特恵関税制度の解説
概要
特恵関税制度とは、開発途上国・地域又は後発開発途上国から輸入される一定の貨物について、通常の関税率より低い税率又は無税を適用する制度です。日本では、一般特恵関税制度と、後発開発途上国向けの特別特恵関税制度が設けられています。
輸入実務では、特恵関税を使えるかどうかにより、関税額や輸入コストが変わることがあります。ただし、対象国・地域、対象品目、原産地規則、必要書類、適用除外措置を満たさなければ、特恵関税は適用されません。
制度の目的
特恵関税制度の目的は、開発途上国・地域からの輸出を促進し、その経済発展を支援することです。通常の関税率より低い税率を適用することで、対象国からの輸入品が日本市場で競争しやすくなる効果があります。
特に、後発開発途上国からの輸入品については、より広い範囲で無税扱いが認められる場合があります。ただし、すべての貨物に無条件で適用されるわけではなく、品目、原産地、証明手続、適用除外の有無を確認する必要があります。
仕組み
特恵関税を適用するには、対象国・地域、対象品目、原産地基準、証明手続の各要件を満たす必要があります。対象国・地域や適用除外品目は変更されることがあるため、固定的な国数や対象品目だけで判断せず、税関の最新情報を確認することが重要です。
- 対象国・地域:法令で指定された開発途上国・地域
- 対象品目:関税暫定措置法などで特恵税率の対象とされる品目
- 原産地基準:当該国・地域の原産品と認められるための基準
- 積送基準:原則として対象国・地域から日本へ直接輸送されることなど
- 証明手続:一般特恵制度原産地証明書など、必要な書類の提出
- 適用除外:卒業、部分卒業、国別・品目別除外などの確認
一般特恵関税と特別特恵関税
一般特恵関税は、一定の開発途上国・地域から輸入される対象品目に対して、通常より低い関税率を適用する制度です。農水産品は品目ごとに対象が定められ、鉱工業品については広い範囲で特恵税率が設けられています。
特別特恵関税は、後発開発途上国からの輸入品について、より有利な税率を適用する制度です。ただし、後発開発途上国であることだけで自動的に無税となるわけではなく、対象品目、原産地基準、証明手続、適用除外の有無を確認する必要があります。
原産地証明書とForm A
一般特恵関税の適用を受けるには、原則として、一般特恵制度原産地証明書が必要です。この原産地証明書は、通常「Form A」と呼ばれます。
Form Aは、貨物が特恵受益国・地域の原産品であることを証明するための書類です。EPA原産地証明書や通常の非特恵原産地証明書とは役割が異なるため、別の制度の原産地証明書で一般特恵関税のForm Aを代替できるとは限りません。
- Form Aが必要か確認する
- 発給機関が適切か確認する
- 品名、数量、インボイス番号、原産国が一致しているか確認する
- 輸出時に発給されたものか確認する
- 直送要件や積送基準を満たしているか確認する
- 第三国経由の場合、運送要件証明書等が必要か確認する
フォワーダー・通関実務での確認点
フォワーダーや通関業者は、特恵関税の適用可否そのものを安易に判断するのではなく、輸入者が必要な書類と根拠をそろえているかを確認する必要があります。特恵関税の適用には、通常の輸入申告以上に原産地と証明書類の確認が重要になります。
- 輸入者が特恵関税の適用を希望しているか確認する
- 対象国・地域に該当するか確認する
- 対象品目に該当するか確認する
- Form Aなど必要な原産地証明書があるか確認する
- インボイス、B/L、パッキングリストと原産地証明書の記載が整合しているか確認する
- 第三国経由の場合、積送基準を満たす資料があるか確認する
- 卒業、部分卒業、国別・品目別適用除外がないか確認する
- EPA税率、一般税率、特恵税率のどれを使うのが適切か確認する
適用除外・卒業措置
特恵関税制度では、対象国・地域や対象品目が毎年見直されることがあります。経済発展が進んだ国・地域や、国際競争力が高くなった品目については、特恵関税の対象から外れる場合があります。
- 卒業:国・地域全体が特恵対象から外れる措置
- 部分卒業:一部の品目について特恵対象から外れる措置
- 国別・品目別適用除外:特定国の特定品目について特恵対象から外れる措置
- エスケープ・クローズ:国内産業保護のため、緊急的に特恵適用が停止される措置
過去に特恵関税を使えた貨物であっても、現在も同じ扱いとは限りません。輸入の都度、対象国・品目・適用除外の有無を確認する必要があります。
注意点
- 対象国数や対象品目は変更されるため、固定情報だけで判断しない
- Form Aの不備や記載誤りがあると、特恵関税が適用されない場合がある
- EPA原産地証明書と一般特恵制度原産地証明書を混同しない
- 第三国経由の場合、積送基準を満たす資料が必要となる場合がある
- 特恵関税よりEPA税率の方が有利な場合もあるため、税率比較が必要となる
- 卒業措置や品目別適用除外により、従来の税率が使えなくなる場合がある
関連法令・基準
- 関税暫定措置法
- 関税暫定措置法施行令
- 関税暫定措置法施行規則
- 関税法
- 原産地規則
- 一般特恵関税原産地規則
関連記事
特恵関税制度を利用する場合は、原産地証明書、原産地規則、EPA税率、関税率、輸入申告などの関連制度もあわせて確認する必要があります。
- 原産地証明書
- 原産地規則
- EPA
- 関税率
- 課税価格
- 輸入申告
- 税関
- Form A
まとめ
特恵関税制度は、開発途上国・地域又は後発開発途上国からの輸入品について、通常より低い税率又は無税を適用する制度です。輸入コストに影響する一方で、対象国・品目、原産地基準、証明手続、適用除外の確認が必要です。
実務では、Form Aなどの原産地証明書、積送基準、卒業措置、国別・品目別適用除外、EPA税率との比較を確認し、税関公式情報に基づいて適用可否を判断することが重要です。
