商標権侵害品
商標権侵害品とは
商標権侵害品とは、ブランド名、ロゴ、マーク、商品名、標章などを、商標権者の許諾なく使用した商品のことです。
輸入実務では、偽ブランド品、ロゴ入りコピー商品、ブランド名を無断表示した商品、正規品と誤認させる表示を付した商品などが典型例です。
商標は、商品やサービスの出所を示す重要な表示です。消費者は、ブランド名やロゴを見て、その商品がどの事業者の商品であるか、一定の品質があるかを判断します。
そのため、商標を無断で使用した商品は、真正品と誤認される可能性があり、税関で知的財産侵害物品として問題になることがあります。
この記事で扱う範囲
本記事では、商標権侵害品の意味、模倣品との関係、真正品や並行輸入との違い、税関での確認、認定手続、輸入差止め、フォワーダー実務上の注意点を整理します。
ブランド品全般の輸入実務、真正品性資料、仕入経路、並行輸入との関係については、別記事「ブランド品輸入」で整理します。
真正品を日本の正規代理店ルートとは異なる経路で輸入する場合の判断軸については、別記事「並行輸入」で整理します。
模倣品全般、偽ブランド品、コピー商品などの広い整理については、別記事「模倣品」で整理します。本記事では、その中でも商標表示に関係する侵害物品を中心に扱います。
模倣品との関係
商標権侵害品と模倣品は重なることがありますが、完全に同じ意味ではありません。
模倣品は、他人の商品やブランドに似せて作られた偽物、コピー商品、 imitation goods を広く指す言葉として使われます。
一方、商標権侵害品は、商標権者の許諾なく、ブランド名、ロゴ、マークなどの商標を使用している点に着目した概念です。
偽ブランドバッグ、ブランドロゴ入りコピー衣類、無断で有名ブランド名を付けたスマートフォンケースなどは、模倣品であり、同時に商標権侵害品にもなり得ます。
ただし、商標権侵害品には、単なる偽物だけでなく、真正品に見えても商標の使用、流通経路、包装変更、品質管理の点で問題になるものが含まれる可能性があります。
真正品・並行輸入との違い
真正品とは、商標権者またはその許諾を受けた者によって製造・販売された本物の商品です。
並行輸入とは、海外で流通している真正品を、日本の正規代理店ルートとは異なる経路で輸入する取引です。
真正商品の並行輸入にあたる場合、商標権侵害にあたらないと整理されることがあります。ただし、商品が本物であれば常に問題ないというわけではありません。
並行輸入では、海外で適法に商標が付された商品か、海外の商標権者と日本の商標権者の関係、品質の実質同一性、包装変更や改造の有無、販売地域制限などが問題になることがあります。
したがって、商標権侵害品を理解するには、模倣品だけでなく、真正品、並行輸入、品質管理機能との関係も整理する必要があります。
輸入実務で問題になる理由
商標権侵害品は、見た目だけでは判断が難しい場合があります。
商品自体の品質が高くても、ロゴやブランド表示が無断で使用されていれば、知的財産侵害物品として扱われる可能性があります。
また、荷主が正規品だと認識していても、仕入先が非正規ルートである場合、仕入経路を説明できない場合、権利者の許諾が確認できない場合には、通関上問題になることがあります。
特に、海外ECサイト、個人販売者、現地市場、無名サプライヤーから仕入れたブランド表示付き商品は注意が必要です。
問題になりやすい貨物
商標権侵害品として問題になりやすい貨物には、次のようなものがあります。
- バッグ
- 財布
- 時計
- 衣類
- 靴
- アクセサリー
- スポーツ用品
- スマートフォン関連商品
- 雑貨
- 化粧品
- 家電・部品類
- ノベルティ商品
商品本体だけでなく、タグ、箱、袋、ラベル、説明書、保証書、ステッカー、包装材にブランド名やロゴが表示されている場合も確認対象になります。
また、商品自体にはロゴがなくても、販売用パッケージや付属品に商標が無断使用されている場合には問題になることがあります。
税関での確認ポイント
税関では、貨物が商標権を侵害する疑いがある場合、輸入者に対して確認が行われることがあります。
この際、輸入者は、商品が真正品であること、権利者の許諾を受けていること、または商標権侵害にあたらない理由を説明する必要があります。
確認されやすい事項は、ブランド名、ロゴ、商標表示、型番、数量、価格、仕入先、販売目的、インボイスの記載内容、正規販売証明、契約関係などです。
インボイスに商品名が記載されているだけでは十分ではありません。仕入先情報、購入証明、正規代理店証明、権利者からの許諾資料、商品写真、販売ページなどが求められることがあります。
輸入差止めと認定手続
税関で商標権侵害品に該当するおそれがあると判断された場合、認定手続が行われることがあります。
認定手続とは、税関が発見した侵害疑義物品について、知的財産侵害物品に該当するかどうかを判断するための手続です。
認定手続が開始されると、輸入者に通知が行われ、輸入者は期限内に意見や証拠を提出することになります。
その結果、侵害物品に該当しないと認定されれば輸入許可に進みます。一方、侵害物品に該当すると認定された場合は、廃棄、任意放棄、権利者からの輸入同意書取得、修正対応などが問題になることがあります。
商標権侵害品は、知的財産侵害物品の中でも税関で確認対象になりやすい分野です。そのため、輸入者は通関前に仕入経路と正規性を説明できる資料を準備する必要があります。
実務の流れ
| 段階 | 主な確認事項 | 止まりやすい原因 |
|---|---|---|
| 仕入前 | ブランド表示の有無、商標使用許諾、仕入先の信頼性を確認 | 海外EC販売者の説明だけで正規品と判断してしまう |
| 輸入手配前 | ブランド名、ロゴ、型番、数量、価格、販売目的を確認 | インボイスの商品名が曖昧で、商標表示の有無が分からない |
| 通関申告時 | 真正品性、仕入経路、権利者許諾、並行輸入該当性を整理 | 正規仕入れや許諾を示す資料が不足している |
| 税関照会時 | インボイス、購入証明、販売ページ、正規販売証明、許諾資料を提出 | 仕入先と連絡が取れず、資料取得に時間がかかる |
| 認定手続開始時 | 輸入者が期限内に意見書・証拠を提出するか判断 | 輸入者が真正品性や並行輸入の説明資料を準備できない |
| 侵害該当と判断された場合 | 廃棄、任意放棄、権利者同意、修正対応、返送可否を検討 | 保管料、廃棄費用、販売計画への影響、荷主との費用負担が問題になる |
必要となる資料
商標権侵害品の疑いで確認が入った場合、次のような資料が必要になることがあります。
- 正規仕入れを示すインボイス
- 購入証明
- 仕入先との契約書
- 正規代理店または販売店からの購入資料
- 権利者または正規代理店からの許諾資料
- 商品カタログ
- 商品写真
- 型番資料
- 販売ページ
- 注文履歴
- 仕入先の会社情報
- ブランド表示やロゴの使用根拠を示す資料
これらの資料は、単に「商品が本物らしい」ことを示すためではなく、商標が適法に付されていること、仕入経路に問題がないこと、輸入販売が商標権侵害にあたらないことを説明するために使われます。
特に海外ECサイトや個人販売者から購入した商品では、販売ページや注文履歴だけでは不十分な場合があります。
フォワーダー実務での対応
フォワーダーは、商標権侵害の有無を判断する立場ではありません。
しかし、ロゴ入り商品、ブランド品、キャラクター表示商品、商標表示付きパッケージを含む貨物については、荷主に対して事前確認を促すことが重要です。
特に、極端に安いブランド品、仕入先が不明確な貨物、商品説明が曖昧なインボイス、販売目的が明確な小口大量貨物は注意が必要です。
通関で確認が入った場合には、フォワーダーは荷主から資料を回収し、通関業者へ速やかに連携します。
ただし、フォワーダーが輸入者の代理人として「商標権侵害ではありません」「真正品です」と断定することは避けるべきです。
フォワーダーの役割は、事実確認、資料回収、通関業者との連携、期限管理、保管料や廃棄費用などのリスク説明にあります。
実務シナリオ1:偽ブランド品の疑いで通関が止まるケース
輸入者が海外ECサイトからブランドロゴ入りのバッグや財布を仕入れ、日本国内で販売しようとするケースがあります。
インボイスには「bags」「fashion goods」とだけ記載され、ブランド名や型番が明確に記載されていません。しかし、貨物検査で有名ブランドのロゴが確認され、税関から商標権侵害品の疑いで確認が入ります。
輸入者が販売ページのスクリーンショットしか提出できず、正規販売店からの購入証明や権利者許諾を示せない場合、認定手続に進む可能性があります。
この場合、通関保留、保管料、販売計画の遅れ、廃棄費用、荷主との費用負担が問題になります。
実務シナリオ2:真正品と主張するが仕入経路を説明できないケース
輸入者が「本物のブランド品」と説明していても、仕入先が個人販売者や非正規業者であり、正規流通を示す資料がない場合があります。
商品自体が高品質に見えても、商標が適法に付された商品か、正規流通品か、権利者の許諾を得た商品かを説明できなければ、通関時に確認が続くことがあります。
この場合、フォワーダーは「荷主が本物と言っている」とだけ通関業者へ伝えるのではなく、購入証明、販売ページ、仕入先情報、型番、商品写真、権利者または正規代理店との関係を確認します。
資料がそろわない場合、通関遅延や認定手続のリスクが残ります。
実務シナリオ3:並行輸入品が商標権侵害と疑われるケース
真正品の並行輸入として申告していても、海外仕様品、包装変更品、再包装品、保証対象外品などでは、商標の品質保証機能を害していないかが問題になることがあります。
輸入者が、海外の商標権者と日本の商標権者の関係、品質の実質同一性、仕入経路を説明できない場合、税関照会や認定手続に進むことがあります。
この場合、商品が本物かどうかだけでなく、並行輸入として商標権侵害にあたらないと説明できるかが重要です。
並行輸入の判断軸については、別記事「並行輸入」で整理します。
輸入差止めになった場合の費用と判断
商標権侵害品の疑いで通関が止まると、貨物は保留状態になります。
その間、保管料、検査立会費用、書類準備費用、翻訳費用、廃棄費用、返送可否の確認費用などが問題になることがあります。
認定手続の結果、輸入できないと判断された場合、輸入者は任意放棄、廃棄、権利者からの同意書取得、商標部分の切除などの修正対応を検討することになります。
ただし、商標部分を切除すれば常に輸入できるわけではありません。商品の性質、権利者の対応、税関判断、修正の可否によって結論は変わります。
フォワーダーや通関業者は、輸入者に代わって権利関係を判断するのではなく、手続の状況、期限、発生し得る費用を整理して伝える立場になります。
ブランド品輸入・並行輸入・模倣品との役割分担
「ブランド品輸入」は、海外ブランド品を輸入する際の真正品性、仕入経路、通関資料、認定手続、輸入差止めのリスクを広く扱う記事です。
「並行輸入」は、海外で流通している真正品を日本の正規代理店ルートとは異なる経路で輸入する場合の判断軸を扱う記事です。
「模倣品」は、権利者の許諾なく作られた偽物やコピー商品を広く扱う記事です。
これに対して、本記事「商標権侵害品」は、ブランド名、ロゴ、マークなどの商標表示が問題になる貨物を中心に、税関での確認、認定手続、輸入差止めを整理する記事です。
実務上の注意点
商標権侵害品は、輸入実務において最も典型的な知的財産リスクの一つです。
商品が高品質に見えても、ロゴやブランド表示を無断で使用していれば、商標権侵害品として扱われる可能性があります。
また、真正品と主張する場合でも、仕入経路、正規販売証明、権利者許諾、並行輸入としての説明資料を準備できなければ、通関で確認が続く可能性があります。
フォワーダーは、ブランド名やロゴが含まれる貨物について、荷主に正規性の確認を促し、疑義がある場合は通関業者への早めの情報共有が求められます。
まとめ
商標権侵害品とは、ブランド名、ロゴ、マーク、商品名などを商標権者の許諾なく使用した商品です。
偽ブランド品やロゴ入りコピー商品が典型例ですが、真正品に見える商品や並行輸入品でも、商標の出所表示機能や品質保証機能を害する場合には問題になることがあります。
輸入実務では、商品が本物かどうかだけでなく、商標の使用根拠、仕入経路、権利者許諾、並行輸入としての説明資料を確認する必要があります。
フォワーダーは商標権侵害の判断者ではありませんが、荷主への事前確認、資料回収、通関業者との連携、期限管理、費用リスクの説明を行う立場です。
商標権侵害品は、ブランド品輸入、並行輸入、模倣品、輸入差止め、認定手続が交差する重要論点であり、仕入前の正規性確認と資料準備が最重要の予防策となります。
