体外診断用医薬品

体外診断用医薬品とは

体外診断用医薬品とは、血液、尿、組織、分泌物など人体由来の検体を用いて、疾病の診断、健康状態の把握、検査項目の測定などを行うための薬機法上の規制対象品です。

人の体に直接投与する医薬品とは異なり、人体から採取された検体を体外で検査・測定するために使用される試薬、検査キット、診断薬などが中心になります。

輸入実務では、海外で「research use only」「laboratory reagent」「test kit」「diagnostic reagent」「self check kit」などとして販売されている商品であっても、日本で診断、検査、判定、健康状態の評価を目的として使用・販売する場合には、体外診断用医薬品に該当する可能性があります。

そのため、単に品名が試薬や検査キットであるかどうかではなく、使用目的、表示内容、販売先、検査項目、人体由来検体の使用有無、国内での販売方法を確認することが重要です。

この記事で扱う範囲

本記事では、体外診断用医薬品の意味、医療機器との違い、研究用試薬との違い、一般用検査薬・医療機関向け検査薬との違い、輸入販売時に確認すべき薬機法上の手続、表示・広告、フォワーダー実務上の注意点を整理します。

医療機器そのものの該当性、医療機器製造販売業許可、医療機器プログラム、測定機器本体の輸入については、別記事「医療機器」または「医療機器製造販売業許可」で整理します。

医薬品、健康食品、化粧品、雑品との区別、効能効果表現の問題については、別記事「医薬品的な効能効果」や「健康食品と薬機法」で整理します。

本記事では、人体由来検体を用いる検査薬・診断薬・検査キットを輸入販売する場合の実務確認に焦点を当てます。

概要

体外診断用医薬品は、人体から採取された検体を体外で検査するために使用されるものです。

一般には、検査キット、診断薬、測定試薬、診断用試薬、判定キットなどとして流通することがあります。

医療機関、検査機関、薬局、一般消費者向け、研究機関向けなど、販売先や使用場面によって確認すべき規制内容が変わることがあります。

同じ試薬やキットであっても、研究用として使うのか、診断目的で使うのか、一般消費者が自己判断に使うのか、医療機関や検査機関が診療や検査に使うのかによって、薬機法上の整理が変わる可能性があります。

対象となる商品

体外診断用医薬品に該当する可能性がある商品には、疾病や身体状態に関する検査を目的とするものが含まれます。

  • 感染症検査キット
  • 妊娠検査薬
  • 排卵検査薬
  • 血糖、脂質、尿成分などの測定試薬
  • 腫瘍マーカー、ホルモン、抗体などの検査試薬
  • 医療機関や検査機関で使われる診断用試薬
  • 一般消費者向けの簡易検査キット
  • 検査装置と組み合わせて使用する専用試薬
  • 判定用カートリッジ、試験紙、反応液、コントロール試薬

商品名に「医療用」「診断用」と書かれていなくても、検査結果を疾病の診断、健康状態の評価、治療判断、受診判断に使うような表示がある場合には注意が必要です。

医療機器との違い

医療機器は、疾病の診断、治療、予防や身体の構造・機能への作用を目的とする機械器具等です。

一方、体外診断用医薬品は、人体由来の検体を用いて検査・測定を行うための試薬やキットが中心です。

ただし、検査装置、測定器、試薬、カートリッジ、ソフトウェアが組み合わさる場合には、医療機器と体外診断用医薬品の両方の確認が必要になることがあります。

例えば、測定器本体は医療機器、専用試薬やカートリッジは体外診断用医薬品として整理される可能性があります。

輸入者は、機器本体、試薬、消耗品、ソフトウェア、アプリ、判定アルゴリズムを一体の商品として扱う場合でも、それぞれの薬機法上の分類を確認する必要があります。

研究用試薬との違い

輸入実務で特に混同されやすいのが、研究用試薬と体外診断用医薬品です。

研究用試薬は、研究、実験、分析などを目的として使われる試薬です。

一方、体外診断用医薬品は、人体由来検体を用いて疾病や健康状態に関する検査・判定を行う目的で使用されるものです。

海外で「Research Use Only」「RUO」「laboratory reagent」と表示されていても、日本で診断目的、検査目的、健康状態の判定目的で販売・広告する場合には、研究用として扱えるとは限りません。

特に、ECサイトやパンフレットで「自宅で簡単に検査できる」「感染の有無が分かる」「健康状態をチェックできる」「病気のリスクを判定できる」といった表現を使う場合は、薬機法上の確認が必要になります。

一般用検査薬・医療機関向け検査薬との違い

体外診断用医薬品には、一般消費者が使用する検査薬と、医療機関や検査機関で使用される検査薬があります。

一般消費者向けの商品では、使用者が医療従事者でないため、使用方法、判定方法、表示、説明書、広告表現、安全性、誤判定時の注意表示が重要になります。

医療機関や検査機関向けの商品では、専門的な検査環境、測定装置、検査手順、品質管理、検査項目、使用目的が確認されます。

輸入者は、販売先が医療機関向けか、検査機関向けか、薬局向けか、一般消費者向けかを明確にする必要があります。

販売先や使用者を曖昧にしたまま輸入手配を進めると、必要な手続や表示内容の確認が後手に回ることがあります。

コンパニオン診断薬との関係

コンパニオン診断薬とは、特定の医薬品の適応判断、投与可否、効果予測、副作用リスク評価などに関係する検査に用いられる体外診断用医薬品です。

通常の検査試薬よりも、対象疾患、対象医薬品、検査目的、判定結果の使われ方が重要になります。

輸入実務では、単なる検査試薬として扱うのではなく、医薬品の使用判断と結びつく検査であるかを確認する必要があります。

このような商品では、承認内容、使用目的、対象患者、添付文書、医療機関での使用条件などが問題になりやすく、輸入者側で専門的な薬事確認が必要です。

輸入販売における主な手続

体外診断用医薬品を営業目的で輸入販売する場合、製造販売業許可、製造業登録、外国製造業者に関する登録、品目ごとの承認・認証・届出などが関係することがあります。

必要な手続は、検査項目、使用目的、リスク分類、一般的名称、販売先、国内での保管・表示・包装作業の有無などによって変わります。

輸入者は、単に海外メーカーから商品を買えば販売できるわけではありません。日本国内で誰が製造販売業者となるのか、どこで保管・表示・包装を行うのか、海外製造元の登録が必要か、品目ごとの手続が完了しているかを確認する必要があります。

確認項目 主な内容 止まりやすい原因
薬機法上の分類 体外診断用医薬品、医療機器、研究用試薬、雑品のいずれに該当するか 海外の商品名だけで判断し、国内での使用目的を確認していない
販売目的 研究用、医療機関向け、検査機関向け、一般消費者向けのいずれか 研究用として輸入しながら、販売ページで診断・判定をうたっている
業許可・登録 製造販売業許可、製造業登録、外国製造業者登録の要否 輸入者が販売者にすぎず、製造販売業者の体制がない
品目手続 承認、認証、届出など品目ごとの手続の要否 海外で販売済みであることを理由に、日本の手続を省略できると誤解している
表示・添付文書 使用目的、検査項目、使用方法、判定方法、注意事項の表示 日本語表示や承認・認証・届出範囲との整合性が確認されていない
広告・販売ページ 診断、判定、疾病名、健康状態の評価に関する表現 ECサイトやSNSで薬機法上問題になり得る効能効果表現を使っている

輸入実務の流れ

段階 主な確認事項 止まりやすい原因
仕入前 使用目的、検査項目、対象検体、販売先、表示内容を確認 海外メーカーの商品説明だけで研究用・雑品と判断してしまう
輸入手配前 薬機法上の分類、承認・認証・届出、業許可、製造元情報を確認 輸入者が薬事確認を終えていないまま貨物を出荷してしまう
通関申告時 品名、用途、販売目的、規制該当性、必要書類を整理 インボイスに「test kit」「diagnostic reagent」とだけ記載され、用途が不明確
税関・通関業者確認 人体由来検体を使うか、診断・判定目的か、薬機法手続済みかを確認 研究用と説明しているが、販売資料では診断用途をうたっている
国内保管・表示 保管条件、日本語表示、添付文書、包装作業、製造業登録の要否を確認 国内でラベル貼付や小分けを行うのに登録・管理体制を確認していない
販売開始前 広告表現、ECサイト、パンフレット、SNS投稿が承認等の範囲内か確認 輸入後に販売ページで診断・疾病名・判定効果を過剰に表示してしまう

輸入実務で問題になりやすい場面

体外診断用医薬品は、貨物名だけでは判断しにくいことがあります。

特に、研究用試薬、検査キット、セルフチェック用品、簡易判定キット、分析用試薬などは、用途や表示によって薬機法上の扱いが変わる可能性があります。

  • 研究用試薬として輸入するが、実際には診断目的で販売する場合
  • 海外で一般消費者向けに販売されている検査キットを輸入する場合
  • 感染症、妊娠、排卵、血糖などの判定をうたう場合
  • 医療機関、検査機関、薬局向けに販売する場合
  • 検査結果を疾病の判断や健康状態の評価に使う場合
  • 検査装置と専用試薬をセットで輸入する場合
  • ECサイトやSNSで診断・判定に関する広告を行う場合

輸入前に確認すべきなのは、海外でどう売られているかではなく、日本国内でどのような目的で使用・販売・広告するかです。

表示・広告上の注意点

体外診断用医薬品では、検査できる項目、使用目的、対象者、判定方法、使用上の注意、判定結果の解釈などの表示が重要です。

承認、認証、届出の範囲を超えた効能効果や用途を表示すると、薬機法上の問題になる可能性があります。

商品ラベル、添付文書、ECサイト、パンフレット、広告文、SNS投稿、動画広告などで、診断、判定、疾病名、健康状態の評価に関する表現が適切かを確認する必要があります。

特に、「病気が分かる」「感染しているか判定できる」「自宅で診断できる」「医師に行く前に判断できる」といった表現は、薬機法上の該当性や承認範囲との関係を慎重に確認する必要があります。

フォワーダー・通関実務での確認ポイント

フォワーダーや通関関係者は、貨物名が「test kit」「diagnostic reagent」「laboratory reagent」「rapid test」「self check kit」などとなっている場合、体外診断用医薬品に該当する可能性を確認することが重要です。

フォワーダーは薬機法該当性を最終判断する立場ではありません。

しかし、貨物名、商品説明、販売資料、用途説明から薬機法上の確認が必要と考えられる場合には、輸入者へ確認を促し、通関業者へ早めに情報共有する必要があります。

  • 研究用か、診断・検査目的か
  • 人体由来の検体を用いる商品か
  • 感染症、妊娠、血糖などの判定をうたう商品か
  • 医療機関・検査機関向けか、一般消費者向けか
  • 輸入者が承認・認証・届出等の確認を済ませているか
  • 製造販売業者、製造業者、外国製造業者に関する確認が済んでいるか
  • 通関時に提出すべき資料を輸入者が準備しているか

通関で確認が入った場合には、フォワーダーは輸入者から用途説明、商品資料、販売資料、薬事確認結果、承認・認証・届出に関する資料を回収し、通関業者へ連携します。

フォワーダーが「研究用だから問題ありません」「医薬品ではありません」と断定することは避けるべきです。

必要となる資料

体外診断用医薬品に関係する貨物では、次のような資料が必要になることがあります。

  • 商品カタログ
  • 取扱説明書
  • 添付文書
  • 検査項目の説明資料
  • 対象検体の説明資料
  • 使用目的の説明資料
  • 販売先・使用者の説明資料
  • 承認・認証・届出に関する資料
  • 製造販売業許可に関する資料
  • 製造業登録に関する資料
  • 外国製造業者登録に関する資料
  • 海外メーカーの会社情報
  • インボイス、パッキングリスト

これらの資料は、商品内容を説明するだけでなく、日本国内でどのような規制区分に該当し、どの手続を経て輸入販売されるのかを説明するために使われます。

実務シナリオ1:研究用試薬として輸入したが販売ページで診断用途をうたうケース

輸入者が海外メーカーから「Research Use Only」と表示された検査用試薬を輸入するケースがあります。

輸入時には研究用試薬として説明していたものの、国内販売ページでは「自宅で簡単に健康チェック」「病気のリスクを確認できる」と表示して販売しようとします。

この場合、輸入時の商品説明と国内販売時の表示が一致せず、薬機法上の体外診断用医薬品該当性や広告表現が問題になる可能性があります。

輸入者は、研究用としての使用範囲、販売先、表示内容、診断目的の有無を整理し、必要に応じて薬事確認を行う必要があります。

実務シナリオ2:海外の一般消費者向け検査キットをそのまま輸入販売するケース

海外では一般消費者向けに販売されている検査キットを、日本国内でも同じように販売しようとするケースがあります。

しかし、海外で一般販売されていることと、日本で一般消費者向けに販売できることは同じではありません。

日本での販売にあたっては、検査項目、使用目的、対象者、判定方法、一般用としての可否、承認・認証・届出、表示・広告内容を確認する必要があります。

この確認をせずに輸入すると、通関時、国内販売開始時、広告審査、薬事監視の段階で問題になる可能性があります。

実務シナリオ3:検査装置と専用試薬をセットで輸入するケース

輸入者が海外メーカーから小型検査装置と専用カートリッジ、測定試薬をセットで輸入するケースがあります。

この場合、装置本体が医療機器に該当する可能性があり、専用試薬やカートリッジが体外診断用医薬品に該当する可能性があります。

さらに、判定ソフトウェアやアプリが含まれる場合には、プログラム医療機器や医療機器ソフトウェアとの関係も確認が必要になることがあります。

輸入者は、装置、試薬、ソフトウェアをまとめて一つの商品として見るのではなく、それぞれの薬機法上の分類と必要手続を確認する必要があります。

実務シナリオ4:フォワーダーに研究用だから問題ないと説明してほしいと依頼されるケース

通関時に「diagnostic reagent」や「test kit」と記載された貨物について確認が入り、荷主からフォワーダーに対して「研究用だから問題ないと説明してほしい」と依頼されることがあります。

しかし、フォワーダーは薬機法上の該当性を判断する立場ではありません。

この場合、フォワーダーは、輸入者から用途説明、商品カタログ、販売先、販売ページ、薬事確認結果、承認・認証・届出に関する資料を回収し、通関業者へ連携します。

フォワーダーが独自に「体外診断用医薬品ではありません」「研究用なので規制対象外です」と断定することは避けるべきです。

通関・販売が止まった場合の影響

体外診断用医薬品に該当する可能性がある貨物で確認が入ると、通関遅延、保管料、納期遅延、販売開始日の延期、医療機関・検査機関への納品遅延などが発生することがあります。

必要な承認、認証、届出、業許可、登録が確認できない場合には、輸入後の販売ができない可能性もあります。

また、販売ページや広告表現が薬機法上問題になる場合、商品が通関できた後でも、国内販売や広告の段階で指摘を受ける可能性があります。

輸入者は、通関だけでなく、輸入後の保管、表示、広告、販売先、使用目的まで含めて事前に確認する必要があります。

実務上の注意点

体外診断用医薬品は、検査薬や検査キットとして輸入されることが多く、研究用、一般用、医療用の区別を誤ると、通関や国内販売で問題になりやすい分野です。

輸入者は、用途、表示、販売先、検査項目、対象検体、承認・認証・届出、業許可・登録の有無を事前に確認する必要があります。

フォワーダーは薬機法上の判断者ではありませんが、貨物名や商品説明から体外診断用医薬品に該当する可能性がある場合には、輸入者へ確認を促し、通関業者へ早めに情報共有することが重要です。

特に、研究用試薬、簡易検査キット、感染症検査、妊娠・排卵検査、血糖・尿検査、医療機関向け診断用試薬では、輸入前の薬事確認が重要になります。

まとめ

体外診断用医薬品は、人体由来の検体を用いて、疾病や健康状態に関する検査・測定・判定を行うための薬機法上の規制対象品です。

海外で研究用、検査用、簡易キットとして販売されていても、日本で診断・検査・判定目的で使用または販売する場合には、体外診断用医薬品に該当する可能性があります。

輸入販売では、薬機法上の分類、製造販売業許可、製造業登録、外国製造業者登録、品目ごとの承認・認証・届出、表示・広告内容を確認する必要があります。

フォワーダーは薬機法上の判断者ではありませんが、test kit、diagnostic reagent、laboratory reagent などの貨物名を見た場合には、輸入者への確認と通関業者への情報共有を行う立場です。

体外診断用医薬品は、研究用・一般用・医療用の区別、検査目的、表示・広告、販売先、必要手続が通関と国内販売に直結する分野であり、輸入前の薬事確認が最重要の予防策となります。

同義語・別表記

  • 体外診断薬
  • 検査薬
  • 診断薬
  • 検査キット
  • IVD
  • In Vitro Diagnostics
  • In Vitro Diagnostic Products
  • Diagnostic Reagent