法上の譲渡方法を確認する | Order B/Lと同一視しない |
| To Order of ABC Bank | ABC Bankを指図人とするOrder B/L | 銀行の裏書・指図が重要 | Applicantだけの判断でReleaseしない |
| To Order of Shipper | Shipper指図式 | Shipperの裏書が出発点 | 信用状のblank endorsement条件を確認する |
| To Order | 単純指図式 | 通常、Shipperによる裏書が問題となる | 信用状の正確な文言と照合する |
信用状が「To Order of Issuing Bank」を要求しているにもかかわらず「ABC Bank」とだけ記載した場合、又はその逆の場合、信用状条件との不一致が問題となることがあります。
銀行Consigneeの場合の貨物引渡し
銀行をConsignee又はOrder PartyとするB/Lでは、Original B/Lを誰が物理的に所持しているかだけでなく、銀行がどのように権利を処理したのかを確認する必要があります。
特に、House B/LのConsigneeが発行銀行であり、Original 3通のうち1通がApplicantへ直送されている場合でも、ApplicantがそのOriginalを提示しただけで、当然に貨物を引き渡してよいとは限りません。
銀行の裏書、Release Order、Delivery Authorisationその他、銀行からApplicant又は別の者へ貨物引渡しを認める権限移転が確認できるかを確認します。
Ocean B/L又はMaster B/LがSurrenderedである場合でも、House B/L上で銀行がConsigneeとなっているなら、House B/Lレベルの貨物引渡し管理を省略してよいことにはなりません。
この点は、海外代理店が銀行裏書の意味を理解せず、ApplicantがOriginal House B/Lを持参したという理由だけで貨物を引き渡す事故につながることがあります。
D/O交換時に確認する裏書
D/O交換時には、Original B/Lを持参しているという事実だけでなく、そのB/L上で現在の提示者が貨物引渡しを請求できる地位にあるかを確認します。
主な確認事項は次のとおりです。
- Consignee欄
- 最初の裏書人
- 裏書の連続性
- 白地裏書か記名裏書か
- 銀行が関与する場合の銀行裏書・Release指図
- 法人名・銀行名の一致
- 署名・権限
- Original B/Lの通数及び提示条件
Original B/LのFull Set、1/3 Original、原本未着、Bank L/Gその他の貨物引渡し手続そのものは「B/L原本がないと貨物を引き取れない理由」で詳しく扱います。
実務上の判断フロー
- B/LがOriginal B/Lか、Sea Waybillその他の書類かを確認する。
- Consignee欄が記名式、To Order、To Order of Shipper、To Order of Bank等のどの形式か確認する。
- B/LにNon-negotiable又は裏書禁止に相当する記載がないか確認する。
- 準拠法及び仕向地でのB/L取扱いを確認する。
- Order B/Lの場合、最初に裏書すべき者を特定する。
- 白地裏書か記名裏書か、L/C・売買契約上要求される方式を確認する。
- 記名裏書が複数ある場合、裏書人と被裏書人の名称が連続しているか確認する。
- 署名者の法人名、支店名及び署名権限に疑義がないか確認する。
- L/C取引では信用状条件、UCP 600及びISBPに照らして書類を確認する。
- 銀行がConsignee又はOrder Partyの場合、銀行の裏書・Release権限を確認する。
- D/O交換時には、提示者がB/L上で正当な引渡請求者であるか確認する。
- B/L上の権利移転と売買契約上の貨物所有権移転を混同しない。
- 不明点がある場合、貨物を引き渡す前にshipping line、NVOCC、銀行又は海事弁護士へ確認する。
実務で問題になりやすいケース
| ケース | 主な問題 | 確認事項 | 実務対応 |
|---|---|---|---|
| To Order of ShipperだがShipper裏書がない | 最初の権利移転が確認できない | 信用状条件、Shipper裏書 | 銀行提出・D/O交換前に修正する |
| 白地裏書指定だが記名裏書されている | L/C条件との不一致 | L/C原文、裏書内容 | 銀行提出前に確認する |
| To Order of BankだがApplicantだけがOriginalを提示 | 銀行からの権利移転が確認できない | 銀行裏書、Release Order | 銀行承認前に貨物を引き渡さない |
| 裏書の会社名が途中で異なる | 裏書の連続性に疑義 | 社名変更・合併資料 | 同一法人性を確認する |
| Straight B/Lを裏書して第三者へ渡した | 準拠法・仕向地実務上の流通性 | 準拠法、Non-negotiable表示 | 裏書だけで移転可能と判断しない |
| 銀行名がL/CとB/Lで異なる | 書類不一致又は権利者不明 | L/C、B/L、銀行正式名称 | 船積前のDraft B/Lで修正する |
| 銀行裏書があるが署名権限不明 | Release権限に疑義 | 銀行確認、署名・スタンプ | 運送人側で追加確認する |
| B/L裏書を貨物所有権移転と同一視 | 売買契約とB/L上の権利を混同 | 売買契約、準拠法、B/L | 権利関係を別々に整理する |
具体例1:大阪港発L/C取引で白地裏書が欠落した場合
以下は実務判断を説明するための想定例です。
大阪港からシンガポール港へ輸出する産業機械、Invoice価格3,500万円についてL/Cが発行されたとします。
信用状では、B/Lについて「made out to order and blank endorsed」と指定されていました。
輸出者はConsignee欄を「To Order of Shipper」としてB/Lを発行させましたが、船積後、Shipperの白地裏書をしないままOriginal B/Lを買取銀行へ提出しました。
輸出者は「Consignee欄がTo Order of Shipperになっているため、それだけで指図式B/Lとして十分ではないか」と主張しました。
これに対し銀行は、「信用状はB/LをOrder形式にするだけでなく、Blank Endorsedとすることまで要求している」として、裏書欠落をDiscrepancyとして処理しました。
その結果、書類買取が保留され、輸出者はApplicantによるWaiver又は訂正対応を検討する必要が生じました。
このケースの重要点は、Order B/Lとして法的に流通可能かという問題と、L/C条件を満たした書類であるかという銀行審査の問題は別であることです。
具体例2:銀行ConsigneeのHouse B/LをApplicantへ誤引渡ししそうになった場合
上海から横浜へ輸入する電子部品、Invoice価格2,400万円について、L/C条件によりHouse B/LのConsigneeが発行銀行となっていたとします。
Original B/Lは3通発行され、そのうち1通がApplicantへ直送されました。
Applicantは横浜のフォワーダー代理店へその1/3 Originalを持参し、「原本を持っているので貨物を引き渡してほしい」と要求しました。
しかし、House B/L上のConsigneeは銀行であり、銀行による裏書、Release Orderその他の引渡承認はありませんでした。
Applicantは「原本は正規にShipperから送られてきた」と主張しましたが、フォワーダーは物理的なOriginal所持だけでは銀行の権利がApplicantへ移転したことを確認できないとしてReleaseを停止しました。
仮に海外代理店がこの点を理解せずApplicantへ貨物を引き渡した場合、後に銀行から担保貨物の誤引渡し又は貨物代金相当額について責任を追及される可能性があります。
このケースの重要点は、Original B/Lを持っていることと、B/L上の正当な貨物引渡請求権を有することは必ずしも同じではないという点です。
具体例3:裏書の法人名不一致でD/O交換が停止した場合
神戸港からハンブルク港へ輸出した工作機械、Invoice価格4,200万円について、B/Lが「To Order of Shipper」で発行されたとします。
ShipperであるABC Trading Co., Ltd.は、XYZ Bankへ記名裏書しました。その後、XYZ Bankは買主である「DEF Industrial GmbH」へ裏書する予定でした。
ところが、実際の銀行裏書では旧商号である「DEF Machinery GmbH」と記載されていました。
仕向地代理店は、B/L上の被裏書人と貨物引取を求める法人名が一致しないとしてD/O発行を停止しました。
買主は「社名変更しただけで同じ法人である」と主張しましたが、代理店は社名変更証明、Commercial Registerその他の資料による同一法人性の確認を求めました。
確認に4日を要し、想定上、Demurrage・保管料等として140万円の追加費用が発生したとします。
このケースでは、権利そのものが存在するかだけでなく、B/L上の裏書連続性を第三者が書面上確認できる状態になっているかが重要です。
具体例4:記名式B/Lを裏書すれば海外でも必ず移転できると誤認した場合
名古屋港からロサンゼルスへ輸出する機械部品、Invoice価格2,800万円について、Consignee欄に「ABC USA Inc.」と記載された記名式B/Lが発行されたとします。
輸送途中でABC USA Inc.が貨物を第三者のDEF Corp.へ転売し、B/LをDEF Corp.へ裏書して引渡そうとしました。
売主側は「日本の商法では記名式船荷証券も、裏書禁止の記載がなければ裏書譲渡できる」と説明しました。
しかし、仕向地のshipping line代理店は、当該B/LをStraight B/Lとして運用しており、Consignee変更の正式な指示及び追加書類が必要であるとして、裏書されたB/LだけではDEF Corp.へのReleaseを認めませんでした。
この場合、日本法上の船荷証券譲渡ルールだけを見ても仕向地での引渡し実務は確定しません。B/Lの準拠法、文言、shipping lineの運用及び仕向地法を確認する必要があります。
このケースの重要点は、日本法上の記名式B/Lの裏書可能性と、外国でStraight B/Lとして行われる貨物引渡し実務を混同しないことです。
よくある誤解
| 誤解 | 実際の考え方 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| 裏書はB/L裏面に署名するだけの形式行為である | B/L上の権利移転に関係する重要な行為である | 署名者・権限・裏書方法を確認する |
| 記名式B/Lは日本法上絶対に裏書できない | 商法762条では裏書禁止の記載がない限り記名式でも裏書譲渡等が可能である | 外国法・仕向地実務とは区別する |
| To Orderと書いてあればShipperの裏書は不要である | 最初の権利者からの裏書が必要となる場面がある | L/C条件とB/L記載を確認する |
| Blank EndorsedはUCP 600第20条が全B/Lへ要求している | Blank Endorsementの要否は信用状条件等によって決まる | 信用状原文とISBPを確認する |
| B/Lを裏書すれば貨物所有権も必ず移転する | B/L上の権利移転と売買契約上の所有権移転は同一問題ではない | 売買契約・準拠法を別途確認する |
| ApplicantがOriginal B/Lを持っていれば銀行Consigneeでも引き渡せる | 銀行からの裏書・Release権限が必要な場合がある | 銀行Consigneeを無視しない |
| 銀行裏書があれば必ず有効である | 署名権限・名称・裏書内容に疑義があれば追加確認が必要である | 運送人・NVOCCが確認する |
| 会社名が少し違っていても裏書は問題ない | 裏書の連続性に疑義が生じる可能性がある | 社名変更等の証明を取得する |
| Original B/Lの詳細は裏書記事だけで判断できる | 原本提示、Full Set、L/G等は別の貨物引渡し論点である | 「B/L原本がないと貨物を引き取れない理由」を確認する |
| Sea WaybillにもOrder B/Lと同じ裏書を行えばよい | Sea Waybillは原則として非流通型でありOrder B/Lとは性質が異なる | 「運送証券と類似証書」で書類種類を確認する |
判断チェックリスト
| 確認場面 | 確認する相手 | 確認事項 | 問題がある場合の対応 |
|---|---|---|---|
| B/L Draft確認時 | Shipper・フォワーダー | Consignee欄が売買・L/C条件と一致するか | 船積前に修正する |
| Order B/L発行時 | Shipper | 最初の裏書人と裏書方式 | 必要な裏書を明確にする |
| L/C受領時 | 輸出者・銀行 | To Order、Bank Order、Blank Endorsed等の条件 | 不明確ならL/C Amendmentを検討する |
| 銀行提出前 | 買取銀行 | 信用状条件、UCP 600、ISBPとの整合 | Discrepancy発生前に修正する |
| 記名裏書時 | 裏書人・被裏書人 | 法人名、銀行名、署名権限 | 正式名称へ修正する |
| 裏書連続性確認時 | 銀行・NVOCC | 各被裏書人と次の裏書人の一致 | 権利移転を証明する資料を取得する |
| 銀行Consignee案件 | 発行銀行・Applicant | 銀行裏書、Release Order、引渡承認 | 確認できるまで貨物をReleaseしない |
| D/O交換時 | shipping line・NVOCC | 提示者が正当なB/L所持人か | 権利関係に疑義があれば発行を停止する |
| Straight B/L譲渡時 | shipping line・海事弁護士 | 準拠法、裏書禁止、仕向地実務 | 裏書だけで移転可能と判断しない |
| 社名変更時 | 裏書人・被裏書人 | 旧名称・新名称の同一法人性 | 登記・証明資料を取得する |
| 貨物所有権争い | 売主・買主・海事弁護士 | B/L上の権利と売買契約上の所有権 | 両者を分けて法的に整理する |
| 誤引渡し懸念時 | 銀行・NVOCC・海事弁護士 | 最終的なRelease権限 | 責任関係が確定するまで引渡しを停止する |
海事弁護士へ相談すべき場面
- 記名式B/Lの裏書による譲渡可能性について日本法と外国法の取扱いが異なる場合
- B/Lに裏書禁止、Non-negotiableその他の流通性に関する記載がある場合
- 裏書の連続性が途切れ、誰が正当なB/L所持人か争われている場合
- 銀行Consignee又はTo Order of BankのB/Lで銀行のRelease権限が不明な場合
- ApplicantによるOriginal B/L提示だけで貨物引渡しを求められている場合
- B/L上の権利移転と売買契約上の貨物所有権が争われている場合
- 誤引渡し後に銀行、cargo ownerその他から高額な賠償請求を受けた場合
- 外国のshipping line代理店が日本法上の裏書譲渡を認めない場合
- L/C書類不一致が代金回収又は貨物処分へ重大な影響を与えている場合
- Original B/Lが複数の者へ流通し、競合する引渡請求が発生した場合
まとめ
船荷証券(B/L)の裏書は、単なる署名手続ではなく、B/L上の権利移転と正当な貨物引渡請求者の確認に直接関係する重要な実務です。
まずConsignee欄を確認し、記名式、To Order、To Order of Shipper、To Order of Bankその他どの形式であるかを特定します。そのうえで、誰が最初に裏書すべきか、白地裏書か記名裏書か、裏書が連続しているかを確認します。
日本法では、商法762条により、記名式船荷証券であっても裏書禁止の記載がない限り、裏書による譲渡又は質入れが認められています。ただし、外国法又はshipping lineのStraight B/L実務が同じとは限らないため、国際案件では準拠法と仕向地実務を確認する必要があります。
L/C取引では、UCP 600第20条だけで裏書要件を判断するのではなく、信用状が具体的に要求するConsignee・Order・Blank Endorsement等の条件を確認し、UCP 600及びISBPに従って書類適合性を確認します。
また、B/L上の権利移転と売買契約上の貨物所有権移転は同一問題ではありません。銀行Consignee案件では、ApplicantがOriginal B/Lを物理的に所持しているという理由だけで貨物を引き渡さず、銀行の裏書、Release Orderその他の権限移転を確認することが重要です。
B/L・Sea Waybill・FCRの基本的な違いは「運送証券と類似証書」、Original B/Lの提示、Full Set、D/O、原本未着及びL/G等の詳細は「B/L原本がないと貨物を引き取れない理由」で確認し、本記事では裏書と権利移転という固有論点に集中して判断します。
