フォワーダーが責任を負わない典型ケース

概要

貨物事故、納期遅延、追加費用、通関トラブルが発生すると、荷主からフォワーダーに対して「手配を依頼したのだから責任を負うべきだ」と言われることがあります。

しかし、フォワーダーが関与した案件であっても、フォワーダーが常に損害賠償責任を負うわけではありません。

フォワーダーの責任は、引き受けた業務範囲、見積条件契約条件、B/L発行の有無、貨物保険の有無、事故原因、荷主側の情報提供や梱包状態によって変わります。

本記事では、フォワーダーが当然に責任を負うわけではない典型ケースを整理し、荷主説明や社内判断で注意すべき実務上のポイントを解説します。

「手配した」ことと「責任を負う」ことは同じではない

フォワーダーは、輸送、通関、保管、配送、書類作成、保険案内など、多くの業務を調整します。

しかし、フォワーダーが手配に関与したからといって、すべての事故や追加費用について当然に責任を負うわけではありません。

例えば、船会社のスケジュール変更、税関検査、港湾混雑、納品先都合、荷主の梱包不備、貨物固有の性質による損害は、フォワーダーの管理外で発生することがあります。

重要なのは、フォワーダーが何を引き受け、何を引き受けていなかったのかを、見積書、メール、標準取引条件、B/L、FCR、社内記録から確認することです。

典型ケース1:荷主の梱包不備による損害

貨物が国際輸送に耐えない梱包状態で出荷されていた場合、フォワーダーが当然に責任を負うとは限りません。

木箱強度不足、内部固定不足、防湿措置不足、重量物に対するパレット強度不足、貨物の重心や形状に合わない梱包などは、貨物事故の原因になることがあります。

フォワーダーが梱包作業を引き受けていない場合、梱包は原則として荷主または梱包業者側の管理事項です。

ただし、フォワーダーが明らかに不適切な梱包を認識しながら何も注意しなかった場合や、梱包方法を具体的に指示・管理していた場合は、別途責任を問われる可能性があります。

したがって、「梱包不備だから絶対に責任なし」と単純に整理するのではなく、誰が梱包を行い、誰が梱包状態を確認し、フォワーダーがどこまで関与したかを確認する必要があります。

典型ケース2:貨物固有の性質による損害

貨物自体の性質により発生する損害についても、フォワーダーが当然に責任を負うとは限りません。

腐敗、自然劣化、錆、カビ、変色、自己発熱、吸湿、臭気移り、品質変化などは、外部事故ではなく貨物自体の性質に起因する場合があります。

例えば、湿気を吸いやすい貨物、温度変化に弱い貨物、長期輸送に適さない貨物について、荷主がその性質を十分に申告していなかった場合、フォワーダーが適切な輸送条件を判断できないことがあります。

貨物固有の性質による損害は、貨物保険でも免責論点になることがあります。フォワーダー責任と貨物保険の双方で、外部事故か、貨物自体の性質かを切り分けることが重要です。

典型ケース3:荷主の貨物情報不足・誤情報

荷主から提供された貨物情報が不足または誤っていた場合、フォワーダーが責任を負わない、または責任が限定されることがあります。

品名、重量、寸法、危険品該当性、温度管理条件、原産地、HSコード判断に必要な情報、輸入規制の有無、納品条件などは、手配に大きく影響します。

例えば、危険品であるにもかかわらず一般貨物として申告された場合、Booking取消、追加費用、船積不可、事故時の第三者賠償につながることがあります。

また、実際の重量・寸法が見積時情報と異なる場合、海上運賃CFS費用、国内配送費、車両条件が変わることがあります。

フォワーダーは、荷主から与えられた情報に基づいて手配を行うため、荷主情報が誤っていた場合、その結果生じた費用や損害をすべて負うとは限りません。

典型ケース4:税関検査・官庁手続による遅延や費用

税関検査、検疫、薬機法食品衛生法、植物防疫、動物検疫、製品安全規制などの官庁手続により発生する遅延や費用は、フォワーダーの責任とは限りません。

フォワーダーは、通関業者や関係先と連携して手続を進めますが、検査の実施、追加資料要求、輸入可否判断、官庁側の審査期間を自由にコントロールできるわけではありません。

見積書に税関検査費用や官庁対応費用が「実費別途」と記載されていれば、費用負担を説明しやすくなります。

一方、荷主が必要な資料を出さなかった、用途や成分情報を正確に伝えなかった、規制該当性を確認していなかった場合には、荷主側の情報提供義務が問題になります。

典型ケース5:船会社・航空会社・港湾側の事情

船会社、航空会社、港湾、ターミナル、CFS、CYの事情によるスケジュール変更や費用発生も、フォワーダーが当然に責任を負うものではありません。

ロールオーバー、Blank Sailing、抜港、寄港順変更、港湾混雑、CY混雑、CFS混雑、船社チャージ変更、フリータイム短縮などは、フォワーダーの管理外で発生することがあります。

フォワーダーは、情報を入手し、荷主へ連絡し、代替案を検討する立場にはありますが、船会社や港湾そのものを支配しているわけではありません。

したがって、これらの事情による遅延や追加費用について、フォワーダーが常に賠償責任を負うとは限りません。

ただし、フォワーダーが情報を把握していたにもかかわらず荷主へ連絡しなかった場合や、明らかに不合理な手配をした場合は、別途説明責任が問題になることがあります。

典型ケース6:納品先都合による追加費用

納品先の事情により発生する費用も、フォワーダー責任とは限りません。

納品先が受入時間外だった、フォークリフトが用意されていなかった、大型車が進入できなかった、納品予約が取れていなかった、書類不備により受領拒否された、といった場合には、待機料、持ち戻り、再配達費用、小型車積替え費用が発生します。

これらは、荷主または納品先側の受入条件に起因することが多い費用です。

見積書やメールで「納品先都合による待機料、再配達費用、車両変更費用は実費別途」と記載していれば、フォワーダー側は費用負担を説明しやすくなります。

典型ケース7:貨物保険を依頼されていない場合

荷主が貨物保険を依頼していない場合、フォワーダーが当然に保険手配義務を負うとは限りません。

荷主から「輸送一式」を依頼されたとしても、それだけで貨物保険の正式な付保依頼があったとはいえない場合があります。

ただし、見積書やメールに保険の有無が記載されていないと、事故後に「保険も含まれていると思っていた」と言われることがあります。

フォワーダー側は、「貨物保険は本見積に含まれておりません」「必要な場合は別途ご依頼ください」「本件は荷主様にて保険手配」といった確認を残しておくべきです。

保険未手配トラブルでは、フォワーダーが責任を負うかどうか以前に、保険の有無をどう説明していたかが重要になります。

典型ケース8:荷主の変更指示・口頭指示によるトラブル

荷主からの変更指示に基づいて発生した費用やトラブルについても、フォワーダーが当然に責任を負うとは限りません。

納品先変更、B/L訂正、Surrender切替、配送日変更、保険不要指示、急ぎ手配などは、荷主側の指示によって行われることがあります。

ただし、その指示が口頭だけで、メールや書面に残っていない場合、後日「そのような指示はしていない」「追加費用の説明を受けていない」と争われる可能性があります。

したがって、フォワーダーが責任を負わないと主張するためには、荷主の指示を記録として残しておくことが重要です。

責任を負わない可能性があっても断定しない

フォワーダーが責任を負わない可能性がある場合でも、荷主に対してすぐに「当社に責任はありません」と断定することは避けるべきです。

事故原因、発生区間、契約条件、B/L約款、見積条件、保険条件を確認する前に断定すると、荷主との関係が悪化し、必要な資料提供も得にくくなります。

実務上は、次のように説明する方が安全です。

「現時点では事故原因および責任範囲を確認中です。貨物状態、梱包、輸送記録、見積条件、保険の有無を確認したうえで整理いたします。」

「本件については、荷主様側の貨物情報、梱包状態、納品条件も確認する必要があります。現時点で当社責任を前提とする回答は差し控えます。」

責任を否定する場合も、感情的に拒否するのではなく、資料に基づいて説明することが重要です。

事故後に確認すべき資料

フォワーダーが責任を負うかどうかを判断するには、事故後に次の資料を確認します。

  • 見積書
  • メール・変更指示
  • 標準取引条件・FCR
  • B/L・House B/L・Master B/L
  • Booking Confirmation
  • Invoice・Packing List
  • 貨物保険の有無
  • 受領書・POD
  • 写真・サーベイレポート
  • 配送記録・倉庫記録・CFS記録
  • 荷主から提供された貨物情報

これらを確認せずに責任有無を判断すると、後で説明が変わる危険があります。

具体例:納品先都合の待機料を請求されたケース

輸入貨物の国内配送で、フォワーダーは荷主から指定された納品先へトラックを手配しました。

当日、納品先では受付時間が限定されており、フォークリフト担当者も不在でした。車両は長時間待機し、最終的に当日荷降ろしができず、持ち戻りと再配達が必要になりました。

配送会社からは待機料、持ち戻り費用、再配達費用が請求されました。荷主は「配送を依頼したのだから、追加費用はフォワーダー側で負担すべきだ」と主張しました。

フォワーダーの見積書には、「納品先都合による待機料、持ち戻り、再配達費用は実費別途」と記載されており、納品条件についても荷主から受けた情報に基づいて手配していたことがメールで残っていました。

このため、フォワーダーは追加費用が納品先側の受入条件に起因するものであることを説明できました。

このケースでは、フォワーダーが配送手配を行っていても、納品先の受入体制不備による追加費用まで当然に負担するものではありませんでした。見積条件とメール記録が、防御資料として機能した例です。

まとめ

フォワーダーが関与した案件であっても、フォワーダーが常に責任を負うわけではありません。

梱包不備、貨物固有の性質、荷主情報不足、税関検査、船会社都合、納品先都合、保険未依頼、荷主の変更指示などは、フォワーダー責任とは限らない典型ケースです。

ただし、責任を負わないと説明するには、見積書、メール、標準取引条件、FCR、B/L、保険確認、事故資料が必要です。

フォワーダーにとって重要なのは、責任を逃れることではなく、自社がどこまで引き受け、どこから先は荷主・運送人・官庁・納品先・保険の問題なのかを、事前の記録と事故後の資料で説明できる状態にしておくことです。

同義語・別表記

  • フォワーダー免責
  • 責任を負わない場合
  • Forwarder Not Liable
  • 免責事由
  • 責任範囲外