外為令別表
外為令別表とは
外為令別表とは、外国為替及び外国貿易法に基づくリスト規制のうち、技術提供の許可要否を判断するための基本表です。正式には外国為替令の別表であり、設計図、仕様書、製造方法、プログラム、技術指導などの技術を外国へ提供する場合に確認されます。
輸出令別表第1が貨物の輸出規制を対象とするのに対し、外為令別表は技術提供規制を対象とします。つまり、物を輸出しない場合でも、規制対象となる技術を外国へ提供すれば、外為法上の許可が必要になることがあります。
外為令別表で重要なのは、貨物輸出とは別に、技術そのものの該非判定を行う必要がある点です。装置や部品が非該当であっても、その設計、製造、使用、保守、改良に関する技術が規制対象となる場合があります。
この記事で扱う範囲
外為令別表は、技術提供規制、役務取引許可、みなし輸出、貨物等省令、役務通達、技術のマトリクス表、キャッチオール規制と関係します。この記事では、国際物流・貿易実務で問題になりやすい外為令別表の位置づけと、貨物輸出とは別に技術提供を確認する考え方を中心に扱います。
| 項目 | この記事で扱う内容 | 他の記事で詳しく扱う内容 |
|---|---|---|
| 外為令別表の基本 | 技術提供規制を確認するための基本表としての位置づけを整理します。 | 外為法全体の制度構造や輸出許可制度は「外為法と輸出許可」で詳しく扱います。 |
| 貨物輸出との違い | 輸出令別表第1が貨物を対象とし、外為令別表が技術提供を対象とする違いを説明します。 | 貨物のリスト規制や輸出令別表第1の項番確認は「輸出令別表第1」で扱います。 |
| 技術提供の範囲 | 設計図、仕様書、製造方法、プログラム、技術指導、オンライン会議などを扱います。 | 役務取引許可申請、許可不要特例、包括役務取引許可は関連制度の記事で扱います。 |
| 貨物等省令・役務通達 | 外為令別表だけでなく、詳細要件や解釈を確認する必要があることを整理します。 | 貨物等省令や役務通達の条文別解釈は個別記事で扱います。 |
| みなし輸出 | 国内における特定相手への技術提供が管理対象となる場合を扱います。 | 大学・研究機関、雇用管理、特定類型確認手続は「みなし輸出」で詳しく扱います。 |
| フォワーダー・通関業者の関与 | 技術提供の該非判定を最終判断せず、荷主への確認喚起にとどまる役割を整理します。 | 輸出申告、貨物の該非判定書、通関実務は輸出通関関連の記事で扱います。 |
制度の目的・背景
安全保障貿易管理では、軍事転用のおそれがある貨物や技術が、国際的な平和と安全を損なう用途に使われることを防ぐため、一定の輸出や技術提供に許可制が設けられています。外為令別表は、そのうち技術提供のリスト規制を確認するための入口となる表です。
技術は、貨物と異なり、メール、クラウド、オンライン会議、口頭説明、研修、海外出張、国内での特定相手への説明など、さまざまな方法で提供されます。物理的な貨物が動かなくても、設計・製造・使用に必要な技術情報が外国へ渡れば、安全保障上のリスクが生じることがあります。
そのため、外為令別表の確認では、資料名や提供方法ではなく、提供される情報の中身を確認する必要があります。単なる営業資料なのか、公開済みの一般情報なのか、それとも規制対象貨物の設計・製造・使用に必要な具体的技術なのかを切り分けることが重要です。
外為令別表の位置づけ
安全保障貿易管理では、リスト規制の対象となる貨物と技術が、それぞれ別の表で整理されています。貨物は輸出貿易管理令別表第1、技術は外国為替令別表で確認します。
| 確認対象 | 使用する主な表・資料 | 対象となるもの | 実務上の注意点 |
|---|---|---|---|
| 貨物の輸出 | 輸出令別表第1 | 装置、部品、材料、化学品、電子機器などの物 | 貨物の仕様、性能、用途を確認します。 |
| 技術の提供 | 外為令別表 | 設計図、仕様書、製造方法、プログラム、技術指導など | 物を輸出しなくても許可要否の確認が必要になる場合があります。 |
| 詳細要件 | 貨物等省令 | 規制対象技術の具体的な内容、範囲、仕様要件 | 外為令別表だけで結論を出さず、省令要件を確認します。 |
| 技術提供の解釈 | 役務通達 | 技術提供、役務取引、公開情報、基礎科学研究、除外規定など | 提供範囲や除外規定を確認する際に重要です。 |
| 確認用整理資料 | 技術のマトリクス表 | 外為令別表、貨物等省令、役務通達の対応関係 | 検索結果だけでなく、根拠条文を確認します。 |
| 用途・需要者確認 | キャッチオール規制関連資料 | 最終用途、需要者、外国ユーザーリスト、インフォーム通知 | リスト規制非該当でも用途・需要者確認を行います。 |
外為令別表の主な構成
外為令別表は、輸出令別表第1と対応する形で、主に1項から15項までの技術分野を整理しています。各項番は、国際的な安全保障上の懸念がある技術分野に対応しています。
| 技術分野 | 関係しやすい技術 | 関係しやすい資料・提供方法 | 確認上の注意点 |
|---|---|---|---|
| 武器関連技術 | 武器、軍用装置、軍用部品に関する設計・製造・使用技術 | 設計図、仕様書、製造条件、技術指導 | 民生品とは別次元で慎重な確認が必要です。 |
| 原子力関連技術 | 原子力関連装置、測定機器、特殊材料に関する技術 | 技術マニュアル、試験データ、設計資料 | 貨物の非該当だけで関連技術まで非該当とは限りません。 |
| 化学兵器・生物兵器関連技術 | 化学物質、製造装置、微生物、毒素、関連装置の技術 | SDS以外の製造条件、工程資料、培養条件、管理方法 | 商品名ではなく、成分、用途、製造方法で確認します。 |
| ミサイル・宇宙関連技術 | 推進、航法、制御、耐環境、複合材料に関する技術 | 制御プログラム、試験条件、設計図、解析資料 | 部品や材料に関する技術でも確認対象になり得ます。 |
| 先端材料・材料加工関連技術 | 工作機械、加工条件、特殊材料、精密加工技術 | 加工条件表、NCデータ、製造ノウハウ、品質管理手順 | 単なる装置カタログと具体的な加工ノウハウを分けます。 |
| 電子・通信・暗号・センサー関連技術 | 半導体、通信、暗号、レーザー、センサー、航法、海洋関連技術 | 回路図、ソースコード、暗号仕様、校正手順、保守資料 | プログラムや設定情報の提供も確認対象になります。 |
技術提供とは
技術提供とは、設計、製造、使用、改良、保守などに関する技術情報を、外国に向けて提供することをいいます。貨物の輸出とは異なり、物理的な貨物が移動しなくても規制対象となる場合があります。
技術提供に該当し得るものには、設計図、仕様書、回路図、製造図面、製造方法、加工条件、試験方法、品質管理方法、プログラム、ソースコード、制御ソフト、技術マニュアル、保守資料、トラブルシューティング資料、技術指導、研修、講習、打合せでの技術説明などがあります。
重要なのは、提供方法ではなく、提供される内容です。紙の資料、電子データ、口頭説明、オンライン共有のいずれであっても、規制対象技術に該当すれば、許可要否の確認が必要になります。
制度が適用される場面
外為令別表は、外国に対して技術を提供する場面で確認します。提供方法がメール、クラウド、オンライン会議、海外出張、技術研修、国内での特定相手への説明であっても、提供される技術の内容によっては外為法上の許可要否確認が必要になります。
| 場面 | 該当しやすい技術・資料 | 確認の中心 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|---|
| 海外顧客へ技術資料を送る場合 | 設計図、仕様書、回路図、製造図面、試験データ | 設計・製造・使用に必要な技術かどうか | 資料名ではなく、記載内容を確認します。 |
| 海外拠点へ製造ノウハウを共有する場合 | 加工条件、製造手順、品質管理方法、工程パラメータ | 規制対象貨物に関係する製造技術かどうか | グループ会社間でも許可要否確認が必要になる場合があります。 |
| オンライン会議で技術説明を行う場合 | 具体的な設計、製造、使用、保守、改良方法の説明 | 一般的な営業説明か、具体的な技術提供か | 口頭説明でも技術提供に該当し得ます。 |
| プログラムを提供する場合 | 制御ソフト、解析プログラム、設計支援ソフト、暗号関連プログラム | プログラムの機能、用途、対象装置 | ファイル形式ではなく機能と規制対象性を確認します。 |
| 海外出張で据付・保守指導を行う場合 | 調整方法、保守方法、トラブル対応、運転条件 | 使用技術・保守技術として規制対象に関係するか | 現地での口頭指導や実演も確認対象になります。 |
| 国内で特定相手に技術提供する場合 | 研究データ、設計資料、実験条件、製造ノウハウ | みなし輸出管理の対象となる相手かどうか | 居住者への提供でも特定類型確認が必要になる場合があります。 |
貨物輸出と技術提供の違い
貨物輸出と技術提供は、別々に確認する必要があります。装置や部品を輸出する場合は輸出令別表第1を確認し、その装置や部品に関する技術を提供する場合は外為令別表を確認します。
| 比較項目 | 貨物輸出 | 技術提供 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|---|
| 対象 | 装置、部品、材料、化学品、電子機器などの物 | 設計図、仕様書、製造方法、プログラム、技術指導などの情報 | 物と情報は別々に該非判定します。 |
| 確認する表 | 輸出令別表第1 | 外為令別表 | 貨物が非該当でも、技術が該当する場合があります。 |
| 提供・移転方法 | 船積、航空輸送、ハンドキャリー、国際宅配便など | メール、クラウド、会議、研修、出張、口頭説明など | 技術は物理的な輸送を伴わない点に注意します。 |
| 判断資料 | 仕様書、メーカー判定書、貨物等省令、貨物マトリクス表 | 提供資料の内容、貨物等省令、役務通達、技術マトリクス表 | 資料名だけではなく中身を確認します。 |
| 許可の種類 | 輸出許可が問題になります。 | 役務取引許可が問題になります。 | 貨物輸出許可と役務取引許可を混同しないようにします。 |
| 見落としやすい点 | 無償品、サンプル、中古品、部品輸出 | 保守資料、プログラム、オンライン会議、国内提供、海外拠点共有 | 貨物出荷後の技術支援まで含めて確認します。 |
役務通達との関係
外為令別表の解釈を補う重要な資料が、役務通達です。運用通達が主に貨物規制の解釈を補うのに対し、役務通達は技術提供や役務取引に関する規制の解釈を補います。
外為令別表は、規制対象となる技術分野を示す基本表です。貨物等省令は、規制対象技術の具体的な仕様や範囲を示します。役務通達は、技術提供規制の用語、範囲、解釈、公開情報、基礎科学研究、許可不要特例などを確認する際に重要になります。
技術提供の該非判定では、外為令別表だけで結論を出すのではなく、貨物等省令と役務通達をあわせて確認します。特に、「設計」「製造」「使用」に必要な技術かどうか、公開情報や基礎科学研究に該当するかどうか、提供先や提供方法に問題がないかが重要になります。
貨物等省令・マトリクス表との関係
貨物等省令は、輸出令別表第1と外為令別表の規定に基づき、規制対象となる貨物または技術の具体的な内容を定める省令です。技術提供の該非判定では、外為令別表の項番を確認したうえで、貨物等省令の詳細な技術要件を確認します。
マトリクス表は、輸出令別表第1、外為令別表、貨物等省令、通達などを項番ごとに整理した実務確認用の資料です。技術提供の該非判定では、技術のマトリクス表を参照することで、関係する項番、省令、通達を整理しやすくなります。
実務では、提供しようとする技術がどの貨物や装置に関係するかを確認し、その貨物に対応する技術項番を外為令別表・貨物等省令・役務通達・マトリクス表で照合します。
適用要件・対象外になりやすいもの
外為令別表の確認では、提供される情報が、規制対象貨物の設計、製造、使用に必要な技術に該当するかどうかを確認します。一方で、公開情報、基礎科学研究、一般的な営業資料、単なる製品紹介などは、規制対象外または別途除外規定の確認対象となる場合があります。
| 区分 | 外為令別表の確認が必要になりやすい考え方 | 対象外または別確認になりやすい考え方 | 確認すべき資料・情報 |
|---|---|---|---|
| 設計技術 | 規制対象貨物の設計、回路、構造、制御仕様に関する情報 | 一般カタログ、外形寸法、公開済みの商品説明 | 設計図、回路図、仕様書、公開範囲 |
| 製造技術 | 加工条件、製造手順、工程管理、品質管理、製造ノウハウ | 一般的な製造概要や公開済みの説明資料 | 製造工程表、加工条件、品質管理資料 |
| 使用技術 | 規制対象貨物の運転、調整、保守、改良、故障解析に必要な情報 | 一般的な取扱説明、販売用パンフレット | 保守マニュアル、運転条件、調整手順 |
| プログラム | 制御、解析、設計、暗号、通信など規制対象機能に関係するプログラム | 公開済みソフトウェアや一般的な閲覧資料 | ソースコード、機能仕様、提供方法、使用目的 |
| 公開情報 | 公開情報と非公開ノウハウが混在する資料 | 一般に入手可能な情報として整理できるもの | 公開元、公開日、公開範囲、追加説明の有無 |
| 基礎科学研究 | 応用・製造・使用に直結する具体的技術を含む研究情報 | 基礎科学分野の研究活動として整理できる情報 | 研究目的、提供情報、実用化との関係、非公開ノウハウの有無 |
技術提供の該非判定フロー
外為令別表を使う際は、提供する資料や説明内容を具体的に特定してから確認します。技術提供の該非判定では、資料名だけで判断しないことが重要です。たとえば「マニュアル」「仕様書」「図面」といった名称だけではなく、その中に規制対象技術が含まれているかを確認します。
| ステップ | 確認内容 | 判断の考え方 | 次に行う対応 |
|---|---|---|---|
| 1. 提供技術の特定 | 提供する資料、説明内容、プログラム、指導内容を特定します。 | 資料名ではなく、中身を確認します。 | 提供予定資料を一覧化し、版数・範囲を整理します。 |
| 2. 技術の性質確認 | 設計、製造、使用、保守、改良のどれに関係するかを確認します。 | 規制対象貨物に必要な技術かどうかが重要です。 | 技術部門・輸出管理担当に確認します。 |
| 3. 関係貨物の特定 | その技術が関係する貨物、装置、材料、プログラムを特定します。 | 貨物の項番と技術の項番が連動する場合があります。 | 輸出令別表第1や貨物判定資料も確認します。 |
| 4. 外為令別表・貨物等省令確認 | 関係する項番と具体的な技術要件を確認します。 | 外為令別表だけでなく省令要件まで確認します。 | 技術のマトリクス表で対応関係を整理します。 |
| 5. 役務通達・除外規定確認 | 公開情報、基礎科学研究、許可不要特例などを確認します。 | 除外規定を使う場合も根拠記録が必要です。 | 参照資料、判断日、判断者を記録します。 |
| 6. 提供先・用途確認 | 提供先、最終用途、再提供、共同研究先、外国政府等との関係を確認します。 | リスト規制非該当でもキャッチオール確認が必要です。 | 用途確認・需要者確認を行います。 |
| 7. 記録・許可要否判断 | 該当、非該当、対象外、許可不要特例の判断根拠を整理します。 | 後日の監査や当局照会に説明できる形にします。 | 必要に応じて役務取引許可を取得してから提供します。 |
みなし輸出との関係
みなし輸出とは、一定の場合に、国内における技術提供であっても、外国への技術提供と同様に管理対象となる考え方です。海外へデータを送る場合だけでなく、日本国内で特定の相手に規制対象技術を提供する場合にも確認が必要になることがあります。
2022年5月1日から運用が明確化されたみなし輸出管理では、居住者であっても、外国政府や外国法人等との契約に基づき指揮命令を受ける者、外国政府等から給与・研究資金・その他の経済的利益を受ける者などに対して規制対象技術を提供する場合、管理対象となることがあります。
実務上は、大学、研究機関、メーカー、技術部門、開発部門で特に注意が必要です。研究データ、設計図、製造ノウハウ、実験条件、プログラム、技術指導を提供する場合には、相手方の立場や外国政府・外国法人等との関係、提供技術の内容、外為令別表上の該当性を確認します。
提供方法ごとの注意点
技術提供は、特定の形式に限られません。提供方法が変わっても、提供される内容が規制対象技術であれば、許可要否の確認が必要になります。
| 提供方法 | 問題になりやすい技術 | 確認すべき点 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|---|
| メール・ファイル共有 | 設計図、仕様書、試験データ、プログラム、製造条件 | 送付先、添付ファイルの内容、提供目的 | ファイル名ではなく内容を確認します。 |
| オンライン会議 | 具体的な設計・製造・使用方法、調整方法、保守方法 | 説明内容、参加者、録画資料、共有画面 | 口頭説明でも技術提供に該当する場合があります。 |
| 海外出張・現地指導 | 製造条件、調整方法、保守方法、トラブル対応 | 指導内容、現地参加者、対象装置 | 現地での実演や質疑応答も確認対象になります。 |
| クラウド・共有フォルダ | 常時アクセス可能な設計資料、ソースコード、技術マニュアル | アクセス権限、保存場所、閲覧者、ダウンロード可能性 | 意図せず外国関係者が閲覧できる状態を避けます。 |
| プログラム提供 | 制御ソフト、解析プログラム、設計支援ソフト、暗号関連プログラム | 機能、用途、対象装置、ソースコードの有無 | 単なるデータ提供ではなくプログラム提供として確認します。 |
| 研修・講習 | 製造ノウハウ、実験条件、設計手法、保守技術 | 教材、受講者、質疑応答、実演内容 | 一般研修か規制対象技術の提供かを分けます。 |
公開情報・基礎科学研究との関係
技術提供規制では、すべての技術情報が許可対象になるわけではありません。すでに一般に公開されている情報や、基礎科学分野の研究活動に関する情報などは、規制対象から除外される場合があります。
ただし、単にインターネット上に似た情報がある、学会発表で一部説明した、社内で一般的な資料として扱っている、というだけで直ちに除外されるとは限りません。公開情報に該当するか、基礎科学研究に該当するかは、役務通達や関係資料に照らして確認する必要があります。
除外規定を使う場合は、どの資料が公開情報なのか、どの範囲が基礎科学研究なのか、提供する情報に非公開の具体的ノウハウが含まれていないかを記録しておくことが重要です。
キャッチオール規制との関係
外為令別表は、リスト規制における技術提供の確認に使われます。一方、リスト規制に該当しない場合でも、用途や需要者に懸念がある場合には、キャッチオール規制の確認が必要になることがあります。
技術提供でも、軍事用途、大量破壊兵器関連用途、懸念需要者、外国ユーザーリスト、インフォーム通知などが問題になることがあります。外為令別表で非該当と判断された場合でも、用途確認や需要者確認を省略してよいわけではありません。
実務では、技術の該非判定とあわせて、提供先、最終用途、需要者、再提供の有無、共同研究先、海外関連会社との関係を確認する必要があります。
よくある誤解
外為令別表では、貨物が非該当なら技術も非該当、公開資料なら常に許可不要、社内やグループ会社間なら問題ない、といった誤解が起きやすくなります。実務では、提供される技術の中身、提供先、用途、公開性、みなし輸出該当性を分けて確認する必要があります。
| よくある誤解 | 実際の考え方 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| 貨物が非該当なら関連技術も非該当である | 貨物輸出と技術提供は別々に確認します。貨物が非該当でも技術が該当する場合があります。 | 外為令別表、貨物等省令、役務通達を確認します。 |
| 物を輸出しなければ外為法は関係ない | 技術提供だけでも役務取引許可が必要になる場合があります。 | メール、クラウド、会議、海外出張も確認対象にします。 |
| 資料名がカタログやマニュアルなら問題ない | 資料名ではなく、記載されている技術内容で判断します。 | 一般情報か具体的な設計・製造・使用技術かを確認します。 |
| 公開情報なら常に自由に提供できる | 公開情報に該当する範囲を確認する必要があります。非公開ノウハウが含まれる場合は注意が必要です。 | 公開元、公開範囲、追加説明の有無を記録します。 |
| 国内での説明なら技術提供規制は関係ない | みなし輸出管理により、国内提供でも確認が必要になる場合があります。 | 提供相手の特定類型該当性や外国法人等との関係を確認します。 |
| グループ会社間なら許可確認は不要である | 海外子会社や海外拠点への技術提供でも規制対象になる場合があります。 | 社内共有であっても提供先と技術内容を確認します。 |
実務で問題になりやすいケース
外為令別表の確認で問題になりやすいのは、貨物の該非判定だけで安心し、関連する技術提供を確認しない場合です。特に、設計図、保守マニュアル、制御プログラム、製造条件、海外拠点への技術支援、国内研究者への技術提供では注意が必要です。
| ケース | 問題になりやすい点 | 確認すべき資料 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|---|
| 装置本体と詳細マニュアルを同時に提供する場合 | 貨物の該非だけ確認し、使用・保守技術の確認を漏らす | 装置判定書、保守マニュアル、技術資料一覧、外為令別表 | 貨物輸出と技術提供を分けて確認します。 |
| 制御プログラムを海外へ送付する場合 | 物の輸出がないため、技術提供規制を見落とす | プログラム仕様、機能説明、対象装置、提供先情報 | プログラムの機能と用途を確認します。 |
| 海外工場へ製造条件を共有する場合 | 社内共有として扱い、役務取引許可要否を確認しない | 製造工程表、加工条件、品質管理資料、提供先情報 | グループ会社間でも技術提供として確認します。 |
| オンライン会議で具体的な技術説明を行う場合 | 口頭説明のため記録が残らず、提供内容の確認が曖昧になる | 会議資料、参加者リスト、議事メモ、共有資料 | 説明範囲を事前に整理し、記録を残します。 |
| 大学・研究機関で研究データを共有する場合 | みなし輸出や基礎科学研究の扱いを確認しない | 研究内容、提供相手情報、特定類型確認、公開範囲 | 国内提供でも管理対象となる場合があります。 |
| 公開資料に非公開ノウハウを補足説明する場合 | 公開情報として扱い、追加説明部分を見落とす | 公開資料、追加説明資料、質疑応答記録 | 公開情報と非公開技術を分けて確認します。 |
4列判断チェックリスト
外為令別表の確認では、技術部門、営業部門、輸出管理部門、研究部門、フォワーダーの役割を分ける必要があります。特に、フォワーダーや通関業者は技術提供の該非を判断する立場ではなく、荷主側に確認を促す役割にとどまります。
| 確認場面 | 確認する相手 | 確認事項 | 問題がある場合の対応 |
|---|---|---|---|
| 引合い・契約前 | 営業担当・輸出管理担当 | 貨物輸出だけでなく、技術資料や技術指導の提供予定があるか | 技術提供がある場合は、外為令別表確認の対象にします。 |
| 資料送付前 | 技術部門・輸出管理担当 | 設計、製造、使用、保守、プログラムに関する情報が含まれるか | 提供前に該非判定と許可要否を確認します。 |
| オンライン会議・研修前 | 説明者・参加者管理担当 | 説明内容、参加者、共有資料、録画・録音の有無 | 説明範囲を限定し、必要に応じて許可確認を行います。 |
| 海外拠点・海外顧客への提供時 | 海外拠点・顧客・輸出管理担当 | 提供先、用途、再提供の有無、共同研究・委託関係 | 用途確認、需要者確認、契約条件を整理します。 |
| 国内での技術提供時 | 人事・研究部門・輸出管理担当 | みなし輸出の特定類型該当性、外国政府・外国法人等との関係 | 必要な確認手続を行い、記録を残します。 |
| 貨物輸出と同時に資料提供する時 | 荷主・フォワーダー・通関業者 | 装置本体の該非判定と、関連技術資料・プログラム提供の有無 | 貨物判定とは別に、技術提供確認を荷主へ促します。 |
フォワーダーの関与範囲対比表
フォワーダーや通関業者は、外為令別表を使って技術提供の最終判断を行う立場ではありません。技術提供の該非判定や役務取引許可の要否は、原則として技術を提供する輸出者・企業側が確認すべきものです。
| 区分 | 支援しやすいこと | 断定すべきでないこと | 実務上の対応 |
|---|---|---|---|
| 貨物と技術資料の同時提供確認 | 装置輸出に関連して、マニュアル、プログラム、設計図の提供有無を荷主に確認する | 技術提供の該非や役務取引許可要否を独自判断する | 荷主の輸出管理担当へ確認を促します。 |
| 書類整合性の確認 | 貨物の該非判定書と、技術資料・ソフト提供の有無に不自然な点がないか注意喚起する | 貨物が非該当なら技術も非該当と判断する | 貨物と技術は別確認であることを伝えます。 |
| 輸送範囲の確認 | USB、DVD、紙図面、技術マニュアルが貨物に同梱されていないか確認する | 同梱資料の技術内容を法的に評価する | 同梱資料がある場合は荷主へ内容確認を依頼します。 |
| 海外据付・保守案件の注意喚起 | 現地技術指導、保守対応、トラブルシューティングの予定があるか確認する | 現地指導は通関と無関係だから確認不要と判断する | 役務取引許可の確認状況を荷主側で整理してもらいます。 |
| 通関スケジュール管理 | 技術提供確認や許可取得が未了の場合、船積・申告日程に影響する可能性を共有する | 未確認のまま通常通り輸出できると約束する | 許可要否確認が終わるまで日程調整を行います。 |
| 社内役割の明確化 | 物流支援と輸出管理判断を分けるよう荷主に伝える | フォワーダーが技術提供の適法性を保証する | 契約・メール文面でも役割を明確にします。 |
制度が問題になる典型場面
外為令別表が問題になる典型場面は、貨物の出荷準備だけに意識が向き、関連する技術提供の確認が後回しになる場合です。貨物の該非判定書が揃っていても、技術資料、プログラム、保守指導、海外拠点へのノウハウ共有が別途問題になることがあります。
| 典型場面 | 発生しやすい問題 | 確認すべき相手・資料 | 実務上の対応 |
|---|---|---|---|
| 装置輸出後に詳細な保守資料を送る | 貨物輸出後の資料提供を単なるアフターサービスと考え、技術提供確認を漏らす | 保守資料、対象装置、提供先、外為令別表 | 使用・保守技術として確認します。 |
| 海外子会社へ製造ノウハウを共有する | 社内共有として処理し、役務取引許可要否を確認しない | 製造条件、工程資料、品質管理資料、提供先情報 | グループ会社間でも技術提供として確認します。 |
| 技術者がオンライン会議で詳細説明する | 口頭説明のため提供内容の記録が残らない | 会議資料、参加者、議事録、説明内容 | 会議前に説明可能範囲を決め、記録を残します。 |
| 公開論文をもとに追加ノウハウを説明する | 公開情報部分と非公開ノウハウ部分が混在する | 公開資料、追加説明資料、質疑応答記録 | 公開情報として扱える範囲を明確にします。 |
| 外国関係者に国内で研究データを共有する | 国内提供であることを理由にみなし輸出確認を省略する | 相手方情報、特定類型確認、研究資料、提供技術 | 国内提供でも管理対象となるか確認します。 |
| 貨物にUSBや技術資料を同梱する | 貨物の該非判定だけで、同梱データの技術提供確認をしない | 同梱資料、ファイル内容、プログラム仕様、提供先 | 貨物と同梱技術情報を分けて確認します。 |
制度適用シナリオ1:装置本体と保守マニュアルを同時に提供する場合
日本から海外へ装置本体を輸出する場合、まず装置本体について輸出令別表第1に基づく貨物の該非判定を行います。しかし、その装置に詳細な保守マニュアル、調整手順、トラブルシューティング資料、制御パラメータ表を添付する場合には、外為令別表に基づく技術提供の確認が別途必要になることがあります。
この場合、輸出者は、保守マニュアルが一般的な取扱説明にとどまるのか、規制対象貨物の使用・保守・調整に必要な具体的技術を含むのかを確認します。貨物が非該当であっても、技術資料の内容によっては別の確認が必要になる場合があります。
フォワーダーや通関業者は、技術資料の該非を判断する立場ではありませんが、貨物にUSB、DVD、紙図面、詳細マニュアルが同梱される場合には、荷主へ技術提供確認の有無を確認することが有効です。
制度適用シナリオ2:海外工場へ製造条件を共有する場合
日本本社が海外工場へ加工条件、温度条件、圧力条件、工程パラメータ、品質管理方法を共有する場合、単なる社内共有ではなく、技術提供として外為令別表の確認が必要になることがあります。
この場合、共有される情報が規制対象貨物の製造に必要な技術かどうかを確認します。一般的な工程概要や公開情報にとどまるのか、非公開の製造ノウハウや具体的な加工条件を含むのかによって、許可要否の判断が変わります。
実務では、技術部門、輸出管理部門、海外拠点管理部門が連携し、提供資料、提供先、提供方法、用途、再提供の有無を記録します。グループ会社間であっても、外国への技術提供として整理することが重要です。
制度適用シナリオ3:国内研究者へ技術情報を提供する場合
国内の大学、研究機関、企業内研究部門で技術情報を共有する場合でも、みなし輸出管理の観点から確認が必要になることがあります。居住者への提供であっても、外国政府や外国法人等から強い影響を受けている者に対して規制対象技術を提供する場合、管理対象となることがあります。
この場合、提供する研究データ、設計図、実験条件、プログラム、製造ノウハウが外為令別表上の規制対象技術に該当するかを確認します。あわせて、提供相手の特定類型該当性、所属、契約関係、資金提供関係を確認する必要があります。
実務上は、人事・研究部門・輸出管理部門が連携し、提供相手の確認手続、提供技術の範囲、公開情報や基礎科学研究への該当性を整理します。国内での情報共有であっても、技術流出管理の対象となる場合がある点に注意が必要です。
輸出者・実務担当者が準備すべき資料
外為令別表の確認では、提供する技術の内容を具体的に説明できる資料を整理する必要があります。資料名、ファイル名、会議名だけでは判断できないため、提供される情報の範囲、対象装置、提供先、用途を記録します。
| 資料・情報 | 確認できる内容 | 主な取得先 | 不足した場合の影響 |
|---|---|---|---|
| 提供予定資料一覧 | 提供する図面、仕様書、マニュアル、プログラムの範囲を確認できます。 | 技術部門、営業部門、輸出管理部門 | 何を提供するか特定できず、該非判定ができません。 |
| 技術内容説明書 | 設計、製造、使用、保守、改良のどれに関係するか確認できます。 | 技術部門、研究部門 | 外為令別表上の確認対象を整理できません。 |
| 関係貨物の判定資料 | 提供技術が関係する貨物や装置の項番・仕様を確認できます。 | メーカー、輸出者、技術部門 | 貨物と技術の対応関係が不明確になります。 |
| 役務通達・マトリクス表確認記録 | 省令、通達、除外規定、許可不要特例の確認根拠を整理できます。 | 輸出管理担当、専門部署 | 判断根拠を後日説明しにくくなります。 |
| 提供先・用途確認資料 | 提供先、最終用途、需要者、再提供の有無を確認できます。 | 営業部門、海外拠点、提供先 | キャッチオール規制や需要者確認が不十分になります。 |
| みなし輸出確認記録 | 国内提供時の特定類型該当性、外国法人等との関係を確認できます。 | 人事部門、研究部門、輸出管理部門 | 国内提供時の管理漏れにつながる可能性があります。 |
まとめ
外為令別表は、外為法に基づくリスト規制のうち、技術提供が規制対象となるかを確認するための基本表です。輸出令別表第1が貨物を対象とするのに対し、外為令別表は設計図、仕様書、製造方法、プログラム、技術指導などの技術提供を対象とします。
技術提供の該非判定では、外為令別表、貨物等省令、役務通達、技術のマトリクス表を組み合わせて確認します。貨物が非該当であっても、関連する設計・製造・使用技術やプログラムが規制対象となる場合があります。
輸出者、技術部門、研究部門、フォワーダー、通関業者は、物の輸出だけでなく、メール、クラウド、オンライン会議、海外出張、国内での特定相手への技術提供まで含めて確認する必要があります。外為令別表は、技術流出を防ぐためのリスト規制の入口となる資料です。
