CITES附属書(I・II・III)―輸出入実務での必要書類と確認ポイント
CITES附属書Ⅰ・Ⅱ・Ⅲとは
CITES附属書Ⅰ・Ⅱ・Ⅲとは、ワシントン条約、すなわちCITESに基づき、国際取引の規制対象となる野生動植物を、絶滅のおそれや取引管理の必要性に応じて分類したリストです。
ワシントン条約では、野生動植物そのものだけでなく、その部分、派生物、加工品も対象となることがあります。そのため、動物や植物の輸出入だけでなく、皮革製品、木材、楽器、標本、装飾品、化粧品原料、医薬品原料、研究用サンプル、食品原料、骨董品、美術品などでも、附属書区分の確認が必要となる場合があります。
実務上重要なのは、「CITES対象かどうか」だけではありません。対象である場合に、附属書Ⅰ、附属書Ⅱ、附属書Ⅲのどれに該当するかによって、商業取引の可否、CITES輸出許可書、CITES再輸出証明書、CITES輸入許可書、輸出承認証、輸入承認証、原産地証明書、輸出割当などの必要書類と確認事項が変わります。
附属書区分は、単なる危険度ランキングではありません。輸出か輸入か、再輸出か、原産国はどこか、人工繁殖・人工栽培か、条約適用前取得品か、加工品か、商業目的か非商業目的かによって、必要な手続は変わります。
この記事で扱う範囲
この記事では、CITES附属書Ⅰ・Ⅱ・Ⅲの違いと、輸出入実務での確認ポイントを扱います。
| 項目 | この記事で扱う内容 | 他の記事で詳しく扱う内容 |
|---|---|---|
| CITES附属書の基本 | 附属書Ⅰ・Ⅱ・Ⅲの意味、規制の強さ、商業取引の考え方を整理します。 | CITES制度全体の目的、条約の仕組み、関係機関はCITES総論の記事で扱います。 |
| 附属書Ⅰ | 商業目的の国際取引が原則禁止される区分と、例外的な取扱いを整理します。 | 附属書Ⅰ対象品の個別申請や輸出先国側のCITES輸入許可書は個別記事で扱います。 |
| 附属書Ⅱ | 商業取引が可能な場合でも、CITES輸出許可書や輸出割当が問題になることを整理します。 | 日本から輸出する場合の申請書類やB/L・AWB番号の扱いはCITES輸出許可書の記事で扱います。 |
| 附属書Ⅲ | 掲載国、原産国、輸出国の関係により、輸出許可書や原産地証明書が変わる点を整理します。 | 個別の附属書Ⅲ掲載国、種ごとの書類要件は最新の附属書情報で確認します。 |
| 再輸出との関係 | 附属書区分が再輸出証明書や輸入時書類の確認に影響する点を扱います。 | 一度輸入されたCITES対象貨物を第三国へ出す場合はCITES再輸出証明書の記事で扱います。 |
| 国内手続との関係 | 輸出承認証、輸入承認証、事前確認書、輸入許可通知書などとの関係を整理します。 | 外為法、輸出貿易管理令、輸入貿易管理令、税関手続の詳細は各制度記事で扱います。 |
| フォワーダー・通関業者の確認 | 荷主から輸出入・再輸出依頼を受けた際の確認事項を整理します。 | フォワーダーの責任範囲、E&Oリスク、荷主確認の実務は別記事で扱います。 |
制度の目的と背景
CITES附属書Ⅰ・Ⅱ・Ⅲは、野生動植物の国際取引を一律に禁止するためのリストではありません。絶滅のおそれや国際取引の影響、各国の保護状況に応じて、取引を禁止、制限、管理するための分類です。
国際取引では、動植物そのものだけでなく、皮革、木材、骨、角、サンゴ、貝殻、標本、抽出物、粉末、エキス、加工品などの形で取引されることがあります。商品名だけでは対象種が分からない場合も多く、学名、原産国、加工状態、附属書注釈を確認する必要があります。
附属書区分を確認する目的は、単に「厳しいか緩いか」を知ることではありません。輸出許可書が必要か、CITES輸入許可書が必要か、再輸出証明書が必要か、原産地証明書で足りるか、輸出割当の範囲内か、国内法上の承認が必要かを判断することにあります。
附属書Ⅰ・Ⅱ・Ⅲの対比表
| 区分 | 基本的な性格 | 商業取引 | 主な必要書類 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 附属書Ⅰ | 絶滅のおそれが特に高く、国際取引による影響を受けている、または受ける可能性がある種です。 | 商業目的の国際取引は原則禁止です。 | CITES輸出許可書、輸出先国のCITES輸入許可書、輸出承認証などが問題になります。 | 学術研究、条約適用前取得、人工繁殖・人工栽培などの例外要件を確認します。 |
| 附属書Ⅱ | 現時点で必ずしも絶滅のおそれが高いとは限らないものの、国際取引の管理が必要な種です。 | 商業取引が可能な場合があります。 | CITES輸出許可書、CITES再輸出証明書、必要に応じて輸出承認証などが問題になります。 | 実務で最も遭遇しやすく、学名、原産国、加工状態、輸出割当の確認が重要です。 |
| 附属書Ⅲ | 特定国が自国内の保護のため、他国に国際取引管理の協力を求めている種です。 | 商業取引が可能な場合があります。 | 掲載国原産の場合は輸出許可書等、非掲載国原産の場合は原産地証明書などが問題になります。 | 掲載国と原産国の関係を確認しないと、必要書類を誤りやすい区分です。 |
附属書Ⅰが最も厳しく、附属書Ⅱ、附属書Ⅲの順に緩く見えるため、単純なランク表のように理解されることがあります。しかし、実務ではそれだけでは不十分です。同じ附属書区分でも、輸出か輸入か、再輸出か、原産国、輸出先国、加工状態、輸出目的、国内法令によって、必要な手続は変わります。
附属書Ⅰとは
附属書Ⅰは、絶滅のおそれが特に高く、国際取引による影響を受けている、または受ける可能性がある種を対象とする最も厳しい区分です。
附属書Ⅰに掲載された種は、商業目的の国際取引が原則として禁止されています。ただし、学術研究目的、共同保護計画、条約適用前に取得されたもの、移動展示、一定の人工繁殖・人工栽培に関するものなど、例外的に手続が認められる場合があります。
附属書Ⅰでは、輸出国側のCITES輸出許可書だけでなく、輸入国側のCITES輸入許可書や事前の確認が必要となることがあります。したがって、輸出者だけで判断せず、輸入者、相手国当局、フォワーダー、通関業者と早めに確認することが重要です。
代表例としては、トラ、チンパンジー、ゾウの一部、サイの一部、ウミガメ類の一部、希少なランやサボテンの一部などが挙げられます。ただし、掲載状況や対象範囲は改正されるため、必ず最新の附属書情報で確認する必要があります。
附属書Ⅱとは
附属書Ⅱは、現在必ずしも絶滅のおそれが高いとは限らないものの、国際取引を適切に管理しなければ、将来的に絶滅のおそれのある種となり得るものを対象とする区分です。
附属書Ⅱでは、商業目的の国際取引が認められる場合があります。ただし、輸出国政府が発行するCITES輸出許可書や、再輸出の場合のCITES再輸出証明書などが必要になります。
実務で問題になりやすいのは、この附属書Ⅱです。附属書Ⅰのように「原則禁止」という印象が強くないため、荷主側が「普通に輸出できる」と考えてしまうことがあります。しかし、CITES輸出許可書等が必要である以上、出荷直前に判明すると、船積みや航空便に間に合わない可能性があります。
また、一部の附属書Ⅱ対象種では、輸出国側で年間輸出割当、いわゆるクオータが設定される場合があります。輸出割当がある場合、許可数量、出荷数量、採取年、ロット、野生由来か人工繁殖・人工栽培かといった情報の管理が重要になります。
代表例としては、ワニ類の一部、トカゲ類の一部、ラン科植物の多く、サボテン科植物の多く、ローズウッド類の一部、サメ類の一部、キャビアに関係するチョウザメ類などが挙げられます。皮革製品、木材製品、楽器、化粧品原料、健康食品原料などで問題となることがあります。
附属書Ⅱと輸出割当の確認
附属書Ⅱは、商業取引が可能な場合がある一方で、輸出国側の管理が重要となる区分です。その管理手段の一つが輸出割当です。
輸出割当とは、特定の種や個体群について、一定期間内に輸出できる数量を制限する仕組みです。輸出割当が設定されている場合、CITES輸出許可書が発給されるかどうかは、単に附属書Ⅱであるかだけでなく、割当数量の範囲内か、対象ロットがどの由来か、許可数量と実際の輸出数量が一致しているかによっても左右されます。
たとえば、同じ原料を複数回に分けて出荷する場合、サンプル出荷後に本出荷を行う場合、在庫品を小分けにして輸出する場合には、輸出許可書上の数量と実際の輸出数量の管理が重要になります。割当数量を超過したり、許可数量と出荷数量が合わなかったりすると、輸出許可や相手国での輸入手続に支障が出る可能性があります。
附属書Ⅲとは
附属書Ⅲは、ある締約国が自国内の種を保護するため、他の締約国に国際取引の管理協力を求めている種を対象とする区分です。
附属書Ⅲでは、「どの国がその種を附属書Ⅲに掲載しているか」と「貨物の原産国がどこか」が重要になります。掲載国を原産国とする輸出では、その国の政府が発行するCITES輸出許可書等が問題になります。一方、掲載国以外を原産国とする場合には、原産地証明書が必要となることがあります。
附属書Ⅲは、附属書Ⅰ・Ⅱと比べて軽く見られがちですが、実務では誤解が起きやすい区分です。特に、原産国、出荷国、製造国、経由国が異なる場合には、どの書類が必要かを慎重に確認する必要があります。
代表例としては、国ごとに掲載された特定の哺乳類、鳥類、爬虫類、木材種などがあります。附属書Ⅲは掲載国との関係で判断するため、品名だけでなく、学名と原産国の確認が不可欠です。
附属書Ⅲにおける原産地証明書の考え方
附属書Ⅲでいう原産地証明書は、単に商取引で使われる一般的な原産地証明書をそのまま意味するとは限りません。CITES上、附属書Ⅲの対象種について、掲載国以外を原産国とする貨物であることを示すために、CITES手続上のCertificate of Originが求められる場合があります。
実務では、一般的な貿易上のCertificate of Originで足りるのか、CITES管理当局が関与する様式や証明が必要なのか、輸出国側でどの機関が発給するのかを確認する必要があります。国によって管理当局、発給様式、提出方法が異なることがあるため、附属書Ⅲでは相手国側・輸出国側の確認が特に重要です。
| 確認項目 | 確認する理由 | 確認する相手 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|---|
| 掲載国 | どの国が附属書Ⅲ掲載を求めているかで必要書類が変わるためです。 | 荷主、輸出者、申請窓口、CITESリスト | 品名だけでは掲載国を判断できません。 |
| 原産国 | 掲載国原産か、非掲載国原産かで書類が変わるためです。 | メーカー、仕入先、荷主 | 製造国、出荷国、貿易上の原産地と一致しない場合があります。 |
| 発給機関 | CITES上有効な原産地証明書かを確認するためです。 | 輸出国側管理当局、海外代理店、輸入者 | 一般の商工会議所発給書類だけで足りるかは個別確認が必要です。 |
| 相手国での受入 | 輸入国側で書類が受理されるかを確認するためです。 | 輸入者、海外代理店、相手国通関業者 | 日本側で出荷できても、相手国側で止まることがあります。 |
附属書区分ごとの必要書類の考え方
CITES附属書ごとの必要書類は、輸出、輸入、再輸出のどの場面かによって異なります。一般的な考え方は次のとおりです。
| 区分 | 輸出者側で問題となる書類 | 輸入者側で問題となる書類 | 再輸出の場合 |
|---|---|---|---|
| 附属書Ⅰ | CITES輸出許可書、輸出承認証、輸出先国のCITES輸入許可書などが問題になります。 | CITES輸入許可書、輸入承認証、輸入国側の国内規制書類などが問題になります。 | 輸入時書類、CITES再輸出証明書、国内流通経路を示す書類が重要です。 |
| 附属書Ⅱ | CITES輸出許可書、必要に応じて輸出承認証、輸出割当の確認などが問題になります。 | 輸出国発行のCITES輸出許可書等、輸入国側の事前確認書類などが問題になります。 | CITES再輸出証明書、輸入時CITES書類、販売・譲渡証明書などが重要です。 |
| 附属書Ⅲ | 掲載国原産の場合は輸出許可書等、非掲載国原産の場合は原産地証明書などが問題になります。 | 輸出国側書類、原産地証明書、輸入国側の確認書類などが問題になります。 | 原産国、掲載国、輸入経緯を確認し、再輸出証明書等の要否を確認します。 |
この表は一般的な整理であり、実際の必要書類は、貨物の種類、附属書区分、原産国、輸出入国、輸出目的、加工状態、国内法令によって異なります。特に、輸入国側がCITESより厳しい国内規制を設けている場合もあるため、相手国側の確認も必要です。
他制度との比較
| 制度・書類 | 主な目的 | 主な確認対象 | CITES附属書との関係 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|---|---|
| CITES附属書Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ | 国際取引管理の対象種を分類することです。 | 野生動植物、部分、派生物、加工品です。 | 附属書区分により必要書類や商業取引の可否が変わります。 | 学名、原産国、注釈、改正状況を確認します。 |
| CITES輸出許可書 | CITES対象貨物を輸出してよいことを示すことです。 | 輸出貨物、学名、数量、原産国、輸出先です。 | 附属書Ⅰ・Ⅱ・Ⅲの区分により必要性が変わります。 | B/L・AWB番号、税関確認欄、有効期限、原本管理を確認します。 |
| CITES再輸出証明書 | 一度輸入されたCITES対象貨物を第三国へ出すことを証明することです。 | 輸入時書類、国内流通経路、現在の貨物との連続性です。 | 附属書区分により過去の輸入適法性や必要書類の確認が変わります。 | 輸入時CITES書類、輸入承認証、輸入許可通知書、販売証明書を確認します。 |
| 輸出承認証・輸入承認証 | 外為法・貿易管理上の承認を行うことです。 | 輸出入管理対象貨物です。 | CITES対象貨物では附属書区分により承認が関係する場合があります。 | CITES書類とは別の国内法上の承認として切り分けます。 |
| 動植物検疫 | 病害虫や家畜伝染病等の侵入を防ぐことです。 | 植物、動物、畜産物、木材、種子などです。 | CITES対象外でも検疫対象となる場合があります。 | CITES書類があっても検疫が不要になるとは限りません。 |
判断の流れ
CITES附属書区分を確認する際は、次の順番で整理します。
- 貨物に動植物由来の素材が含まれているか確認します。
- 商品名ではなく、可能な限り学名を確認します。
- CITES附属書Ⅰ・Ⅱ・Ⅲのいずれに掲載されているか確認します。
- 対象範囲が個体全体か、部分品、派生物、加工品まで含むか確認します。
- 原産国、出荷国、製造国、経由国を確認します。
- 輸出か、輸入か、再輸出かを確認します。
- 商業目的か、展示、研究、修理、返送などの非商業目的か確認します。
- 附属書Ⅱの場合は、輸出割当や許可数量の管理が必要か確認します。
- 附属書Ⅲの場合は、掲載国原産か非掲載国原産か確認します。
- 必要なCITES輸出許可書、CITES再輸出証明書、CITES輸入許可書、原産地証明書を確認します。
- 輸出承認、輸入承認、事前確認、輸入許可通知書など国内法上の書類を確認します。
- 輸出通関・輸入通関で原本が必要か確認します。
- 相手国側の追加規制がないか確認します。
フォワーダーや通関業者が独自に附属書該当性を最終判断するのは危険です。荷主、メーカー、仕入先、申請窓口、相手国側輸入者と連携し、学名と原産国を基準に確認を進めることが重要です。
制度が適用される場面
| 場面 | 該当し得る貨物 | 確認すべき附属書論点 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|---|
| 日本から輸出する場合 | 植物、動物、皮革製品、木材製品、楽器、標本などです。 | 日本原産か、附属書Ⅰ・Ⅱ・Ⅲのどれかを確認します。 | CITES輸出許可書と輸出承認証の要否を確認します。 |
| 日本へ輸入する場合 | 海外由来の動植物製品、原料、加工品などです。 | 輸出国側CITES書類と日本側の輸入承認・事前確認を確認します。 | 輸入許可通知書と輸入承認証を混同しないようにします。 |
| 日本から第三国へ再輸出する場合 | 過去に海外から日本へ輸入されたCITES対象貨物です。 | 附属書区分、輸入時書類、原産国、国内流通経路を確認します。 | CITES再輸出証明書と輸入時書類の連続性が重要です。 |
| 展示品を国際移動する場合 | 美術品、楽器、皮革製品、標本、装飾品などです。 | 商業目的でなくても附属書対象か確認します。 | 展示後の返送または次国移送まで確認します。 |
| 研究用サンプルを送る場合 | 標本、DNA試料、植物片、抽出物、保存サンプルなどです。 | 非商業目的でも附属書Ⅰ・Ⅱの手続が必要か確認します。 | 受入機関と相手国側CITES輸入許可書を確認します。 |
| 加工品・原料を扱う場合 | 化粧品原料、健康食品原料、木材部材、革製品などです。 | 部分品、派生物、加工品が対象範囲に含まれるか確認します。 | 商品名ではなく、成分、学名、原産国で確認します。 |
適用要件と対象外になり得る場合
| 確認項目 | 適用されやすい場合 | 対象外または別確認となり得る場合 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 対象種 | 学名がCITES附属書に掲載されている場合です。 | 附属書に掲載されていない種の場合です。 | 和名・英名だけでは判断できません。 |
| 部分・派生物 | 皮革、木材、骨、角、抽出物、粉末などが附属書注釈で対象となる場合です。 | 注釈により一部加工品が対象外となる場合があります。 | 附属書注釈の確認が重要です。 |
| 原産国 | 原産国が掲載国または規制対象地域に関係する場合です。 | 附属書Ⅲで非掲載国原産の場合、原産地証明書中心となることがあります。 | 製造国とCITES上の原産国が異なる場合があります。 |
| 取引目的 | 販売、転売、商業展示などの場合です。 | 非商業目的でも手続が不要とは限りません。 | 研究・展示・修理・返送も確認対象です。 |
| 取得時期 | 条約適用後に取得された場合です。 | 条約適用前取得品として例外確認が問題になる場合があります。 | 古い楽器、美術品、骨董品では証明資料が重要です。 |
| 繁殖・栽培形態 | 野生由来の場合はより慎重な確認が必要です。 | 人工繁殖・人工栽培として別扱いが認められる場合があります。 | 証明書や登録施設情報が必要となることがあります。 |
実務で問題になりやすいケース
| ケース | 起こりやすい問題 | 確認すべき資料 | 対応の考え方 |
|---|---|---|---|
| 附属書Ⅱの木材部材を通常木材として輸出する場合 | 一般的な木材名だけで判断し、学名や附属書区分を確認しないことがあります。 | 樹種、学名、原産国、加工状態、輸出許可書の要否を確認します。 | 木材名ではなく、学名と附属書注釈で確認します。 |
| ワニ革製品を附属書Ⅰ・Ⅱの違いを確認せず輸出する場合 | 種や個体群により区分が異なる可能性を見落とすことがあります。 | 学名、原産国、皮革証明、タグ番号、仕入書を確認します。 | 「ワニ革」という一般名称だけで判断しません。 |
| 附属書Ⅲ品で掲載国と原産国を取り違える場合 | 輸出許可書が必要なケースと原産地証明書が問題となるケースを混同します。 | 掲載国、原産国、輸出国、Certificate of Originの発給機関を確認します。 | 附属書Ⅲでは国の関係を表にして整理します。 |
| 化粧品原料に植物由来成分が含まれる場合 | 製品名から対象種が見えず、CITES確認が漏れることがあります。 | 成分表、原料規格書、学名、原産国、含有量を確認します。 | 原料段階で対象性を確認し、完成品名だけで判断しません。 |
| 研究用サンプルを非商業目的として送る場合 | 研究目的であることから手続不要と誤解されることがあります。 | 研究目的資料、受入機関資料、学名、数量、輸出先国手続を確認します。 | 非商業目的でも附属書区分に応じた書類が必要な場合があります。 |
| 古い楽器や美術品を海外へ持ち出す場合 | 製造年、素材、条約適用前取得の証明が不足することがあります。 | 製造年、素材証明、写真、シリアル番号、取得証明を確認します。 | 条約適用前取得品かどうかを資料で説明できるようにします。 |
| 小口サンプルを国際宅配便で送る場合 | 少量・無償であることからCITES確認を省略することがあります。 | 成分、学名、数量、用途、輸送業者の取扱条件を確認します。 | 数量や金額ではなく、対象種と国際移動で判断します。 |
| 過去に輸入した在庫品を第三国へ出す場合 | 輸出許可書で処理すべきか、再輸出証明書が必要かを取り違えます。 | 輸入時CITES書類、輸入承認証、輸入許可通知書、在庫台帳を確認します。 | 日本原産か輸入済み貨物かを最初に切り分けます。 |
具体例1:附属書Ⅱの木材を使用した楽器を輸出する場合
ローズウッドなどの希少木材を使用した楽器や部材を日本から輸出する場合、品名が単に「Instrument」「Wooden Parts」と記載されているだけでは、CITES附属書への該当性を判断できません。
附属書Ⅱ対象種であっても、商業取引が可能な場合があるため、荷主は通常貨物として輸出できると考えることがあります。しかし、CITES輸出許可書や輸出割当の確認が必要となる場合があり、出荷直前に判明すると、Booking変更、航空便キャンセル、展示会搬入遅延につながります。
実務では、樹種、学名、原産国、製造年、部材の使用箇所、対象となる部分・派生物の範囲、輸出先国側の受入要件を確認します。楽器全体ではなく、使用されている木材部材単位でCITES対象性を確認することが重要です。
具体例2:附属書Ⅲ品で掲載国と原産国を取り違える場合
附属書Ⅲでは、ある国が自国内の種を保護するために国際的な協力を求めています。そのため、同じ種であっても、掲載国を原産国とする場合と、掲載国以外を原産国とする場合で必要書類が変わることがあります。
たとえば、輸出国、製造国、原産国、経由国が異なる貨物では、どの国が附属書Ⅲに掲載したのか、貨物のCITES上の原産国はどこかを確認しないまま、通常の原産地証明書だけで足りると判断してしまうリスクがあります。
実務では、掲載国、原産国、輸出国、製造国を分けて整理し、CITES上のCertificate of Originが必要なのか、掲載国原産として輸出許可書等が必要なのかを確認します。附属書Ⅲは軽い区分というより、国の関係を誤ると書類を間違えやすい区分です。
具体例3:研究用サンプルを非商業目的で送る場合
大学、研究機関、博物館、企業の研究部門が、動植物由来の標本やサンプルを海外へ送る場合、非商業目的であるためCITES手続は不要と誤解されることがあります。
しかし、CITESでは商業目的かどうかだけでなく、対象種、附属書区分、国際移動の有無、取得経緯、輸出先国の受入要件が問題になります。附属書Ⅰでは非商業目的であっても、輸出国側と輸入国側の許可が問題となることがあります。附属書Ⅱでも、CITES輸出許可書や再輸出証明書が必要となる場合があります。
実務では、研究目的資料、受入機関、学名、数量、保存状態、取得経緯、輸送方法、相手国側のCITES輸入許可書または他の事前手続を確認します。通常の国際宅配便書類だけで発送しないことが重要です。
代表的な対象貨物の例
CITES附属書の確認が問題となりやすい貨物には、次のようなものがあります。
- ワニ革、トカゲ革、ヘビ革などを使用したバッグ、財布、ベルト、靴
- ローズウッド、黒檀、マホガニーなどを使用した木材、家具、楽器、部材
- ラン、サボテン、アロエなどの植物、苗、種子、切花、加工品
- 象牙、べっ甲、サンゴ、貝殻、骨、角などを使用した装飾品
- 剥製、標本、研究用サンプル、教育用資料
- チョウザメ由来のキャビアなどの食品
- 動植物由来成分を含む化粧品、健康食品、医薬品原料
- 展示会用サンプル、販促品、個人携行品、修理品、返送品
これらの貨物は、一般的な貿易書類上では「Bag」「Wooden Parts」「Sample」「Decoration」「Cosmetics」「Instrument」などと記載されることがあります。しかし、CITESでは品名ではなく、実際に含まれる動植物種、学名、原産国、加工状態が問題になります。
よくある誤解
| よくある誤解 | 実際の考え方 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| 附属書Ⅱは附属書Ⅰより緩いので問題ない。 | 附属書Ⅱでも、CITES輸出許可書や再輸出証明書が必要となります。 | 通常貨物と同じように自由に輸出入できるわけではありません。 |
| 附属書Ⅲは重要ではない。 | 附属書Ⅲは、掲載国と原産国の関係によって必要書類が変わるため、実務上分かりにくい区分です。 | 掲載国原産か、非掲載国原産かを必ず確認します。 |
| 加工品ならCITES対象外である。 | 部分、派生物、加工品も対象となることがあります。 | バッグ、財布、楽器、家具、装飾品、化粧品原料でも確認が必要です。 |
| 少量サンプルなら手続不要である。 | 少量、無償、サンプル、展示品、研究用であっても、CITES対象貨物であれば手続が必要となる場合があります。 | 金額や数量だけで不要判断をしないようにします。 |
| 日本で輸出できれば相手国でも輸入できる。 | 相手国側でCITES輸入許可書、原本提示、国内法令上の追加規制が問題になることがあります。 | 輸出者側だけでなく、輸入者側の確認も必要です。 |
| 附属書区分は一度確認すれば変わらない。 | CITES附属書は改正され、追加、削除、区分変更、注釈変更が行われることがあります。 | 過去の取扱実績だけで判断しないようにします。 |
| 品名が一般的ならCITES対象ではない。 | 貿易書類上の品名ではなく、学名、原材料、原産国、加工状態で判断します。 | 「Sample」「Parts」「Decoration」などの一般品名に注意します。 |
| フォワーダーは附属書区分まで確認しなくてよい。 | 最終判断を行う立場でなくても、CITES対象の可能性を荷主に確認する必要があります。 | 見落とすとBooking後や通関直前に出荷停止となることがあります。 |
フォワーダー・通関業者が確認すべき事項
フォワーダーや通関業者は、荷主から輸出入や再輸出の依頼を受けた時点で、CITES附属書に該当する可能性を確認する必要があります。
| 確認場面 | 確認する相手 | 確認事項 | 問題がある場合の対応 |
|---|---|---|---|
| 輸出入依頼を受けたとき | 荷主・輸出者・輸入者 | 貨物に動植物由来素材が含まれていないかを確認します。 | 素材不明の場合は、メーカー資料や成分表を依頼します。 |
| 品名確認時 | 荷主・メーカー | 商品名だけでなく、学名、和名、英名、原材料名、成分、材質を確認します。 | 一般名称やブランド名だけで非該当判断をしません。 |
| 附属書確認時 | 荷主・申請担当者 | CITES附属書Ⅰ・Ⅱ・Ⅲのいずれかに掲載されていないかを確認します。 | 不明な場合は、申請窓口や専門資料で確認します。 |
| 原産国確認時 | 荷主・仕入先・メーカー | 原産国、出荷国、製造国、経由国が整理されているかを確認します。 | 附属書Ⅲでは掲載国との関係を確認します。 |
| 輸出・再輸出の切り分け時 | 荷主・通関業者 | 日本原産の輸出か、海外から輸入済み貨物の再輸出かを確認します。 | 輸出許可書と再輸出証明書を取り違えないようにします。 |
| 必要書類確認時 | 荷主・申請担当者・海外代理店 | CITES輸出許可書、再輸出証明書、CITES輸入許可書、原産地証明書のどれが必要かを確認します。 | 相手国側の事前許可や原本提示も確認します。 |
| 国内法令確認時 | 荷主・通関業者・申請担当者 | 輸出承認証、輸入承認証、事前確認書など国内法上の手続も必要でないかを確認します。 | CITES書類と国内承認書類を混同しないようにします。 |
| 船積書類確認時 | フォワーダー・通関業者 | インボイス、パッキングリスト、B/L、AWBの品名・数量・重量と許可書内容が一致しているかを確認します。 | 不一致があれば申告前に修正または補足資料を準備します。 |
| 原本管理時 | フォワーダー・海外代理店・輸入者 | 許可書原本を輸出通関・輸入通関で使用できるよう管理できているかを確認します。 | 書類別送の遅延や紛失を防ぐ段取りを決めます。 |
附属書は改正される
CITES附属書は固定されたリストではありません。附属書Ⅰ・Ⅱ・Ⅲの掲載種は、締約国会議などを通じて見直しが行われ、追加、削除、区分変更、注釈変更が行われることがあります。
そのため、過去に輸出入できた貨物であっても、現在も同じ手続で扱えるとは限りません。特に、木材、爬虫類皮革、サメ類、植物、化粧品原料、健康食品原料などでは、規制対象や注釈の変更に注意が必要です。
実務では、過去の取扱実績、古い社内資料、仕入先の説明だけで判断せず、最新のCITESリスト、経済産業省・環境省の案内、相手国側の規制を確認することが重要です。
CITESとは記事・輸出許可書記事・再輸出証明書記事との関係
CITESとは記事では、ワシントン条約の目的、対象となる動植物や製品、制度全体の概要を扱います。
本記事では、その中でも附属書Ⅰ・Ⅱ・Ⅲという分類に焦点を当て、どの区分に該当するかによって実務上何が変わるのかを整理します。
日本からCITES対象貨物を初めて輸出する場合は、CITES輸出許可書の記事で、申請書類、B/L・AWB番号、輸出通関時の原本提示、税関確認欄などを確認します。
海外から一度日本へ輸入されたCITES対象貨物を第三国へ出す場合は、CITES再輸出証明書の記事で、輸入時書類、輸入承認証、輸入許可通知書、販売証明書、譲渡証明書、国内流通経路を確認します。
まとめ
CITES附属書Ⅰ・Ⅱ・Ⅲは、ワシントン条約対象となる野生動植物を、規制の厳しさや国際取引管理の必要性に応じて分類したリストです。
附属書Ⅰは、商業目的の国際取引が原則禁止される厳しい区分です。附属書Ⅱは、商業取引が可能な場合がありますが、CITES輸出許可書やCITES再輸出証明書が必要となり、一部では輸出割当が問題になります。附属書Ⅲは、掲載国と原産国の関係によって、輸出許可書等や原産地証明書が問題になります。
実務では、品名だけで判断せず、学名、原産国、附属書区分、加工状態、取得経緯、輸出か再輸出か、輸入国側の規制を確認することが重要です。
フォワーダーや通関業者にとって、CITES附属書区分の確認は、単なる専門知識ではなく、船積み可否、通関可否、相手国での輸入可否に直結する実務確認です。附属書Ⅰ・Ⅱ・Ⅲの違いを理解し、必要書類と手続を早めに確認することが、CITES対象貨物を安全に取り扱う基本です。
