電波法と輸入機器
概要
電波法と輸入機器とは、Bluetooth機器、Wi-Fi機器、無線モジュール、IoT機器、ワイヤレスカメラ、ドローン、スマート家電など、電波を利用する輸入品について、日本国内で使用・販売できるかを確認するための制度です。
輸入品が海外で販売されている製品であっても、日本国内で電波を発する機器として使用する場合には、日本の電波法上の技術基準に適合しているかを確認する必要があります。
特に、海外ECサイト、クラウドファンディング、海外メーカー直輸入、サンプル輸入、展示会出品用貨物では、技適マークの有無や国内使用可否が問題になることがあります。
電波法とは
電波法は、電波の公平で効率的な利用を確保し、無線通信の混信や妨害を防ぐための国内法令です。
無線設備を日本国内で使用する場合、原則として無線局免許や技術基準への適合が問題になります。ただし、携帯電話、Wi-Fi機器、Bluetooth機器など、多くの一般向け機器では、技術基準適合証明や工事設計認証を受けた機器であることにより、利用者側の手続きが簡略化される仕組みがあります。
この適合性を示す代表的な表示が、一般に「技適マーク」と呼ばれるものです。
輸入実務で問題になりやすい機器
電波法上の確認が必要になりやすい輸入機器には、次のようなものがあります。
- Bluetoothイヤホン、Bluetoothスピーカー
- Wi-Fiルーター、無線LAN機器
- スマートフォン、タブレット、SIMフリー端末
- ワイヤレスカメラ、ベビーモニター
- スマートウォッチ、ウェアラブル機器
- IoTセンサー、無線モジュール内蔵機器
- ドローン、ラジコン、遠隔操作機器
- スマート家電、スマートロック、スマート照明
- 海外向けトランシーバー、無線機
見た目は一般的な雑貨や家電であっても、Bluetooth、Wi-Fi、LTE、Zigbee、LoRaなどの無線通信機能を持つ場合には、電波法上の確認が必要になることがあります。
特にドローンは、電波法上の技適確認に加え、航空法に基づく機体登録、飛行許可・承認、機体認証など、複数の規制が重なるため、個別に確認することが重要です。
技適マークとは
技適マークとは、無線設備が日本の電波法上の技術基準に適合していることを示す表示です。
技適マークは、製品本体、ラベル、画面表示、取扱説明書などで確認されることがあります。スマートフォンやタブレットなどでは、端末の設定画面内に技適マークや認証番号が表示されることがあります。
海外向けに製造された製品では、FCC、CE、UKCAなど海外規格の表示があっても、日本の技適マークがない場合があります。海外規格に適合していることと、日本の電波法上の使用可否は同じではありません。
なお、技適マークのない海外製品でも、技適未取得機器を用いた実験等の特例制度に基づき、総務省への届出を行うことで、一定期間・一定条件のもとで使用できる場合があります。ただし、この特例は実験、試験、調査などを想定した制度であり、商業目的の販売にそのまま使えるものではないため、用途に応じた確認が必要です。
技術基準適合証明と工事設計認証
技適に関係する制度として、技術基準適合証明と工事設計認証があります。
技術基準適合証明は、主に個別の無線設備について、電波法上の技術基準に適合しているかを確認する制度です。
工事設計認証は、同一の設計・型式で量産される無線設備について、その設計や製造管理が技術基準に適合しているかを確認する制度です。
輸入実務では、単に「技適があるか」だけでなく、対象製品の型式、通信方式、周波数帯、認証番号、表示方法、販売国向け仕様が日本向けと一致しているかを確認する必要があります。
通関可否と国内使用・販売可否は別
輸入実務で特に重要なのは、通関できることと、日本国内で使用・販売できることは別問題であるという点です。
税関手続上、貨物として輸入できたとしても、その後に日本国内で電波を発して使用・販売する場合には、電波法上の技術基準適合が問題になります。
国内販売後に問題が発覚した場合、販売者が消費者から返品や損害賠償請求を受けるリスクや、行政指導の対象となる可能性があります。輸入・販売前の確認が、事後対応よりも重要です。
フォワーダーや通関業者は、原則として荷主の輸入申告手続きを支援する立場ですが、貨物が無線機能を持つ場合には、荷主に対して技適マークや国内規制の確認を促すことが実務上重要です。
他法令との関係
輸入機器では、電波法だけでなく、他の国内法令も同時に問題になることがあります。
たとえば、ACアダプターや充電器を含む場合には電気用品安全法とPSEマーク、通信端末として回線に接続する場合には電気通信事業法、消費者向け製品では消費生活用製品安全法、表示面では家庭用品品質表示法や景品表示法などが関係することがあります。
そのため、Bluetooth機器やWi-Fi機器の輸入では、「電波法だけ確認すればよい」と考えるのではなく、製品全体としてどの国内制度が関係するかを整理する必要があります。
海外EC・サンプル輸入での注意点
海外ECサイトやクラウドファンディングで購入された機器は、日本向け仕様ではない場合があります。
特に、海外版スマートフォン、Wi-Fi機器、Bluetooth機器、ワイヤレスカメラ、IoT機器では、日本国内向けの技適を取得していないケースがあります。
また、サンプル輸入や展示会用の貨物であっても、国内で実際に電波を発してデモンストレーションを行う場合には、電波法上の確認が必要になることがあります。
「販売しない」「試験用」「展示用」であっても、国内で電波を発するかどうかが実務上の分かれ目になります。技適未取得機器を用いた実験等の特例制度を利用できるかどうかも、用途、期間、機器の種類、届出内容によって確認する必要があります。
無線モジュール内蔵品の確認
近年は、完成品だけでなく、機械、家電、計測機器、医療・美容機器、産業機器の中に無線モジュールが組み込まれていることがあります。
この場合、製品全体の外観からは無線機器に見えなくても、内部にBluetooth、Wi-Fi、LTE、LPWAなどの通信モジュールが含まれている場合があります。
輸入者は、製品仕様書、取扱説明書、型式、モジュール認証番号、通信方式、周波数帯、出力、表示方法を確認し、日本国内で使用できる仕様かを確認する必要があります。
フォワーダー実務上の注意点
フォワーダーや通関関係者は、無線機器そのものの適法性を保証する立場ではありません。
しかし、貨物名、Invoice、Packing List、商品説明、HSコード、製品写真などから、Bluetooth、Wi-Fi、wireless、radio、RF、smart、IoT、drone、router、moduleなどの記載がある場合には、電波法上の確認が必要になる可能性があります。
HSコードでは、第85類(電気機器)、第84類(機械類)、第88類(航空機・ドローン)などに分類される貨物で、無線機能を含む場合に確認が必要になることが多いです。
実務上は、荷主に対して次の点を確認することが有効です。
- 日本向け仕様の製品か
- 技適マークまたは認証番号があるか
- 製品本体・画面・説明書のどこに表示されているか
- 無線通信方式と周波数帯は何か
- 海外規格のみで、日本の技適が未確認ではないか
- 販売用、展示用、試験用、個人使用のどれか
- 国内で電波を発して使用する予定があるか
実務上確認すべき資料
- 製品仕様書
- 取扱説明書
- 製品写真
- 技適マークまたは認証番号の表示資料
- 無線モジュールの型式情報
- 通信方式、周波数帯、出力に関する資料
- 日本向け仕様であることを示すメーカー資料
- 技適未取得機器を用いた実験等の特例制度を利用する場合の届出資料
- Invoice
- Packing List
- 販売ページや商品説明ページ
- 他法令に関する認証・表示資料
まとめ
電波法と輸入機器では、Bluetooth機器、Wi-Fi機器、無線モジュール、IoT機器など、電波を発する製品について、日本国内で使用・販売できるかを確認することが重要です。
海外規格に適合していても、日本の技適マークや電波法上の技術基準適合が確認できなければ、国内使用・販売に問題が生じることがあります。
技適マークのない機器でも、実験等の特例制度により一定条件下で使用できる場合がありますが、商業販売とは別に考える必要があります。
通関できることと、国内で使用・販売できることは別問題です。フォワーダーや通関関係者は、無線機能を持つ輸入品について、荷主に技適マーク、認証番号、日本向け仕様、特例制度の要否、他法令の確認を促すことが重要です。
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