関税評価(課税価格)の特殊ケース実務解説

関税評価(課税価格)の特殊ケース実務とは、通常のインボイス価格だけでは輸入貨物の課税価格を正しく算定できない場合に、どの費用を加算し、どの費用を加算しないかを整理する実務です。

輸入申告では、原則として輸入貨物の取引価格を基礎に課税価格を算定します。しかし、実際の取引では、運賃、保険料、ロイヤルティ、金型費、無償提供物品、検査費用、値引き、相殺、特殊関係、修理後再輸入など、判断が難しい要素が含まれることがあります。

本記事は、関税評価の基本用語を説明する記事ではなく、実務上判断が分かれやすい特殊ケースを整理するための記事です。

Maritime Wikiでは、輸入者、フォワーダー、通関業者、保険実務者が、課税価格の算定でどこを確認すべきかを実務目線で整理します。

この記事で扱う範囲

関税評価の基本用語については、課税価格、取引価格、現実支払価格、加算要素、評価方法の序列などを整理した基礎記事で確認します。

本記事では、それを前提に、実際の輸入申告で問題になりやすい特殊ケースを扱います。

具体的には、ロイヤルティ、無償提供物品、金型費、特殊関係、修理後再輸入、検査費用、値引き・相殺、包括評価申告、事前教示を中心に整理します。

同じ「輸入価格」でも、会計上の仕入価格、社内原価、保険金額、通関上の課税価格は一致しないことがあります。

そのため、輸入申告では、インボイス金額だけではなく、取引全体の実態を確認する必要があります。

関税評価の基本構造

関税評価では、輸入貨物の課税価格を法令に基づいて計算します。

通常は、輸入取引において買手が売手に現実に支払った、または支払うべき価格を基礎とします。

この価格に、輸入港までの運賃、保険料、一定の手数料、容器・包装費、無償提供物品、ロイヤルティなどの加算要素を加える場合があります。

一方で、すべての費用が課税価格に含まれるわけではありません。

輸入後の国内運賃、買手手数料、輸入後の据付費用などは、条件によっては課税価格から区分されることがあります。

評価方法の序列

関税評価では、まず第1方法である輸入貨物の取引価格による方法を検討します。

第1方法が使える場合は、現実支払価格に必要な加算要素を加えて課税価格を算定します。

第1方法が使えない場合は、同種貨物、類似貨物、国内販売価格、製造原価、合理的方法など、順序に従って他の方法を検討します。

したがって、特殊ケースであっても、まず確認すべきことは「第1方法で評価できる輸入取引かどうか」です。

特殊関係がある場合、取引価格が実際の価格を反映していない場合、無償貨物や特殊な契約形態の場合には、第1方法の適用可否が問題になります。

加算要素の考え方

課税価格には、現実支払価格に含まれていない一定の費用を加算することがあります。

代表的なものは、輸入港までの運賃、保険料、手数料、容器・包装費、無償提供物品、ロイヤルティ、売手に帰属する収益です。

実務上の問題は、費用の名前ではなく、その費用が輸入貨物の取引に関連しているか、買手が負担しているか、現実支払価格に含まれていないかです。

たとえば、同じ「手数料」でも、買付手数料と売手側の販売手数料では扱いが異なります。

また、同じ「ロイヤルティ」でも、輸入貨物に関連し、かつ取引条件として支払われるものかどうかで扱いが変わります。

運賃・保険料の扱い

輸入港までの運賃や保険料は、課税価格の算定で重要な加算要素です。

FOB条件やEXW条件のように、インボイス価格に輸入港までの運賃・保険料が含まれていない場合は、これらを加算して課税価格を整理します。

CIF条件であっても、実際にインボイス価格に何が含まれているかは確認が必要です。

輸入後の国内配送費や国内保管費が含まれている場合には、輸入港までの費用と輸入後の費用を区分できるかが問題になります。

保険料についても、包括予定保険契約を利用している場合や、保険料が明細化されていない場合には、どの金額を課税価格に反映するかを確認する必要があります。

ロイヤルティ・ライセンス料

ロイヤルティやライセンス料は、関税評価で問題になりやすい加算要素です。

たとえば、商標、特許、意匠、著作権、技術使用料、ブランド使用料などの名目で、買手が売手または第三者へ支払う場合があります。

これらが輸入貨物に関連し、輸入貨物の販売条件として支払われるものであれば、課税価格への加算が問題になります。

一方、輸入貨物と直接関係しないライセンス料や、日本国内での販売活動にだけ関係する費用であれば、扱いが異なる場合があります。

実務では、契約書、ライセンス契約、請求書、支払先、支払条件、輸入貨物との関係を確認する必要があります。

無償提供物品・金型費

買手が売手に対して、無償または値引きして材料、部品、金型、工具、設計図、デザイン、技術資料などを提供する場合があります。

これらが輸入貨物の生産に使用されている場合、その価額が課税価格に加算されることがあります。

たとえば、日本の輸入者が海外工場へ金型を無償提供し、その金型を使って製造された製品を輸入する場合、金型費の扱いが問題になります。

同様に、無償提供した部材、ラベル、包装材、設計データ、技術支援費用なども確認が必要です。

実務では、提供物の価額、償却方法、対象製品との対応関係、輸入数量への配賦方法を整理する必要があります。

買付手数料と売手手数料

手数料は、関税評価で混乱しやすい費用です。

買手のために活動する買付代理人へ支払う買付手数料は、課税価格に加算しないものとして扱われる場合があります。

一方、売手側の販売代理人へ支払われる手数料や、売手の販売活動に関係する手数料は、課税価格への加算が問題になります。

重要なのは、誰のために代理人が活動しているか、手数料が何の対価か、売手への支払価格とどのような関係にあるかです。

契約書上「コミッション」と書かれていても、その実態を確認しなければ判断できません。

特殊関係がある取引

買手と売手に特殊関係がある場合、取引価格が課税価格として認められるかが問題になることがあります。

親子会社、関連会社、資本関係、役員関係、独占的取引関係などがある場合でも、それだけで直ちに取引価格が否認されるわけではありません。

問題は、その特殊関係が輸入貨物の価格に影響を与えているかどうかです。

関連会社間取引では、移転価格税制、社内価格、原価計算、ロイヤルティ、販売支援費、広告費なども関係することがあります。

実務では、価格決定方法、比較対象価格、契約書、移転価格文書、社内価格表などを整理しておく必要があります。

値引き・リベート・相殺

輸入取引では、値引き、リベート、クレーム相殺、販売奨励金、後日調整が行われることがあります。

これらが課税価格に反映できるかどうかは、値引きの時期、条件、証拠書類、輸入取引との関係によって変わります。

輸入申告後に判明した不良品クレームや損害賠償額を、直ちに課税価格から控除できるとは限りません。

また、買手が売手に対して有する債権を貨物代金と相殺している場合でも、現実支払価格の考え方として整理が必要です。

実務では、インボイスの値引き表示、契約書、クレジットノート、相殺合意書、支払明細を確認します。

検査費用・品質確認費用

輸入貨物について、出荷前検査、品質検査、第三者検査、工場検査などの費用が発生することがあります。

検査費用が課税価格に含まれるかどうかは、その検査が誰のために行われ、輸入貨物の売買条件とどのように関係しているかによって変わります。

買手が自社の品質確認のために任意で行う検査と、売買条件として売手が負担すべき検査を買手が代わりに支払っている場合では、評価が異なる可能性があります。

検査費用の名目だけでは判断できません。

実務では、検査契約、検査報告書、請求書、売買契約、支払者、検査結果が引渡条件に関係するかを確認する必要があります。

修理後再輸入

日本から輸出した機械、部品、装置などを海外で修理し、再び日本へ輸入する場合、課税価格の算定が通常の輸入取引と異なることがあります。

有償修理の場合、修理費用だけでなく、輸出された貨物自体の価値や運賃等の扱いを確認する必要があります。

無償修理の場合でも、課税価格がゼロになるとは限りません。

修理前の貨物の価値、修理内容、保証修理かどうか、輸出時の状態、再輸入時の状態、運賃・保険料を確認する必要があります。

実務では、修理契約書、修理明細、保証書、輸出許可書、再輸入インボイス、運賃明細を整理します。

通信販売・個人輸入

通信販売や個人輸入でも、関税評価は問題になります。

個人使用目的の輸入では、商業輸入とは異なる簡易な取扱いがされる場合がありますが、すべてが無税になるわけではありません。

商品の代金、送料、保険料、割引、ポイント利用、ギフト扱いなどが確認対象になることがあります。

「個人輸入だから課税価格を考えなくてよい」というわけではありません。

フォワーダーや通関業者が商業貨物として扱う場合は、個人使用か販売用かを確認する必要があります。

評価申告書が必要になる場合

輸入申告では、課税価格の計算方法について評価申告書が必要になる場合があります。

たとえば、インボイス価格以外にロイヤルティ、無償提供物品、特殊関係、後日調整、包括契約などがある場合、評価申告が問題になります。

評価申告書では、課税価格の計算方法、加算要素、控除要素、取引関係などを整理します。

評価申告が必要な取引で申告を省略すると、税関審査や後日調査で問題になることがあります。

実務では、通関業者と輸入者が早い段階で取引内容を共有し、評価申告の要否を確認する必要があります。

包括評価申告

同一内容の輸入取引が継続して行われる場合、包括評価申告を利用できることがあります。

包括評価申告は、個々の輸入申告に先立って、課税価格の計算方法をあらかじめ申告しておく制度です。

適用期間内であれば、個々の納税申告時の評価申告を省略できる場合があります。

ただし、包括評価申告は、税関が関税評価上の取扱いについて見解を示すものではありません。

関税評価上の判断について税関の見解を事前に確認したい場合は、文書による事前教示制度を利用する必要があります。

関税評価の事前教示

関税評価について判断が難しい場合は、文書による事前教示制度を利用できます。

事前教示は、輸入前に税関へ照会し、関税評価上の取扱いについて回答を受ける制度です。

口頭相談も可能ですが、文書回答とは異なり、輸入申告の審査上尊重されるものではありません。

継続輸入、高額貨物、関連会社間取引、ロイヤルティ、無償提供物品、金型費などがある場合には、事前教示を検討する価値があります。

事前教示を利用するには、契約書、取引図、支払関係、加算要素、輸入貨物との関係を整理して提出する必要があります。

フォワーダー・通関業者の確認点

フォワーダーや通関業者は、インボイス金額だけを見て課税価格を判断することはできません。

輸入者から、売買契約、運賃、保険料、ロイヤルティ、金型費、無償提供物品、特殊関係、値引き、相殺、検査費用の有無を確認する必要があります。

特に、継続輸入では、最初の輸入時に確認しなかった要素が後日調査で問題になることがあります。

輸入者が「これは商品代だけです」と説明していても、別契約でロイヤルティや金型費を支払っている場合があります。

通関実務では、申告スピードだけでなく、課税価格の根拠を残すことが重要です。

貨物保険との関係

関税評価と貨物保険は別制度ですが、実務では接点があります。

輸入港までの保険料は、課税価格の加算要素として問題になります。

また、CIF価格、保険金額、インボイス価格、運賃、保険料が一致しているかを確認する場面があります。

包括予定保険契約を利用している場合、個別貨物ごとの保険料をどのように算定し、課税価格に反映するかが問題になることがあります。

貨物事故が輸入前に発生した場合には、損害貨物の評価、減額、廃棄、返送、保険金との関係も確認が必要です。

確認すべき書類

関税評価の特殊ケースでは、次の書類を確認します。

  • インボイス
  • パッキングリスト
  • B/LまたはSea Waybill
  • Air Waybill
  • 運賃明細
  • 保険料明細
  • 売買契約書
  • 注文書
  • 価格表
  • 支払明細
  • 送金記録
  • ロイヤルティ契約書
  • ライセンス契約書
  • 金型契約書
  • 無償提供物品の明細
  • 検査契約書
  • 検査報告書
  • クレジットノート
  • 相殺合意書
  • 修理契約書
  • 修理明細
  • 保証書
  • 輸出許可書
  • 再輸入インボイス
  • 評価申告書
  • 包括評価申告書
  • 事前教示回答書

関税評価では、インボイスだけでは判断できない費用や契約関係が多いため、周辺書類を合わせて確認することが重要です。

具体例

ロイヤルティを別払いしていたケース

輸入者が海外メーカーからブランド商品を輸入し、別契約でブランド使用料を支払っている場合があります。

このロイヤルティが輸入貨物に関連し、販売条件として支払われるものであれば、課税価格への加算が問題になります。

単にインボイスに商品代しか記載されていないからといって、ロイヤルティを無視できるとは限りません。

このケースでは、輸入者はライセンス契約書、支払条件、輸入貨物との関係を通関業者へ共有すべきでした。

金型を無償提供したケース

日本の輸入者が海外工場へ金型を無償提供し、その金型を使って製造された製品を輸入する場合があります。

この場合、金型費が課税価格に加算されるか、どのように輸入数量へ配賦するかが問題になります。

金型費がインボイス価格に含まれていなければ、課税価格が過少になる可能性があります。

このケースでは、金型費、提供時期、対象製品、配賦方法を整理し、必要に応じて事前教示を検討すべきでした。

関連会社間取引で価格が低いケース

日本の親会社が海外子会社から商品を輸入している場合、関連会社間価格が通常の市場価格より低く設定されていることがあります。

特殊関係があるだけで直ちに取引価格が否認されるわけではありませんが、その関係が価格に影響しているかが問題になります。

価格決定方法、移転価格文書、比較対象価格、ロイヤルティ、販売支援費などを確認する必要があります。

このケースでは、輸入者は税務上の移転価格だけでなく、関税評価上の説明資料も整備すべきでした。

修理後再輸入のケース

日本から輸出した機械を海外で修理し、日本へ戻す場合があります。

有償修理であっても、修理費用だけを見ればよいとは限りません。

無償修理でも、課税価格がゼロになるとは限らず、修理前貨物の価値、修理内容、運賃、保険料などを確認する必要があります。

このケースでは、輸出許可書、修理明細、保証条件、再輸入インボイスを整理して申告すべきでした。

クレーム相殺を課税価格から差し引いたケース

輸入者が過去の不良品クレームを理由に、今回の貨物代金から一定額を相殺することがあります。

しかし、その相殺額を直ちに今回輸入貨物の課税価格から控除できるとは限りません。

どの貨物に関するクレームか、相殺の根拠は何か、今回の輸入価格そのものの値引きなのかを確認する必要があります。

このケースでは、クレジットノート、相殺合意書、対象貨物の対応関係を整理すべきでした。

注意点

関税評価では、インボイス価格だけを見て課税価格を決めると、加算漏れや評価誤りが発生する可能性があります。

ロイヤルティ、無償提供物品、金型費、検査費用、特殊関係、値引き・相殺は、後日調査でも問題になりやすい論点です。

包括評価申告は、評価申告を簡素化する制度であり、税関見解を事前に確認する制度ではありません。

関税評価上の取扱いを事前に確認したい場合は、文書による事前教示を利用する必要があります。

輸入者は、通関業者へインボイスだけを渡すのではなく、取引全体の費用・契約・支払関係を共有することが重要です。

まとめ

関税評価(課税価格)は、輸入貨物の関税・消費税計算の基礎となる重要な要素です。

通常の輸入では取引価格を基礎に課税価格を算定しますが、実務ではロイヤルティ、無償提供物品、金型費、特殊関係、修理後再輸入、値引き・相殺など、判断が難しい特殊ケースが発生します。

本記事は、関税評価の基本用語ではなく、こうした特殊ケースを実務上どう確認するかに重点を置いています。

輸入者、フォワーダー、通関業者は、インボイス価格だけでなく、契約書、支払明細、ロイヤルティ契約、金型費、保険料、運賃、評価申告、事前教示を含めて課税価格を整理する必要があります。

同義語・別表記

  • 関税評価
  • 課税価格
  • Customs Valuation
  • Customs Value
  • Dutiable Value
  • 取引価格
  • 現実支払価格
  • 評価申告
  • 包括評価申告

関連用語

公式情報