B/L約款と責任制限
B/L約款と責任制限とは
B/L約款と責任制限とは、貨物に破損、濡損、数量不足、汚損などの損害が発生した場合に、運送人、NVOCC、フォワーダーが負う賠償責任について、B/L裏面約款や適用法令により、一定の限度額が設けられることをいいます。
貨物事故では、荷主や保険会社からインボイス価格、修理費用、廃棄費用、再梱包費用などを請求されることがあります。
しかし、B/L約款上の責任制限が適用される場合、請求額全額を運送人側が負担するとは限りません。
実務では、損害額がいくらかという問題と、運送人側がいくらまで責任を負うかという問題を分けて確認します。
責任制限が重要になる理由
貨物事故では、貨物価格が高額であるほど責任制限の確認が重要になります。
例えば、精密機器、医療機器、電子部品、ブランド品、特殊部材などでは、インボイス価格が大きくなる一方で、B/L約款上の責任制限額は梱包数や重量に基づいて計算されることがあります。
その結果、実際の損害額と、運送人側が負う責任限度額に大きな差が出ることがあります。
そのため、NVOCCやフォワーダーが請求を受けた場合は、まずB/L約款上の責任制限を確認し、請求額をそのまま認めないことが重要です。
Package LimitationとWeight Limitation
B/L約款上の責任制限では、主に次の2つの考え方が問題になります。
- Package Limitation:1梱包または1単位あたりの責任制限
- Weight Limitation:貨物重量あたりの責任制限
一般的には、1梱包あたりの限度額と、貨物重量あたりの限度額を比較し、高い方を責任限度額とする考え方が問題になります。
このため、貨物事故では、B/L上の個数、梱包単位、重量記載を必ず確認します。
666.67 SDR/packageと2 SDR/kg
国際海上輸送では、責任制限額として、1梱包あたり666.67 SDR、または貨物重量1kgあたり2 SDRの高い方を限度とする考え方が使われることがあります。
ここで重要なのは、インボイス価格ではなく、B/L上の梱包数や貨物重量をもとに責任制限額が計算される点です。
例えば、貨物価格が高額であっても、B/L上の梱包数が少なく、重量も軽い場合、責任制限額は実損額よりかなり低くなる可能性があります。
そのため、高額貨物では、貨物保険の有無と、B/L上の責任制限を分けて確認する必要があります。
コンテナ貨物での注意点
コンテナ貨物では、責任制限の計算において、B/L上の個数記載が特に重要になります。
B/Lにカートン数、ケース数、パレット数などの個品数量が明記されている場合と、単に「1 Container」とだけ記載されている場合では、責任制限額の考え方が変わる可能性があります。
そのため、コンテナ貨物の事故では、次の点を確認します。
- B/L上に個数が記載されているか
- カートン、ケース、パレットなどの単位が明確か
- コンテナ番号だけの記載になっていないか
- 貨物重量が正しく記載されているか
- インボイス、パッキングリストの数量と一致しているか
B/L上の記載が不十分な場合、請求側と運送人側で責任制限額の計算が争点になることがあります。
House B/LとMaster B/Lでの責任制限
NVOCCが関与する輸送では、House B/LとMaster B/Lの責任制限を分けて確認する必要があります。
荷主からNVOCCへの請求では、House B/L上の責任制限が問題になります。
一方、NVOCCが船会社や実運送人へ求償する場合は、Master B/L上の責任制限が問題になります。
つまり、荷主に対してNVOCCが一定額の責任を負う可能性がある場合でも、NVOCCが実運送人から同額を回収できるとは限りません。
そのため、貨物事故では、House B/LとMaster B/Lを並べて確認し、荷主対応と実運送人への求償を別に整理します。
責任制限と貨物保険の違い
貨物保険は、荷主側の貨物損害を補償する制度です。
一方、B/L約款上の責任制限は、運送人、NVOCC、フォワーダーがどこまで賠償責任を負うかを決める仕組みです。
貨物保険で保険金が支払われたとしても、その金額すべてを運送人側が負担するとは限りません。
保険会社から代位求償を受けた場合でも、B/L約款、責任制限、免責事由、通知期限、出訴期限を確認したうえで対応します。
責任制限が使えない可能性がある場合
B/L約款上の責任制限は、常に無条件で使えるわけではありません。
運送人側に故意または重大な過失に近い事情がある場合、責任制限を主張できるかが問題になることがあります。
また、荷送人が貨物の明細や価格を告知し、それがB/Lに記載されている場合、通常の責任制限とは異なる判断になることがあります。
そのため、責任制限を確認する際は、単に限度額を計算するだけでなく、責任制限を失わせる事情がないかも確認します。
高額貨物での注意点
高額貨物では、B/L約款上の責任制限と実損額の差が大きくなりやすくなります。
例えば、少数梱包で高額な機械、電子部品、医療機器、ブランド品などは、貨物価格が高くても、責任制限額はB/L上の梱包数や重量に基づいて計算されることがあります。
荷主側は、運送人責任だけに依存せず、貨物保険の手配や保険条件の確認を行う必要があります。
一方、NVOCCやフォワーダー側は、高額貨物事故で請求を受けた場合、インボイス価格ではなく、まずB/L約款上の責任制限を確認します。
責任制限と免責事由の関係
責任制限は、運送人側に一定の責任がある場合に、その責任額を制限する考え方です。
一方、免責事由は、そもそも運送人側が責任を負わない、または責任を軽減できる可能性がある事情です。
例えば、梱包不備、貨物固有の性質、荷主側の申告不足、受領後の保管状況、海上固有の危険などがある場合、責任制限の前に、まず責任の有無を確認します。
実務では、次の順番で整理します。
- 損害が発生しているか
- 損害が運送人の責任期間中に発生したか
- 免責事由がないか
- 責任制限が適用されるか
- 責任制限額はいくらか
代位求償での確認点
貨物保険会社から代位求償を受けた場合、B/L約款上の責任制限は重要な反論材料になります。
保険会社が荷主へ支払った保険金額と、NVOCCやフォワーダーが負う賠償責任額は一致するとは限りません。
代位求償を受けた場合は、次の点を確認します。
- 請求がどのB/Lに基づくものか
- House B/L上の責任制限
- Master B/L上の責任制限
- B/L上の個数記載
- 貨物重量
- 貨物価格の告知・記載の有無
- 責任制限を失わせる事情の有無
- 免責事由、通知期限、出訴期限
請求額を検討する前に、まず責任制限額を試算することが重要です。
損害額資料との関係
修理見積書、廃棄証明、再梱包費用、検品費用、残存価額資料などは、損害額を確認するために必要です。
しかし、損害額資料がそろっていても、その金額すべてが運送人責任として認められるとは限りません。
B/L約款上の責任制限が適用される場合、損害額が責任制限額を上回っていても、運送人側の負担は責任制限額までにとどまる可能性があります。
確認すべき資料
B/L約款と責任制限を確認する場合、次の資料を整理します。
- House B/L表面
- House B/L裏面約款
- Master B/L表面
- Master B/L裏面約款
- インボイス
- パッキングリスト
- 貨物重量資料
- Booking資料
- Shipping Instruction
- Claim Letter
- 受領書、納品書、例外記載
- サーベイレポート
- 損害額資料
- 代位求償書類
初期回答で注意すべきこと
貨物事故の請求を受けた場合、責任制限を確認する前に、請求額を認める回答をすることは避けるべきです。
特に、高額貨物事故や代位求償では、「請求額を確認しました」「支払います」「補償します」といった表現が不利に働く可能性があります。
初期回答では、次のような内容にとどめることが実務上は安全です。
- 請求または通知を受領したこと
- B/L約款および責任制限を確認すること
- 責任の有無は現時点で未確定であること
- 免責事由、通知期限、出訴期限を含めて確認すること
- 回答は責任を認める趣旨ではないこと
英語で確認する表現
海外代理店や船会社に責任制限を確認する場合は、次のような表現が使われます。
- Please confirm the applicable limitation of liability under the B/L terms.
- We are reviewing the package limitation and weight limitation.
- Please provide the full terms and conditions of the relevant B/L.
- We reserve all rights and defenses under the applicable B/L terms.
- This response shall not be construed as an admission of liability.
まとめ
B/L約款と責任制限は、貨物事故で運送人、NVOCC、フォワーダーがどこまで賠償責任を負うかを判断する重要な論点です。
貨物の実損額や保険会社の支払額が大きくても、B/L約款上の責任制限により、運送人側の責任額が制限される可能性があります。
実務では、House B/LとMaster B/Lを分けて確認し、B/L上の個数、重量、責任制限額、免責事由、通知期限、出訴期限を整理したうえで、請求額をそのまま認めないことが重要です。
