電気通信事業法と輸入端末
概要
電気通信事業法と輸入端末とは、スマートフォン、LTEルーター、モデム、通信モジュール、IP電話機、FAX、IoTゲートウェイなど、通信事業者の回線に接続して使用する輸入機器について、国内で使用・販売できるかを確認するための制度です。
輸入品が海外で販売されている通信機器であっても、日本国内の通信回線に接続して使用する場合には、電気通信事業法上の端末機器として、技術基準への適合が問題になることがあります。
特に、海外版スマートフォン、SIMフリールーター、LTE・5G通信モジュール、IP電話機、産業用IoT機器、クラウドファンディング製品、海外ECで販売される通信機器では、電気通信事業法上の確認が必要になることがあります。
電気通信事業法とは
電気通信事業法は、電気通信サービスや通信ネットワークの安全性、信頼性、利用者保護などに関係する国内法令です。
輸入実務で問題になりやすいのは、通信事業者の回線に接続される端末機器が、技術基準に適合しているかという点です。
端末機器が技術基準に適合していない場合、通信ネットワークに支障を与えたり、誤接続、通信障害、緊急通報への影響などが問題になる可能性があります。
電波法との違い
電気通信事業法と電波法は、どちらも通信機器の輸入で問題になりますが、見るポイントが異なります。
| 項目 | 電波法 | 電気通信事業法 |
|---|---|---|
| 主な対象 | 電波を発する無線設備 | 通信事業者の回線に接続する端末機器 |
| 代表例 | Wi-Fi、Bluetooth、無線機、ドローン、無線モジュール | スマートフォン、モデム、LTEルーター、IP電話機、FAX、通信モジュール |
| 主な確認点 | 周波数、出力、混信防止、技適マーク | 端末機器の技術基準適合、設計認証、回線接続条件 |
| 実務上の注意 | 国内で電波を発するか | 国内の通信回線に接続するか |
スマートフォン、LTEルーター、IoTゲートウェイのように、無線通信機能を持ち、かつ通信事業者の回線にも接続する機器では、電波法と電気通信事業法の両方を確認する必要があります。
対象になりやすい輸入端末
電気通信事業法上の確認が必要になりやすい輸入機器には、次のようなものがあります。
- スマートフォン、携帯電話端末
- SIMフリールーター、モバイルWi-Fiルーター
- LTE・5G通信モジュール
- IoTゲートウェイ、遠隔監視装置
- IP電話機、VoIP機器
- FAX、電話機、PBX関連機器
- 通信モデム、ONU、ルーター
- POS端末、決済端末、M2M機器
- 車載通信端末、産業用通信装置
完成品だけでなく、機械や家電、医療・美容機器、産業機器の内部に通信モジュールが組み込まれている場合にも、確認が必要になることがあります。
技術基準適合認定と設計認証
電気通信事業法では、端末機器が技術基準に適合していることを確認する制度として、技術基準適合認定や設計認証があります。
技術基準適合認定は、端末機器について技術基準への適合性を確認する制度です。
設計認証は、量産される端末機器について、設計や製造管理の仕組みが技術基準に適合しているかを確認する制度です。
輸入者や販売者は、対象機器が日本向けの認定・認証を受けているか、型式、認証番号、表示方法、通信方式、回線種別が実際の輸入品と一致しているかを確認する必要があります。
Tマーク・認証番号の確認
電気通信事業法上の端末機器では、認定・認証を受けたことを示す表示として、適合マーク、補助マーク、認証番号などが表示されることがあります。
このうち、電気通信事業法に関係する補助マークとして、Tマークが表示されることがあります。
ただし、実務上は「Tマークがあるか」だけで判断するのではなく、認証番号、届出番号、型式、対象機器、表示場所、電波法上の技適マークとの関係をあわせて確認することが重要です。
スマートフォンや通信端末では、端末本体やラベルだけでなく、設定画面、取扱説明書、メーカー資料に認証表示が記載されることがあります。
自己認証制度との関係
端末機器の制度には、登録認定機関による認定・認証のほか、製造業者や輸入業者などが一定の条件のもとで自己確認を行い、届出を行う仕組みがあります。
ただし、自己認証は単に「自社で確認すればよい」という意味ではありません。
自己確認を行う場合でも、試験機関による測定データの取得、技術基準への適合確認、設計内容や製造管理の確認、届出様式の作成・提出などが必要になります。
海外メーカーが作成した自己認証書類があっても、それが日本の電気通信事業法上の制度に対応したものかどうかは別途確認する必要があります。
輸入実務では、海外メーカーが取得した認証、国内輸入者が行う届出、登録認定機関による認定・認証のどれに該当するのかを確認することが重要です。
通関可否と国内使用・販売可否は別
輸入実務で重要なのは、通関できることと、日本国内で使用・販売できることは別問題であるという点です。
税関手続上、貨物として輸入できたとしても、その後に日本国内の通信回線へ接続して使用・販売する場合には、電気通信事業法上の確認が必要になることがあります。
国内販売後に認定・認証の問題が発覚した場合、販売停止、返品、取引先対応、行政対応、リコール対応などにつながる可能性があります。
輸入・販売前の確認が、事後対応よりも重要です。
海外EC・サンプル輸入での注意点
海外ECサイトやクラウドファンディングで販売されている通信機器は、日本向け仕様ではない場合があります。
海外版スマートフォン、海外向けルーター、SIM通信モジュール、IoT端末などでは、日本国内の通信回線で使える周波数や通信方式だけでなく、電気通信事業法上の端末認証が確認されているかが問題になります。
サンプル輸入や展示会用の貨物であっても、国内で実際に通信回線へ接続してデモンストレーションを行う場合には、使用方法に応じて確認が必要です。
「販売しない」「試験用」「展示用」であっても、通信事業者の回線に接続するかどうかが実務上の分かれ目になります。
個人使用目的での輸入であっても、国内の通信回線へ接続して使用する場合には、制度上の問題が生じることがあります。また、個人輸入した製品を第三者に販売・譲渡する場合には、販売行為としての確認が別途必要になります。
無線モジュール内蔵品の注意点
近年は、完成品ではなく、機械や産業機器の内部にLTE、5G、LPWA、Wi-Fi、Bluetoothなどの通信モジュールが組み込まれていることがあります。
この場合、製品全体の外観からは通信端末に見えなくても、内部のモジュールが日本国内の通信回線に接続される場合には、端末機器としての確認が必要になることがあります。
輸入者は、製品仕様書、通信モジュールの型式、認証番号、通信方式、SIM利用の有無、国内通信回線への接続予定を確認する必要があります。
フォワーダー実務上の注意点
フォワーダーや通関関係者は、端末機器の適法性を保証する立場ではありません。
しかし、貨物名、Invoice、Packing List、商品説明、HSコード、製品写真などから、smartphone、router、modem、LTE、5G、SIM、eSIM、IoT、gateway、IP phone、FAX、terminal、moduleなどの記載がある場合には、電気通信事業法上の確認が必要になる可能性があります。
HSコードでは、第85類の電気機器、第84類の機械類、通信機能付き産業機器などで、通信回線に接続する機能を持つ場合に注意が必要です。
実務上は、荷主に対して次の点を確認することが有効です。
- 日本国内の通信回線に接続する予定があるか
- SIM、eSIM、LTE、5G、IP電話機能があるか
- 端末機器の技術基準適合認定または設計認証があるか
- 認証番号や表示資料を確認できるか
- Tマーク、認証番号、届出番号の表示が確認できるか
- 日本向け仕様の製品か
- 海外版・海外仕様のまま販売しようとしていないか
- 電波法の技適マークも別途確認済みか
- PSEマークなど他法令の確認が必要ないか
電波法・PSEとの関係
通信端末の輸入では、電気通信事業法だけでなく、電波法や電気用品安全法も同時に問題になることがあります。
無線通信機能がある場合には、電波法上の技適確認が必要になります。
ACアダプター、充電器、電源コードなどを含む場合には、電気用品安全法上のPSEマークが問題になることがあります。
そのため、スマートフォン、ルーター、IoT端末、通信モジュール内蔵製品では、「通信端末としての認証」「無線設備としての技適」「電源部品としてのPSE」を分けて確認する必要があります。
実務上確認すべき資料
- 製品仕様書
- 取扱説明書
- 製品写真
- 端末機器の認定・認証番号
- Tマーク、認証番号、届出番号の表示資料
- 技適マークまたは認証番号の表示資料
- 通信方式、回線種別、周波数帯の資料
- SIM、eSIM、LTE、5G対応の有無が分かる資料
- 通信モジュールの型式情報
- 日本向け仕様であることを示すメーカー資料
- 自己認証制度を利用する場合の試験結果、届出資料、適合確認資料
- Invoice
- Packing List
- 販売ページや商品説明ページ
- PSEなど他法令に関する認証・表示資料
まとめ
電気通信事業法と輸入端末では、スマートフォン、ルーター、モデム、通信モジュール、IoT機器など、通信事業者の回線に接続する機器について、国内で使用・販売できるかを確認することが重要です。
電波法が電波を発する無線設備を中心に見るのに対し、電気通信事業法では通信回線に接続される端末機器としての技術基準適合が問題になります。
通関できることと、国内で使用・販売できることは別問題です。フォワーダーや通関関係者は、通信機能を持つ輸入品について、荷主に端末機器の認定・認証、Tマーク、技適マーク、日本向け仕様、PSEなど他法令の確認を促すことが重要です。
同義語・別表記
関連用語
公式情報
- 公式ホームページ: https://www.soumu.go.jp/
