CITES(ワシントン条約)―輸出入通関での確認事項と必要書類

CITES — Customs Checks and Required Documents for Imports and Exports

CITESとは

CITESとは、Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Floraの略称で、日本語では一般にワシントン条約と呼ばれます。

CITESは、絶滅のおそれのある野生動植物や、その個体、部分、加工品などの国際取引を規制する国際条約です。1973年に米国ワシントンD.C.で採択され、野生動植物の過剰な国際取引による絶滅を防ぐことを目的としています。

国際物流や貿易実務では、動植物そのものだけでなく、皮革製品、木材、楽器、標本、装飾品、医薬品原料、化粧品原料、食品原料、骨董品、越境ECで販売される動植物由来製品などがCITESの対象となる場合があります。

CITES対象貨物では、通常のインボイス、パッキングリスト、B/L、AWBだけでは手続が完了しないことがあります。対象種、学術名、原材料、原産国、附属書区分、輸出国での許可書類、再輸出の有無、輸入国での承認や確認の要否を、出荷前に確認する必要があります。

この記事で扱う範囲

この記事では、CITES制度全体の基本構造と、国際物流・通関実務で最初に確認すべき事項を整理します。

項目 この記事で扱う内容 他の記事で詳しく扱う内容
CITESの基本 CITESの目的、対象貨物、附属書区分、必要書類の全体像を扱います。 条約本文や締約国会議での個別改正内容は、専門資料で確認する必要があります。
附属書Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ 各附属書の規制レベルと実務上の違いを概説します。 個別種ごとの掲載状況、注釈、輸出割当、留保の有無は個別確認が必要です。
CITES輸出許可書 輸出国側で必要となる許可書の役割を説明します。 申請様式、発給条件、発給機関、提出書類は輸出国ごとの制度で確認します。
CITES再輸出証明書 一度輸入されたCITES対象品を別国へ再輸出する場合の考え方を説明します。 再輸出証明書の取得要件、過去の輸入記録、同一性確認は個別記事で詳しく扱います。
日本での輸入承認・事前確認 日本向け輸入で、経済産業省の輸入承認や事前確認が問題になることを説明します。 輸入公表、輸入貿易管理令、個別の申請要件は制度別の解説で確認します。
種の保存法との関係 CITESと日本国内の譲渡、販売、陳列、広告規制との関係を概説します。 国内販売、登録票、特定国際種事業、譲渡規制は種の保存法の記事で詳しく扱います。
他法令との関係 植物検疫、動物検疫、食品衛生、薬機法、関税法との関係を整理します。 検疫、食品届、薬機法該当性、輸出入申告実務は各制度の記事で確認します。

CITESの目的と背景

CITESの目的は、野生動植物の過剰な国際取引による絶滅を防ぎ、種の保存と持続可能な利用を両立させることです。

希少な動植物は、皮革、木材、装飾品、楽器、標本、医薬品原料、化粧品原料、食品原料などとして国際的な需要が高まることがあります。需要が高まると、乱獲、違法採取、密輸、不適切な飼育・栽培、原産地を偽った取引が発生しやすくなります。

CITESは、対象となる種を附属書Ⅰ、附属書Ⅱ、附属書Ⅲに分類し、輸出国と輸入国が許可書や証明書を通じて国際取引を管理する仕組みです。そのため、CITESは単なる通関手続ではなく、環境保護、種の保存、国際取引管理、輸出入管理が交差する制度です。

日本国内での制度上の位置づけ

CITESは国際条約ですが、日本で実際に輸出入貨物へ適用される場合には、国内法令上の制度を通じて運用されます。

日本におけるCITES対象品の輸出入管理では、外国為替及び外国貿易法、輸出貿易管理令、輸入貿易管理令、輸入公表などに基づく経済産業省の手続が問題になります。日本から輸出する場合には、経済産業大臣による輸出承認やCITES輸出許可書が関係します。日本へ輸入する場合には、輸出国発給のCITES輸出許可書または再輸出証明書に加え、対象種によっては経済産業大臣の輸入承認や事前確認が必要になることがあります。

一方で、CITES対象種や希少野生動植物種の国内での譲渡、販売、頒布目的の陳列、広告などについては、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律、いわゆる種の保存法が関係する場合があります。

したがって、CITES対象貨物では、輸出入時の水際規制と、輸入後または国内流通時の取引規制を分けて確認する必要があります。輸入通関が認められたとしても、その後の国内販売、譲渡、広告表示が自由にできるとは限りません。

関係機関の役割

関係機関 主な役割 実務上の確認場面 注意点
CITES事務局 条約全体の運用、締約国間の情報整理、附属書情報の公表などを行います。 対象種、附属書、締約国情報、輸出割当情報を確認する場面で参照します。 個別貨物の日本での輸入可否を直接判断する機関ではありません。
輸出国の管理当局 CITES輸出許可書や再輸出証明書を発給します。 輸出者が船積前に必要書類を取得する場面で関係します。 輸出許可書があっても、輸入国側の承認や確認が不要になるとは限りません。
経済産業省 日本におけるCITES対象貨物の輸出承認、輸入承認、事前確認などを所管します。 日本から輸出する場合、日本へ輸入する場合の手続確認で関係します。 対象種、附属書区分、原産国、輸出国、用途により必要手続が変わります。
税関 輸出入申告時に、CITES関係書類や輸出入承認等の有無を確認します。 輸出入申告、貨物検査、書類審査、指定官署での通関で関係します。 CITES該当貨物は、申告できる税関官署が限定される場合があります。
環境省 種の保存法や国内希少野生動植物種、国際希少野生動植物種の制度を所管します。 国内譲渡、販売、陳列、広告、登録票などの確認で関係します。 輸入時の水際手続とは別に、国内流通規制を確認する必要があります。
荷主・メーカー 原材料、学術名、原産国、製造工程、証明資料を準備します。 見積、発注、船積前確認、通関書類作成で関係します。 フォワーダーや通関業者だけでは、学術名や原材料の真正性を判断できないことがあります。

CITES附属書Ⅰ・Ⅱ・Ⅲの概要

CITES対象種は、附属書Ⅰ、附属書Ⅱ、附属書Ⅲに分類されます。実務上は、この附属書区分が、最初の重要な確認ポイントになります。

区分 規制の考え方 商業取引の考え方 主な必要書類 実務上の注意点
附属書Ⅰ 絶滅のおそれが高く、取引による影響を受けているか、受ける可能性があるため、特に厳重に規制される種です。 商業目的の国際取引は原則として禁止されます。 非商業目的等の例外では、輸出国と輸入国双方の許可が必要になることがあります。 「附属書Ⅰ=常に一切取引不可」ではなく、学術目的、条約適用前取得個体、人工繁殖・人工増殖個体などの例外確認が問題になります。
附属書Ⅱ 現在は必ずしも絶滅のおそれが高いとは限らないものの、取引を管理しなければ将来危険となる可能性がある種です。 一定の条件のもとで商業目的の国際取引が認められる場合があります。 通常、輸出国のCITES輸出許可書または再輸出証明書が問題になります。 一部の種では輸出国側の輸出割当、いわゆるクオータの有無を確認する必要があります。
附属書Ⅲ 特定の締約国が自国で保護している種について、他の締約国にも取引管理の協力を求めるものです。 商業目的の国際取引が可能な場合があります。 掲載国を原産国とする輸出では輸出許可書、掲載国以外を原産国とする場合には原産地証明などが問題になります。 どの国が掲載を求めているか、原産国がどこか、輸出国がどこかで必要書類が変わります。

附属書区分は、単なる分類名ではありません。商業取引の可否、輸出許可書の要否、輸入承認の要否、再輸出証明書の要否、通関時に確認される書類を判断する基礎になります。

附属書Ⅰの例外確認

附属書Ⅰは商業目的の国際取引が原則として禁止される区分ですが、実務上は例外の有無を確認することが重要です。

例外として確認されやすい場面 概要 実務上の確認事項 注意点
学術研究目的 研究、教育、標本交換など、商業目的ではない取引です。 取引目的、受入機関、輸出許可、輸入許可または承認を確認します。 非商業目的であることを資料で説明できる必要があります。
条約適用前取得個体 CITES適用前に取得された個体や加工品が問題になる場合です。 取得時期、取得経路、過去の証明資料を確認します。 古い骨董品や美術品では、取得時期の立証が難しいことがあります。
人工繁殖・人工増殖個体 野生由来ではなく、管理された施設で繁殖または増殖された個体です。 繁殖施設、登録施設、繁殖証明、原産情報を確認します。 人工繁殖と表示されていても、証明資料が不十分な場合があります。
個人携帯品・家財 商業貨物ではなく、個人所有品として移動する場合です。 用途、数量、取得経路、販売目的の有無を確認します。 個人用品であっても、CITES書類が不要になるとは限りません。
再輸出品 過去に輸入されたCITES対象品を別国へ再輸出する場合です。 過去の輸入許可、再輸出証明書、同一性を確認します。 原産国からの直接輸出とは必要書類が異なります。
締約国の留保が関係する場合 特定の種について、締約国が留保を付している場合です。 対象種、締約国、留保の有無を確認します。 日本側の取扱いと相手国側の取扱いを分けて確認する必要があります。

附属書Ⅱと輸出割当の確認

附属書Ⅱは、一定の条件のもとで国際取引が認められる場合があります。ただし、附属書Ⅱだから自由に輸出入できるという意味ではありません。

一部の種では、輸出国側で年間輸出割当数量、いわゆる輸出クオータが設定されていることがあります。輸出割当が設定されている場合、割当の範囲内でなければ輸出許可書が発給されないことがあります。また、同じ種でも原産国、個体群、採取地域、採取年、用途、野生由来か人工増殖かによって取扱いが変わることがあります。

実務では、附属書区分だけでなく、輸出国の発給可否、輸出割当の有無、許可書の有効期限、貨物数量と許可数量の一致を確認する必要があります。

CITESが適用される場面

CITESは、動植物そのものだけでなく、部分、派生物、加工品にも適用される場合があります。

場面 対象になり得る貨物 確認すべき情報 実務上の注意点
生きた動植物の輸出入 観賞魚、爬虫類、鳥類、植物、蘭、サボテンなど 学術名、附属書区分、原産国、輸出国、輸入目的 動植物検疫や輸送条件も同時に問題になります。
皮革製品の輸出入 ワニ革バッグ、ヘビ革靴、トカゲ革財布など 素材、学術名、原産国、加工国、輸出許可書 商品名だけでは対象種を判断できません。
木材・木製品の輸出入 希少木材、家具、単板、楽器材など 樹種、学術名、原産国、加工状態、数量 植物検疫や合法木材確認と併せて整理します。
楽器の国際移動 ローズウッド、象牙、べっ甲、貝、皮革を使った楽器 素材、製造時期、所有者、移動目的、再輸出の有無 販売貨物か、演奏旅行・展示目的かで整理が変わります。
医薬品・化粧品・健康食品原料 植物抽出物、動物由来原料、香料、エキス類など 原材料、学術名、成分表、用途、薬機法該当性 CITES対象外でも、薬機法や食品衛生で止まる場合があります。
標本・剥製・装飾品 剥製、骨、角、牙、サンゴ、貝、昆虫標本など 対象種、取得時期、原産国、販売目的の有無 骨董品や個人所有品でも、CITES確認が必要な場合があります。
越境EC・個人輸入 革製品、アクセサリー、装飾品、標本、民芸品など 販売ページ表示、素材、発送国、原産国、許可書の有無 少量や個人用途であっても、規制対象になることがあります。

CITES対象になり得る貨物

実務上、次のような貨物ではCITES該当性の確認が必要になることがあります。

  • 動物の皮革製品
  • 爬虫類革、ワニ革、ヘビ革、トカゲ革を使用した製品
  • 象牙、べっ甲、骨、角、牙を使用した製品
  • サンゴ、貝、真珠母貝、動物由来の装飾品
  • 希少木材、木製品、家具、単板、楽器材
  • 植物由来の医薬品原料、化粧品原料、健康食品原料
  • 標本、剥製、昆虫標本、動植物由来の美術品や骨董品
  • 動植物由来の粉末、エキス、油脂、香料、加工原料

貨物名だけではCITES該当性を判断できないことがあります。原材料、学術名、原産国、加工状態、取得時期、取引目的を確認する必要があります。

適用要件と対象外になり得る場合

区分 確認する内容 対象になりやすい場合 対象外または別確認になり得る場合
対象種 貨物に含まれる動植物がCITES附属書に掲載されているかを確認します。 附属書Ⅰ、Ⅱ、Ⅲに掲載されている種が含まれる場合です。 掲載されていない種でも、他法令の規制対象になることがあります。
学術名 一般名称ではなく、ラテン語の学術名を確認します。 同じ一般名で複数の種が存在する場合です。 学術名が不明な場合、非該当判断ができないことがあります。
部分・派生物 個体そのものではなく、皮革、木材、骨、エキスなどが対象になるかを確認します。 附属書の注釈で部分や派生物が対象とされている場合です。 注釈により、特定の加工品が対象外となることもあります。
原産国・輸出国 原材料の原産国と実際の輸出国を確認します。 原産国と輸出国が異なり、再輸出証明書が必要になる場合です。 国内流通のみで国際移動がない場合、CITES上の輸出入手続ではなく国内法確認が中心になります。
取引目的 商業目的か、学術目的か、個人使用か、展示目的かを確認します。 販売、転売、商業展示、仕入販売を目的とする場合です。 非商業目的でも、書類が不要になるとは限りません。
取得時期 条約適用前取得個体や古い美術品かを確認します。 取得時期を証明できない場合、通常の規制対象として扱われる可能性があります。 取得時期や由来を証明できる場合、例外確認の余地があります。

書類の種類と取得主体

CITES対象貨物では、輸出許可書、再輸出証明書、輸入承認、事前確認、原材料証明など、複数の書類が関係することがあります。

書類・手続 主な役割 誰が確認・取得するか 実務上の注意点
CITES輸出許可書 輸出国からCITES対象品を輸出するための許可書です。 通常は輸出者側が輸出国の管理当局で取得します。 船積前に取得されているか、有効期限、数量、学術名、対象貨物との一致を確認します。
CITES再輸出証明書 一度輸入されたCITES対象品を別の国へ再輸出する場合に必要となる証明書です。 再輸出者側が再輸出国の管理当局で取得します。 原産国、過去の輸入許可、再輸出品との同一性確認が問題になります。
輸入承認 日本への輸入について、経済産業大臣の承認を受ける手続です。 通常は輸入者側が確認・申請します。 対象種や附属書区分により、輸入承認が必要になる場合があります。
事前確認 輸入前に、必要事項を経済産業省に確認する手続です。 通常は輸入者側が確認します。 輸入承認ではなく事前確認の対象となる貨物もあります。
原材料証明・学術名確認資料 貨物に含まれる動植物の種、原材料、学術名を確認する資料です。 荷主、メーカー、輸出者が準備することがあります。 商品名、俗称、ブランド名だけでは不十分な場合があります。
原産地証明 附属書Ⅲなどで、原産国を説明するために必要となることがあります。 輸出者、メーカー、関係機関が準備することがあります。 附属書Ⅲでは、掲載国と原産国の関係が重要になります。
非該当説明資料 CITES対象外であることを説明するための資料です。 荷主、メーカー、輸出者が準備することがあります。 対象外である根拠を、学術名、素材、注釈、製造情報で説明できる必要があります。

通関実務で確認すること

CITES対象貨物は、通常の通関書類だけでは確認が足りないことがあります。

  • 貨物に動植物由来の原材料が含まれているか
  • 対象種の学術名が確認できるか
  • CITES附属書Ⅰ、Ⅱ、Ⅲのいずれに該当するか
  • 輸出国でCITES輸出許可書が取得されているか
  • 再輸出の場合、CITES再輸出証明書が必要か
  • 日本側で輸入承認や事前確認が必要か
  • インボイス、パッキングリスト、許可書類の内容が一致しているか
  • CITES対象貨物を申告できる税関官署か
  • 植物検疫、動物検疫、食品衛生、薬機法など他法令の確認が必要か

CITES確認は、輸入申告直前に初めて行うのでは遅いことがあります。対象貨物の可能性がある場合は、見積、契約、発注、船積手配の段階で確認することが重要です。

フォワーダー・通関業者が確認すべき点

フォワーダーや通関業者は、CITES許可を直接取得する立場ではない場合でも、CITES対象貨物の可能性を見落とすと、船積遅延、通関停止、保管料、返送、廃棄、荷主との責任問題につながることがあります。

確認場面 確認する相手 確認事項 問題がある場合の対応
見積依頼を受けたとき 荷主・輸入者 貨物に動植物由来素材が含まれるかを確認します。 素材不明の場合は、メーカー資料や成分表の提出を依頼します。
船積手配前 輸出者・海外代理店 CITES輸出許可書または再輸出証明書の取得予定を確認します。 未取得の場合は、船積前に取得完了を条件とします。
書類受領時 荷主・輸出者 学術名、数量、原産国、輸出国、品名が書類間で一致しているかを確認します。 不一致がある場合は、申告前に修正または補足資料を依頼します。
輸入申告前 輸入者・通関業者 日本側で輸入承認や事前確認が必要かを確認します。 必要手続が未了の場合は、申告時期と搬入計画を見直します。
指定官署の確認時 通関業者・税関 CITES対象貨物を申告できる税関官署かを確認します。 指定官署で申告できない場合は、搬入先や申告官署を調整します。
他法令確認時 荷主・通関業者・関係機関 植物検疫、動物検疫、食品衛生、薬機法の該当性を確認します。 CITES書類だけでなく、他法令手続の有無を荷主へ説明します。
書類不備が判明したとき 荷主・輸出者・海外代理店 追加取得、差替え、返送、廃棄、保管継続の可否を確認します。 費用負担、納期影響、契約上の責任を早急に整理します。

荷主・輸出入者が確認すべき点

荷主、輸出者、輸入者は、CITES対象貨物の可能性がある場合、次の点を確認する必要があります。

  • 商品に動植物由来の原材料が含まれているか
  • 対象種の学術名を確認できるか
  • 原材料の原産国を確認できるか
  • 商業取引が可能な種か
  • CITES附属書Ⅰ、Ⅱ、Ⅲのどれに該当するか
  • 輸出許可書、再輸出証明書、輸入承認、事前確認が必要か
  • メーカーや仕入先から証明資料を取得できるか
  • 輸出割当、取得時期、人工繁殖、人工増殖などの補足確認が必要か
  • 植物検疫、動物検疫、食品衛生、薬機法など他法令の許認可や検査が必要か
  • 出荷前に必要書類が揃っているか

CITES対象品は、出荷後に書類不足が判明すると対応が難しくなります。荷主側で商品情報、原材料情報、学術名、原産国、取得経路を早めに確認しておくことが重要です。

CITESと他制度の比較

制度 主な目的 主な対象 確認する機関・相手 CITESとの関係
CITES 絶滅のおそれのある野生動植物の国際取引を管理することです。 附属書掲載種、その個体、部分、派生物、加工品です。 輸出国管理当局、経済産業省、税関、荷主です。 国際取引時の許可書、証明書、輸入承認が問題になります。
種の保存法 希少野生動植物種の国内での保護、譲渡、販売等を規制することです。 国内希少野生動植物種、国際希少野生動植物種などです。 環境省、取引当事者、販売事業者です。 輸入後の国内販売、譲渡、陳列、広告で問題になることがあります。
外為法・輸出入貿易管理令 日本の輸出入管理を行うことです。 輸出承認、輸入承認、事前確認の対象貨物です。 経済産業省、税関、輸出入者です。 CITES対象貨物の日本での水際規制に関係します。
植物検疫 病害虫の侵入や拡散を防ぐことです。 植物、種子、木材、植物由来品などです。 植物防疫所、輸入者、通関業者です。 CITES対象外でも、植物検疫が必要になることがあります。
動物検疫 家畜伝染病などの侵入を防ぐことです。 動物、畜産物、動物由来品などです。 動物検疫所、輸入者、通関業者です。 皮革、毛、骨、動物由来品ではCITESと別に確認が必要です。
食品衛生法 食品の安全性を確保することです。 食品、食品添加物、食品原料、器具容器包装などです。 検疫所、輸入者、通関業者です。 植物・動物由来原料が食品用途の場合に確認が必要です。
薬機法 医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器等を規制することです。 医薬品、化粧品、医薬部外品、原料、表示効能を伴う商品です。 厚生労働省、都道府県、輸入者です。 動植物由来原料が医薬品・化粧品用途の場合に確認が必要です。

よくある誤解

よくある誤解 実際の考え方 実務上の注意点
ワシントン条約は生きた動植物だけが対象である。 個体だけでなく、部分、派生物、加工品も対象になる場合があります。 皮革、木材、骨、角、サンゴ、エキス、粉末、装飾品も確認対象になります。
商品名に動植物名がなければCITES対象外である。 商品名ではなく、原材料、学術名、原産国、加工状態で判断します。 ブランド名や一般名称だけで非該当判断をしないことが重要です。
輸出国のCITES輸出許可書があれば、日本側の手続は不要である。 対象種によっては、日本側で輸入承認や事前確認が必要になることがあります。 輸出側書類と輸入側手続を分けて確認します。
附属書Ⅰは一切輸出入できない。 商業目的の国際取引は原則禁止ですが、学術目的、条約適用前取得個体、人工繁殖・人工増殖個体などの例外確認が問題になることがあります。 例外の有無は、証明資料と所管機関の確認が必要です。
附属書Ⅱなら通常貨物と同じように輸入できる。 附属書Ⅱでも、輸出許可書、再輸出証明書、輸出割当、輸入側確認が問題になります。 輸出国で許可書が発給されるかを船積前に確認します。
附属書Ⅲはほとんど気にしなくてよい。 附属書Ⅲでも、掲載国、原産国、輸出国によって必要書類が変わります。 掲載国を原産国とするか、掲載国以外を原産国とするかを確認します。
少量や個人輸入ならCITESは関係ない。 少量、個人用途、郵便物、越境ECでも、対象品であれば規制対象になる場合があります。 販売目的でなくても、輸出入時の書類確認が必要になることがあります。
CITESを確認すれば他法令は確認不要である。 CITESとは別に、検疫、食品衛生、薬機法、関税法などが問題になる場合があります。 動植物由来貨物は、複数法令を同時に確認する必要があります。

制度が問題になる典型場面

場面 問題になりやすい貨物 主なリスク 実務上の対応
ワニ革バッグを輸入する場合 ワニ革、ヘビ革、トカゲ革などの皮革製品 学術名不明、輸出許可書不足、輸入承認未確認 素材、学術名、原産国、輸出許可書、日本側手続を船積前に確認します。
希少木材を使った家具を輸入する場合 ローズウッド、マホガニーなどを含む木製品 樹種不明、附属書注釈の見落とし、植物検疫漏れ 樹種、学術名、加工状態、植物検疫の要否を確認します。
楽器を海外販売する場合 木材、象牙、べっ甲、貝、皮革を含む楽器 部材の一部がCITES対象、再輸出証明書不足 製造時期、素材、原産国、販売目的、再輸出の有無を確認します。
化粧品原料を輸入する場合 植物エキス、動物由来成分、香料、油脂 CITES対象性、薬機法、食品衛生との重複 成分表、学術名、用途、薬機法上の位置づけを確認します。
骨董品や装飾品を輸入する場合 象牙、べっ甲、サンゴ、骨、角、牙を含む製品 取得時期不明、条約適用前取得の立証不足 取得時期、由来、過去の証明資料、販売目的の有無を確認します。
再輸出品を扱う場合 一度第三国に輸入されたCITES対象品 輸出許可書ではなく再輸出証明書が必要になる 原産国、過去の輸入記録、再輸出証明書、貨物同一性を確認します。
越境ECで少量輸入する場合 アクセサリー、皮革小物、標本、民芸品 個人輸入と誤解し、書類を取得しない 少量でも対象品であれば、輸出入規制の確認が必要であることを説明します。
輸出割当がある種を扱う場合 輸出国側でクオータ管理される種 輸出許可書が発給されない、または数量が合わない 輸出国側の発給可否、許可数量、割当の残枠を早期に確認します。

実務上の確認フロー

  1. 貨物に動植物由来の原材料が含まれているかを確認します。
  2. 一般名称ではなく、対象種の学術名を確認します。
  3. 原材料の原産国、輸出国、再輸出の有無を確認します。
  4. 対象種がCITES附属書Ⅰ、Ⅱ、Ⅲのいずれに該当するかを確認します。
  5. 附属書の注釈、対象となる部分・派生物、加工品の範囲を確認します。
  6. 附属書Ⅰの場合は、原則禁止と例外の有無を確認します。
  7. 附属書Ⅱの場合は、輸出許可書、再輸出証明書、輸出割当の有無を確認します。
  8. 附属書Ⅲの場合は、掲載国、原産国、輸出国の関係を確認します。
  9. 日本側で輸入承認、事前確認、輸出承認が必要かを確認します。
  10. インボイス、パッキングリスト、許可書類、証明資料の記載内容が一致しているかを確認します。
  11. 植物検疫、動物検疫、食品衛生、薬機法、関税法など他法令の該当性を確認します。
  12. 船積前に必要書類が揃っているかを最終確認します。

この確認は、輸入申告直前ではなく、見積、契約、発注、出荷手配の段階で行うことが望ましいです。

書類不備がある場合のリスク

CITES対象貨物で必要書類が不足している場合、次のようなリスクがあります。

  • 税関で貨物が止まる
  • 指定官署での申告に切り替える必要が生じる
  • 輸入が認められない
  • 輸出国側で船積できない
  • 保管料が発生する
  • 返送や廃棄が必要になる
  • 納品遅延が発生する
  • 追加書類取得に時間がかかる
  • 取引先との契約不履行が問題になる
  • 国内販売や譲渡が制限される

CITES対象品は、通関段階で止まってから対応するのではなく、出荷前に必要書類を確認することが重要です。

まとめ

CITESは、絶滅のおそれのある野生動植物や、その個体、部分、加工品などの国際取引を規制する国際条約です。

国際物流や貿易実務では、動植物そのものだけでなく、皮革製品、木材、楽器、装飾品、標本、医薬品原料、化粧品原料、食品原料など、動植物由来の貨物が対象となる場合があります。

日本では、CITES対象貨物の輸出入について、外為法、輸出貿易管理令、輸入貿易管理令、輸入公表などに基づく経済産業省の手続が問題になります。また、輸入後や国内流通段階では、種の保存法による譲渡、販売、陳列、広告等の規制が関係する場合があります。

CITES実務では、品名だけで判断せず、原材料、学術名、原産国、附属書区分、輸出許可書、再輸出証明書、輸入承認、事前確認、輸出割当、他法令の確認を行うことが重要です。

CITES確認は、通関時ではなく、見積、契約、発注、出荷手配の段階で行うことが、輸送遅延、通関停止、返送、廃棄、追加費用を防ぐ基本です。

同義語・別表記

  • CITES
  • サイテス
  • ワシントン条約
  • 絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約
  • Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora
  • 野生動植物取引規制
  • ワシントン条約規制

関連用語

公式情報