輸入ガス用品の安全規制
輸入ガス用品の安全規制とは
輸入ガス用品の安全規制とは、海外で製造された都市ガス用器具またはLPガス用器具を日本国内で販売する場合に、技術基準への適合、事業届出、自主検査、検査記録の保存、必要な適合性検査及び法定表示を求める制度です。
都市ガス用のガス用品には、ガス事業法に基づくPSTGマーク制度が適用されます。LPガス用の液化石油ガス器具等には、液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律に基づくPSLPGマーク制度が適用されます。
PSTGは、Product Safety of Town Gas Equipment and Appliancesの略称です。PSLPGは、Product Safety of Liquefied Petroleum Gas Equipment and Appliancesの略称です。
ガス器具は、使用するガスの種類、供給圧力、接続方式、燃焼方式、設置場所または換気条件が適切でない場合、一酸化炭素中毒、火災、爆発、異常燃焼、ガス漏れまたはやけど等の重大事故につながる可能性があります。
海外で合法的に販売されているガス器具や海外規格に適合した製品であっても、日本のガス種、圧力、接続方式、技術基準及び表示制度に適合していなければ、日本国内で販売できるとは限りません。
また、輸入許可を受けたことと、日本国内で販売できることは別の問題です。通関後であっても、必要な届出、検査、PSTGマークまたはPSLPGマーク、届出事業者名、使用ガス種、設置条件その他の表示が整っていなければ、販売または販売目的の陳列が制限されます。
この記事で扱う範囲
| 項目 | この記事で扱う内容 | 他記事で扱う内容 |
|---|---|---|
| 輸入ガス用品の基本 | 国内販売規制、輸入事業者の義務及び通関後の販売可否 | ガス事業全体の規制はガス事業法の制度解説で扱う |
| PSTGマーク | 都市ガス用のガス用品、特定ガス用品及び表示・検査義務 | 個別製品の詳細な技術基準は製品別の記事で扱う |
| PSLPGマーク | LPガス用の液化石油ガス器具等及び特定液化石油ガス器具等 | LPガス販売事業や供給設備の保安規制は別記事で扱う |
| 都市ガスとLPガスの区別 | 適用法令、マーク、ガス種、圧力及び接続方式の違い | 各地域の供給ガス種や施工方法はガス事業者等へ確認する |
| 輸入事業者の義務 | 事業届出、技術基準適合、自主検査、適合性検査、表示及び記録保存 | 輸入申告書の作成方法は通関書類・申告前確認で扱う |
| 海外からの直接販売 | 特定輸入事業者、国内管理人及び越境ECの確認事項 | オンラインモールの対応は輸入品と製品安全誓約で扱う |
| 他制度との関係 | 輸入品のPSCマーク、輸入品のPSEマーク及び通信関連規制との違い | 各制度の詳細は、それぞれの制度解説記事で扱う |
| 事故・リコール | 事故情報、販売停止、回収及び行政措置との関係 | 詳細は輸入品の重大製品事故、輸入品のリコール及び輸入品の製品事故情報報告制度で扱う |
| 物流関係者の役割 | フォワーダー、通関業者及び倉庫事業者の確認範囲 | 各事業者の法的賠償責任は関連する賠償事例記事で扱う |
輸入ガス用品規制の目的と背景
ガス用品規制の目的は、都市ガス用器具及びLPガス用器具の製造、輸入及び販売に関する安全性を確保し、一般消費者の生命または身体に危害が及ぶ事故を防止することです。
ガス器具は、燃料を燃焼させる製品であり、ガス漏れ、不完全燃焼、排気不良、異常燃焼または誤接続が発生すると、一酸化炭素中毒、火災または爆発等の重大事故につながります。
このため、法令で指定されたガス用品及び液化石油ガス器具等については、製造事業者または輸入事業者が国の定める技術基準への適合を確認し、自主検査を実施したうえで、PSTGマークまたはPSLPGマークを表示する必要があります。
特に災害発生のおそれが高い製品は、特定ガス用品または特定液化石油ガス器具等として区分されます。これらの製品には、届出事業者による自主検査に加えて、登録検査機関による適合性検査が必要です。
都市ガス用器具とLPガス用器具の法令区分
| 区分 | 主な根拠法令 | 法定マーク | 主な対象 | 実務上の重点 |
|---|---|---|---|---|
| 都市ガス用器具 | ガス事業法 | PSTGマーク | 都市ガス用の湯沸器、ストーブ、ふろがま、ふろバーナー、こんろ等 | 都市ガスの種類、供給圧力、燃焼方式、接続方式及び設置条件 |
| LPガス用器具 | 液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律 | PSLPGマーク | LPガス用の調整器、こんろ、湯沸器、ホース、ふろがま、ストーブ、ガス栓、ガストーチ等 | 容器との接続、調整器、ホース、ガス栓、供給圧力及び使用場所 |
同じ「ガスこんろ」「湯沸器」または「ストーブ」という商品名であっても、都市ガス用とLPガス用では、適用法令、法定マーク、技術基準及び使用条件が異なります。
ノズルや接続部品を交換すれば販売できるという単純な問題ではありません。製品設計、燃焼性能、安全装置、表示及び適合性検査の対象型式を含めて確認する必要があります。
特定ガス用品とその他のガス用品
ガス事業法では、製品安全行政上、都市ガス用の対象製品を、燃焼方式等に応じて特定ガス用品4品目と、特定ガス用品以外のガス用品4品目に区分しています。
| 区分 | 対象品目 | 主な対象例 | マーク | 検査の基本 |
|---|---|---|---|---|
| 特定ガス用品 | 半密閉燃焼式ガス瞬間湯沸器 | 半密閉式のガス瞬間湯沸器、ガス給湯暖房機等 | 菱形PSTGマーク | 自主検査に加え、登録検査機関による適合性検査 |
| 特定ガス用品 | 半密閉燃焼式ガスストーブ | 半密閉式の都市ガス用ストーブ | 菱形PSTGマーク | 自主検査に加え、登録検査機関による適合性検査 |
| 特定ガス用品 | 半密閉燃焼式ガスバーナー付ふろがま | 半密閉式の都市ガス用バーナー付ふろがま | 菱形PSTGマーク | 自主検査に加え、登録検査機関による適合性検査 |
| 特定ガス用品 | ガスふろバーナー | 都市ガス用のふろバーナー | 菱形PSTGマーク | 自主検査に加え、登録検査機関による適合性検査 |
| 特定ガス用品以外のガス用品 | 開放燃焼式、密閉燃焼式または屋外式のガス瞬間湯沸器 | 都市ガス用瞬間湯沸器、給湯機等 | 丸形PSTGマーク | 技術基準適合確認及び自主検査 |
| 特定ガス用品以外のガス用品 | 開放燃焼式、密閉燃焼式または屋外式のガスストーブ | 都市ガス用ストーブ等 | 丸形PSTGマーク | 技術基準適合確認及び自主検査 |
| 特定ガス用品以外のガス用品 | 密閉燃焼式または屋外式のガスバーナー付ふろがま | 密閉式または屋外式の都市ガス用ふろがま | 丸形PSTGマーク | 技術基準適合確認及び自主検査 |
| 特定ガス用品以外のガス用品 | ガスこんろ | 家庭用の都市ガスこんろ等 | 丸形PSTGマーク | 技術基準適合確認及び自主検査 |
菱形PSTGマークと丸形PSTGマークの違いは、単なるデザインの違いではありません。特定ガス用品では、登録検査機関による適合性検査と適合性証明書の保存が必要です。
特定液化石油ガス器具等とその他の液化石油ガス器具等
液石法では、2025年2月6日に携帯液化石油ガス用バーナーが追加されたことにより、製品安全行政上、特定液化石油ガス器具等8品目と、その他の液化石油ガス器具等9品目が規制対象として整理されています。
| 区分 | 対象品目 | 主な対象例 | マーク | 検査の基本 |
|---|---|---|---|---|
| 特定液化石油ガス器具等 | カートリッジガスこんろ | カセットこんろ等 | 菱形PSLPGマーク | 自主検査に加え、登録検査機関による適合性検査 |
| 特定液化石油ガス器具等 | 半密閉式液化石油ガス用瞬間湯沸器 | 半密閉式のLPガス用湯沸器等 | 菱形PSLPGマーク | 自主検査に加え、登録検査機関による適合性検査 |
| 特定液化石油ガス器具等 | 半密閉式液化石油ガス用バーナー付ふろがま | 半密閉式のLPガス用ふろがま | 菱形PSLPGマーク | 自主検査に加え、登録検査機関による適合性検査 |
| 特定液化石油ガス器具等 | ふろがま | LPガス用ふろがま | 菱形PSLPGマーク | 自主検査に加え、登録検査機関による適合性検査 |
| 特定液化石油ガス器具等 | 液化石油ガス用ふろバーナー | LPガス用のふろバーナー | 菱形PSLPGマーク | 自主検査に加え、登録検査機関による適合性検査 |
| 特定液化石油ガス器具等 | 半密閉式液化石油ガス用ストーブ | 半密閉式のLPガス用ストーブ | 菱形PSLPGマーク | 自主検査に加え、登録検査機関による適合性検査 |
| 特定液化石油ガス器具等 | 液化石油ガス用ガス栓 | LPガス用ガス栓 | 菱形PSLPGマーク | 自主検査に加え、登録検査機関による適合性検査 |
| 特定液化石油ガス器具等 | 携帯液化石油ガス用バーナー | カセットボンベ等に接続する対象ガストーチ | 菱形PSLPGマーク | 自主検査に加え、登録検査機関による適合性検査 |
| 特定液化石油ガス器具等以外 | 調整器 | LPガス用調整器 | 丸形PSLPGマーク | 技術基準適合確認及び自主検査 |
| 特定液化石油ガス器具等以外 | 一般ガスこんろ | 一般家庭用のLPガスこんろ | 丸形PSLPGマーク | 技術基準適合確認及び自主検査 |
| 特定液化石油ガス器具等以外 | 開放式、密閉式または屋外式の液化石油ガス用瞬間湯沸器 | LPガス用湯沸器等 | 丸形PSLPGマーク | 技術基準適合確認及び自主検査 |
| 特定液化石油ガス器具等以外 | 液化石油ガス用継手金具付高圧ホース | LPガス用高圧ホース | 丸形PSLPGマーク | 技術基準適合確認及び自主検査 |
| 特定液化石油ガス器具等以外 | 密閉式または屋外式の液化石油ガス用バーナー付ふろがま | 密閉式または屋外式のLPガス用ふろがま | 丸形PSLPGマーク | 技術基準適合確認及び自主検査 |
| 特定液化石油ガス器具等以外 | 開放式、密閉式または屋外式の液化石油ガス用ストーブ | LPガス用ストーブ等 | 丸形PSLPGマーク | 技術基準適合確認及び自主検査 |
| 特定液化石油ガス器具等以外 | 液化石油ガス用ガス漏れ警報器 | LPガス用警報器 | 丸形PSLPGマーク | 技術基準適合確認及び自主検査 |
| 特定液化石油ガス器具等以外 | 液化石油ガス用継手金具付低圧ホース | LPガス用低圧ホース | 丸形PSLPGマーク | 技術基準適合確認及び自主検査 |
| 特定液化石油ガス器具等以外 | 液化石油ガス用対震自動ガス遮断器 | 地震時にガスを遮断する装置 | 丸形PSLPGマーク | 技術基準適合確認及び自主検査 |
PSTGマークとPSLPGマークの違い
| 項目 | PSTGマーク | PSLPGマーク | 輸入実務上の注意点 |
|---|---|---|---|
| 根拠法令 | ガス事業法 | 液石法 | 燃料の種類だけでなく、法令上の製品定義を確認する |
| 主な燃料 | 都市ガス | LPガス、カセットボンベ等 | ガス種、供給圧力及び接続方式を取り違えない |
| 対象製品 | 都市ガス用の湯沸器、ストーブ、ふろがま、ふろバーナー、こんろ | LPガス用のこんろ、湯沸器、ホース、ふろがま、ガス栓、警報器、ガストーチ等 | 同じ商品名でも適用制度が異なる |
| 菱形マーク | 特定ガス用品 | 特定液化石油ガス器具等 | 登録検査機関による適合性検査が必要 |
| 丸形マーク | 特定ガス用品以外のガス用品 | 特定液化石油ガス器具等以外の液化石油ガス器具等 | 第三者検査がなくても自主検査と記録保存は必要 |
| 表示 | PSTGマーク、届出事業者名、ガス種、定格等 | PSLPGマーク、届出事業者名、ガス種、定格等 | マーク画像だけでなく周辺表示を確認する |
日本仕様と海外仕様で確認すべき違い
| 確認項目 | 確認内容 | 主な資料 | 事故・販売上のリスク |
|---|---|---|---|
| 燃料の種類 | 都市ガス用か、LPガス用か | 仕様書、銘板、取扱説明書 | 誤った燃料による異常燃焼、火災または一酸化炭素発生 |
| 都市ガスの種類 | 日本国内で供給されるガス種に対応するか | ガス種表示、燃焼試験資料 | 燃焼不良、過大炎または不完全燃焼 |
| 供給圧力 | 日本国内の供給条件に対応するか | 定格資料、試験報告書 | 点火不良、異常燃焼または機器損傷 |
| 接続方式 | ガス栓、ホース、調整器及び接続金具が日本仕様か | 図面、接続部品仕様、製品写真 | ガス漏れ、誤接続または抜け外れ |
| 燃焼方式 | 開放式、半密閉式、密閉式または屋外式のいずれか | 構造図、排気方式資料 | 誤った区分による対象判定及び設置条件の誤り |
| 設置場所 | 屋内用か屋外用か | 設置説明書、試験条件 | 排気不良、雨水侵入または一酸化炭素中毒 |
| 換気・排気 | 必要な換気量、排気筒及び設置距離 | 施工説明書、警告表示 | 不完全燃焼、一酸化炭素滞留または火災 |
| 電気部品 | 電源コード、ACアダプター、制御基板、通信機能等 | 回路図、セット構成表 | PSE、電波法その他の規制を見落とす |
| 日本語表示 | 使用ガス種、警告、設置条件及び操作方法 | 銘板案、取扱説明書、施工説明書 | 誤使用、誤施工または販売停止 |
近年の改正・施行日・経過措置
| 日付・区分 | 変更内容 | 経過措置・現在の取扱い | 実務上の対応 |
|---|---|---|---|
| 2025年2月6日 | 携帯液化石油ガス用バーナーが特定液化石油ガス器具等へ追加された | 2026年2月5日まで、施行日から1年間の経過措置が設けられた | 対象となるガストーチの構造、適合性検査及び菱形PSLPGマークを確認する |
| 2026年2月6日 | 対象ガストーチに関する1年間の経過措置が終了した | 同日以降に販売する対象製品には菱形PSLPGマークが必要 | 旧在庫、中古品、出品中の商品を含めて表示及び販売可否を確認する |
| 2025年12月25日 | 国内消費者へ対象製品を直接販売する海外事業者が特定輸入事業者として規制対象となった | 海外事業者は国内管理人を選任し、届出その他の義務を履行する | 越境EC、海外直送及びオンラインモールでの販売主体を確認する |
| 対象品目・技術基準改正時 | 政令、省令または技術基準の改正により対象範囲等が変更される場合がある | 改正ごとに施行日または経過措置が定められる場合がある | 発注時だけでなく、輸入時及び販売開始時にも最新情報を確認する |
| 型式・工場・部品変更時 | 既存の試験または証明書の適用範囲が変わる可能性がある | 変更内容により再試験または再度の適合性検査が必要となる | 既存証明書を自動的に流用せず、登録検査機関へ確認する |
輸入ガス用品規制が適用される主な場面
| 場面 | 制度との関係 | 主な責任主体 | 確認の重点 |
|---|---|---|---|
| 海外製の都市ガス器具を輸入して国内販売する | ガス事業法上の輸入事業者の義務が問題になる | 輸入販売者 | 対象品目、燃焼方式、PSTGマーク、届出及び検査 |
| 海外製のLPガス器具を輸入して国内販売する | 液石法上の輸入事業者の義務が問題になる | 輸入販売者 | 対象品目、PSLPGマーク、接続方式及び検査 |
| ガストーチを輸入してECサイトで販売する | 特定液化石油ガス器具等として菱形PSLPGマークが問題になる | 輸入販売者、出品者 | 製品定義、適合性検査、表示及び旧在庫 |
| クラウドファンディングでガス器具を提供する | 返礼品等の名称でも実質的な販売・供給関係を確認する | 企画者、輸入者、販売者 | 輸入主体、提供時期、数量及び販売開始条件 |
| 海外事業者が国内消費者へ直接販売する | 特定輸入事業者及び国内管理人の制度が問題になる | 海外販売者、国内管理人 | 届出、技術基準、検査、表示及び事故対応 |
| 中古のガス器具を販売する | 中古品でも販売制限及び法定表示の確認が必要になる | 中古販売事業者 | 製造時期、法定表示、改造及び製品状態 |
| 輸入後に国内倉庫でラベルを貼付する | 販売開始前に適法な表示を完了する必要がある | 輸入販売者、倉庫事業者 | 表示主体、作業指示、ロット管理及び再検品 |
| 都市ガス用器具をLPガス用として転用する | 適用法令、技術基準及び証明書の範囲が変わる | 輸入販売者、改造事業者 | 単なる部品交換で販売可能とは判断しない |
| 電気制御部または無線機能付きガス器具を販売する | PSTGまたはPSLPG以外の法令も重複する可能性がある | 輸入販売者 | PSE、電波法、電気通信事業法等の確認 |
法定マークを表示するための要件
| 要件 | 確認内容 | 主な資料 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 対象製品の判定 | 法令上のガス用品または液化石油ガス器具等に該当するか | 仕様書、図面、燃焼方式資料 | 商品名やHSコードだけで確定しない |
| 燃料区分 | 都市ガス用かLPガス用か | 銘板、仕様書、試験報告書 | PSTGとPSLPGを取り違えない |
| 事業届出 | 製造または輸入事業の届出が行われているか | 事業届出書、提出記録 | 製品区分追加、変更または事業承継時も確認する |
| 技術基準適合 | 日本の現行技術基準へ適合しているか | 試験報告書、設計資料、部品表 | 海外規格への適合だけで確定しない |
| 適合性検査 | 特定製品について登録検査機関の検査を受けているか | 適合性証明書、検査申請書 | 型式、製造工場及び証明範囲を確認する |
| 自主検査 | 製造または輸入した製品について必要な検査を実施したか | 検査手順、検査記録、ロット記録 | 型式試験と法定の自主検査を混同しない |
| 検査記録保存 | 必要事項を記録し、追跡可能な状態で保存しているか | 検査台帳、輸入記録、電子記録 | 事故時に製品ロットを特定できるようにする |
| 法定表示 | 正しいマーク、届出事業者名、ガス種及び定格等が表示されているか | 製品写真、銘板案、検品記録 | マークのシールを貼るだけでは足りない |
| 日本語資料 | 取扱説明書、施工説明書、警告及び換気条件が整備されているか | 説明書、ラベル、販売ページ | 一般消費者と施工者の双方が理解できる内容にする |
| 販売後管理 | 事故、苦情、製品ロット及び販売先を追跡できるか | 販売台帳、顧客記録、事故対応手順 | 法定マーク表示後も安全確保は継続する |
対象外・例外・個別確認が必要となる場面
| 場面 | 基本的な考え方 | 必要な確認 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 法令上の対象製品定義に該当しない製品 | 対象範囲外であればPSTGまたはPSLPG制度の対象外となる | 用途、構造、燃焼方式、ガス消費量及び定格 | 商品名だけで対象外と判断しない |
| 個人の自己使用目的による輸入 | 事業としての輸入販売とは異なるが、反復輸入や転売で評価が変わる可能性がある | 数量、頻度、使用目的及び販売予定 | 個人輸入品をそのまま転売できるとは限らない |
| 輸出専用品 | 国内販売を行わない場合に別の取扱いが問題になる | 輸出先、国内流通の有無及び必要な届出 | 国内販売へ転用する場合は通常の義務を確認する |
| 試験・評価目的の輸入 | 一般消費者への販売とは異なる取扱いとなる場合がある | 数量、目的、販売の有無及び返送・廃棄方法 | サンプル通関の実績は本販売の適法性を保証しない |
| 業務用・産業用と表示された製品 | 販売上の名称だけで直ちに対象外とはならない | 実際の用途、使用者、構造及び法令上の定義 | 「業務用」の表示だけで規制を回避しない |
| 組込部品または補修用部品 | 単体販売か完成品への組込みかにより確認事項が異なる | 販売形態、単体機能及び供給先 | 部品という名称だけで一律に対象外としない |
| 中古ガス器具 | 法定表示、製造時期、改造及び安全状態を確認する必要がある | 銘板、製造番号、修理・改造履歴 | 中古品だから無表示で販売できるとは限らない |
| 経過措置対象在庫 | 改正ごとの条件を満たす場合に限り旧在庫を販売できることがある | 製造日、輸入日、型式、ロット及び販売日 | 日付を立証できない在庫は判断が困難になる |
他の製品安全・通信規制との違い
| マーク・制度 | 根拠法令 | 主な対象 | 主な確認内容 | 輸入ガス用品との関係 |
|---|---|---|---|---|
| PSTGマーク | ガス事業法 | 都市ガス用の指定ガス用品 | 技術基準、届出、検査、表示及び記録 | 都市ガス用器具の中心的な規制 |
| PSLPGマーク | 液石法 | LPガス用の指定器具等 | 技術基準、届出、検査、表示及び記録 | LPガス用器具の中心的な規制 |
| PSCマーク | 消費生活用製品安全法 | ライター、乗車用ヘルメット、圧力なべ、子供用特定製品等 | 技術基準、検査及び製品区分に応じた表示 | 輸入品のPSCマークとして別に確認する |
| PSEマーク | 電気用品安全法 | 電源コード、ACアダプター、電気部品等 | 技術基準、届出、自主検査及び表示 | 電源を使用するガス器具では輸入品のPSEマークも確認する |
| 技適マーク | 電波法 | 無線リモコン、Wi-Fi、Bluetooth等 | 無線設備の技術基準及び認証 | 通信機能付きガス器具では別途確認する |
| 重大製品事故報告 | 消費生活用製品安全法 | 一般消費者が使用するガス器具を含む消費生活用製品 | 事故の内容、報告期限及び事故原因 | 販売後の事故は輸入品の重大製品事故等で確認する |
輸入販売者の義務フロー
- 製品の用途、構造、燃料、燃焼方式及び定格を確定する
- 都市ガス用かLPガス用かを確認する
- 法令上のガス用品または液化石油ガス器具等に該当するか確認する
- 特定ガス用品または特定液化石油ガス器具等に該当するか確認する
- 国内の輸入事業者または特定輸入事業者となる者を確定する
- 必要な事業届出を行う
- 海外メーカーから仕様書、図面、部品表及び試験資料を取得する
- 日本のガス種、供給圧力、接続方式及び現行技術基準への適合を確認する
- 特定製品について登録検査機関による適合性検査を受ける
- 適合性証明書の型式、製造工場及び対象範囲を確認する
- 自主検査を実施し、検査記録を作成・保存する
- 正しいPSTGマークまたはPSLPGマークを表示する
- 届出事業者名、登録検査機関に関する表示、ガス種及び定格等を確認する
- 取扱説明書、施工説明書、警告表示及び換気条件を日本向けに整備する
- 製品、包装、説明書及び販売ページを照合する
- 販売前検品を行い、型式及びロットを識別できる状態にする
- 販売後の事故情報、修理、点検、回収及び行政報告の体制を整える
海外メーカーがPSTG対応またはPSLPG対応と説明していても、輸入販売者は、対象型式、試験内容、製造工場、表示主体及び検査記録を自ら確認する必要があります。
輸入前に取得しておく資料
| 資料 | 確認目的 | 確認内容 | 不足時の対応 |
|---|---|---|---|
| 製品仕様書 | 対象製品及び定格の確認 | 燃料、用途、ガス消費量、圧力、構造及び燃焼方式 | 型式ごとの正式仕様をメーカーへ照会する |
| 構造図・設計図 | 燃焼部、排気部及び安全装置の確認 | バーナー、熱交換器、排気、点火及び遮断装置 | 必要な技術資料を追加取得する |
| 部品表 | 安全重要部品及び変更管理 | ノズル、弁、調整器、ホース、センサー等 | 安全重要部品を特定し、仕様を固定する |
| 試験報告書 | 技術基準適合の確認 | 試験基準、ガス種、圧力、型式、試験所及び試験日 | 日本基準との差分試験を検討する |
| 適合性証明書 | 特定製品の適合性検査確認 | 登録検査機関、型式、工場及び証明範囲 | 登録検査機関へ有効性を確認する |
| 自主検査手順書 | 輸入者の検査体制確認 | 検査項目、検査単位、判定基準及び担当者 | 輸入ロットに対応する検査工程を構築する |
| 表示案 | 法定表示及び警告確認 | マーク、事業者名、ガス種、定格、注意事項 | 量産及び船積み前に日本向け表示を確定する |
| 取扱説明書・施工説明書 | 使用及び設置条件の確認 | 換気、排気、接続、設置距離及び禁止事項 | 日本語版を作成し、実物仕様と照合する |
| 製造・輸入ロット資料 | 追跡及び事故対応 | 製造日、輸入日、数量、型式及び製造工場 | ロット番号及び在庫管理方法を整備する |
表示で確認すべき事項
- 都市ガス用かLPガス用かが明確に表示されているか
- PSTGマークまたはPSLPGマークの選択が正しいか
- 特定製品には菱形マークが表示されているか
- その他の対象製品には丸形マークが表示されているか
- 届出事業者の氏名または名称が正しく表示されているか
- 特定製品について必要な登録検査機関の表示があるか
- 使用ガス種、ガス消費量、供給圧力及び定格が適切か
- 屋内用、屋外用及び燃焼方式の表示が適切か
- 換気、排気、設置距離及び接続に関する警告があるか
- 製品、包装、取扱説明書、施工説明書及び販売ページが一致しているか
- 表示が見やすく、容易に消えない方法で付されているか
- 異なるガス種、型式または法定マークの在庫が混在していないか
PSTGマークまたはPSLPGマークの画像が製品に印刷されていても、届出、技術基準適合、自主検査、必要な適合性検査及び記録保存が行われていなければ、適法な表示とはいえません。
輸入販売者が確認すべき事項
- 製品が都市ガス用かLPガス用か
- 法令上の対象品目及び型式区分を特定できているか
- 特定ガス用品または特定液化石油ガス器具等に該当するか
- 事業届出が完了しているか
- 日本の技術基準への適合を説明できる資料があるか
- 登録検査機関による適合性検査が必要か
- 適合性証明書の型式及び製造工場が一致しているか
- 自主検査及び検査記録の作成・保存を行えるか
- PSTGマークまたはPSLPGマーク、届出事業者名及び定格表示が適切か
- 日本のガス種、圧力、接続方式及び設置条件に対応しているか
- 電源コード、ACアダプター、無線機能等の他法令を確認したか
- 日本語の取扱説明書、施工説明書及び警告表示が整備されているか
- 販売後の事故報告、点検、修理、回収及びリコール体制があるか
フォワーダーが確認すべき事項
フォワーダーは、通常、ガス用品の対象判定や技術基準適合を最終判断する立場ではありません。
一方で、貨物の品名、用途、燃料、付属品及び販売予定から、ガス用品規制の対象となる可能性を把握した場合には、輸入者へ確認を促すことが重要です。
- 貨物がガスこんろ、湯沸器、ストーブ、ふろがま、バーナー、ガストーチ等でないか
- 都市ガス用かLPガス用かが整理されているか
- 日本国内で販売または提供される予定か
- PSTGマークまたはPSLPGマークの確認を輸入者が行っているか
- ホース、調整器、ガス栓、電源コードまたはACアダプターが付属するか
- 危険品輸送規則、PSE、PSC、電波法その他の規制が重複しないか
- 通関後に検査、ラベル貼付、再梱包または説明書差し替えが予定されているか
- 販売開始日と検査・表示作業の日程が整合しているか
フォワーダーが確認を促したことだけで、輸入販売者の法令上の義務がフォワーダーへ移転するわけではありません。
フォワーダーの関与範囲対比
以下の五分類は、法令上または業界全体で確立された分類ではなく、本シリーズにおいてフォワーダーの関与範囲を整理するために使用する分析上の枠組みです。
| 分類 | 輸入ガス用品実務への主な関与 | 通常確認する事項 | 原則として含まれない判断 |
|---|---|---|---|
| Simple Intermediary(単純取次) | 輸送予約、連絡及び書類授受の補助 | 品名、輸入者、燃料区分、販売予定及び必要書類 | 対象品目の最終判定または技術基準適合の保証 |
| Cargo Transportation Service Provider(貨物利用運送事業者) | 輸送サービスの提供及び関連事業者の手配 | 輸送日程、検査場所、表示作業場所及び貨物取扱条件 | 輸入事業者としての届出、検査または表示義務の引受け |
| NVOCC / House B/L Issuer | 運送契約主体として海上運送または複合運送を引き受ける | 運送書類、貨物情報及び法令確認を行う主体 | House B/L発行だけを理由とする製品安全適合責任 |
| Door-to-Door Single Contractor | 集荷から納品までの物流工程を一体的に調整する | 検査、表示、保管、納品条件及び遅延影響 | 契約に含まれない法令判定または製品認証の保証 |
| Agent/Coordinator for Specific Operations(特定業務の代理・調整者) | 検査予約、ラベル貼付、倉庫作業等の個別調整 | 委任された作業、作業指示及び完了記録 | 委任されていない届出、試験または販売可否判断 |
Contracting Carrier及びActual Carrierは、法的または契約上の地位を示す概念であり、上記五分類を置き換えるものではありません。
検品、ラベル貼付、保管、再梱包または国内配送等の実作業は、それ自体で第六の分類を構成しません。実際の責任範囲は、契約、見積条件、作業指示、約款及び実際の対応内容から判断します。
通関業者が確認すべき事項
- インボイス品名及び商品資料からガス用品の可能性がないか
- 都市ガス用かLPガス用かが確認されているか
- HSコードだけでなく、燃料、用途、燃焼方式及びガス消費量の確認が必要でないか
- 輸入者が販売目的で反復継続して輸入する貨物でないか
- 輸入者が届出、技術基準、検査及び表示を確認しているか
- ホース、調整器、ガス栓、電気部品等が別の規制対象でないか
- PSC、PSE、電波法、家庭用品品質表示法その他の規制が重複しないか
- 通関後に検査、表示または再梱包を行う予定があるか
- 輸入者が輸入許可と国内販売の適法性を混同していないか
輸入許可は、関税法上の輸入申告手続が完了したことを示すものであり、ガス事業法または液石法を含む国内販売規制への適合を包括的に保証するものではありません。
海外事業者による直接販売
2025年12月25日以降、海外事業者が、日本国内の輸入事業者を介さず、オンラインモール、自社ECサイトその他の方法によりPSTGまたはPSLPG対象製品を国内消費者へ直接販売する場合には、特定輸入事業者としての規制が問題になります。
特定輸入事業者は、日本国内に国内管理人を選任し、事業届出、技術基準への適合確認、自主検査、必要な適合性検査、表示、記録保存及び事故対応等を行う必要があります。
| 確認項目 | 海外事業者 | 国内管理人 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|---|
| 事業届出 | 特定輸入事業者として必要な情報及び資料を準備する | 国内での届出及び行政連絡を補助する | 海外事業者の承諾及び資料なく国内管理人だけで届出しない |
| 技術基準 | 設計資料、試験報告書及び製造情報を提供する | 資料を国内で確認・保存できる体制を整える | 行政からの照会に日本語で対応できる必要がある |
| 自主検査 | 製品及びロットに対応した検査体制を構築する | 検査記録を国内で提示できる状態にする | 海外工場の品質検査と法定自主検査を混同しない |
| 表示 | 日本向け製品へ正しいマーク及び表示を反映する | 国内販売品の表示状況を確認する | 海外サイトの商品画像と日本向け実物を一致させる |
| 事故対応 | 事故情報、製造ロット及び販売先情報を提供する | 国内で資料提出、消費者連絡及び回収等を行う | 連絡不能や記録不足を防ぐ体制が必要になる |
海外から直接発送すること、日本国内に法人を持たないこと、または代金を海外で受領することだけで、日本の製品安全規制が適用されなくなるわけではありません。
通関できても販売できない主なケース
| ケース | 主な原因 | 確認資料 | 判断のポイント | 初動対応 |
|---|---|---|---|---|
| 都市ガス用こんろをLPガス用として輸入した | 燃料区分を確認せず商品名だけで発注した | 仕様書、銘板、試験報告書 | 設計上の対応ガス種及び適用法令 | 販売を停止し、対象在庫を隔離する |
| 半密閉式湯沸器に丸形PSTGマークを表示した | 燃焼方式及び特定ガス用品区分を誤った | 構造図、対象品目資料、製品写真 | 適合性検査及び菱形表示が必要か | 表示と検査体制を全面的に確認する |
| 海外仕様のガス器具が日本の供給圧力に対応しない | 海外市場向け仕様をそのまま輸入した | 定格資料、燃焼試験、ガス種資料 | 日本の使用条件で安全に燃焼するか | 販売を保留し、日本仕様への適合を確認する |
| 対象ガストーチに菱形PSLPGマークがない | 2026年2月6日の経過措置終了を確認していなかった | 製造日、輸入日、製品構造、表示写真 | 携帯液化石油ガス用バーナーに該当するか | 出品・出荷を停止し、対象判定を行う |
| 適合性証明書の工場と実際の製造工場が異なる | 製造工場変更を確認していなかった | 証明書、工場情報、製造記録 | 実際の製品が証明範囲に含まれるか | 登録検査機関へ確認し、必要な再検査を行う |
| 届出事業者名が表示されていない | 海外メーカー名だけで足りると誤解した | 製品銘板、事業届出書、販売ページ | 日本の届出事業者が適切に表示されているか | 販売を保留し、適法な表示へ修正する |
| 電源を使用するガス器具でPSTGだけを確認した | PSEまたは電波法を見落とした | 回路図、電源部品資料、無線仕様 | 他の製品安全・通信規制が重複するか | 関係制度の確認が終わるまで販売を止める |
| 海外事業者が国内消費者へ直接発送している | 特定輸入事業者制度を確認していなかった | 販売ページ、配送記録、国内管理人資料 | 国内消費者への直接販売に該当するか | 新規販売を停止し、国内管理人及び届出体制を整える |
行政措置・罰則との関係
ガス用品規制への違反は、単なるラベルの修正だけで終了するとは限りません。違反内容、危険性、販売数量、事故発生の有無及び事業者の対応状況に応じて、行政上または刑事上の措置が問題になります。
| 措置 | 主な対象場面 | 事業者への影響 | 実務上の対応 |
|---|---|---|---|
| 改善命令 | 技術基準適合、自主検査または記録保存等が適切に行われていない場合 | 製造方法、輸入方法、検査体制その他の改善を命じられる可能性がある | 対象型式、ロット、原因及び是正計画を整理する |
| 表示の禁止 | 技術基準、自主検査または適合性検査に関する違反がある場合 | 一定期間、対象製品へのPSマーク表示を禁止される可能性がある | 表示及び販売を停止し、対象製品を特定する |
| 危険等防止命令 | 無表示品、基準不適合品その他の危険な製品の流通防止が必要な場合 | 回収、販売停止、消費者への周知等を命じられる可能性がある | 販売先追跡、在庫隔離、消費者連絡及び回収体制を整える |
| 報告徴収 | 法令遵守状況または事故原因の確認が必要な場合 | 業務、検査、販売及び事故対応に関する報告を求められる | 記録を改変せず、時系列で整理して提出する |
| 立入検査・製品提出 | 事業所、倉庫または店舗で製品や記録を確認する必要がある場合 | 帳簿、設備、製品及び検査記録等が確認対象となる | 対象資料の所在及び管理担当者を明確にする |
| 違反情報の公表 | 行政処分または消費者への注意喚起が必要な場合 | 信用低下、取引停止またはEC出品停止等につながる可能性がある | 対象製品、事実関係及び消費者窓口を統一する |
| 刑事罰 | 販売制限、表示制限、表示禁止命令または危険等防止命令等への違反 | 違反類型により、拘禁刑、罰金またはその併科が問題になる | 直ちに販売を停止し、専門家へ相談する |
必要なPSTGマークまたはPSLPGマークが付されていない対象製品を販売し、または販売目的で陳列した場合等には、違反類型により、1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金またはその併科が問題になります。
事業届出、自主検査、検査記録、報告、立入検査その他の義務違反についても、それぞれ罰金等が定められています。具体的な適用条文及び罰則は、ガス事業法または液石法のどちらが適用されるかを含め、違反行為ごとに確認する必要があります。
事故・リコールとの関係
ガス用品は、一酸化炭素中毒、火災、爆発、異常燃焼、ガス漏れまたはやけど等の重大事故につながる可能性があります。
販売後に事故または不具合が判明した場合には、販売停止、原因調査、消費者への注意喚起、無償修理、交換、回収またはリコール等が必要になる場合があります。
ガス用品が消費生活用製品に該当し、重大製品事故が発生した場合には、輸入事業者等に国への報告義務が生じる場合があります。
輸入販売者は、製品型式、製造ロット、輸入時期、販売先、設置先、事故情報、修理履歴及び海外メーカーとの連絡記録を追跡できる体制を整える必要があります。
PSTGマークまたはPSLPGマークを適法に表示していたとしても、販売後の製品安全確保や事故対応の責任がなくなるわけではありません。
具体例1:海外製ガスこんろの燃料区分を取り違えた場合
輸入販売者が、海外メーカーから家庭用ガスこんろを調達し、日本国内で販売しようとしたとします。担当者は商品名だけを確認し、都市ガス用かLPガス用かを明確にしないまま発注しました。
輸入後に製品仕様を確認したところ、製品はLPガス用に設計されていましたが、販売ページでは都市ガス用として案内されていました。
この場合、表示だけを都市ガス用へ変更して販売することはできません。ノズル、燃焼性能、供給圧力、安全装置、接続方式及び適合する技術基準が異なるためです。
販売を停止し、対象在庫を隔離したうえで、適用されるPSLPG制度、製品仕様及び証明書を確認します。都市ガス用として販売する場合には、日本の都市ガス仕様に適合した別型式を調達することが基本となります。
具体例2:半密閉式湯沸器を丸形PSTG対象と誤認した場合
海外製のガス瞬間湯沸器について、輸入販売者が一般的な湯沸器として丸形PSTGマークの対象と判断したとします。
しかし、構造図を確認すると、製品は半密閉燃焼式でした。半密閉燃焼式ガス瞬間湯沸器は特定ガス用品であり、菱形PSTGマークの対象です。
この場合、届出事業者による技術基準適合確認及び自主検査だけでなく、登録検査機関による適合性検査と適合性証明書の保存が必要になります。
輸入後に区分誤りが判明した場合は、販売を開始せず、対象型式、製造工場、試験資料及び証明書の取得可能性を登録検査機関と確認する必要があります。
具体例3:経過措置終了後に無表示のガストーチを販売しようとした場合
輸入販売者が、2025年中に仕入れたガストーチを、2026年2月6日以降もオンラインモールで販売しようとしたとします。
対象となる携帯液化石油ガス用バーナーについては、2025年2月6日に規制が開始され、2026年2月5日までの1年間の経過措置終了後、2026年2月6日から販売する対象製品に菱形PSLPGマークが必要です。
「経過措置期間中に輸入した在庫である」という理由だけで、経過措置終了後も無条件に販売できるとは限りません。
製品の構造、製造日、輸入日、適合性検査、法定表示及び販売予定日を確認し、対象製品に必要な菱形PSLPGマークがない場合には、出品及び出荷を停止する必要があります。
具体例4:海外事業者が日本へ直接販売する場合
海外メーカーが日本語のECサイトを運営し、日本の消費者から注文を受け、ガストーチやガスこんろを海外倉庫から直接発送するとします。
2025年12月25日以降、この販売が国内消費者への直接販売に該当する場合、海外事業者は特定輸入事業者としての義務を確認し、国内管理人を選任する必要があります。
国内管理人は、単に名称を貸す者ではありません。行政との連絡、資料保存、報告徴収や立入検査への対応、事故情報の収集及び回収等を国内で実施できる体制が必要です。
海外事業者、国内管理人、ECモール運営者及び物流事業者の役割を区別し、誰が届出、技術基準適合、自主検査、適合性検査、表示及び事故対応を行うのかを明確にする必要があります。
よくある誤解
| 誤解 | 実際の考え方 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| 輸入通関できたガス器具は、そのまま国内販売できる | 輸入許可と国内販売規制への適合は別の問題である | 販売開始前に届出、検査及び表示を確認する |
| PSTGまたはPSLPGのシールを貼れば販売できる | 必要な義務を履行した届出事業者だけが表示できる | 表示の根拠となる技術資料及び検査記録を整える |
| 海外のガス安全規格に適合していれば日本でも販売できる | 海外規格への適合と日本法への適合は別である | 日本のガス種、圧力、接続方式及び技術基準を確認する |
| 都市ガス用とLPガス用はノズルを交換すれば同じである | 適用法令、技術基準、型式及び証明書が異なる | 部品交換だけで販売可能と判断しない |
| 丸形マークの製品は第三者検査がないため検査不要である | 適合性検査が不要でも自主検査は必要である | 自主検査記録を作成・保存する |
| 海外メーカーが法定マークを印刷していれば問題ない | 日本の届出事業者の義務履行及び表示主体を確認する必要がある | 海外メーカー名と届出事業者名を混同しない |
| サンプルとして輸入できたため、本販売も可能である | 試験目的と一般消費者への販売は別に判断される | 本販売前に通常の義務を履行する |
| 業務用と表示すればガス用品規制の対象外になる | 法令上の定義、構造及び実際の用途から判断される | 販売上の名称だけで対象外としない |
| 中古品はPSTGまたはPSLPG規制の対象外である | 中古品でも販売制限及び表示確認が必要となる場合がある | 製造時期、表示、改造及び製品状態を確認する |
| ガストーチはキャンプ用品なので製品安全規制の対象外である | 対象となる携帯液化石油ガス用バーナーは液石法の規制を受ける | 2026年2月6日以降の販売では菱形PSLPGマークを確認する |
| 海外から直接発送すれば日本の規制は適用されない | 国内消費者への直接販売では特定輸入事業者制度が問題になる | 国内管理人、届出及び販売後対応体制を整える |
| フォワーダーが輸送したため、製品安全適合責任も負う | 輸入販売者の法令上の義務と物流事業者の業務範囲は別である | 契約、委任内容及び実際の作業範囲を確認する |
判断チェックリスト
| 確認場面 | 確認する相手 | 確認事項 | 問題がある場合の対応 |
|---|---|---|---|
| 商品企画時 | 商品企画担当者、メーカー | 用途、燃料、燃焼方式、ガス消費量及び販売方法 | 対象判定が完了するまで発注を保留する |
| 発注前 | 海外メーカー、試験機関 | 仕様書、構造図、部品表及び試験報告書 | 不足資料及び追加試験を明確にする |
| 燃料区分確認時 | メーカー、ガス関係事業者 | 都市ガス、LPガス、ガス種、圧力及び接続方式 | 日本向け仕様が確定するまで量産しない |
| 輸入者決定時 | 輸入販売者、法令担当者 | 届出主体、検査主体、表示主体及び記録保存主体 | 責任主体が確定するまで輸入を開始しない |
| 適合性検査前 | 登録検査機関、メーカー | 対象型式、製造工場、試験範囲及び必要資料 | 証明範囲を確定してから量産・船積みする |
| 船積前 | メーカー、フォワーダー | 法定表示、ガス種、付属品、型式、ロット及び数量 | 誤表示品または未確認品の船積みを止める |
| 輸入申告前 | 輸入者、通関業者 | 品名、用途、燃料、他法令及び販売予定 | 必要な法令確認資料を追加取得する |
| 通関後 | 輸入者、倉庫事業者 | 自主検査、表示、説明書差し替え及び在庫隔離 | 販売可能品と未確認品を分離する |
| 販売ページ作成時 | 販売担当者、法令担当者 | 実物表示、ガス種、設置条件、警告及び商品画像 | 実物との不一致を修正するまで公開しない |
| 販売開始前 | 品質管理担当者 | 届出、証明書、検査記録、表示及び在庫 | 最終確認が完了するまで出荷を停止する |
| 経過措置品販売時 | 在庫担当者、法令担当者 | 製造日、輸入日、型式、ロット及び販売期限 | 期限後の販売を防ぐ管理を行う |
| 仕様変更時 | メーカー、登録検査機関、法令担当者 | 部品、燃焼部、工場、型式及び試験範囲の変更 | 既存証明書を流用せず、再検査等の要否を確認する |
| 事故・苦情発生時 | 購入者、メーカー、行政窓口 | 事故状況、型式、製造番号、販売日及び被害内容 | 販売停止、証拠保全、報告及び回収を検討する |
| 行政照会時 | 行政担当者、専門家 | 届出、試験、検査、販売記録及び対応経緯 | 事実関係を時系列で整理し、速やかに回答する |
専門家へ相談すべき場面
- 都市ガス用かLPガス用かを技術資料から確定できない場合
- 製品が法令上の対象品目に該当するか判断できない場合
- 燃焼方式または菱形・丸形の区分を確定できない場合
- 海外試験報告書が日本の技術基準を満たすか確認できない場合
- 特定ガス用品または特定液化石油ガス器具等の適合性検査を初めて受ける場合
- 適合性証明書の型式または製造工場が実物と一致しない場合
- 製品変更後も既存証明書を使用できるか判断できない場合
- 法定マークのない製品または誤表示品をすでに販売している場合
- 一酸化炭素中毒、火災、爆発またはガス漏れ事故が発生した場合
- 行政から報告、資料提出、立入検査または改善命令等の連絡を受けた場合
- 海外事業者の国内管理人となる契約を締結する場合
- 販売停止、回収、返品、廃棄または消費者補償の方針を決める場合
相談先としては、経済産業省または管轄の経済産業局、登録検査機関、製品安全試験機関、ガス関係事業者、ガス用品規制に詳しい弁護士その他の専門家が考えられます。
まとめ
輸入ガス用品の安全規制では、都市ガス用器具にはガス事業法に基づくPSTGマーク制度、LPガス用器具には液石法に基づくPSLPGマーク制度が適用されます。
ガス事業法の対象は、特定ガス用品4品目と、特定ガス用品以外のガス用品4品目に区分されます。液石法では、携帯液化石油ガス用バーナーの追加後、特定液化石油ガス器具等8品目と、その他の液化石油ガス器具等9品目が対象となっています。
特定ガス用品及び特定液化石油ガス器具等には菱形の法定マークが使用され、届出事業者による自主検査に加えて、登録検査機関による適合性検査と適合性証明書の保存が必要です。
その他の対象製品には丸形の法定マークが使用されますが、登録検査機関による適合性検査が不要であっても、技術基準への適合確認、自主検査、検査記録の保存及び表示は必要です。
輸入実務では、都市ガス用かLPガス用かを区別するだけでなく、日本のガス種、供給圧力、接続方式、燃焼方式、設置場所、換気・排気条件及び日本語表示を確認する必要があります。
対象となるガストーチについては、2025年2月6日に規制が開始され、2026年2月5日までの1年間の経過措置終了後、2026年2月6日から販売時に菱形PSLPGマークが必要です。
また、2025年12月25日以降、海外事業者が対象ガス用品を国内消費者へ直接販売する場合には、特定輸入事業者及び国内管理人の制度が問題になります。
輸入許可、海外規格、海外メーカーの安全説明または製品上の法定マーク画像だけでは、日本国内で適法に販売できることは確定しません。
フォワーダー及び通関業者は、通常、対象品目や技術基準適合を最終判断する立場ではありませんが、対象となる可能性を把握した場合には、輸入者へ確認を促し、検査、表示、保管及び販売開始の工程を調整することが重要です。
違反が判明した場合には、販売停止、改善命令、表示の禁止、危険等防止命令、回収、違反情報の公表及び刑事罰につながる可能性があります。
輸入ガス用品を販売する場合は、通関後や販売直前ではなく、商品企画及び発注前の段階から、燃料区分、対象品目、技術基準、届出、検査、表示及び販売後対応を一体的に確認することが基本です。
本記事は、輸入ガス用品に関する安全規制及び輸入販売実務の一般的な整理を目的とするものであり、個別製品の法令適合性または販売可否を保証するものではありません。実際の製品については、最新の法令、技術基準、公式資料、製品仕様及び管轄行政機関等への確認が必要です。
