権利者確認と通関保留

権利者確認と通関保留とは

権利者確認と通関保留とは、輸入貨物に知的財産権侵害の疑いがある場合に、税関が輸入手続を一時的に止め、貨物の正規性、権利関係、使用許諾、仕入経路などを確認する実務です。

対象となるのは、模倣品、ブランド品、キャラクター商品、デザイン模倣品、海賊版商品、純正品に似た部品、ロゴ入り商品、意匠に似た商品などです。

見た目、表示、商品名、価格、仕入先、販売ページ、パッケージなどに疑義がある場合、通関はそのまま進まず、確認段階に入ることがあります。

この段階では、貨物が違法と確定しているわけではありません。まず、輸入者が正規品であること、権利者の許諾があること、または権利侵害に該当しないことを説明できるかが問題になります。

この記事で扱う範囲

本記事では、知的財産権に関係する貨物について、税関確認、権利者確認、通関保留、認定手続、輸入差止めへ進む流れを整理します。

通関保留とは、税関確認や資料提出が必要になり、輸入許可が一時的に止まっている実務上の状態です。

認定手続とは、税関が発見した侵害疑義物品について、知的財産侵害物品に該当するかどうかを判断するための手続です。

つまり、通関保留と認定手続は同義ではありません。通関保留は初期確認段階、認定手続は知的財産侵害物品かどうかを判断する手続段階として整理します。

模倣品全体の考え方は「模倣品」、商標表示が問題になる貨物は「商標権侵害品」、外観デザインが問題になる貨物は「意匠権侵害品」、ブランド品や並行輸入の実務は「ブランド品輸入」および「並行輸入」で整理します。

通関保留が発生する流れ

通関保留は、税関検査、書類確認、貨物確認、権利者情報、差止申立情報などをきっかけに発生することがあります。

例えば、ブランドロゴ入りの商品で仕入先が不明確な場合、キャラクター商品で使用許諾が確認できない場合、ロゴはないが有名商品のデザインに似ている場合、税関や通関業者から追加確認が求められることがあります。

この段階では、貨物が知的財産侵害物品に該当すると決まったわけではありません。

しかし、輸入者が資料を提出できない、正規性を説明できない、権利者確認が必要になる、または税関が侵害疑義物品と判断する場合には、認定手続へ進む可能性があります。

権利者確認とは

権利者確認とは、貨物に表示されたブランド名、ロゴ、キャラクター、デザイン、形状、著作物などについて、権利者の許諾があるか、正規品であるか、権利侵害に該当しないかを確認する実務です。

権利者確認は、輸入者自身が仕入先や権利者へ確認する場合もあれば、通関業者を通じて資料提出を求められる場合もあります。

フォワーダーが権利侵害の有無を判断するわけではありません。フォワーダーは、荷主から資料を回収し、通関業者へ連携し、期限や費用リスクを整理する調整役になります。

権利者確認で重要なのは、「正規品だと思う」という説明ではなく、正規性、使用許諾、仕入経路、権利者との関係を資料で説明できることです。

認定手続との関係

通関保留や税関確認の結果、貨物が知的財産侵害物品に該当するおそれがあると判断されると、認定手続に進むことがあります。

認定手続では、税関が輸入者および権利者へ通知し、輸入者は期限内に意見や証拠を提出することになります。

輸入者は、貨物が正規品であること、権利者の許諾を受けていること、並行輸入として問題がないこと、登録意匠や著作物に類似しないことなどを説明する必要があります。

認定の結果、知的財産侵害物品に該当しないと判断されれば、輸入許可に進みます。

一方、知的財産侵害物品に該当すると判断された場合は、廃棄、任意放棄、権利者からの輸入同意書取得、切除などの修正対応、その他の処理が問題になることがあります。

認定手続に進む前に確認すべきこと

通関保留の段階で重要なのは、認定手続に進む前に、輸入者側で説明できる資料をどこまで集められるかです。

ブランド品であれば、正規仕入れを示す資料、販売者情報、商品型番、購入証明が重要になります。

キャラクター商品であれば、ライセンス契約、使用許諾書、正規販売証明が重要になります。

意匠権が問題になる商品であれば、商品写真、図面、仕様書、登録意匠との比較資料が重要になります。

資料がそろわないまま時間が経過すると、回答期限、保管料、納期遅延、販売計画への影響が大きくなります。

実務の流れ

段階 主な確認事項 止まりやすい原因
輸入手配前 ブランド名、ロゴ、キャラクター、デザイン、仕入先、販売目的を確認 インボイスの商品名が曖昧で、知財リスクのある貨物か分からない
通関申告時 品名、価格、数量、仕入先、商品写真、販売ページを確認 荷主が商品画像や仕入先情報を持っていない
税関確認・検査 ロゴ、商標、キャラクター、外観、パッケージ、タグを確認 貨物外観と書類内容が一致せず、追加確認が必要になる
通関保留 正規品性、使用許諾、権利者確認、仕入経路を説明 正規販売証明やライセンス資料が提出できない
認定手続開始 輸入者が期限内に意見書・証拠を提出するか判断 輸入者が手続の意味を理解しておらず、回答期限が迫る
認定結果 非該当なら輸入許可、該当なら廃棄・任意放棄・権利者同意等を検討 保管料、廃棄費用、販売計画、荷主との費用負担が問題になる

輸入者に求められる対応

輸入者は、貨物が正規品であること、権利者の許諾を受けていること、または権利侵害に該当しないことを説明する必要があります。

実務上は、次のような資料が求められることがあります。

  • 仕入先情報
  • インボイス
  • 契約書
  • 正規販売証明
  • ライセンス契約
  • 使用許諾書
  • 商品写真
  • 商品カタログ
  • 販売ページ
  • 注文履歴
  • 権利者または正規代理店からの証明書
  • 登録意匠や著作物との非類似説明資料

資料は、単に「本物です」と主張するためではなく、正規性、使用権限、仕入経路、権利侵害に該当しない理由を説明するために使われます。

フォワーダーの役割

フォワーダーは、権利侵害の有無を判断する立場ではありません。

しかし、実務上は調整役になります。税関や通関業者から確認連絡を受けた場合、荷主へ迅速に状況を伝え、必要資料の提出を促します。

また、通関遅延による納期への影響、保管料、追加費用、販売計画への影響、廃棄や返送の可能性についても、早めに荷主へ共有する必要があります。

フォワーダーが注意すべきなのは、「正規品です」「権利侵害ではありません」と断定しないことです。

フォワーダーの役割は、事実確認、資料回収、通関業者との連携、期限管理、費用リスクの説明にあります。

通関保留が長引いた場合の費用

通関保留が長引くと、貨物の保管料、検査立会費用、書類準備費用、翻訳費用、配送再手配費用、販売機会の損失などが問題になることがあります。

FCL貨物では、通関保留の状況によっては、Demurrage、Storage、Detentionなどのコンテナ関連費用が問題になることもあります。

LCL貨物や航空貨物でも、倉庫保管料、取扱料、再配送費用が発生することがあります。

認定手続の結果、輸入できないと判断された場合は、廃棄費用、任意放棄、返送可否、権利者同意書取得、修正対応の可否などを検討する必要があります。

これらの費用を誰が負担するかは、輸入者、荷主、販売者、フォワーダー、通関業者の契約関係や、問題発生原因によって整理します。

注意すべき貨物

権利者確認や通関保留が発生しやすい貨物には、次のようなものがあります。

  • ブランド品
  • ロゴ入り商品
  • キャラクター商品
  • デザイン性の高い商品
  • 純正品に似た部品
  • 有名商品の外観に似た雑貨
  • 海外EC仕入れの商品
  • 極端に安価な商品
  • 仕入先が不明確な商品
  • インボイスの商品名が曖昧な貨物

特に、初回取引、海外EC仕入れ、小口大量貨物、販売目的の継続輸入では注意が必要です。

実務シナリオ1:ブランド品で通関保留になるケース

輸入者が海外ECサイトからブランドロゴ入りのバッグを仕入れ、日本国内で販売しようとするケースがあります。

通関時に税関から真正品性の確認が入り、通関が一時的に保留されます。

輸入者は販売ページのスクリーンショットしか持っておらず、正規販売証明や購入証明を提出できません。

この場合、フォワーダーは荷主へ資料提出を急ぐよう連絡し、通関業者へ状況を共有します。資料がそろわなければ、認定手続へ進む可能性があり、保管料や納期遅延が問題になります。

実務シナリオ2:キャラクター商品で使用許諾が確認できないケース

輸入者が海外メーカーからアニメキャラクターの雑貨を仕入れるケースがあります。

商品本体やパッケージにキャラクターが表示されており、税関から使用許諾の確認が求められます。

輸入者が「海外で普通に売っていた」と説明しても、権利者の許諾を示す資料としては不十分です。

使用許諾書、ライセンス契約、正規販売証明などが提出できなければ、通関保留が長引き、認定手続へ進む可能性があります。

実務シナリオ3:デザイン模倣品で外観確認が必要になるケース

輸入者がロゴのない家具やスマートフォンアクセサリーを輸入するケースがあります。

商品にはブランド名が表示されていませんが、有名商品の外観に似ているため、意匠権侵害の疑いで確認が入ります。

この場合、商品写真、販売ページ、仕様書、図面、登録意匠との比較資料が必要になることがあります。

フォワーダーは、ロゴがないから問題ないと判断せず、外観資料を荷主から回収し、通関業者へ連携します。

実務シナリオ4:認定手続後に輸入できないと判断されるケース

通関保留後、認定手続に進み、税関が知的財産侵害物品に該当すると判断するケースがあります。

この場合、輸入者は廃棄、任意放棄、権利者からの輸入同意書取得、修正対応などを検討することになります。

貨物の性質によっては、ロゴを消せば輸入できるとは限らず、外観そのものやキャラクター表示が問題になる場合もあります。

フォワーダーや通関業者は、輸入者に代わって権利関係を判断するのではなく、税関手続、期限、保管料、廃棄費用、返送可否を整理して伝える立場になります。

模倣品・商標権侵害品・意匠権侵害品との関係

「模倣品」は、知的財産侵害物品全体の総論・ハブ記事です。

「商標権侵害品」は、ブランド名、ロゴ、マークなどの商標表示が問題になる貨物を整理する記事です。

「意匠権侵害品」は、商品の形状、外観、デザイン、模様が登録意匠に類似するかどうかを整理する記事です。

「著作権侵害品」は、著作物、キャラクター、画像、文章、音楽、ソフトウェアなどの無断利用を整理する記事です。

本記事「権利者確認と通関保留」は、これらの各論記事に共通する、税関確認、通関保留、権利者確認、認定手続への移行を横断的に扱う記事です。

実務上の注意点

権利者確認と通関保留は、知的財産権に関係する貨物で発生しやすい重要な実務ポイントです。

この段階では、貨物が違法と確定しているわけではありませんが、輸入者が正規性や使用許諾を説明できなければ、通関遅延や認定手続につながります。

フォワーダーは判断者ではなく調整役として、荷主への確認、資料整理、通関業者との連携、スケジュール調整を行います。

疑義がある貨物では、早い段階で商品写真、販売ページ、仕入先情報、許諾資料を確認し、通関前にリスクを整理することが重要です。

まとめ

権利者確認と通関保留とは、輸入貨物に知的財産権侵害の疑いがある場合に、税関確認、資料提出、権利者確認を行う実務です。

通関保留は、輸入が一時的に止まっている初期確認段階であり、認定手続は、税関が知的財産侵害物品に該当するかどうかを判断する手続段階です。

輸入者は、正規品性、使用許諾、仕入経路、権利侵害に該当しない理由を資料で説明する必要があります。

フォワーダーは権利侵害の判断者ではありませんが、荷主への確認、資料回収、通関業者との連携、期限管理、費用リスクの説明を行う立場です。

権利者確認と通関保留は、輸入差止めや認定手続に進む前の重要な分岐点であり、早期の資料準備と関係者間の情報共有が最重要の対応策となります。

同義語・別表記

  • 通関保留
  • 知財確認
  • 権利者照会
  • 権利者確認
  • Customs Hold
  • IPR Confirmation
  • Rights Holder Confirmation

公式情報