第一種 外航貨物利用運送事業登録申請
第一種 外航貨物利用運送事業登録申請
第一種外航貨物利用運送事業登録申請とは、日本から外国へ向かう外航海運について、船舶運航事業者又は他の貨物利用運送事業者が行う運送を利用し、荷主に対して自ら運送を引き受ける事業を開始するために、国土交通大臣の登録を受ける手続です。
実務上は、日本の仕立港から外国の仕向港までの外航海運区間を対象として、NVOCCが荷主と運送契約を締結し、自己名義のHouse B/L、Sea Waybillその他の運送書類を発行するPort to Port型の事業が中心となります。
ただし、第一種外航貨物利用運送事業の登録が必要かどうかは、House B/Lという名称の書類を発行するかだけで決まるものではありません。他人の需要に応じ、有償で、外航海運に係る利用運送を自らの運送責任で行う事業であるかを、契約、運賃収受、運送書類及び実際の責任範囲から判断します。
また、第一種外航の登録だけで、国内集荷、海外側配送、航空輸送、通関、港湾運送、倉庫保管その他の業務を全て自社の運送責任で引き受けられるわけではありません。自社がどの区間を荷主に対して引き受けるかに応じて、第二種外航、第一種貨物自動車利用運送、国際航空利用運送その他の登録・許可を別に確認します。
国際貨物利用運送について、貨物利用運送事業法による登録又は許可の対象となるのは、日本から外国へ向かう輸出利用運送です。輸入及び三国間輸送は同法による国際利用運送の規制対象外ですが、日本で陸揚げした後の国内輸送を利用運送として引き受ける場合には、国内区間について別途確認が必要です。
制度の目的と背景
貨物利用運送事業は、自ら船舶、航空機、鉄道又は貨物自動車を運行せず、他の運送事業者の輸送力を利用しながら、荷主に対して運送を引き受ける事業です。
単なる運送取次では、荷主と実運送人との契約成立を仲介することが中心になります。これに対し、貨物利用運送事業者は、荷主との間で自己を運送契約の当事者とし、自ら運賃を収受し、利用するshipping lineその他の運送事業者へ運送を委託します。
第一種外航貨物利用運送事業の登録制度は、このような事業者について、事業計画、契約関係、施設、財産的基礎、利用運送約款及び欠格事由を審査し、荷主保護と利用運送事業の適正な運営を確保するための制度です。
したがって、この登録は単にHouse B/Lを印刷するための資格ではありません。自社が運送人として引き受ける区間、利用する実運送人、適用約款、運賃及び事故時の責任を一体として整備することが前提となります。
この記事で扱う範囲
| 論点 | 本記事で扱う内容 | 詳細を扱う記事・制度 |
|---|---|---|
| 第一種外航の登録 | 日本発の外航海運利用運送を行う邦人事業者の新規登録 | 本記事 |
| Port to Port型輸送 | 日本の仕立港から外国の仕向港までを引き受ける事業 | NVOCC、House B/L関連の記事 |
| 片側だけに集配がある輸送 | 第一種外航と他の第一種利用運送登録を組み合わせる判断 | 第一種貨物自動車利用運送事業 |
| Door to Door型輸送 | 幹線輸送の前後双方の集配を一貫して行う場合との区別 | 第二種外航貨物利用運送事業 |
| Sea & Air | 外航海運区間と航空区間の契約・登録範囲の確認 | 第一種・第二種国際航空貨物利用運送事業 |
| 外国人等による事業 | 邦人用手続と外国人等に対する別手続の区別 | 外国人国際貨物利用運送事業の登録・許可 |
| 輸入・三国間輸送 | 国際利用運送としては貨物利用運送事業法の規制対象外である点 | 輸入後の国内利用運送は各国内区間の記事で確認 |
| 登録後の運用 | 約款、運賃料金、掲示、変更、定期報告及び社内体制 | 利用運送約款、事業報告の記事 |
第一種外航貨物利用運送事業が問題となる場面
| 事業場面 | 荷主に対して引き受ける範囲 | 第一種外航の位置付け | 追加確認 |
|---|---|---|---|
| 日本港から外国港までの海上輸送 | Port to Portの外航海運区間 | 第一種外航の典型場面 | 利用運送約款、実運送人契約、House B/L |
| 日本のCFSから外国のCFSまでのLCL輸送 | 外航海運を中心とするCFS to CFS | 第一種外航の中心的な事業形態 | CFS取扱いが附帯業務か別契約かを確認 |
| 日本のCYから外国のCYまでのFCL輸送 | CY to CYの外航海運区間 | 第一種外航の典型場面 | コンテナ受渡し地点と責任区間を確認 |
| 国内工場から外国港までの輸送 | 国内トラック区間と外航海運区間 | 外航区間は第一種外航 | 国内区間の第一種貨物自動車利用運送登録 |
| 日本港から外国の内陸配送先までの輸送 | 外航海運と外国側配送 | 前後双方の集配を伴わないため第二種とは限らない | 外国側法令、代理店契約、運送書類及び責任区間 |
| 国内工場から外国の内陸配送先まで | 国内集荷、外航海運、外国側配達を一貫して引き受ける | 第二種外航の可能性が高い | 集配事業計画、海外代理店契約及び第二種許可 |
| 海上輸送後に航空輸送へ接続 | 海上区間のみ又は海上・航空全区間 | 外航区間のみなら第一種外航が中心 | 航空区間まで引き受ける場合は国際航空利用運送を確認 |
第一種・第二種・他の利用運送登録との違い
| 事業形態 | 典型的な責任区間 | 登録・許可の基本 | 判断の中心 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 第一種外航貨物利用運送事業 | 日本の仕立港から外国の仕向港まで | 第一種外航の登録 | 外航海運区間を自己の運送責任で引き受けるか | Port to Port型の運送書類と責任区間を一致させる |
| 第一種外航+第一種貨物自動車利用運送 | 国内工場から日本港を経て外国港まで | 外航及び貨物自動車の各第一種登録 | 集配が幹線輸送の片側だけか | 片側だけの集配は第二種とはならない |
| 第二種外航貨物利用運送事業 | 国内集荷、外航海運、外国側配達を一貫して行う | 第二種外航の許可 | 幹線輸送に先行及び後続する集配の双方を一貫して行うか | 事業計画に加えて集配事業計画が必要となる |
| 第一種国際航空貨物利用運送事業 | 日本空港から外国空港までの航空利用運送 | 第一種国際航空の登録 | 航空区間を自己の運送責任で引き受けるか | Sea & Airでは海上と航空の各区間を分けて確認する |
| 単なる運送取次 | 荷主と運送人との契約成立を仲介する | 貨物利用運送事業登録を要しない場合がある | 自ら運送契約の当事者となるか | 見積、請求、B/L名義及び責任表示との整合が必要 |
| 通関・倉庫・保険等の附帯業務 | 通関、保管、梱包、保険手配等 | 第一種外航登録とは別の法令・資格を確認 | 利用運送に通常附帯する業務か、別の規制業務か | 通関業、倉庫業、保険募集等の制度を混同しない |
第二種貨物利用運送事業は、船舶、航空又は鉄道による幹線輸送と、その幹線輸送に先行する集貨及び後続する配達を一貫して行う事業です。
したがって、国内工場から外国港までのように集配が片側だけに存在する輸送は、第二種ではなく、国内トラック区間に係る第一種貨物自動車利用運送と、外航区間に係る第一種外航貨物利用運送を組み合わせる形が基本となります。
名称や営業表現としてDoor to Doorを使用しているかではなく、実際にどの区間を一つの運送契約として引き受け、どこまで自社が運送責任を負うかを確認します。
第一種外航だけでは足りない又は対象外となる場面
| 場面 | 第一種外航だけでは足りない理由 | 追加で確認する制度・契約 |
|---|---|---|
| 国内集荷を自社責任で引き受ける | 国内貨物自動車区間は外航海運区間ではない | 第一種貨物自動車利用運送事業 |
| 幹線輸送の前後双方の集配を一貫して引き受ける | 第二種貨物利用運送事業の定義に該当する可能性がある | 第二種外航貨物利用運送事業 |
| 航空区間まで自己の運送責任で引き受ける | 航空運送は外航海運とは別の利用運送機関である | 第一種又は第二種国際航空貨物利用運送事業 |
| 自社で輸出入申告を代理する | 通関業務は貨物利用運送事業登録とは別制度である | 通関業許可又は通関業者への委託 |
| 港湾運送を自ら受託・実施する | 港湾運送は貨物利用運送とは別の規制領域である | 港湾運送事業法上の確認 |
| 倉庫保管を独立事業として行う | 倉庫業に該当する場合は別の登録制度がある | 倉庫業法上の登録要否 |
| 貨物保険を募集・締結する | 保険募集は貨物利用運送登録に含まれない | 保険業法上の募集資格及び代理店契約 |
| 外国人等に該当する事業者が申請する | 邦人用第一種登録とは申請区分・要件が異なる | 外国人国際貨物利用運送事業の手続 |
| 輸入又は三国間の国際利用運送だけを行う | 国際利用運送としては貨物利用運送事業法の規制対象外 | 輸入後の国内輸送、外国法及び契約責任を別に確認 |
第一種外航貨物利用運送事業で行う主な業務
- 荷主と外航海運区間について運送契約を締結する。
- shipping line又は他の外航貨物利用運送事業者が行う運送を利用する。
- 自己名義のHouse B/L、Sea Waybillその他の運送書類を発行する。
- 荷主から運賃及び料金を収受する。
- 利用する実運送人又は利用運送事業者へ運賃を支払う。
- 自己の運送契約上の責任に基づき、荷主への運送履行、事故説明及びクレーム対応を行う。
- 外航利用運送に通常附帯する書類、保管、梱包、費用回収その他の業務を行う。
実際の貨物事故がshipping line、CFS、港湾作業会社又は海外代理店の作業で発生した場合でも、荷主に対して運送を引き受けたNVOCCは、自らの契約上の地位に基づく初動説明及び対応を検討します。
原因者への再求償と、荷主に対する契約上の対応主体は分けて整理する必要があります。
登録申請の主な要件
| 要件 | 確認内容 | 主な確認資料 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|---|
| 事業該当性 | 第一種外航貨物利用運送事業に該当する事業計画である | サービス設計、見積、契約、運送書類案 | 第二種又は他モードの登録が必要でないかを先に確認する |
| 基準資産額 | 基準資産額が300万円以上である | 直近事業年度の貸借対照表等 | 創業費等の繰延資産及び営業権を除外して算定する |
| 欠格事由 | 法定の登録拒否事由に該当しない | 役員全員の宣誓書、役員名簿、履歴書 | 法人だけでなく役員についても確認する |
| 事務所・営業所 | 事業遂行に必要な営業所を有する | 賃貸借契約、登記事項証明、使用権原の宣誓書 | 営業所の所在地と実際の業務実施場所を一致させる |
| 保管施設 | 保管体制を必要とする場合に必要な能力と盗難防止措置を有する | 施設明細、面積、構造、附属設備 | 自社施設がない場合は委託体制を説明する |
| 実運送人との契約 | shipping line又は利用運送事業者との運送関係を有する | 運送契約書、運賃見積書その他の関係資料 | 外航船舶を利用する合理的な契約であることを示す |
| 事業計画 | 利用運送機関、区間、営業所、業務範囲、保管施設及び利用運送事業者を明示する | 事業計画書 | 将来の希望ではなく、開始予定の実態を記載する |
| 利用運送約款 | 標準外航利用運送約款又は認可を受ける独自約款を使用する | 約款、認可申請書、事業計画の備考 | 独自英文約款では証明付き和訳等が問題となる |
| 邦人・外国人区分 | 申請者が邦人用手続の対象である | 代表者、役員、議決権及び法人設立法の資料 | 日本法人でも外国人等の定義に該当する場合がある |
基準資産額300万円以上の考え方
申請要件として確認されるのは、単純な貸借対照表上の純資産欄だけではなく、貨物利用運送事業法施行規則に基づく基準資産額です。
基本的には、貸借対照表又は財産に関する調書に計上された資産から、創業費その他の繰延資産及び営業権を除き、負債総額を控除して算定します。
| 項目 | 取扱い | 確認上の注意 |
|---|---|---|
| 資産総額 | 基準資産表に計上された資産を基礎とする | 評価額が明らかに異なる場合は実際の評価を確認する |
| 繰延資産 | 創業費その他の繰延資産を控除する | 会計上の純資産と基準資産額が一致しない場合がある |
| 営業権 | 資産額から除外する | 買収等で営業権を多額に計上している会社は注意する |
| 負債 | 負債総額を控除する | 直近決算後の重大な増減を確認する |
| 増資等 | 決算後に明確な増加がある場合は増加後の額を確認する余地がある | 払込証明その他の客観的資料を準備する |
基準資産額が300万円以上であっても、事業計画、施設、契約、約款又は欠格事由に問題があれば登録されるとは限りません。
主な申請書類
| 書類 | 主な内容 | 作成上の注意 | 該当する場合 |
|---|---|---|---|
| 第一種貨物利用運送事業登録申請書 | 申請者、代表者、利用運送機関の種類等 | 利用運送機関は外航海運と記載する | 全申請者 |
| 事業計画書 | 利用区間、営業所、業務範囲、保管施設、利用運送事業者 | 自社の実際の事業範囲と一致させる | 全申請者 |
| 運送契約書等 | shipping line又は利用運送事業者との契約関係 | 契約書のほか、条件を満たす運賃見積書等で説明できる場合がある | 全申請者 |
| 営業所関係書類 | 関係法令に抵触しない旨及び使用権原 | 所在地、賃貸借名義及び使用実態を確認する | 全申請者 |
| 保管施設明細 | 面積、構造、附属設備、盗難・火災防止設備 | 自社で保管しない場合は委託体制を説明する | 保管施設がある場合 |
| 定款 | 法人の目的及び組織 | 事業目的に利用運送業務を含める | 法人 |
| 登記事項証明書 | 法人、代表者、本店、目的等 | 申請内容と最新登記を一致させる | 法人 |
| 貸借対照表 | 基準資産額の審査 | 直近事業年度の資料を使用する | 既存法人 |
| 役員名簿・履歴書 | 役員の氏名、住所、職歴等 | 全役員を漏れなく記載する | 邦人法人 |
| 欠格事由の宣誓書 | 法定欠格事由に該当しない旨 | 役員全員分が必要となる | 法人等 |
| 利用運送約款 | 運送の受取、引渡し、運賃、責任等 | 標準約款を使用する場合は事業計画へ明記する | 独自約款を使用する場合は認可申請 |
法人設立前の申請、個人申請、外国人等に該当する申請、独自約款を使用する申請その他の事情により必要書類は異なります。必ず申請時点の様式及び所管窓口の案内を確認します。
申請窓口・提出方法・標準処理期間
申請書は国土交通大臣宛てに作成し、外航貨物利用運送事業の担当窓口へ提出します。国土交通省本省の担当部署のほか、地方運輸局の海事担当部門、神戸運輸監理部及び沖縄総合事務局等を経由して提出できる場合があります。
国土交通省の申請案内では郵送による提出も示されています。郵送する場合は、担当名の明記、配達記録が残る方法及び控え返送用封筒等の要否を確認します。
第一種貨物利用運送事業登録の標準処理期間は、申請が所定の機関へ到達してから通常2~3か月です。ただし、申請前相談、資料準備、形式不備の修正、内容照会及び補正に要する期間は別に考える必要があります。
他の地方運輸局を経由する案件又は他局への照会が必要な案件では、標準処理期間が延びることがあります。
申請から営業開始までの流れ
| 段階 | 実施内容 | 主な判断事項 | 止まりやすい原因 |
|---|---|---|---|
| 1. 事業設計 | 荷主に提供する区間、運送書類、料金及び責任を決める | 第一種か第二種か、他モードが必要か | 営業表現と登録範囲が一致していない |
| 2. 事前相談 | 所管窓口へ事業計画の概要を相談する | 申請区分、提出先及び必要書類 | 複合輸送の責任区間が不明確 |
| 3. 財産要件確認 | 基準資産額を算定する | 300万円以上か | 繰延資産・営業権を除くと不足する |
| 4. 運送契約準備 | shipping line等との契約又は運賃関係資料を整える | 外航利用運送を継続して行える関係か | 契約主体又は対象区間が申請者と一致しない |
| 5. 施設確認 | 営業所及び保管体制を整理する | 使用権原、関係法令及び保管能力 | 賃貸借名義又は所在地が不一致 |
| 6. 約款選択 | 標準外航利用運送約款又は独自約款を選ぶ | 認可申請が必要か | House B/L裏面約款と申請約款が不整合 |
| 7. 申請書作成 | 申請書、事業計画及び添付書類を作成する | 記載の整合性 | 区間、営業所、実運送人等の記載漏れ |
| 8. 申請・補正 | 所管窓口へ提出し、照会・補正へ対応する | 法令要件及び事業の実現可能性 | 説明資料不足、役員資料不足 |
| 9. 登録 | 登録通知及び登録番号を受ける | 登録内容と計画の一致 | 登録前に営業を開始しない |
| 10. 営業開始準備 | House B/L、約款、見積、請求、事故対応を整備する | 登録範囲内の運用となっているか | 営業部門がDoor to Doorを無制限に販売する |
| 11. 登録後手続 | 登録免許税、運賃料金、掲示、報告及び変更管理を行う | 期限及び提出先 | 登録取得だけで手続が完了したと誤認する |
利用運送約款とHouse B/L
第一種貨物利用運送事業者は、利用運送約款を定め、原則として国土交通大臣の認可を受けます。ただし、国土交通大臣が定めた標準外航利用運送約款と同一の約款を使用する場合は、個別認可を受けたものとみなされます。
独自約款を使用する場合は、荷主の正当な利益を害するおそれがなく、貨物の受取・引渡し、運賃及び料金の収受並びに事業者の責任等が明確であることが必要です。
実務では、申請時に使用するとした利用運送約款、House B/Lの裏面約款、見積条件及び事故対応規程が相互に矛盾しないようにします。
| 資料 | 主な役割 | 不一致がある場合の問題 |
|---|---|---|
| 利用運送約款 | 利用運送契約の共通条件を定める | 申請内容と実際の契約条件が異なる |
| House B/L | 個別運送契約、貨物受取及び運送条件を表示する | 登録範囲を超える責任区間を表示する |
| 見積書 | 運賃、区間、附帯業務及び除外条件を示す | Port to Port登録なのにDoor to Door一括責任を表示する |
| 海外代理店契約 | 仕向地側の業務、権限及び費用を定める | 自社が負う責任と代理店の作業範囲が不明になる |
| 賠償責任保険 | 運送人・フォワーダーとしての賠償リスクへ備える | 登録・B/L上の責任区間が補償範囲を超える |
Port to Port型の運送書類
第一種外航貨物利用運送事業の典型的な運送書類は、日本の港又は港湾施設を受取地点とし、外国の港又は港湾施設を引渡地点とするPort to Port型です。
| 記載項目 | 記載例 | 実務上の意味 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| Place of Receipt | Yokohama CY | NVOCCが運送契約上貨物を受け取る場所 | 国内工場名を記載する場合は国内区間の責任を確認する |
| Port of Loading | Yokohama, Japan | 外航船舶への積港 | 実際の積港と一致させる |
| Port of Discharge | Singapore | 本船からの揚港 | 航空空港名等を海上B/Lの揚港として安易に記載しない |
| Place of Delivery | Singapore CY | 運送契約上の引渡地点 | 外国の内陸地を記載する場合は責任区間と契約を確認する |
Place of Receipt又はPlace of Deliveryの欄が存在することだけで、自由に国内工場又は海外内陸地を記載してよいわけではありません。記載地点まで自社が運送人として責任を負うのであれば、その区間に必要な登録、契約、約款及び保険を整備する必要があります。
一方、単なる参考情報又は配送指示として場所を記載する場合には、運送契約上の受取・引渡地点と誤認されない表示が必要です。
Sea & Air輸送の確認
日本から外航船舶で海外中継地まで輸送し、その後に航空便へ積み替えるSea & Air輸送では、自社が海上区間だけを引き受けるのか、航空区間まで一つの運送契約として引き受けるのかを確認します。
| 契約形態 | 自社の責任範囲 | 登録確認 | 運送書類上の注意 |
|---|---|---|---|
| 海上区間だけを引き受ける | 日本港から海外中継港まで | 第一種外航を中心に確認 | 海上区間の終点を明確にする |
| 航空区間を別事業者が荷主と直接契約する | 自社は海上区間のみ | 自社の航空利用運送登録は不要となる可能性がある | 単一の通し運送を引き受けたように表示しない |
| 海上・航空を一つの契約で引き受ける | 日本から最終空港又は配送地まで | 外航及び国際航空の利用運送登録・許可を確認 | 複合運送書類と各区間の責任条件を整える |
| 前後双方の集配も一貫して引き受ける | 集荷から最終配送まで | 第二種又は複数モードの許可・登録を確認 | 集配事業計画と海外代理店体制を整える |
輸送ルートがSea & Airであることだけで登録区分が決まるわけではありません。荷主との契約、運賃収受、発行書類及び各区間の責任主体を基準に判断します。
登録後に必要となる手続と実務体制
| 事項 | 主な内容 | 時期・管理上の注意 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 新規登録について9万円を納付する | 登録日以後1か月以内 |
| 運賃料金設定届出 | 設定又は変更した運賃及び料金を届け出る | 現行様式及び提出先を確認する |
| 事業種別等の掲示 | 第一種事業者である旨、利用運送機関、約款、区間等を掲示する | 主たる事務所その他の営業所で公衆に見やすく掲示する |
| 事業概況報告書 | 営業概況及び財務関係資料等を報告する | 毎事業年度経過後100日以内 |
| 事業実績報告書 | 毎年4月1日から翌年3月31日までの取扱実績を報告する | 毎年7月10日まで |
| 変更登録・変更届出 | 利用運送機関、区間、営業所、業務範囲、施設、実運送人等の変更 | 変更内容により事前の変更登録又は事後届出を確認する |
| 約款変更 | 独自利用運送約款の変更等 | 認可の要否を確認する |
| 譲渡・合併・分割・相続 | 事業者の地位の承継 | 事後30日以内の届出等を確認する |
| 事業廃止 | 第一種事業の廃止 | 事後30日以内の届出を確認する |
登録後は、営業部門、オペレーション部門、経理部門及び事故対応部門が登録内容を共有する必要があります。
営業担当者が登録範囲を理解せず、Port to Port登録だけでDoor to Door一括運送を販売すると、見積、House B/L、約款、請求及び保険の全てが登録内容と不整合になる可能性があります。
登録範囲を超えやすい典型ケース
| ケース | 主な原因 | 確認資料 | 判断ポイント | 初動対応 |
|---|---|---|---|---|
| Port to Port登録だけで国内工場から引き受ける | 国内集荷を附帯業務と誤認した | 見積、発注書、House B/L、トラック契約 | 国内区間を自己の運送責任で引き受けたか | 第一種貨物自動車利用運送の登録要否を確認する |
| 国内集荷から海外配送まで一括受託する | 第一種と第二種の違いを理解していない | Door to Door見積、B/L、代理店契約 | 前後双方の集配を一貫して引き受けるか | 第二種外航の許可要否を確認する |
| House B/LのPlace of Receiptを国内工場とする | 書類欄を営業上の表示だけで記載した | House B/L、集荷契約、登録簿 | 工場からの運送責任を負っているか | 書類表示と登録・契約範囲を修正する |
| 海外内陸地をPlace of Deliveryとする | 海外代理店の作業を自社の運送責任と混同した | House B/L、代理店契約、見積 | 荷主に対して海外配送まで引き受けたか | 契約、外国法、保険及び第二種該当性を確認する |
| Sea & Airを一枚の書類で引き受ける | 航空利用運送登録を確認していない | 運送書類、航空運賃、AWB、約款 | 航空区間も自己の運送責任か | 国際航空利用運送登録の要否を確認する |
| 標準約款使用として登録し独自B/L約款を使用する | 申請部門と営業部門が分離している | 事業計画、標準約款、B/L裏面 | 実際の約款が認可済みか | 約款認可又は運用修正を検討する |
| 実運送人を変更したが手続をしていない | 変更管理体制がない | 登録内容、shipping line契約、Booking記録 | 変更登録又は届出の対象か | 所管窓口へ速やかに確認する |
| 輸入取扱いにも外航第一種登録が必須と説明する | 輸出規制と輸入実務を混同した | 契約区間、輸送方向、国内配送契約 | 国際利用運送が輸出・輸入・三国間のどれか | 輸入後国内区間だけを別に判断する |
制度適用シナリオ1:横浜港からシンガポール港までのPort to Port輸送
日本法人A社が、荷主から横浜港CYで40フィートコンテナを受け取り、shipping lineへ海上輸送を委託し、シンガポール港CYで引き渡す契約を締結するとします。
A社は荷主から海上運賃を収受し、自己名義のHouse B/Lを発行します。House B/Lには、Place of ReceiptをYokohama CY、Port of LoadingをYokohama、Port of DischargeをSingapore、Place of DeliveryをSingapore CYと記載します。
この事業では、A社が外航海運区間の運送契約当事者となり、shipping lineの運送を利用してPort to Port輸送を行うため、第一種外航貨物利用運送事業の典型的な適用場面となります。
国内工場から横浜CYまでの輸送及びシンガポールCY以降の配送を荷主又は買主が別契約で手配し、A社がその区間を自らの運送責任として引き受けないのであれば、当該区間はA社の第一種外航事業の範囲に含まれません。
制度適用シナリオ2:水戸市の工場から横浜港を経てシンガポール港まで輸送する場合
A社が、水戸市の荷主工場で貨物を受け取り、トラック会社へ横浜港までの輸送を委託し、横浜港からシンガポール港までの海上輸送も一つの契約として引き受けるとします。
この場合、貨物の集配は日本側の片側だけであり、外国側の配達を含まないため、第二種外航貨物利用運送事業には該当しないのが基本です。
一方で、A社は水戸市から横浜港までの国内貨物自動車区間と、横浜港からシンガポール港までの外航海運区間を、いずれも荷主に対する自己の運送責任で引き受けています。
したがって、国内区間について第一種貨物自動車利用運送事業、外航区間について第一種外航貨物利用運送事業の登録をそれぞれ確認します。
House B/LのPlace of ReceiptをMito Cityとする場合には、書類表示だけでなく、国内区間の登録、利用運送約款、トラック会社との契約及び賠償責任保険を一致させる必要があります。
制度適用シナリオ3:国内集荷からシンガポール内陸配送まで一貫して引き受ける場合
A社が、埼玉県の荷主倉庫で貨物を受け取り、横浜港まで集荷し、外航船舶でシンガポール港へ輸送し、現地代理店を利用してJurongの買主倉庫まで配送する一つのDoor to Door契約を締結するとします。
この契約では、外航海運という幹線輸送に先行する国内集貨と、幹線輸送に後続する外国側配達の双方を、一つの運送契約として一貫して引き受けています。
この事実関係は、第二種外航貨物利用運送事業の定義に該当する可能性が高いため、第一種外航登録だけで処理してはいけません。
第二種許可では、外航海運の事業計画だけでなく、貨物の集配拠点、集配地域、営業所、集配委託先その他の集配事業計画が問題となります。
海外代理店が実際の配送作業を行うとしても、A社が荷主に対して最終配送まで一括責任を負うのであれば、単に代理店へ再委託しただけで第二種該当性がなくなるわけではありません。
制度適用シナリオ4:神戸港から釜山港を経由して航空便でシンガポールへ輸送する場合
A社が、神戸港から釜山港まで外航船舶で運び、釜山で航空便へ積み替え、シンガポール空港まで輸送するサービスを販売するとします。
A社が荷主に対して神戸港から釜山港までの海上区間だけを引き受け、釜山以降の航空輸送は荷主と航空フォワーダーとの別契約である場合、A社の事業は第一種外航を中心に判断できます。
これに対し、A社が神戸港からシンガポール空港までの通し運賃を収受し、一枚の複合運送書類を発行し、航空区間を含む全区間について運送責任を負う場合には、第一種外航だけでは足りない可能性があります。
この場合は、国際航空貨物利用運送事業の登録要否、各区間の利用運送約款、航空実運送人との契約及び運送書類上の責任区間を確認します。
Port of Discharge欄へ単純に空港名を記載するのではなく、使用する運送書類が海上B/Lなのか複合運送書類なのかを整理し、各欄を実際の輸送と契約に対応させます。
よくある誤解
| よくある誤解 | 実際の考え方 | 確認事項 |
|---|---|---|
| House B/Lを発行すれば必ず第一種登録だけでよい | 責任区間に応じて第二種又は他モードの登録が必要になる | Place of Receipt、Place of Delivery及び実際の契約区間 |
| 第一種外航があればDoor to Door輸送を全て行える | 前後双方の集配を一貫して行う場合は第二種が問題となる | 集配の有無と一括責任 |
| 国内集荷が一つでもあれば第二種になる | 片側だけの集配は第一種の組合せとなるのが基本である | 幹線輸送の前後双方に集配があるか |
| NVOCC登録という一種類の免許がある | 法令上は輸送モードと第一種・第二種に応じた登録・許可である | 外航、航空、自動車及び責任区間 |
| 純資産欄が300万円あれば必ず財産要件を満たす | 繰延資産及び営業権等を除く基準資産額で判断する | 基準資産額の計算 |
| 標準約款を使う場合も個別認可が必要である | 標準外航利用運送約款と同一であれば個別認可は不要となる | 事業計画への記載と実際の約款 |
| 登録を取得すれば申請時の事業計画と異なる事業もできる | 区間、営業所、業務範囲等の変更には手続が必要となる | 変更登録・変更届出 |
| 輸入NVOCC業務にも日本の外航第一種登録が必須である | 国際利用運送としては輸入・三国間は同法の規制対象外である | 輸入後の国内利用運送区間 |
| shipping lineとの見積書があれば他の申請資料は不要である | 事業計画、施設、財務、役員、欠格事由及び約款も必要である | 申請書類一式 |
| 登録通知を受ければ全ての手続が完了する | 登録免許税、掲示、運賃料金、報告及び変更管理が続く | 登録後の社内管理表 |
登録区分判断チェックリスト
| 確認場面 | 確認する相手 | 確認事項 | 問題がある場合の対応 |
|---|---|---|---|
| 新サービス設計時 | 営業、法務、オペレーション | 受取地点、引渡地点、輸送モード及び責任区間 | 登録区分を確定するまで販売を開始しない |
| 第一種・第二種判断時 | 国土交通省又は所管窓口 | 幹線輸送の前後双方に集配があるか | 事業図と契約案を示して事前相談する |
| 国内集荷を含める時 | 自動車利用運送担当窓口 | 国内区間を誰が荷主へ引き受けるか | 第一種貨物自動車利用運送登録を確認する |
| Sea & Airを扱う時 | 外航・航空利用運送担当窓口 | 航空区間の契約主体、運賃収受及び責任 | 国際航空利用運送登録を追加確認する |
| 申請準備時 | 経理、総務、役員 | 基準資産額、営業所、役員及び欠格事由 | 不足資料・財産要件を申請前に解消する |
| 実運送人契約時 | shipping line、NVOCC、法務 | 契約主体、航路、運賃及び責任 | 申請者名義と契約名義を一致させる |
| 利用運送約款選択時 | 法務、保険担当、所管窓口 | 標準約款か独自約款か | 独自約款なら認可申請を準備する |
| House B/L作成時 | 法務、オペレーション、保険会社 | 受取・引渡地点、約款及び責任区間 | 登録・保険範囲を超える表示を修正する |
| 登録後の営業開始時 | 全部門 | 登録内容、約款、見積、請求及び事故対応 | SOPと承認フローを整備する |
| サービス変更時 | 所管窓口、法務、営業 | 区間、営業所、業務範囲、実運送人等の変更 | 変更登録又は届出を営業開始前に確認する |
| 毎年度 | 経理、管理部門 | 事業概況報告及び事業実績報告 | 提出期限を年間管理表で管理する |
専門家への相談を検討すべき場面
通常の第一種外航登録申請は、自社で申請書類を作成することも、行政書士へ依頼することもできます。ただし、次の場面では行政、行政書士、海事弁護士、保険会社その他の専門家へ事前確認することが重要です。
- 第一種と第二種のどちらに該当するか判断が分かれる場合
- 国内集荷、海外配送又は複数モードを組み合わせる場合
- Sea & Air、Rail & Seaその他の複合輸送を通し契約で引き受ける場合
- 日本法人であるが、代表者、役員又は議決権の関係で外国人等に該当する可能性がある場合
- 独自の英文House B/L約款を使用する場合
- 標準約款と既存のB/L裏面約款が一致していない場合
- 登録前から既にHouse B/Lを発行し、運送人として営業している場合
- 登録範囲を超えるDoor to Door案件を過去に取り扱っていた可能性がある場合
- 重大貨物事故について、登録範囲、約款及び保険の不一致が判明した場合
- 行政処分、登録取消し、業務停止又は刑事罰の可能性が問題となる場合
申請様式、提出先及び登録区分については国土交通省又は所管窓口、申請書作成については貨物利用運送事業に詳しい行政書士、契約・約款・行政対応については海事・物流に詳しい弁護士、貨物運送賠償責任保険については保険会社又は専門保険代理店へ確認します。
まとめ
第一種外航貨物利用運送事業登録は、日本から外国へ向かう外航海運について、他の運送事業者の輸送力を利用しながら、自ら荷主に対して運送を引き受けるための登録です。
典型的な対象は、日本の仕立港から外国の仕向港までのPort to Port型輸送です。ただし、第一種貨物利用運送事業は法律上、第二種以外の利用運送事業であり、片側だけの集配を含む場合には、外航と貨物自動車等の第一種登録を組み合わせることがあります。
幹線輸送に先行する集貨と後続する配達の双方を一貫して引き受ける場合は、第二種外航貨物利用運送事業の許可を確認します。航空区間まで引き受けるSea & Airでは、国際航空利用運送事業の登録・許可も別に確認します。
申請では、事業計画、実運送人との契約、営業所・保管体制、基準資産額300万円以上、欠格事由及び利用運送約款を体系的に準備します。
登録後も、登録免許税、運賃料金、掲示、変更手続、事業概況報告、事業実績報告、House B/L運用、約款、海外代理店、賠償責任保険及び事故対応を継続的に管理する必要があります。
第一種外航貨物利用運送事業登録は、単なる行政上の資格ではありません。自社がどの区間を運送人として引き受け、その責任をどの書類、約款、契約及び保険によって支えるかを確定する制度上の基礎です。
